リストラティブヨガ (Restorative Yoga) について
1. リストラティブヨガの概要
リストラティブヨガ(Restorative Yoga)は、身体と心を深くリラックスさせ、回復(Restore)させることを主目的としたヨガのスタイルです。積極的に筋力を使ってポーズを保持するのではなく、プロップス(ボルスター、ブランケット、ブロック、ベルトなどの補助道具)をふんだんに使用し、身体をしっかりとサポートしながら長時間ポーズを維持するのが大きな特徴です。
リストラティブヨガが広く認知されるようになったのは、アイアンガーヨガの指導者であるジュディス・ハンソン・ラサター(Judith Hanson Lasater)が考案・普及したことがきっかけとされています。彼女はB.K.S.アイアンガーから学んだ「プロップスを用いたリラクゼーション法」をさらに発展・体系化し、ストレス社会に適応するヒーリングヨガとして世界中に広めました。
2. リストラティブヨガの特徴
2-1. 徹底したサポートで「身体を委ねる」感覚を追求
リストラティブヨガのクラスでは、ポーズを取る際にボルスター(大きなクッション)やブランケットを駆使して身体を支え、余計な筋力をできるだけ使わないようにします。必要なら頭や腕、足などあらゆる部分に補助道具を配置し、痛みや緊張が生じないポジションを作っていきます。
身体の重みを道具や床に委ねる
筋肉の力を緩め、身体が地球の重力へ安心して「降りていく」イメージを大切にします。心身の安全を最優先
痛みや違和感があれば、すぐにプロップスの位置や高さを調整して微調整を行います。身体が安心感を覚えることで初めて深いリラクゼーションが得られるからです。
2-2. ポーズ保持時間が長い
1つのポーズを5分~20分程度キープすることが多く、通常のハタヨガのように頻繁にポーズを切り替えません。時間をたっぷりかけて身体を休めることで、副交感神経が優位になり、自律神経を整える効果が期待されます。ポーズ数自体は少なめで、1時間~1時間半のクラスで4~6ポーズ程度しか行わない場合もありますが、その分、一つひとつのポーズで深い休息に浸ることができるのです。
2-3. 深いリラクゼーションとストレス緩和
リストラティブヨガは、心身ともにリラックスを深めることを最優先に設計されています。レッスン中の音声ガイドも静かで穏やかなトーンで行われることが多く、ホワイトノイズやヒーリング音楽などが流されることも一般的です。深いリラクゼーション状態では、血圧や心拍数が下がり、筋肉の緊張や精神的ストレスがほぐれていきます。
神経系の回復
長時間の静的リラクゼーションが続くと、交感神経の過剰な活動が鎮まり、副交感神経が高まりやすくなるため、イライラや不安、疲労感が和らぎやすいとされています。ホルモンバランスや免疫機能への好影響
リラクゼーションによりストレスホルモン(コルチゾールなど)の分泌が減少し、免疫機能がサポートされる可能性も示唆されています。
3. リストラティブヨガの主な効果
3-1. ストレス・不安の軽減
適切なプロップスにより身体を完全にサポートすると、「安心感」「守られている感覚」が生まれやすくなります。こうした感情は、ストレスや不安を和らげる重要なファクターであり、慢性ストレスの軽減に大きく寄与すると言われます。
3-2. 睡眠の質の改善
疲労感やストレスが原因で睡眠が浅くなっている人にとって、リストラティブヨガは非常に有効なサポートになり得ます。クラス後に深い眠りにつきやすくなるだけでなく、定期的に行うことで睡眠サイクル全体の改善が期待されます。
3-3. 慢性的な痛みや緊張の緩和
筋肉や関節を積極的に動かすのではなく、サポートによって身体が自然に解放されるのを待つというアプローチは、慢性的な肩こり、腰痛、首の痛みなどに悩む人にも優しい方法です。また、リストラティブヨガは、リハビリやヨガセラピー的な文脈でも取り入れられることが多いほど、身体への負担が少ないのが特徴です。
3-4. 自分自身とのつながりの回復
身体を完全にゆだねて静止状態が続くと、心の内側に意識が向かいやすくなります。呼吸や心拍のリズム、わずかな身体の感覚の変化など、「今ここ」で起きていることを丁寧に感じ取ることで、マインドフルネスの状態にも近づきます。現代社会で消耗しがちな感性や自己認識の力を取り戻すきっかけにもなるでしょう。
4. リストラティブヨガの実践例
リストラティブヨガでは、ポーズの名前や形状はハタヨガのポーズと似ていても、サポートの使い方によって非常に安定した姿勢を作ります。代表的なポーズ例をいくつか挙げてみましょう。
4-1. リストラティブ・バッダコーナーサナ(Bound Angle Pose)
座位で両足裏を合わせる「バッダコーナーサナ(合せきのポーズ)」を、ボルスターを背中側や膝下に配置しながら深いリラクゼーション姿勢へとアレンジする方法です。背中をボルスターに預けて後ろに倒れ込むようにすると、胸が優しく開き、呼吸が深まりやすくなります。
4-2. リストラティブ・スプタヴィラーサナ(Reclined Hero Pose)
足をたたんで正座に似た体勢をとり、背中側にボルスターやブランケットを敷いて上体を仰向けに倒していくポーズ。通常の「スプタヴィラーサナ(仰向けの英雄のポーズ)」は膝や足首に負担がかかりやすいですが、プロップスを使うことで足や腰に負担をかけず、前太もも・股関節・腹部を穏やかに伸ばすことができます。
4-3. リストラティブ・ツイスト(Twist)
仰向けや横向きで行うツイストポーズにボルスターを挟んで、身体が回転しすぎないようサポートします。捻りを深めるのではなく、軽いツイストで背骨を穏やかにリラックスさせるのが狙いです。長時間キープすることで背中や腰まわりのこわばりを解きほぐし、自律神経を安定させやすくなります。
4-4. リストラティブ・シャヴァーサナ(Savasana)
屍のポーズ(シャヴァーサナ)はリストラティブヨガでも重要なポーズの一つです。ボルスターやブランケットをふくらはぎや膝下に配置する、頭を少し高くした姿勢で行うなど、より快適に、そして長時間寝ていられるよう調整を行います。無防備に近い姿勢を取るので、寒さや圧迫を防ぐためにブランケットをかけるなど、環境調整も大切です。
5. リストラティブヨガを行う際のポイント
5-1. 安全で快適な環境づくり
リストラティブヨガは、心身が「安全」「安心」と感じられる環境で行うことが重要です。具体的には以下のような点に配慮すると良いでしょう。
室温や照明
冷えすぎや暑すぎを避け、適度に暖かい状態を保つ。照明は明るすぎない間接照明が好ましい。音の静けさ
できるだけ外部の騒音が少ない場所で行い、ヒーリング音楽や自然音を流す場合もある。衣服
体を締め付けない、柔らかく暖かい服装を選ぶ。靴下やブランケットで寒さ対策を万全にする。
5-2. ポーズ中の微調整を惜しまない
ポーズを取った直後は心地良く感じても、時間が経つにつれて膝や腰などに圧迫感が生じることがあります。そうした場合は、我慢せず、インストラクターや自分自身でプロップスを再調整することが大切です。常に「いまの状態を10段階で表すと、楽さは何点くらい?」と自問しながら、8~9点以上の快適度を目指すのが理想とされています。
5-3. 呼吸と意識の向け方
リストラティブヨガの最中は、呼吸に意識を向けたり、身体の微細な感覚を観察することで、深いリラクゼーションを得やすくなります。特に、腹式呼吸やゆったりとした鼻呼吸を続けると、副交感神経が優位になり、精神的にも穏やかになります。
5-4. 無理に眠らない・眠ってもOK
ポーズ中にリラックスしすぎて居眠りしてしまう方も珍しくありません。もし寝てしまっても問題はありませんが、瞑想的なリラックス状態を意識的に楽しみたい場合は、呼吸や身体感覚への意識をほどよく保つようにしてみましょう。一方で、疲労が強いときには「眠ることが最善の回復手段」という見方もできるため、臨機応変に対応するのがよいでしょう。
6. リストラティブヨガと他のリラクゼーション系ヨガの違い
リストラティブヨガと似たスタイルとして「インヨガ(Yin Yoga)」や「ヨガセラピー」「リラクゼーションヨガ」などがありますが、それぞれの特徴には以下のような差異があります。
リストラティブヨガ
プロップスで身体を完全に支え、極力筋力を使わずに長時間ポーズを保持して深いリラクゼーションを得る。インヨガ(Yin Yoga)
リストラティブヨガと同様にポーズを長時間保持するが、身体の深層部(筋膜や結合組織)に刺激を与えて柔軟性を高める意図が強く、軽い負荷やストレッチ感を伴う場合が多い。ヨガセラピー
治療・改善目的で個別にカスタマイズされたヨガプログラムを指し、場合によってはリストラティブの要素が取り入れられることもある。解剖学や病理学的アプローチが重視される。リラクゼーションヨガ
一般的なハタヨガクラスの中でも、ペースをゆっくりとしたり、呼吸法や瞑想に重きを置いたりして、リラクゼーションを主眼にしたもの。必ずしもリストラティブほどサポートを多用するわけではない。
7. どんな人におすすめ?
リストラティブヨガは以下のような方に特におすすめです。
疲労感が強く、体力が落ちている方
アクティブな運動が難しいときでも、サポートを使うことで安心して取り組め、深いリラックスを得られます。ストレスが高い、眠りが浅い方
現代社会のストレスに晒されている方には、副交感神経を優位にするリストラティブのアプローチが適しています。リハビリや産後の回復が必要な方
慢性痛や術後リハビリなどで激しい運動が難しい場合にも、無理なく身体をほぐし、血行促進や癒し効果が期待できます。マインドフルネスを深めたい方
激しく動かない分、呼吸や身体内部の感覚に意識を向けやすく、瞑想的な静けさを味わいたい人に向いています。
8. リストラティブヨガを自宅で行う際の注意点
スタジオやクラスに通わず、家でリストラティブヨガを取り入れたいという人も多いかもしれません。実践の際は以下に気を配りましょう。
プロップスを揃える
ボルスターがない場合は、大きめのクッションや枕、座布団などを重ねる形で代用できます。ブランケットやバスタオルも複数枚あると便利です。静かな時間と空間を確保する
家族やペットの出入りが激しい場所だと集中しにくいので、可能な限り静かなスペースと時間帯を選びましょう。体温管理
長時間同じ姿勢で過ごすため、身体が冷えやすい場合があります。部屋を暖かく保つ、ブランケットをかけるなど、冷え対策を怠らないようにしてください。無理せず一歩ずつ
動きが少ないからといって、いきなり20分の保持に挑戦すると身体や気分が落ち着かず疲れてしまう場合も。最初は5~10分程度から始め、慣れてきたら徐々に時間を延ばしていくのがおすすめです。オンラインレッスンやガイドを活用
有資格のインストラクターによるオンラインクラスや動画を参考にすると、プロップスの使い方や細かい調整ポイントを理解しやすいでしょう。
9. まとめ
リストラティブヨガは、深いリラクゼーションと回復を目的としたヨガのスタイルであり、多忙な現代人や疲労・ストレスを抱える人にとって非常に有用なアプローチです。プロップスを活用して身体をサポートし、長時間ポーズを保持することで筋肉や神経系を休ませ、副交感神経を活性化して心身を癒やしていきます。
特徴: プロップスを多用、ポーズ保持が長い、筋力をほぼ使わない、リラクゼーションを最優先
効果: ストレス軽減、睡眠改善、慢性痛の緩和、マインドフルネスの向上
注意点: 自然な呼吸を続ける、ポーズ中の不快感を我慢せず調整する、体温管理や環境づくりも重要
ヨガというと「動く」「鍛える」イメージを持つ方も少なくないかもしれませんが、リストラティブヨガのように「いかに休むか」「どれほど深く緩められるか」に焦点を当てるスタイルは、心身のバランスを取り戻す上で大いに役立ちます。疲労やストレスの蓄積を感じるとき、あるいは激しい運動が難しいときには、ぜひリストラティブヨガを試してみてはいかがでしょうか。
立川で学ぶ「ヨガの思想」
『ヨーガ・スートラ』を学んでヨガを深く知る(1)
『ヨーガ・スートラ』を学んでヨガを深く知る(2)
『ヨーガ・スートラ』を学んでヨガを深く知る(3)
『ヨーガ・スートラ』を学んでヨガを深く知る(4)
『ヨーガ・スートラ』を学んでヨガを深く知る(5)
『ヨーガ・スートラ』を学んでヨガを深く知る(6)
『ヨーガ・スートラ』を学んでヨガを深く知る(7)
『ヨーガ・スートラ』を学んでヨガを深く知る(8)
『ヨーガ・スートラ』を学んでヨガを深く知る(9)
『ヨーガ・スートラ』を学んでヨガを深く知る(10)
『ヨーガ・スートラ』を学んでヨガを深く知る(11)
『ヨーガ・スートラ』を学んでヨガを深く知る(12)
『ヨーガ・スートラ』を学んでヨガを深く知る(13)
『ヨーガ・スートラ』を学んでヨガを深く知る(14)
『ヨーガ・スートラ』を学んでヨガを深く知る(15)
バガヴァッド・ギーターの教え(ヨガの古典の経典を通してヨガを学ぶ)
バガヴァッド・ギーターの教え(ヨガの古典の経典を通してヨガを学ぶ)(2)
バガヴァッド・ギーターの教え(ヨガの古典の経典を通してヨガを学ぶ)(3)
バガヴァッド・ギーターの教え(ヨガの古典の経典を通してヨガを学ぶ)(4)
バガヴァッド・ギーターの教え(ヨガの古典の経典を通してヨガを学ぶ)(5)
バガヴァッド・ギーターの教え(ヨガの古典の経典を通してヨガを学ぶ)(6)
バガヴァッド・ギーターの教え(ヨガの古典の経典を通してヨガを学ぶ)(7)
バガヴァッド・ギーターの教え(ヨガの古典の経典を通してヨガを学ぶ)(8)
お勧めのヨガスタジオ
ヨガを定期的にレッスンしたい方や、豊富なバリエーションからヨガやピラティスだけで無く、ボクササイズやキックボクササイズ、HIITなどのエクササイズをしたい方には、立川駅徒歩1分、国内唯一の、イタリア溶岩石「バサルティーナ」を使用した、立川溶岩ホットヨガスタジオ「オンザショア」をおすすめしたいと思います。バサルティーナは火山石の中で最も美しい色調と流れがある溶岩石で、古代ローマの時代より建築家に愛されてきました。現在も国内外の有名ブランドや、美術館などにも好まれて利用されています。イタリア中部バーニョレッジョで採掘されるバサルティーナについて、また溶岩石の効果についてより詳しくお知りになりたい方はこちらをどうぞ!
スタジオ名 | 立川エリア唯一の溶岩ホットヨガスタジオ「オンザショア」 |
住所 | 〒190-0012 東京都立川市曙町2丁目14−10 エトロワビル 3F |
TEL | 042-595-8039 |
事業内容 | 溶岩ホットヨガ、ピラティス、キックボクササイズ、ボクササイズ、HIIT、バトルロープ、総合格闘技、パーソナルトレーニングなど |
特徴 | 50種類の豊富なレッスンと早朝から深夜まで開催しているヨガのレッスンなど |
対応エリア | 立川、西国分寺、国分寺、国立、昭島、東大和、日野、青梅、あきる野、府中、武蔵村山、福生、羽村、八王子など |
定休日 | 年中無休 |
URL | https://ontheshore.jp/ |
立川エリアで唯一の熔岩ホットヨガスタジオ「オンザショア」でアナタも今日からヨガを始めてみませんか?
立川ヨガ 立川エリア唯一の溶岩ホットヨガスタジオ「オンザショア」

【監修者】 | 宮川涼 |
プロフィール | 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。 |