憲法4 人権総論(2)人権享有主体性、外国人の人権(1)
01 人権享有主体性
人権享有主体性とは、人権が保障されているかという場合の主体についての問題をいいます。その「人」が人権を持つといえるかという問題のことです。ただし、憲法がその人にその人権を保障しているといえるか、という観点から考える必要があります。基本的に認められると思ってしまいますが、「外国人、法人、天皇、未成年者」について、特に「精神的自由権」「参政権」「社会権」などの権利で問題となります。つまり、その「人」と「人権」の種類ごとに考える必要があります。
02 外国人の人権(総論)
憲法上の議論にいう外国人とは、日本国籍を有しない者をいいます。問題となる具体例は、上述の参政権、社会権や、出入国の自由、政治活動の自由などがあります。事例を見てみましょう。
事例)外国人のXは、1年間の日本在留期間中に政治活動を行ったことを理由として、在留期間延長を拒否された。そこで、Xは、国を相手に争い「在留期間延長の拒否は違憲である」と主張した。
これは在留外国人が日本在留期間中に政治活動を行ったところ、在留許可延長申請を行ったところ、在留延長拒否され、外国人Xがそれを提訴したものです。ここで問題になっているのは、まず外国人による人権の主張において、日本人と異なる「人」に人権が保障されているか、政治活動を行ったことが理由で在留許可延長が拒否されるのは、政治活動の自由に反していないかということになります。そこで、当該事案が憲法上の権利として違憲無効とできるか問題となりました。
議論(意見)が分かれている点を「論点」といいます。本件の場合は、憲法第三章の標題は国民の権利となっているが、外国人にも人権享有主体性が認められるのかということが論点となりました。通説としては、外国人も人権の享有主体となりうると結論しています。なぜならば、人権は元来前国家的性格を有しており、憲法は国際協調主義(前文3段、98条2項)をとっているからです。
しかし、外国人が享有しうる人権は、すべてなのか。それとも、一部なのか。その差は何故出てくるのか(その判断基準は)ということも論点となります。通説は、人権の性質は、外国人の種類により個別的に考える必要があると考えます。その理由は、外国人の日本に対する関係は、場所的居住関係に過ぎず、従って身分上の恒久的結合関係がある日本人と性質が異なるからです。
判例では、最大判昭和53年10月4日マクリーン事件が有名です。本件は、1年間の日本在留期間中に、「米国によるベトナム戦争介入反対」「出入国管理法案反対」などの政治活動を行ったXが、在留期間延長を拒否された事件です。判例は、「基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在住する外国人に対しても等しく及ぶ」とし、権利の性質ごとに判断すべきとした上で、「政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶものと解するのが、相当である。」とした。
しかし、このマクリーン事件では、この判旨部分以外の一般論において、「憲法22条1項は、…外国人がわが国に入国することについてはなんら規定していない」のであって、「国際慣習法上、国家は外国人を受け入れる義務を負うものではなく、特別の条約がない限り、外国人を自国内に受け入れるかどうか、また、これを受け入れる場合にいかなる条件を付するかを、当該国家が自由に決定することができる」「したがつて、憲法上、外国人は、わが国に入国する自由を保障されているものでないことはもちろん、所論のように在留の権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されているものでもない」と述べています。
論点整理すると、
①日本人とは異なる「人」に人権が保障されているか?
→人権の性質や、外国人の種類により個別的に考える
②政治活動の自由についてはどうか?
→わが国の政治的意思決定に不当な影響を与えるような政治活動は認められない
③憲法上の権利とまで言えるか?
→判例は否定的に考えている(政治活動の自由も、外国人在留制度のわく内で与えられているにすぎないとした)
03 外国人の人権(個別的検討)
参政権について、外国人に、(選挙権、被選挙権等の)参政権が憲法上保障されているか、論点となります。結論としては、外国人に参政権は憲法上保障されていない、と考えます。理由としては、外国人に保障されていると考えると、国政が国民の自律的意思に基づいて運営されるという国民主権の概念と矛盾する(国民主権が優越する)からと考えられています。
判例では、最判平成5年2月26日、Xはイギリス国籍を有していたが、日本人と結婚し、日本の永住許可を有していた。しかし、平成元年施行の参議院議員選挙において投票できないとされたことから、これが違法だとして国に対し国賠請求した事件において、国会議員の選挙権を有する者を日本国民に限っている公職選挙法9条1項の規定は、憲法15条、14条の規定に違反しない、とした判例があります。
また他にも、最判平成7年2月28日、Xらは韓国の国籍を有し、大阪市に居住していたが、各選挙区の選挙人名簿に登録されていなかった。そこで、各区の選挙管理委員会に異議の申出をしたが、拒否されたので、その取消しを請求した事件で、公務員を選定罷免する権利(選挙権)は、権利の性質上日本国民のみをその対象とし、憲法15条1項による権利の保障は、我が国に在留する外国人には及ばない、とし、「我が国に在留する外国人に対して地方公共団体における選挙の権利を保障したものとはいえない」としたが、「我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではないと解するのが相当である。」とした。ただし、「右のような措置を講ずるか否かは、専ら国の立法政策にかかわる事柄であって、このような措置を講じないからといって違憲の問題を生ずるものではない。」としてXらの請求を棄却した。
他にも、外国人の国政選挙権の事例で、最判平5.2.26においても、外国人の国政選挙権・被選挙権は「国会議員の選挙権を有する者を日本国民に限っている公職選挙法9条1項の規定が憲法15条、14条の規定に違反するものでない」とされ、最判平10.3.13においても「市民的及び政治的権利に冠する国際規約25条に違反しない」として否定されています。
一方で、地方選挙権については、最判平7年2月28日(外国人の地方参政権)で憲法93条2項は日本に在留する外国人に対して地方公共団体における選挙権を保障したものとはいえないが、一定の外国人について法律をもって付与する措置を講ずることは憲法上禁止されているものではないとしています。
さらに、政治活動の自由(21条1項)について外国人に認められるか、という論点において、外国人の政治活動の自由は無制限ではなく、わが国の政治的意思決定に不当な影響を与えるような政治活動は認められない(限定的保障説)と考えます。理由としては、積極的方向としては、政治活動の自由は前国家的性格を持っているから、権利の性質上、外国人にも保障されてよいと考えるものの、消極的方向として、一方、政治活動の自由は参政権的性格も持っているから、無制限に保障されるとまでもいえないと考えます。
※参政権そのものだとは言っていないことに注意
次に、社会権です。外国人に、(生存権(25条1項)等の)社会権が憲法上保障されているか。社会権は後国家的性格を有するため保障されないのではないか。結論としては判例に従えば、外国人に社会権は憲法上保障されていない、とされます。理由としては、社会権は、国家の存在を前提としており(後国家的性格が強い)、国家の財政的事情の制約を受けると判例で示されました。
判例では、最判平成元年3月2日塩見訴訟において、「在留外国人をどのように処遇するかについては…その政治的判断によりこれを決定することができるのであり、その限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも、許される」
※国民と同一の法的・社会的負担を負っている定住外国人には、社会権が保障されるとする見解もあります。なお、福祉行政はおおむね、そのような方向で実施されています。
「性格を有する」という表現について、この表現は、こういった「性格を有する」という限りにおいて理解してください。人権はどれも多かれ少なかれ、いろんな性格を有しているのが通常なので、「○○権は▲▲に分類される」などの分類論にとらわれ過ぎないことが大事です。
憲法5 人権総論(3)外国人の人権(2)、法人の人権
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【監修者】 | 宮川涼 |
プロフィール | 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。 |