瞑想で脳の疲れをリフレッシュ

何もしていないはずなのに疲れている。十分に眠っているのに集中できない。そんな悩みを持つ方も多いかと思います。こうした原因は、ともすれば体の疲れだと考えられがちです。しかし、最近の研究によって脳の疲れも重要な要因であることが分かってきました。

仕事や家事など何かに集中するわけではなく、ただぼんやりとしている。そんなときの脳は、おそらく休息をしているのだろうと考えられてきました。しかし、最近の脳科学の研究によって「ボッーっとしているだけでは脳は休まらない」ということが明らかになってきました。その原因を作っているのが、内側前頭前野(ないそくぜんとうぜんや)や楔前部(けつぜんぶ)を始め、複数の脳領域で構成されている「デフォルト・モード・ネットワーク(以下DMN)」と呼ばれる脳の回路です。脳は、全身が必要とするエネルギーの約20%を消費すると言われています。このうちの60-80%ほどがDMNに使われています。

このネットワークは脳が意識的な活動をしていないときでも活発に働き続けています。車のアイドリングのように、何も起動していないようでいて、いつでも動けるように待機しているというイメージに近いかも知れません。そのため、何も考えずボーッとして脳を休ませているつもりでも常にエネルギーは消費されています。知らず知らずのうちに雑念が浮かんでは来て、それに伴って疲労が蓄積していくのです。

それでは、脳の疲れを解消すべく休息を取るには、一体どうすれば良いのでしょうか。効果的なのは、脳のエネルギーを大量に消費するDMNの活動を抑制することです。そのためには、思考や認知といった知的活動のまとめ役を担う前頭野の「dIPFC(背外側前頭前野)」へのアプローチがカギとなります。大脳の司令塔ともいえるこの部位が活性化するとDMNの働きが抑制され脳をいわゆる省エネモードにできるということが分かったのです。

それでは、この脳を省エネモードにするためにdIPFCを活性化させたいのであればどうすればいいのか。それに有効な1つの方法が瞑想です。カーネギーメロン大学のデイビット・クレスウェル准教授の実験で三日間瞑想を実践しながら過ごした被験者が、2週間後にはdIPFCが活性化したという結果が出ました。それに伴い、DMNの活動と脳の疲れもコントロールされたのです。

さらにハーバード大学のサラ・レイザー博士によると瞑想を8週間行った後、脳の海馬にあった灰白質を調べたところ、約5%の密度増大が見られました。瞑想をしていると、海馬にある記憶の中の情報は必要がないので、海馬が記憶を整理し始めます。その結果、海馬は疲労回復します。海馬が疲労回復することで密度増大した灰白質は、感情のコントロールを司る部位。つまり、感情に振り回されることによる疲労も緩和できるように改善されたわけです。

脳には、よく使われる回路の効率を高める可塑性という性質があります。そのため、瞑想を続けるほどに疲れにくい性質が定着し、その場限りではなく、疲れに負けない脳へと進化させることができるわけです。

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【監修者】宮川涼
プロフィール早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。

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