筋肉増強剤の使い方

筋肉増強剤、いわゆるアナボリックステロイド(Anabolic Steroids)というと、現在は男性更年期障害、正確に言えばLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)に日本では保険適用でテストステロンエナンセートが処方されるぐらいで、その他のアナボリックステロイドの使用は、筋肉増強を目的としたクリニックなどで自費で処方されることが一般的だ。男性更年期障害でアナボリックステロイドを処方される分には1回700円~2000円程度とリーズナブルであるが(保険適用なので当然ではあるが)、自費でクリニックなどに通ってアナボリックステロイドを処方してもらうには一回に数万円と非常に高額の料金を要求される。正直ぼったくりじゃないかと思える金額だが、なかなか素人でアナボリックステロイドを取り扱える人が少ないので、仕方が無いのだろう。

しかし、アナボリックステロイドを病院などで処方されて使用するのではなく、自分一人で使うのは何も違法でもなければ、法的に問題はなにもない。とはいえ、一般的に副作用と競技上における不公平感あるいはモラルに重点が置かれる議論がされるのは当然であろう。実際、日本人でもオリンピック競技をはじめとして様々なスポーツ競技ではアナボリックステロイドの使用は禁止されている。しかし、その一方、(ボクシング以外の)格闘技やプロレスなどでは普通に使用されているのが現状だ。

逆に言うと、アナボリックステロイドは使うものと使わないものでは歴然の差が出るということが事実であるということもいえるだろう。副作用と公平性の裏返しとしてアナボリックステロイドには絶大な効果があるということは万人が認めるところである。こうした中、現在さまざまなサプリメントが氾濫している。これはひとえに、速く筋肉を大きく、強くしたいというニーズに対してメーカーが次々に新商品を出している結果だ。プロテインはいうに及ばず、アミノ酸、ビタミン剤、クレアチン、HMBなどはいうまでもなく、テストステロン、いわゆる男性ホルモンを補充するあるいは促進する効果を持つというようなサプリメントも数多く販売されている。しかし、これらが果たして費用に見合う効果を出しているのかというと疑問を抱かざるを得ない。

ボディビルダーの世界ではプロやアマチュアが短期的に4~5㎏ぐらいの筋肉量を増強するということがママ見受けられる。確かに、プロのボディビルダーがその素質や最高のトレーニング環境がそれを実現することを可能にしているという面はあるだろう。しかし、アマチュアの選手が、どうやってそれぐらいの筋肉量を増やしているのかと問うと、答えはずばりアナボリックステロイドの使用、としかかんがえにくいのが事実だろう。いや、アナボリックステロイドだけではなく、成長ホルモン、IGF-I、インシュリンをアナボリックステロイドと併用して、しかもそれをサイクルを組み通年を通して使用することでその驚異的な成長を遂げているのだ。

そこで、一般のトレーナーが短期間で効果的に、筋肉量を増やす方法の一つとしてアナボリックステロイドの使用が検討されるが、ただ先述したようにアナボリックステロイドはサプリメントではなく、副作用があり、危険性がある。そこで、本記事ではいかにアナボリックステロイドを効果的に安全に使えばいいのかについて解説していきたい。

アナボリックステロイドとは?

アナボリックステロイドとは、いわゆる総称であり、アナボリックステロイドという名称の薬があるわけではない。アナボリックステロイドの中には何十種類ものステロイド剤がある。ステロイド剤というと、一般的にはアトピーや喘息、皮膚炎などをなおす治療薬である副腎皮質ホルモンを想像する方が多いだろう。こちらも作用が強く、副作用も強いことで有名だ。ただし、こちらのステロイドはアナボリックステロイドとは反対の作用を起こすタンパク質の異化作用を起こすコルチゾールである。アナボリックステロイドとは、主にテストステロンやタンパク質合成ホルモンを指し示し、蛋白質の同化を促す作用を示すステロイド剤のことである。

アナボリックステロイドの歴史

アナボリックステロイドの歴史について簡単に説明すると、1930年代頃から睾丸でで男性ホルモンが製造されていることがはっきりと確認され、人工で合成できるようになった。その後、1950年年代、1960年代に現在有るアナボリックステロイドの殆ど全てが開発されています。逆に言うと、その後新しいアナボリックステロイドというのはあまり作られておらず、古い部類の薬になります。製薬会社としては、もともと怪我や火傷の回復などに使うように作ったようですが、その後副作用の低い様々な新薬が生まれた結果、新しい種類のアナボリックステロイドを作ることがなくなったようです。ちなみに、スポーツ選手の競技能力向上のために使用し始められたのも開発時期とほぼ同タイミングで、1970年代には一般人にも使用する人が現れました。スポーツ選手のアナボリックステロイドの使用問題は最近もつきることはなく、ロシアが2020年東京オリンピックでドーピングによりロシアとしての参加が出来ず、ROCというロシアオリンピック委員会という名目でロシア人がオリンピックに参加したというのは皆さんの記憶にも新しいと思います。しかし、そうした一部の国家を挙げてのアナボリックステロイドの使用はともかくとして、一般人の使用という意味では、効果的な量や副作用を抑える仕方などの知識が普及しておらず、ただ単にアナボリックステロイドの筋肥大、筋力強化の絶大な効果のみが注目され、その結果、ひどい副作用に悩まされ廃人同様になる人も多く出現するようになり、米国ではアナボリックステロイドの使用は禁止されています。

アナボリックステロイドの使用目的

では、そんなアナボリックステロイドをどうしてみんな使おうとするのか?それは圧倒的な筋肉量、筋力アップが期待出来るからです。アナボリックステロイドを使えば、使わない人の数倍は発達します。これは個人差もあるでしょうが、素朴な実感としては筋トレ三年分の結果をアナボリックステロイドを使用すればたったワンサイクル(大体、10週間程度)で得られるというのが一番大きな理由でしょう。ナチュラルではあり得ないスピードで筋肉量、筋力アップが達成でき、トレーニングによる疲労の回復のスピードも格段にアップし、ハードなトレーニングを長時間、高頻度で行うことが可能です。最近の筋トレについてのスポーツ科学の知見で明らかになっているように、筋肥大の方程式は、「トレーニングの強度(重量)✕回数✕セット数」で決まります。つまり、アナボリックステロイドを使用すれば、トレーニングの強度(重量)も格段に上げ、回数も増やせ、セット数も増加させることが出来る上、回復のスピードも速く傷ついた筋繊維が回復する度合いも格段に違うので、指数関数的にナチュラルのトレーニーとは効果が違ってくるわけですね。

たとえば、ハリウッド俳優で元カリフォルニア州の知事でもあるアーノルド・シュワルツェネッガーはダイアナボルという錠剤のステロイドを使っていたことで有名ですが、アーノルド・シュワルツェネッガーの現役時代のトレーニング方法は、1日二回で、各2時間、週に六日行うというダブルスプリットという極めてハードなトレーニングでした。これだけハードなトレーニングは当然ナチュラルでは不可能で、もし仮にアナボリックステロイドなしに行えば、確実に体を壊すか、回復が間に合わず筋肉が痩せ衰えるかしてしまいます。

改めてどれくらいの速度で筋発達するかというと、大まかに言ってナチュラルの2~3倍の程度で発達すると言われています。そして、繰り返しになりますが、筋肥大の方程式は、「トレーニングの強度(重量)✕回数✕セット数」なので、回復と相まってその効果は指数関数的に増えるでしょう。しかし、アナボリックステロイドの使用者達は、後ろめたさかあるいはネガティブなイメージからあまりアナボリックステロイドの体験や効果について語ろうとしません。日本のアスリートで唯一体験を語ったのは、総合格闘技の団体パンクラスの元選手であった舟木選手ぐらいでしょうか。彼は自身の著作の中で、新日本プロレス時代のイギリス修行の際にステロイドを使用したと語っています。イギリスでは殆どの人が使っていたようで、週に1回テストステロンエナンセートを1CC(200mg~250mg)を自ら打ち、2ヶ月間で5㎏ぐらいの増量に成功し、筋力もかなりついたと告白しています。現代のステロイドユーザーから見ると、週にテストステロンエナンセートを200mg~250mgしか使用しないというのは少し物足りなく思えるかもしれませんが、当時のアナボリックステロイドへの理解はその程度だったということでしょう。ちなみに、現代のステロイドユーザーは週にテストステロンエナンセートを1000mgぐらい使用する方も少なくないと思います。

また、舟木氏はアナボリックステロイドを使用している間特に食事に注意を払うことは少なかったようで、むしろかなりいい加減だったと述べており、それでも通常より3倍の効果があったと述べているのが印象的です。きちんとしたタンパク質の補給やサプリメントなどの補給をしていたら、3倍程度では済まない効果が出たのではないかと思います。舟木氏は、このあまりの効果と副作用を逆に心配し、その後使用をやめたといっています。通常の3倍。これは嘘ではありません。私の所感でいえば、10倍といっても過言ではないと思っているくらいです。正直、ナチュラルで筋トレをするのが馬鹿らしく思えるくらいです。

アナボリックステロイドの副作用

アナボリックステロイドが体内に入ると、受容体(レセプター)と反応し、様々な作用が起きます。もちろん、筋肉にもありますが、脳にも細胞にもあります。よくアナボリックステロイドにより攻撃的になると言われることがありますが、これは科学的に証明はされていないものの脳のレセプターと結合した結果で起こりうる可能性は否定できないかもしれません。ただ、私自身の所感でいえば、特に攻撃性が増すということはなかったと思います。もちろん、個人差はあるのでしょうが。アナボリックステロイドの副作用は、きちんとした対応をすればほぼ防げるものばかりですが、具体的に列挙すると、肝機能の低下、腎臓障害、心臓疾患、高血圧、肝臓や前立腺のガン、ニキビ、性欲の昂進あるいは減退、不眠、脱毛、女性乳房化、精神障害(うつ)などがあり、これだけ聞くと、これでもかというぐらい副作用が上げられます。

このような副作用の作用は強いアナボリックステロイドを使えば使うほど顕著になるといわれています。たとえば、強力な部類に入るテストステロンエナンセートやアナドロールなどが上げられるでしょう。あるボディビルダーは「アナドール一錠飲んで正常でいられる人がいあたら教えて欲しい」といっているほどで、このアナドロールは副作用の割に効果が無いとして最近のステロイドユーザーはあまり用いていないと思います。このように多くの副作用があるのは事実ですが、適切な副作用対策をすれば、気になるのは、ニキビ、はげ、女性乳房化ぐらいでしょう。原因としてかんがえられるのはDHTとアロマタイズです。

DHTというのはジビドロテストステロンのことで、これは体内に入ったテストステロンが変換されて出来る物質です。テストステロンよりも10倍男性化作用が強く、これにより、にきび、はげ、前立腺癌、前立腺肥大などを引き起こします。これを防ぐにはProscarという薬剤を服用すれば、変換率を大きく減少あせることができます。

アロマタイズとは、体内にテストステロンが過剰になると、その拮抗作用として女性ホルモンに変換されることで問題が生じます。男性ホルモンと女性ホルモンは化学的に非常に似ているのです。女性ホルモンが増えれば、水分、脂肪が体に蓄積されるだけではなく、乳房も膨らんできます。初期の段階ならば、ノルバテクス(抗エストロゲン剤)の服用で回避できますが、放置していくと外科手術でしか対応しようがなく、これはもっとも避けたい副作用の一つでしょう。

以上、簡単ではありますが、副作用とその主な原因を述べましたが、これは全ての人間が同じ副作用を経験するというわけではなく、またあったとしても程度の千差万別です。これは、その人の本来のホルモンの状態や体質に起因し、個体差が生じてしまうわけです。

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