憲法6 人権総論(4)天皇の人権、公務員の人権
01 天皇の人権
天皇も皇族も、日本の国籍を有する者です。しかし、憲法が独立の地位を認めていることに伴い、一般国民とは異なる規律に服することは明らかです。そこで、天皇が一般人と異なる規律に服するのはなぜか、どのように異なるのかが問題となります。
天皇が一般人と異なる点 | 異なる理由 |
・国政に関する機能を有しない(4条1項) →選挙権、被選挙権がない ・婚姻の自由(24条)が制限(皇室典範10条)など | ・憲法自身が、天皇の地位を特殊なもの(世襲制、象徴としての地位)として認めているから |
論点としては、天皇は憲法第三章にいう「国民」に含まれるか?というもので、結論としては、含まれると通説で考えられています。理由は、天皇が国民に含まれない、人権享有主体でないという理解は、天皇の特別扱いが過度に過ぎ、妥当でない。また、そのように理解する実益がないからだとされます。
02 公務員の人権
憲法学上問題となる「公務員」には、15条のように「国会議員」を含める場合や、さらには裁判官を含める場合もありますが、ここでは、いわゆる「国家公務員」や、「地方公務員」のことをいいます。これまで、このような者が行う政治活動が制約されることなどによって、公務員の人権が問題になってきたからです。では、具体的な事例をみてみましょう。
事例)国家公務員のXは、衆議院議員選挙の際に、ある政党を支持する目的で、勤務時間外に、候補者の選挙用ポスターを公営掲示場に掲示した。しかしこれを理由として、Xは国家公務員法(公務員の政治行為を禁止している規定)に違反するとして起訴された。そこでXは、同法の当該規定は違憲無効だから、自分は無罪だと主張した。問題を整理すると、
①公務員による人権の主張
→一般人とは異なる制約はあるのか?
②政治活動を行ったことが理由
→政治活動の自由についてはどうか?
③政治活動を制限する法律が存在
→法律の効果を争うには「違憲」でないといけない
反対説として、公務員の人権制約について、古くは「特別権力関係理論」から説明されています。「特別権力関係理論」とは、①法律の規定(受刑者や感染症患者)や本人の同意に基づき(公務員など)、国家と特殊な関係に入った者について、②公権力は、(1)法律の根拠無くして私人を包括的に支配(命令・懲戒)できる(法治主義の排除)、(2)法律の根拠無くして私人の人権を制限できる(人権の制限)、(3)司法審査に服さない(司法審査の排除)、とする理論をいいます。
しかし、現在はこのような理論は認められていません。なぜなら①公権力に服従しているという形式的なカテゴリーで捉えるのは無理があり、また、②人権の制約については、その根拠から個別的に検討する必要があるからだとされています。
では、公務員の人権(ここでは、政治活動の自由)はいかなる根拠により、いかなる制約を受けるかについて見てみましょう。これには二つの考え方が代表され、一つは制約合憲方向で、公務員は「全体の奉仕者」(15条2項)であり、その職務の中立性は確保する必要があり、②憲法自身が、公務員関係の存在と自律性を認めている(15条、73条4号)と考えます。その結果、結論としては、一般国民とは異なる制約があるとします。
また、制約違憲方向で考えると、①政治活動の自由は自己実現、自己統治の価値を有するとし、②民主政の過程の瑕疵は自己回復が困難(民主制も同じ)とし、結論としては、LRA(Less Restrictive Altrenative)基準、つまり、①目的が正当で、かつ②目的達成のためにより制限的でない制約手段が他にない場合、合憲とされると考えます。
自己実現の価値とは、人がその自らの活動を通じて、精神的に成長し、あるいは目的を充足すること等をいいます。また、自己統治の価値とは、国家が主権者たる国民自らによって行われることをいいます。ペアで使われる機会の多い言葉ですが、両者の間で「自己」の内容が異なっているので、注意することが必要です。
判例としては、最大判昭和49年11月6日(猿払事件)があります。北海道猿払村の現業(非管理職)郵便局員が、勤務時間外に選挙ポスターを掲示するなどしたため、起訴された事件。
政治的行為は、行動としての面をもつほかに、政治的意見の表明としての面をも有するものであるから、憲法21条による保障を受けるとしたが、公務員は全体の奉仕者であり、公務員の政治的中立性が維持されることは、国民全体の重要な利益にほかならないとし、公務員の政治的中立性を損うおそれのある公務員の政治的行為を禁止することは、それが合理的で必要やむをえない限度にとどまるものである限り、合憲だとした。
そして、合理的で必要やむをえない限度にとどまるかどうかは、①禁止の目的、②この目的と禁止される政治的行為との関連性、③政治的行為を禁止することにより得られる利益と禁止することにより失われる利益との均衡の3点から検討することが必要であるとしたうえで、結論的には、③の観点から、公務員の政治的中立性を維持し、行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼を確保するという国民全体の共同利益は非常に重要だから、本件規制は合憲だとした。
※本件判例は、公務員の権利保護に薄いという意味で、学説から批判が強いです。なので、論証は有力学説を採用しました。以上を整理すると、
①公務員に、一般人と異なる制約があるか?
→憲法自身が、公務員関係の存在と自律性を認めているから、異なる制約はある
②政治活動の自由についてはどうか?
→判例は目的、関連性、均衡(①②③)で判断
→有力学説はLRAの基準で判断している
③政治活動を制限する法律が存在
→判例は制限を合憲とした
となります。
次の争議行為の事例に行きましょう。
事例)国家公務員労働組合幹部のXは、ある法律の改正に反対するため、組合員(国家公務員)に「正午から出勤せよ」と指示した(時限ストライキの指示)。そこでこれを理由として、Xは国家公務員法(公務員の争議行為を禁止している規定)に違反するとして起訴された。
これに対しXは、同法の当該規定は違憲無効だから、自分は無罪だと主張した。
公務員の人権(ここでは、争議行為)はいかなる根拠により、いかなる制約を受けるのか。先の事例とは異なり、(ストなので)公務の執行が実際に阻害されている点に注意しましょう。この場合は、上述の二つの考え方で考えると下記の通りとなります。
理由1(制約合憲方向)
①公務員の職務は公共性・特殊性が強い
②憲法自身が、公務員関係の存在と自律性を認めている(15条、73条4号)
結論1
一般国民と異なる制約はある
理由2(制約違憲方向)
しかし、争議権を含む労働基本権は勤労者にとって不可欠の権利
結論2(厳格な合理性の基準)
そこで、①目的が重要か、
②手段と目的の間に実質的関連性があるか
という基準によって判断すべき
判例では、最大判昭和48年4月25日(全農林警職法事件)で、
①公務員の地位の特殊性、職務の公共性を強調
②公務員の勤務条件は法律・予算によって決まるのでストは無意味
③私企業と異なり市場抑制力が働かない
④争議行為禁止の代償として、人事院規定が充実
…などの点を理由に、必要やむをえない制約であるといえ、当該規定は合憲と判断した。
①公務員の労働基本権の制限について
→判例は独自に立てた基準で判断
→有力学説は厳格な合理性の基準で判断
②法律の効果を争うには「違憲」でないといけない
→判例は否定的に考えている
他にも最大決平成10年12月1日の判例において、本件事件当時、現職の裁判官であったXは、通信傍受法案に反対する集会に参加し、会場の一般参加者席から、仙台地方裁判所判事補であることを明らかにした上で、「自分としては、仮に法案に反対の立場で発言しても、裁判所法に定める積極的な政治運動に当たるとは考えないが、パネリストとしての発言は辞退する。」という趣旨の発言をしたため、懲戒処分(戒告)に処せられた事案。本集会は、単なる討論会ではなく、明確に法案に反対する運動の一環であることなどを認定し、裁判所法52条1号にいう「積極的に政治活動をすること」にあたると判断した。
憲法7 人権総論(5)在監者の人権、私人間効力
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【監修者】 | 宮川涼 |
プロフィール | 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。 |