西洋政治思想史(13)

Max Weber 1864-1920

Carl Schmitt 1888-1985
Ⅰ 彼らの時代:帝政ドイツ(1871-1918)とワイマール共和国(1919-1933)
議会主義の無力:その帝政ドイツ的意味:宰相ビスマルク
そのワイマール的意味:多党乱立
Ⅱ引き裂かれた政治理論家 マックス・ウェーバー
・比較宗教社会学:西欧近代に固有な「合理性」(世俗内禁欲と生活エートス)
・経済と社会における支配の社会学
ウェーバー解釈の難点
「合理性」への信念(世界の脱魔術化、官僚制)と
非合理性(指導者民主主義Führerdemokratie)への飛躍
(W.モムゼン:「形式的合理性のカリスマによる補完」)
→ 社会科学者ウェーバーとナショナリストとしてのウェーバー
ウエーバーの社会科学方法論的考察
「____Idealtypus」と「_____Wertfreiheit」
参照:正統性根拠の三類型としての合法的支配/伝統的支配/カリスマ的支配
政治に固有の手段:物理的強制力
国家:「国家とはある特定の地域内部で、正当な物理的強制力の独占を要求する(そしてそれが成功した)
人間共同体である。」
政治:「国家間であろうが一国家内において、国家の包容する人間集団相互の間であろうが、権力の分け前
にあずかろうとする努力であり、あるいは権力の分配を左右しようとする努力である。」
権力:「ある社会関係の中で、抵抗を排除してまで自己の意志を貫徹させる可能性」

Ⅲカール・シュミットの魔性の政治学
ヤヌスとしてのシュミット: 天才か、二〇世紀全体主義のイデオローグか
シュミットの反自由主義
*公開制と討議に基礎をおく議会制(=自由主義)の否定と、直接的な民主主義の表現としての______
(Akklamation)
*技術という巨大な手段を使いこなせない自由主義的中性国家と「全生活領域を政治化する」全体国家
『政治的ロマン主義』
近代的主体‥‥自由主義とロマン主義の同根性(人間性の善)
ロマン主義の本質=主観化された______論(Occasionalismus)(21 頁)
政治の美学化批判:「政治的活動がはじまるところで、政治的ロマン主義は終わる」。(193 頁)
→ それでは「真の」、「純然たる」政治的なものとは何か?
『政治神学』
「近代国家の重要概念はすべて世俗化された神学概念である。」(49 頁)
→ 神学における「奇跡」の役割を担う「例外状況」の政治学
戦争という「例外状況」に政治の本質が露呈する。
『政治的なものの概念』
「真の政治理論とは、すべて、人間を『悪なるもの』と前提する。すなわち、問題をはら
まぬものとしてでは決してなく、《危険な》かつ動的な存在としてみなすものである。」
(74 頁)‥‥‥「《万人の万人にたいする闘争》こそ‥‥‥政治的な思想体系の基本前提で
政治 友 敵
道徳 善 悪
美学 美 醜
経済 利 害
ある。」(80-1 頁)しかるに自由主義は闘争を経済面での競争に、精神面での討議に、国家を社会に移し変え、人類
というイデオロギーのもとに闘争に目を向けない。(91 頁)
政治的なものの指標: 友と敵の区別 (政治的なものの事実性、独立性、自律性)
政治の本質にある戦争
「戦争というものは、敬虔なもの(宗教的なもの)でも、道徳的価値のあるものでも、採算のとれるものである必
要もない。」(31 頁)こうしたことの証左は、国家にのみ「交戦権」という途方もない権能が与えられていることに
現れている。(48 頁)
友と敵の区別のできない「いくじのない国民」は「この地上から消え去るのみ」である。(61 頁)
Ⅳ ウェーバーとシュミット
政治への視点
W:手段としての権力に注目したコンフリクト
S:権力の前提となる根源的決断(友敵の区別)に注目したコンフリクト
状況認識
W:ブルジョア、プロレタリアートともに無能・未成熟。あらゆるものを包摂する「人間機械」としての国
家・官僚制
S:議会主義=自由主義の無能。他方で技術という巨大な手段の成立
処方箋
W:官僚機械を持つ「指導者民主主義」
S:人民の認可を受けた大統領独裁と歓呼賛同という直接的な民主主義の表現
政治・決断主体
W:自律した個人
S:全体国家の主権者(個々の民衆は能力も権能もない。戦場で個々の兵士が「敵」を判断するのではない。)
Ⅴ ウェーバーのジレンマ: 責任倫理と心情倫理
政治家の「資質」

  1. 情熱‥‥「ザッヘ」への情熱的献身 ←→「知的道化師のロマンティシズム」
  2. 責任感
  3. 判断力
    責任倫理と心情倫理
    ・心情倫理:悪に対して力をもって抵抗しない。右の頬に左の頬。
    ・責任倫理:汝は悪に対して抵抗しなければならない。そうでなければ汝は悪の蔓延に対して責任を負う。
    不明瞭なウェーバー:「心情倫理」と「責任倫理」の区別? その一致可能性? 結果責任はどこまで及ぶ?
    参考文献*
    マックス・ウェーバー『社会科学と社会政策にかかわる認識の<客観性>』、岩波文庫
    『職業としての学問』、岩波文庫
    『社会学の根本概念』、岩波文庫
    『職業としての政治』、岩波文庫
    『権力と支配』講談社学術文庫
    カール・シュミット『政治的ロマン主義』(1919)、みすず書房
    『政治神学』(1922)、未來社
    『現代議会主義の精神史的地位』(1923)、みすず書房
    「中世化と非政治化の時代」(1929)(『合法性と正当性』、未來社所収)
    『政治的なものの概念』(1927,1932)、未來社
    ヴォルフガングJ.モムゼン『マックス・ヴェーバーとドイツ政治1890-1920』、未來社
    仲正昌樹『カール・シュミット入門講義』、作品社
    長尾龍一『リヴァイアサン─近代国家の思想と歴史』、講談社学術文庫
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【監修者】宮川涼
プロフィール早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。

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