適度な運動と免疫力
免疫とは、体内で発生したガン細胞や外から侵入した細菌やウイルスなどを監視し、撃退する自己防衛システムのことです。今問題になっている新型コロナウイルスや風邪などの病原菌等から我々の体を守ってくれます。
しかし、免疫はウイルスが体内に入らないように水際で防ぐ役割は担ってくれません。あくまでも既に体内に侵入してしまったウイルスを体から追い出す役割を担うのが免疫です。なので、たとえば新型コロナウイルスに罹患しても、免疫力が強いと症状が出ないままウイルスを追い出し、症状が出ても軽症で済んだりするわけです。
免疫システムは、おおよそ15歳までに出来上がります。そして、20歳をピークにだんだんと免疫力は落ちていきます。40歳代でピーク時の50%、 70歳代で10%台まで低下する人もいます。
免疫力が下がると、
■ウィルス・感染症などにかかりやすくなる
■肌が荒れる
■アレルギー症状(花粉症・アトピーなど)が生じやすくなる
■下痢をしやすくなる
■疲れやすくなる
といった症状が発生してきます。若い頃は、花粉症なんてかからなかったのに、40代ぐらいになって急に花粉症になったという話などを聞くことがあるかもしれませんが、これは加齢による免疫力の低下が主な原因なんです。
新型コロナウイルスに罹患したくない!というのは誰しも同じだと思いますし、風邪を引きやすくなったり、肌が荒れたり、疲れやすくなるのも誰も望まないでしょう。
それでは、どうしたら免疫力を高めていくことができるのでしょうか?答えは1時間程度の軽い運動をすることです。
「1時間以内の比較的短時間の運動では、運動強度に依存してリンパ球、特にナチュラルキラー(NK)細胞が増加するほか、好中球、単球、好酸球も一過性に軽度増加する」
鈴木克彦「運動と免疫」(2004)
ことがはっきりと報告されています。また、
「体温が上がると免疫力は高まり、下がると低下する」
医療法人社団小白川至誠堂病院
というのは、医師の間の共通認識です。つまり、免疫力を上げるには、運動をして体温を上げることが、その一番手軽な方法なんです。
体温を上げることが何故免疫力UPに繋がるのか。実は、免疫細胞は血液の中にいます。なので、体温が下がり、血行が悪くなると、体内に異物を発見しても素早く攻撃をすることができなくなってしまいます。
一般的に、免疫力が正常に保たれる体温は36.5℃程度といわれています。それに対して、もし体温が1℃下がると30%低下し、逆に1℃上がると一時的には最大5~6倍アップするともいわれ、体温を上げることが非常に重要です。
現代人は低体温傾向にあると言われています。 エアコンによる空気の乾燥や冷やしすぎ、温めすぎによる外気との寒暖差。外気温と室内の温度の差が出てしまうと、急激な温度変化による体温調節に身体がついていけなくなり、免疫力が低下してしまいます。
室内と外での寒暖差で身体がショックを受けないよう、寒暖差に慣れさせるため交感神経が稼働するのですが、この寒暖差が大きいとそれだけ交感神経がたくさん働かなければならなくなるため、身体や脳が疲れてしまい結果として免疫力が低下してしまいます。
また、働く環境もデスクワークやテレワーク中心となってきており、その結果、慢性的な運動不足が生じ、低体温を招く結果となっています。
そのために必要なのが適度な運動です。ここで「適度な」といったのは、激しい運動をすると逆に免疫力が下がってしまいます。原因としては免疫細胞は酸性の疲労物質である乳酸にとても弱く、免疫力が落ちてしまうからです。
ではどういったものが激しい運動かというと、マラソンやトライアスロンなどの過酷な持久性運動が上げられます。実際、これらの激しい運動を行うと、運動終了後二週間で50~70%の人が風邪と同じような症状を呈し、そのリスクは通常の2~6倍になるとも報告されています。
そこでオススメなのが、ヨガやピラティス、ボクササイズなどの適度な有酸素運動や軽い筋力トレーニングです。
適度な有酸素運動にはストレスを和らげてくれるセロトニンが分泌され運動後のリラックス効果を向上させます。ヨガやピラティスは、副交感神経が優位になるようなリラックス効果があるエクササイズであり、体温の上昇にも繋がります。
また、ボクササイズなど、重たすぎるダンベルやバーベルを使わないで自重と呼ばれる自分の体を使った筋力トレーニングをすると、基礎代謝を向上させ、余分な水分も排出されやすくなります。
体中の筋肉を動かすと体温が上がり、血行が良くなることで全身に酸素や栄養が行き届くようになります。さらに、運動によって溜まった疲労を解消するために、筋肉に血液が送り込まれるよう。この働きによってますます代謝がアップし、若々しく健康的で免疫力UPに繋がるのです。
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【監修者】 | 宮川涼 |
プロフィール | 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。 |