ヨガと呼吸
呼吸へ意識を向けることがヨガではとても大切です。なぜ、ヨガ(YOGA)には呼吸が大切なのでしょうか。
01 呼吸はヨガのポーズを促して瞑想へはいるためのツール
呼吸は、息を吸うことによって新しい酸素を取り込んで、息を吐くことで二酸化炭素を身体から出す動きです。
ただ、ヨガでは呼吸がポーズをより深めるための重要なツールでもあり、逆に、ポーズ(体の動き)がリラックスした呼吸を行うための助けにもなる関係にあります。例えば、前屈をするとより多く息が吐けるようになります。ポーズをするときに呼吸を忘れないように、とインストラクターに声を掛けられることも多いと思いますが、ヨガのポーズは呼吸に合わせてうごいていくもの、というほど、呼吸とポーズが切っても切り離せない関係にあるのです。
日常生活の呼吸は無意識に行っていますが、ヨガでは常に意識的に呼吸を行います。ここがストレッチとヨガの一番大きな違いでしょう。ヨガでは息をするたびに、集中が高まり、調気されていくと考えられています(調気:体中にエネルギーが満ちるように整えること)。実は、ヨガではこの集中と調気が高まると深い瞑想に入ることができると考えられており、ヨガの最終目標は集中と調気が高まった状態に入る事。呼吸法は深い瞑想のためにあるのです。
02 ヨガにおける呼吸がもたらすもの
呼吸が我々のカラダにもたらすものは、ポーズの深まりだけではありません。心身へ大きな働きかけがあるのです。
(1)心の働きをコントロールする
呼吸と心の動きは連動していると聞いたことがある方もいらっしゃると思います。興奮したり頭に血が上ったりすると呼吸は浅く早くなり、リラックスした状態のときには、ゆったりとした深い呼吸になります。ヨガでは逆に、呼吸を整えれば心にアプローチできると考えます。呼吸は心を落ち着かせるために有効で、呼吸を意識的にゆっくりと行うことで、心を静かに落ち着かせることができるのです。静かな心であると言うことは、内面と向き合うときに必要な状態で、呼吸はその準備をしてくれるのです。
(2)自律神経へのアプローチ
息を吸うときは交感神経が優位になって、心が活性化(興奮)され、息を吐くと副交感神経が優位になって心が静かに(リラックス)なります。呼吸は心の活性と鎮静を交互に表出させてバランスをとるツールにもなっています。
03 プラーナ(エネルギー)について
(1)呼吸とプラーナ
モノが移動する。熱を上げる。明かりがつく、モノを運ぶ。人間が外出する、食事をする。会話をする。これら変化のすべてがエネルギーが流れることで初めてでき、このエネルギーのことをヨガでは「プラーナ」といいます。
私たちの肉体という入れ物にプラーナが流れてはじめて私たちはいろいろなことができると考えます。じっとしている時でも内臓は動き、血液は流れ、汗をかいたり呼吸をしたりしますが、これもプラーナの現象でできていると考えます。ヨガではこのプラーナを呼吸でコントロールできると考えます。その実践をプラーナーヤーマ(調気法)と呼び、その中で最も代表的なものが呼吸法です。
万物が常に変化しているように、プラーナも動くことで、濁らずに正常な状態を保つことができ、また適切に働くことができるとヨガでは考えます。すべてのプラーナが正常に働いていれば私たちの心身は健康でいられるため、プラーナの状態は重要です。ヨガはそのための調整法なのです。
プラーナが整えば、呼吸もバランスがよくなり、発生や血液循環、消化、排せつなども同様に整って、カラダが健やかに機能します。体が整うと心も整い、全体として健康が保てるのです。
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【監修者】 | 宮川涼 |
プロフィール | 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。 |