憲法5 人権総論(3)外国人の人権(2)、法人の人権

01 外国人の人権(個別的検討)

(1) 入国・出国の自由

判例は、外国人の入国の自由を否定しています。最判昭32年12月25日(外国人の出国の自由)において、憲法22条2項「何人も、外国の移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない」とあるが、「ここにいう外国移住の自由は、その権利の性質上外国人に限って保障しないという理由はない。」とする一方、「出国それ自体を法律上制限するものではなく」と認めたものの「出入国の公正な管理を行うという目的を達成する公共の福祉のため設けられたものであって、合憲性を有する」とされた。従って、判例・通説は、入国の自由は否定しています。理由は、国際慣習法上、入国の認否は国家の自由裁量(最判S32.6.19)であるとし、出国の自由は肯定しています(理由は、生活の本拠は他国にあるため。本件事例を具体的に見てみましょう。

事例)外国人のXは、(当時の)外国人登録法によって義務付けられていた指紋の押なつを拒否して、罰金1万円に処せられた。そしてこれを理由として、韓国に旅行して再入国する許可申請が拒否された。そこで、Xは、国を相手に争い「申請拒否は違憲である」と主張した。

ここでいう再入国の自由とは「日本に再度入国する意思を持って出国する」際に問題となるものをいいます。再入国できないなら、一時出国もできなくなるため問題となりました。

再入国の場合、その人物の人格行動は日本国にとって既知の事項であり、単なる入国とは異なるから、保障されると考えるべきではないか?と問題にされますが、結論としては上述したとおり、再入国の自由は憲法上保障されない(最判H4.11.16「森川キャサリーン事件」)とされました。反対説としては、生活の本拠が日本国内にあれば許可する必要があるから、保障されると考えるべきと考えますが、しかし、国際慣習法上、入国の許否は国家の自由裁量であるから、別異に考えることはできないとし、判例では日本に在留する外国人は憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されていないとされました。

森川キャサリーン事件:最判平4年11月16日

アメリカ国籍を有するXは、日本人と結婚して生活の本拠を日本においていた。Xは韓国に旅行するため、再入国許可の申請を行ったが、申請に際して指紋押なつを拒否したため、法務大臣に再入国を不許可とされた事件。
「わが国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されているものではない。」

02 法人の人権

法人とは、自然人以外のもので、法律上の権利義務の主体とされているものをいいます。人権は本来、自然人のみが享有主体であると考えられてきました。しかし、社会経済の発展と共に、法人の重要性が増し、これとともに、法人にも、一定の範囲の人権については保障されると考えられるようになってきています。具体例としては、営利社団法人、財団法人、一般法人、地方公共団体、労働組合、弁護士会 等。以下にまとめます。

法人に保障される人権法人に保証されない人権
・財産権、営業の自由

・居住・移転の自由

・裁判を受ける権利(32条)

・国家賠償請求権

・刑事手続き上の諸権利(31条)

・人身の自由(33条)

・生存権

・選挙権、被選挙権

 

法人に保障されるか争いがある人権
・生命・自由・幸福追求権(13条)

・精神的自由権

では、事例を見てみましょう。

事例)M税理士会は、特別会費を徴収し、税理士法改正のための政治資金として税理士政治連盟に寄付をした。しかし、当該税理士会所属の税理士であるXは、特別会費を徴収されたことに不満を持ち、税理士会を相手に争い、「税理士会に政治活動の自由はない。特別会費の徴収は違憲無効である」と主張した。

①税理士会の権利が問題

→法人にも「人権」があるのか?

②政治連盟への寄付

→政治活動の自由についてはどうか?

③税理士(個人)と、税理士会(法人)

→人権を主張する相手が国家でない場合どうか?

これについて、法人は、自然人とは異なる、法人に人権享有主体性が認められるのか、論点となります。法人たる税理士会としては、政治活動の自由があると反論することが考えられます。結論としては、性質上可能な限り、法人にも保障されるが、自然人の人権を不当に制限するものであってはならないと考えます。したがって、法人も、自然人と同様に活動する社会的実体だから、保障されるべきであると考えます。

法人の人権享有主体性の肯否については最大判昭和45年6月24日(八幡製鉄事件)が有名です。Y製鉄会社の代表取締役Aらが、自由民主党に政治資金350万円を寄付した。そこで、Y社の株主であるXが、Y社の定款所定の事業目的には政治活動をすることは含まれないから、本件寄付はY社の権利能力の範囲外であると主張した事案。

判例では、「会社は定款に定められた目的の範囲内において権利能力を有するわけであるが、目的の範囲内の行為とは、定款に明示された目的自体に限局されるものではなく、その目的を遂行するうえに直接または間接に必要な行為であれば、すべてこれに包含される」とし、定款所定の目的を広く解した上、会社が政党に政治資金を寄附する場合においても、政党の健全な発展に協力することは、会社に対しても、社会的実在としての当然の行為として期待されるところであり、協力の一態様として政治資金の寄附についても同様だとして、「会社にそのような政治資金の寄附をする能力がないとはいえない」と結論づけた。

次に、法人に保障される人権の限界について見てみましょう。法人の人権享有主体性については、性質上可能な限り認められるべきものは保障されるとされますが、自然人の人権を不当に制限するものであってはならないと考えます。そこで、視点としては、法人とその外部との関係や法人とその内部(構成員)との関係が論点となります。

この場合、「不当に制限する」とは、どのように制限することをいうのか。このように抽象性の高い判断基準を、「一次規範」と呼びます。その上で、より具体的なものとして、二次規範として、当該法人が教制加入団体か否か、当該法人は公的性格が強いものか否か、問題となる人権の性質等を総合的に考慮して決します(私人間適用)。

最判平成8年3月19日(南九州税理士会事件)があります。税理士は、税理士法により、当該管轄の税理士会に加入しなければならないとされている(強制加入)。そして、M税理士会が、税理士法改正のための政治資金として税理士政治連盟に寄付するため、所属会員から特別会費を徴収しようとしたが、Xがこれを拒否した事件。

会社における目的の範囲内の行為とは、定款に明示された目的自体に限局されるものではなく、直接又は間接に必要な行為であれば含まれるとしたが、税理士会は、税理士に対する指導・監督に関する事務を行うことを目的として、法律によって設立が義務付けられたものであることや、税理士会が強制加入団体であることなどから、税理士会は、会社とはその法的性格を異にする法人であるとして、「税理士会が…政治団体に対して金員の寄付をすることは、たとい税理士に係る法令の制定改廃に関する要求を実現するためであっても」「これらの団体に金員の寄付をすることは、選挙においてどの政党又はどの候補者を支持するかに密接につながる問題だから」、「選挙における投票の自由と表裏を成すものとして、会員各人が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断等に基づいて自主的に決定すべき事柄である」として、当該寄付は「税理士会の目的の範囲外の行為といわざるを得ない。」とした。

法人にも「人権」があるのか?という論点については、自然人の人権を不当に制限するものであってはならないと考え、具体的に政治活動の自由については、強制加入団体か否かなどの要素を総合考慮します。相手が国家でない場合は、私人間適用として緩やかに判断すると考えます。私人間効力についてはこの後の記事で解説します。

この種の事案として、最判昭和50年11月28日(国労広島地本事件)があります。

労働組合Xは、脱退した元組合員Yらに対して、未払いの一般組合費及び臨時組合費の支払いを求めた。臨時組合費は①炭労資金、②安保資金、③政治意識昂揚資金、等という内訳であったが、組合員がこれらの臨時組合費の納付義務を負うかが争われた事件。

労働組合員が組合に対して負う組合費納入義務等の協力義務は、労働者の労働条件の維持改善その他経済的地位の向上という組合の目的達成のために必要な範囲に限られるとし、組合の政治的・社会的活動については、当該活動の内容・性質、組合員に求められる協力の内容・程度・態様等を比較考量し、多数決原理に基づく組合活動の実効性と組合員個人の基本的利益の調和という観点から、組合の統制力と組合員の協力義務の範囲に合理的な限定を加えることが必要であるとした。そして、①についてはX組合自身の闘争の効果的な遂行に資するとして組合員(Yら)の協力義務を肯定し、②についてはいわゆる安保反対闘争に参加して処分を受けた組合員を救援するための資金であるとして組合員の協力義務を肯定した。ただし、③については、総選挙に際し特定の立候補者支援のためにその所属政党に寄付する資金であるから、組合員に対してこれへの協力を強制することは許されないとして、組合員の協力義務を否定した。

憲法6 人権総論(4)天皇の人権、公務員の人権

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