前蹴りの打ち方
前蹴りについて解説します。流派によって空手でも色々違いはありますが、私はざっくり空手式の前蹴りとキックボクシング式の前蹴りを使い分けています。そもそも、前蹴りとは、相手に正対して前方に真っ直ぐにおこなうフロントキックのこと。そのシンプルさから、空手、日本拳法、中国拳法、少林寺拳法、テコンドー、ムエタイ・キックボクシング、サバット、柔術など、足技を使う大半の格闘技で多用されています。 相手に正対した姿勢から技を繰り出すため、突き(パンチ)技等の手技と連携がしやすいのが特徴です。また、直線的軌道を描く蹴りのため、回し蹴り等の曲線軌道の蹴り技に比べて最短距離に近い軌道で迅速に技を放てるという利点があります。
01 空手式の前蹴り
まず、空手式の前蹴りですが、少し古い話になりますが総合格闘技におけるUFCでリョートマチダがビクトーベイフォートをKOしたときの中足を相手の顎へ向かって蹴り上げる蹴りを行います。この前蹴りは、ちょうどガードの間を抜けて顎に当たることがあるので、リョートマチダがビクトーベイフォートと殆ど見合っていた途中で一発で前蹴りを顎に当ててKOしたようにガードの間をすり抜けて顎を蹴ります。
蹴り方としては、膝を上げて(折りたたんで)、その後上へ向かってすねを蹴り上げるように蹴ることで蹴ります。もちろん、空手でも後述するようなキックボクシング式の突き刺すように蹴る蹴り方もありますが、それはキックボクシング式の蹴りと使い分ければ問題ないと思います。
空手式の前蹴りのポイントは、蹴る前の膝を上げてからスネを蹴り上げるのでどうしても膝を上げた瞬間にガードされる、バックステップされてしまうので、出来れば膝を上げるのとスネを上げるのをスムーズに、ほぼ同時に蹴り上げるのがBESTです。
02 キックボクシング式の前蹴り
さて、次にこちらの方が総合格闘技でよく使われる前蹴りですが、これは膝を空手式よりもより高くあげてからスネから先を相手の腹部へ向けてスナップをきかせながら突き刺すように蹴ります。これがキックボクシング式の前蹴りです。
こちらも蹴り方としては、突き刺すようにしっかりとスナップを効かせて蹴る蹴り方が基本ですが、総合格闘技などでは相手との距離を取るために相手を若干押すように蹴る蹴り方の方がよく使われます。いわゆるストッピングとしての前蹴りですね。後ろ足で蹴るのでは無くスイッチせず前足で蹴りましょう。また、その際、重心は若干後ろに傾けて、蹴る側の足と同じ手を前に出してガードしましょう。
この相手を押すような前蹴りはブロックとしても有効で、相手がパンチを打ってくるあるいは距離を詰めて迫ってくるタイミングに前蹴りを突き刺すように蹴りつつ若干相手を押すように蹴ると相手を突き放せます。もちろん、無理に押すこともなく、本来の目的として相手をストップさせられれば良いので、相手の前進を止めるように足を前に突き立てて抑えるだけでもOKです。イメージとしては、パンチのジャブのように使います。
スピーディーにポンポンと連続で出して蹴ると、相手は嫌がるものです。前蹴りで仕留めようとするのではなく、自分の距離やペースを掴むために上手に前蹴りを使いこなしましょう。
また、仮に腹部、とりわけみぞおちにヒットした場合は、それはそれでそれなりのダメージになり、ガード&ブロックと相手との距離を保ちながら蹴れるので、リスクが低く、安心です。もちろん、みぞおちを突き刺したいという気持ちも分からないこともないのですが、正直前蹴りで仕留めるのは難しいと思うので、ガード&ブロックと相手の距離をとれるリラックスし相手の突進をストップさせるような前蹴り、さらに出来れば突き刺すように相手を少し押してあげるとより相手を突き放せて効果的です。
威力よりは牽制での意味合いが強いと思いなるべく重心は残し相手の腹筋や太ももの辺りが基本的な使い方になりますが、あまり乱発すると相手に覚えられ払われてしまう恐れがあるので、空手式の前蹴りなどと組み合わせて相手を攪乱すると良いでしょう。
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【監修者】 | 宮川涼 |
プロフィール | 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。 |