民法論証集

(1)論証

Q「詐術」の意義

Aの行為は「詐術」(21)に当たり、取り消し得ない行為となるか。

…この点、(制限行為能力者保護と取引安全との調和の観点から、)「詐術」には、積極的に詐術を用いた場合のみならず、制限行為能力者であることを黙秘していた場合であっても、それが他の言動などと相まって相手方を誤信させ、又は誤信を強めた場合には、「詐術」に当たると解する。

*「詐術」に引き付けて論じること。

Q94Ⅱの「第三者」の意義 予H23

「第三者」(94Ⅱ)の意義が問題となる。

…この点、同項の趣旨は、虚偽の外観作出につき帰責性のある権利者の犠牲の下、かかる外観を信頼した第三者を保護するという権利外観法理にある。

そこで、「第三者」とは、虚偽表示の当事者及びその包括承継人以外の者であって、虚偽の外観を基礎として新たな独立の法律上の利害関係を有するに至った者をいうと解する。

そして、本人と第三者とは前主後主の関係に立つので、「第三者」は対抗要件としての登記を要しないと解する。

また、本人には帰責性があるので、権利保護要件としての登記も不要であると解する。

されに、本人に帰責性があることとの均衡から、「第三者」は善意であれば足り、無過失を要しないと解する。

*そして、~以下は、場合によって書き分けること。

*94Ⅱは、原則他人物売買として無権利者からの譲受けだから所有権を取得しないとなる。

→94Ⅱはあくまで例外の中の話なので、原則無効ということをしっかり書くこと。

Q94Ⅱの「第三者」と本人からの譲受人との関係 予H23

虚偽の外観にづき、新たな独立の法律上の利害関係を有するに至った「第三者」(94Ⅱ)と、本人からの譲受人とは、いずれが優先するか。

…この点、同項によって仮装譲渡人が真正な権利者のように扱われるのは法的擬制であり、同項による権利変動の実体的過程は、本人から第三者への承継取得であると解する。(法定承継取得説)

そこで、「第三者」と本人からの譲受人とは対抗関係(177に立ち、先に対抗要件を具備した者が優先すると解する。

*法定承継説は、本人(表意者)から相手方、第三者に順次権利が移転する(順次取得説)のではなく、本人から第三者に直接権利が移転すると考える。

*94Ⅱの「第三者」は、本人から目的物を承継取得し、登記を備えることによって、確定的に所有権を取得する。

→どの時点で所有権を取得したのかを、しっかり特定すること。

Q94Ⅱ類推適用の可否 予H29、司H24、28

【意思表示の通謀がない場合にQ】

Xは、~という外観を信頼して契約を締結していることから、94Ⅱの「第三者」として、所有権を取得しないか

…この点、AB間に通謀がない以上、同項を直接適用することはできない

<もっとも>同項の趣旨は、虚偽の外観作出につき帰責性のある権利者の犠牲の下、かかる外観を信頼した第三者を保護するという権利外観法理にある。

そこで、①虚偽の外観の存在、②本人(真の権利者)の帰責性、③第三者の外観への信頼があれば、同項を類推適用できると解する。

*94Ⅱを類推適用する実益をしっかり書くこと。

*問題文中に「装って」や「偽造して」といった文言がある場合には、この論点を疑うこと。

*94Ⅱの類推適用は、登記に公信力がないことによって生じる不都合性を解消するためのものであり、基本的には登記のような「公示」について論じられる。

*意思外形対応型や意思外形非対応型といった類型があるが、これらはあてはめの中で考慮すれば足り、一般論として規範の中で書くべきではない。

なお、これらの類型は、本人が虚偽の外観作出にどれだけ関わっているかによって区別されている。

*特殊パターン㋐:意思外形対応型(外形自己作出型)…本人と登記名義人との間に虚偽の意思表示はないが、本人によって不実の外観が作出された場合

→要件③については、善意無重過失であることを要する。

*特殊パターン㋑:意思外形対応型(外形他人作出型)…本人の意思とは無関係に不実の外観が作出され、本人がこれを承諾している場合(本人は知っている)

→要件②については、不実の外観の存在を知りながら明示又は黙示にこれを承認

していることを要する。

→要件③については、善意無重過失であることを要する。

*特殊パターン㋒:意思外形非対応型①…本人の認める第一登記をもとに、その登記名義人が別の不実の第二登記を作出していた場合

→要件③については、本人の帰責性は虚偽の外観との関係では間接的なものであることから、110の法意に照らし、第三者は善意無過失であることを要する。

*特殊パターン㋓:意思外形非対応型②…本人の意思とは無関係に不実の外観が作出された場合(本人は知らない)

→要件②については、不実の外観の意思的承認と同視し得るほど重いものであることを要する。

→要件③については、本人の帰責性は虚偽の外観との関係では間接的なものであることから、110を類推適用し、第三者は善意無過失であることを要する。

*公信の原則と権利外観法理

①不動産の場合:公信の原則はないが、権利外観法理の現れである94Ⅱ類推適用によって善意者の保護が図られている

②動産の場合:公信の原則の現れである192(即時取得)によって善意者の保護が図られている。

→両者は、外観を信頼した第三者の取引安全を図る点で共通するが、本人の帰責性を要求するか否かという点(94Ⅱ類推適用は要求)で異なる。

Q「重要なもの」の意義(要素の錯誤) 司R1

「錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なもの」(95Ⅰ柱書)といえるか。

…この点、「錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なもの」とは、その錯誤がなかったならば、本人だけでなく、一般人もその意思表示をしなかったであろうと考えられるほどに重要な部分をいうと解する。

*「重要なもの」に引き付けて論じること。

*あてはめでは、①因果性と②重要性の2点を検討すること。

*あてはめの事情が少ない場合には、認定で済ませてOKの論点。

*95条は㋐「次に掲げる錯誤」か否か→㋑「重要」性→㋒「表示」の順番で検討すること。

→改正前とは検討順序が異なるので注意。

*錯誤の書き方

→Aは、錯誤取消し(95Ⅰ)を主張し、原状回復請求権(121条の21項)として~の返還を請求する。

*給付利得に関しては、受益者の善意悪意に関わらず、現存利益返還義務ではなく、原状回復義務(121条の2第1項)を負うことになったので注意。

 

 

Q動機の錯誤 司R1

【契約を結んだ動機に誤信があった場合にQ】

まず、「法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」(95Ⅰ②)があることを認定。

次に、「錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なもの」(95Ⅰ柱書)といえることを認定。

要素の錯誤のQの論証を展開

では、「その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていた」(95Ⅱ)といえるか。

…この点、表意者保護取引安全との調和の観点から、動機が明示又は黙示に表示されて意思表示の内容となった場合には、「表示されていた」といえると解する。

*「表示されていた」に引き付けて論じること。

*あてはめでは、①動機が明示又は黙示に表示されていること、及び②それが意思表示の内容となっていること、の2点を分けて検討すること。

*判例は、①よりも②を重視している。

*意思表示の内容になっていたかどうかは、当事者の意思解釈を基準に判断すること。

当時者双方がそのことを契約の前提としていたかどうかを検討すること。

Q錯誤無効の主張適格(改正後、論点消滅)

【表意者以外の者が無効主張する場合にQ】

錯誤無効は誰でも主張できるか。錯誤無効の主張適格が問題となる。

…この点、95の趣旨は表意者保護にあるため、表意者のみ無効主張できるのが原則である。(相対的無効)

<もっとも>第三者保護の見地から、①第三者に債権保全の必要性があり、②表意者も要素の錯誤を認めている場合には、表意者自ら無効主張する意思がなくても、第三者は無効主張でき(、その結果生ずる表意者の債権を代位行使でき)ると解する(423Ⅰ)。

*改正後は、効果が「取消し」になったため、論点消滅。

 

 

Q96Ⅲの「第三者」の意義

「第三者」(96Ⅲ)の意義が問題となる。

…この点、同項の趣旨は、詐欺取消しの遡及効により害される者を保護する点にあるため、「第三者」とは、かかる遡及効により害される者、すなわち詐欺取消し前に新たな独立した法律上の利害関係を有するに至った者をいうと解する。

そして、表意者と第三者とは前主後主の関係に立つので、「第三者」は対抗要件としての登記を要しないと解する。

また、表意者には帰責性があるので、権利保護要件としての登記も不要であると解する。

されに、96Ⅲから、「第三者」は善意無過失であることを要すると解する。

*そして、~以下は、場合によって書き分けること。

*反論の中で書くこと。

Q詐欺取消し後の第三者〈処理手順〉

前提:A…被詐欺者(詐欺取消し者) B…詐欺者 C…第三者 X…目的物

(1)まず、Aは、Cに対して、所有権(206)に基づくXの返還SQをすることが考えられる。

(2)<これに対して>Cは、「第三者」(96Ⅲ)に当たるため、Aは所有権を失うと反論することが考えられる。そこで、同項の「第三者」の意義が問題となる。

96Ⅲの「第三者」の意義のQの論証を展開

*Cは、詐欺取消しの第三者であるため、「第三者」には当たらないことを認定。

(3)<そうだとしても>取消しの遡及効は法的擬制にすぎず復帰的物権変動を観念できるため、二重譲渡類似の関係となり、被詐欺者と取消し後の第三者とは対抗関係(177)に立つと解する。

そこで、第三者は、対抗要件としての登記を具備すれば保護されると解する。

*96Ⅲ→177の流れで書くこと。

*解除後の第三者のQも同じ論証である。

Q本人が内部契約を取り消した場合〈処理手順〉

本人が制限行為能力者であり、又は本人に意思表示上の瑕疵があって、本人が内部契約(=委任契約)を取り消した場合、代理権授与行為はいかなる影響を受けるか。

…この点、内部契約が遡及的に無効となる121本文)以上、内部契約と密接に関連する代理権授与行為も遡及的に無効となる(有因)と解する。

*帰結:代理権授与表示代理権自体も共に遡及的に消滅するため、109112の表見代理が成立する余地はない

*相手方の保護の図り方

本人が取消し委任状などを放置していた場合

→委任状の放置を不作為の代理権授与表示とみなし、109の表見代理により保護

相手方詐欺取消し前であった場合

96により保護

*この論点は、あくまで遡及的消滅(=無効)という効果を有する取消しの場合の処理である。×将来効を有する解除

*109:最初から代理権授与表示しかなく代理権が存在しなかった場合に用いる。

112:最初から代理権は存在したが、それが事後的に消滅将来効に限る)した場合に用いる

Q代理権の濫用〈処理手順〉

【代理権を有する者が、自己又は第三者の利益を図る目的(主観)を有して、客観的には権限の範囲に属する行為をした場合にQ】

前提:A…本人 B…無権代理人 C…相手方

(1)まず、Cは、Aに対して、所有権(206)に基づく引渡しSQをすることが考えられる。

(2)<これに対して>Aは、Bは~という意図を有しているため、代理権の濫用があり、BC間の売買契約(555)の効果はAに帰属しないと反論することが考えられる

…この点、客観的には権限の範囲内にある以上、代理権を濫用してなした行為も原則として有効である。

<もっとも>代理権の濫用は、経済的効果の帰属につき内心と表示に不一致がある点で心裡留保の場合と類似する。

そこで、相手方が代理人の濫用の意図につき悪意有過失の場合には、民93ただし書を類推適用し、例外的無効となると解する。

*原則→例外の流れが大切である。

*改正後は、107条で処理する。

*代理権の濫用は、有権代理の主張に対する抗弁として機能する。

*代理権の濫用の注意点2つ

①代理権の範囲の代理行為であること

→範囲の代理行為は単なる無権代理であるため、追認表見代理(110などによりその瑕疵を治癒したで濫用の問題に流すこと。(この流れストック)

代理行為の時に濫用の意図を有していること

→代理行為に濫用したとしても、完全な有権代理である。

Q親権者の権限濫用〈処理手順〉 司H28

前提:A…本人 B夫婦…無権代理人 C…相手方

(1)まず、Aは、Cに対して、所有権(206)に基づく引渡しSQをすることが考えられる。

(2)<これに対して>Cは、B夫婦がAの代理人として契約した売買契約(555)により、Aは所有権を失ったと反論することが考えられる。

 そして、B夫婦はAの法定代理人であり824本文)、B夫婦は共同して代理行為を行っているため、売買契約の効果はAに帰属し(818Ⅲ)、かかる反論は認められるとも思える。

(3)<もっとも>B夫婦は、~(問題の所在)している。

そこで、かかる行為はBとAの「利益が相反する行為」(826Ⅰ)に当たり、無権代理として、Aに効果帰属しない(108Ⅱ本文、113Ⅰ)のではないか。

…この点、利益相反行為に当たるか否かは、取引安全の観点から、当該行為の外形で判断すべきと解する。

*利益相反行為には当たらず、無権代理とはならないことを認定。

(4)<そうだとしても>B夫婦は、~という意図を有しているため、法定代理権の濫用があり、無権代理行為としてAに効果帰属しない(107のではないか。

…この点、親権者は、利益相反に当たらない限度で広範な裁量(824を有する。

そこで、親権者が「自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした」として代理権の濫用が認められるのは、(親権者の行為が子の利益を無視して自己又は第三者の利益を図ることのみを目的としてされるなど、)親権者に法定代理権を授与した法の趣旨に著しく反すると認められる特段の事情がある場合に限られると解する。

成年後見人の権限濫用のQも同じ論証である(条文は859Ⅰ)。

Q他人物売買を本人が追認した場合の効力(問題提起不要の論点)

…この点、116を類推適用し、本人の追認により、所有権は契約時に遡って買主に移転すると解する。

*帰結:所有者に効果帰属するのは処分権限の(物権的)効果(ex所有権の移転)であり、無権利者の締結した契約に基づく債権債務(債権的効果)は所有者には帰属せず、依然として無権利者と相手方に帰属する。

*他人物売買は、債権的には有効である(561)が、物権的には無効である。

<これに対して>他人物賃貸借も、債権的には有効である(559・561・601)が、物権的には無効である以上、賃借人は所有者に対し賃借権を対抗できない

*他人物賃貸借の根拠条文→559561601

*売買契約以外の場合には、559からスタートすること。

→売買契約以外に契約不適合責任の規定を用いる場合にもこの条文からスタートすること。

*改正後の560は売主の対抗要件を備えさせる義務についての規定である。

*他人物売買・他人物賃貸借は、564、562条を経由せず、561条を理由に直接415条の適用が可能となる(買主、賃借人)。

Q表見代理と無権代理の関係(問題提起不要の論点)

【無権代理人の責任追及に対し、無権代理人が表見代理が成立することを理由に、自己は責任を負わない旨反論してきた場合にQ】

…この点、無権代理責任と表見代理責任とは互いに独立したものであるため、相手方は両者を自由に選択し主張できると解する。

そこで、無権代理人は、表見代理の成立を抗弁として主張し、責任を免れることはできないと解する。

*117の責任追及が出てきたら、この論点をセットで書くこと。

*117は無過失責任であるため、相手方の善意無過失が必要である。

Q無権代理人が本人の地位を相続した場合の追認拒絶の可否 司H28

【本人の地位が無権代理人に単独相続された場合にQ】

無権代理人が本人の地位を相続した場合、無権代理人は追認拒絶をして、相手方からの履行SQを拒むことができるかが問題となる。

…この点、相続開始相手方に取消権(115)や無権代理人の責任追及(117)の余地を残しておくべきでるから、本人と無権代理人の地位は併存すると解する。

そこで、無権代理人は本人の地位で追認拒絶できるとも思える。

<もっとも>無権代理人の追認拒絶は禁反言の原則にするといえ、信義則(1Ⅱ)上、できないと解する。

Q本人追認拒絶後の無権代理人の本人相続

【本人の地位が無権代理人に単独相続された場合にQ】

本人が生前に追認拒絶の意思を示した後に死亡し、無権代理人が本人を相続した場合、無権代理人は追認拒絶をして、相手方からの履行SQを拒むことができるかが問題となる。

…この点、追認拒絶によって無権代理行為の効果不帰属効が確定したは、本人であってもこれを有効とすることはできず、追認拒絶後に無権代理人が本人を相続したとしても、追認拒絶の効果に何ら影響を及ぼすものではない

そこで、無権代理人の追認拒絶は信義則(1Ⅱ)に反するものではなく、履行SQを拒むことができると解する。

*黙示の追認拒絶に注意。

*相手方は無権代理人の責任追及(117)をすることができる。

→本人の追認拒絶により、無権代理人の履行責任は履行不能となるため、相手方が無権代理人に問えるのは損害賠償債務のみとなる。

Q無権代理人が追認拒絶をすることは信義則上できないとしても、他の共同相続人が追認を拒絶した場合に、追認の効果は全く生じないか、それとも、無権代理人の相続分の限度で追認したものと解するか。

【本人の地位が無権代理人を含む数人に共同相続された場合にQ】 司H28 P113

…この点、本人たる地位を共同相続した場合、本人の追認権相続人全員に不可分的に帰属し、他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は、無権代理人の相続分に相当する部分においても、当然に有効にはならないと解する。

*帰結:共同相続人全員が追認しない限り、追認の効果は全く生じない。

→他の共同相続人が追認を拒絶した場合には、相手方は無権代理人の責任追及(117)をすることができる。

*かかる帰結は、金銭債務といったそれ自体可分の場合にも妥当する

*追認権は全員で共同行使しないとダメ。

<これに対して>追認拒絶権は単独で行使できる。

 

 

Q他人物売主を相続した本人による追認拒絶の可否

他人物売主の地位を本人が相続した場合、本人は買主からの履行請求を拒むことができるか。

…この点、権利者の権利移転についての諾否の自由相続という偶然の事情により左右されるべきではない。また、権利移転を拒絶しても買主は不測の損害を受けるわけではない。

そこで、権利者は、売主の地位を承継したとしても、信義則に反する特段の事情のない限り、買主の履行請求を拒むことができると解する。

*他人物売主は、自らが売主となるで無権代理とは異なる。

Q「権限」(110)の意義

事実行為の代理権限は「権限」に当たるか。

…この点、代理は法律行為に関する制度であるため、事実行為の代理権限は、原則として「権限」に当たらない

<もっとも>それが対外的な関係を予定しつつ一定の行為を委託したような場合には、「権限」に当たると解する。

Q「権限」(110)の意義

公法上の代理権限(ex不動産の移転登記手続の委任)は「権限」に当たるか。

…この点、公法上の代理権は、私法取引の安全とは関わりがないため、原則として「権限」に当たらない

<もっとも>公法上の行為であっても、それが特定の私法上の取引行為の一環としてされるものである場合には、外観に対する第三者の信頼を保護する必要があるため、かかる場合に限って、公法上の代理権は「権限」に当たると解する。

Q110の「正当な理由」について

…代理人が、我が国では理由なく他人に預託することはないとされる、本人の実印、印鑑証明書を所持していたなど、代理権の存在を推定させる事実がある場合には、特段の事情のない限り、原則として「正当な理由」があると判断される。

*原則・例外の流れで書くこと。

*特段の事情とは、当該代理行為において、相手方が代理権の存在に疑問を抱くべき客観的事情をいう。具体的には以下の5つが挙げられる。

①代理人と本人との間に親子・夫婦の関係がある場合(印鑑を持ち出せるという評価)

②代理行為による利益が専ら本人にある場合

ex代理人が主債務者となる保証契約の締結

③代理行為の内容が本人に酷である場合

ex限度額や期間の定めのない連帯保証契約の締結

④相手方が金融機関金融業者である場合(代理権の有無等、契約上重要な事項について調査確認する高度の注意義務があるという評価)

⑤実際になされた代理行為が基本代理権の範囲を大きく逸脱している場合

*上記特段の事情が存する場合、相手方には、本人に照会するなど可能な手段で代理人の代理権の存在を調査(確認)すべき義務があり、かかる義務を懈怠した場合には、「正当な理由」がないと判断される。

*あてはめでは、㋐代理権の存在を推定させる事実の有無、及び㋑特段の事情の有無の2点を検討すること。

*「正当な理由」の有無は、第三者の事情のみならず、本人側の事情をも考慮して判断すること。

*「正当な理由」の有無の判断基準時は契約締結時である。よって、契約締結の事情を考慮しないように注意。

Q代理人が本人名義で権限の行為をした場合〈処理手順〉

前提:A…本人 B…無権代理人 C…相手方

(1)まず、Cは、Aに対して、所有権(206)に基づく引渡しSQをすることが考えられる。

(2)<これに対して>Aは、BはAから与えられた代理権の権限の行為をしているため、無権代理人に当たり、Aの追認がない限り、BC間の売買契約(555)の効果はAに帰属しない(113Ⅰ)と反論することが考えられる。

(3)<これに対して>Cは、110の表見代理が成立し、売買契約の効果がAに帰属すると再反論することが考えられる。

アまず、Bは、本人たるA名義で上記契約を締結しているところ、本人名義であっても、効果帰属主体を明らかにするという顕名(99Ⅰ)の趣旨は満たされるため、顕名があるといえる。

イでは、Cに「正当な理由」があるといえるか。

…この点、相手方は代理権の存在を信じたわけではないから、110を直接適用することはできない

<もっとも>同条の表見代理の趣旨は、代理権の外観を信頼した相手方を保護する点にあるところ、無権代理人が本人として行動した場合も、本人に効果帰属すると信頼した相手方保護の必要性がある

そこで、同条を類推適用し、「正当な理由」の有無は、(その意思表示の実体に即して、)意思表示の主体が本人であると信じたことの当否についてなすべきと解する。

*アについて、Bに代理意思があることが前提である。仮に、Bに代理意思がない

場合には、顕名(代理表示+代理意思)の要件を満たさない以上、本人に効果帰

属しない

*「正当な理由」に引き付けて論じること。

*「正当な理由」の対象についても論じること。

Q110の「第三者」の範囲

【無権代理行為の相手方からの転得者が110の表見代理を主張した場合にQ】

無権代理行為の相手方(正当な理由なし)からの転得者(正当な理由あり)が「第三者」(110)に当たるか。同条の「第三者」の範囲が問題となる。

…この点、同条の表見代理の趣旨は、代理権の外観を信頼した相手方を保護する点にあるところ、有効な代理権の存在を信頼するのは直接の相手方に限られるため、(代理人と直接取引をするわけではない)転得者を保護する必要がない

そこで、同条の「第三者」は、無権代理行為の直接の相手方に限られ転得者を含まないと解する。

*「第三者」に引き付けて論じること。

*この論点は、無権代理行為の相手方に正当な理由がなく、110で保護されないことが前提となっている。そして、仮に、相手方が110で保護される場合には、転得者は有効な権利を承継取得することになる。

→「第三者」該当性は問題にならない。

*転得者の保護は、94Ⅱ類推適用や192により図ること。

Q法定代理への112の適用の可否〈処理手順〉

【法定代理人が代理権消滅に相手方と取引した場合にQ】

前提:A…本人 B…無権代理人 C…相手方

(1)まず、Cは、Aに対して、所有権(206)に基づく引渡しSQをすることが考えられる。

(2)<これに対して>Aは、Bは親権喪失の審判(834)がなされた時点でAの法定代理権を失うため、無権代理人に当たり、Aの追認がない限り、BC間の売買契約(555)の効果はAに帰属しない(113Ⅰ)と反論することが考えられる。

(3)<これに対して>Cは、112の表見代理が成立し、売買契約の効果がAに帰属すると再反論することが考えられる。

本件においてBは法定代理人であるところ、法定代理人に112が適用されるか。

…この点、同条の趣旨は、一度有効に存在した代理権への信頼保護にあるところ、かかる趣旨は法定代理権にも妥当する

そこで、法定代理にも112が適用されると解する。

*109は任意代理のみに適用され法定代理には適用されない

*109と112の違い

①109→最初から代理権がなかった(表示はある)

+代理権が遡及的に消滅(遡及効)

②112→有効に存在した代理権が事後的に消滅(将来効)

Q日常家事代理〈処理手順〉

【夫婦の一方(A)がした法律行為の効果が、他方配偶者(B)に効果帰属するか?という場合にQ】

(1)まず、前提として、Aは任意代理権を有しないことを認定。

(2)次に、AB間は夫婦であり、夫婦生活維持の便宜のため、日常家事代理権(=法定代理761を有するところ、本件契約は客観的にみて、個々の夫婦がそれぞれの共同生活を営む上において通常必要な法律行為とはいえず、「日常の家事」に当たらない(=日常家事代理権の権限の範囲内とはいえない)ため、無権代理(113)として、Bに効果帰属しないのが原則である。

(3)<そうだとしても>日常家事代理権を基本代理権とする表見代理(110)が成立し、本件契約の効果がBに帰属しないか(実益)。

…この点、110の文言上限定がないため、法定代理権も同条の基本代理権となる

<もっとも>かかる表見代理の成立を広く肯定すると、夫婦の財産的独立を損なうおそれがある。

そこで、夫婦別産制(762Ⅰ)と、取引安全との調和の見地から、その行為が当該夫婦の日常家事行為の範囲に属すると信じるにつき正当な理由がある場合に限り、110の趣旨を類推適用して、取引の相手方は保護されると解する。

*任意代理→法定代理→表見代理の流れで書くこと。

*正当な理由とは、善意無過失のことをいう。

*日常家事代理権の特殊性2つ:①顕名不要で、②夫婦双方に効果帰属する

Q不動産賃借権の時効取得 司H29

【他人の土地の利用権を取得したい場合にQ】

まず、Xは、Aに対し、所有権(206)に基づく甲土地明渡し請求をしている。

<もっとも>Aは、甲土地の取得時効援用の意思表示(145参照)をすることにより、甲土地の賃借権を時効取得(163、162)するから、占有権原が認められると反論することが考えられる。そこで、不動産賃借権が、「所有権以外の財産権」(163)として時効取得できるかが問題となる。

…この点、(<たしかに>賃借権は債権である。<しかし>)継続的な占有を内容とする不動産賃借権は、永続した事実状態を観念でき時効取得し得るため、「財産権」に含まれると解する。

<もっとも>所有者の時効中断の機会を保障すべく、①目的物の継続的利用という外形的事実が存在し、②それが賃借の意思によることが客観的に表現されており、③162の要件を満たす必要があると解する。

そして、要件①②を満たす場合には、「自己のためにする意思をもって……行使」しているといえると解する。

*「財産権」に引き付けて論じること。

*この論点は、占有権原の抗弁として主張すべきものである。

*時効の効果は、援用の意思表示(145があって初めて発生するため、この要件についても必ず検討すること。(司H29実感)

*この論点が問題になる場合3つ

他人物賃貸借の場合

㋑他人の土地の不法占有者が地主に賃料を支払い続けた場合

㋒賃貸借契約に瑕疵があってが、長年有効と信じて賃料を支払い続けた場合

*要件①は、「行使する」要件が変化したものであり、要件②は、「自己のためにする意思をもって」要件が変化したものである。よって、要件①②が満たされれば、再度これらの要件を検討する必要はない。

*要件②では、a賃貸借契約の存在、b賃料の継続的支払の事実の2点を検討する。

ex「Aは、Bと賃貸借契約を締結し、賃料を払い続けていた。」

なお、他人物賃貸借の場合は、賃料支払の相手方は真の所有者でなくてもOK。

*要件③では、「平穏」・「公然」・「善意」(186Ⅰにより推定される)、「過失」要件を検討すること。

*ゴ:もう経理が珍客色に

代理占有(181による時効取得(ex賃貸人)も可能なので注意。

Q物上保証人による弁済等は、被担保債権「承認」(152Ⅰ)に当たるか。

…この点、「承認」とは、債務を負担している者による、債務の存在の認識の表示行為をいうところ、物上保証人は何ら債務を負担していないため、物上保証人による弁済等は、被担保債権の「承認」には当たらないと解する。

*「承認」に引き付けて論じること。

保証人も同様である。そして、保証人の場合、被担保債権たる主債務の時効が更新しないだけであって、保証債務の時効は当然に更新するので注意。

Q被担保債権の時効更新と物上保証人〈処理手順〉

【時効更新効が物上保証人にも及ぶか?という場合にQ】

Q1:まず、物上保証人が主債務の消滅時効を援用できるかが問題となる。

「当事者」の意義のQの論証を展開

*物上保証人が、主債務の消滅時効を援用できることを認定。

<もっとも>主債務の時効は更新(152Ⅰ)している。

Q2:そこで、時効更新の効果が物上保証人に及ぶとして、時効を援用できないのではないかが問題となる。

…この点、<たしかに>153時効更新の相対効を規定しており、保証人についての457Ⅰのような規定が物上保証人には存在しない以上、物上保証人に更新効は及ばないとも思える。

<しかし>物上保証人は「当事者」として主債務の時効を援用できると解されるのに、更新効が及ばないと解するのは、公平でない

また、債務者との関係で生じた被担保債権の時効更新効を物上保証人が否定することは、担保権の付従性に反する。→付従性からすれば否定できないはず。

(さらに、時効中断した主債務を担保する抵当権の消滅を認めることは、抵当権設定者との関係で396の趣旨にも反する。)

そこで、(債務者との関係で生じた)時効更新効は、(153Ⅲの例外として)物上保証人にも及ぶと解する。

Q時効援用の法的性質

【時効期間を経過したけど、まだ援用していない債務の弁済を行った場合にQ】

AがBに対して求償権を行使するためには、「自己の財産をもって債務を消滅」させたといえる必要がある459Ⅰ)

<もっとも>Aは、消滅時効期間を満了した債務の弁済をしているため、「自己の財産をもって債務を消滅」させたとはいえないのではないか。時効の効果の発生時点が、時効の法的性質と関連して問題となる。

…この点、時効制度の趣旨は、当事者意思の尊重にあるため、当事者の援用(145によって初めて権利の得喪が生じると解する。

そこで、時効による権利の得喪は、当事者の援用を停止条件として実体法上発生すると解する。

*「自己の財産をもって債務を消滅」に引き付けて論じることが多い。

*帰結:当事者の援用がない限り、消滅時効の効果は発生しておらず、いまだ債務は消滅していない→「自己の財産をもって債務は消滅」させたといえる。

Q「当事者」(145)の範囲〈処理手順〉

【債務者以外が時効を援用する場合にQ】

前提:A…債権者(第1抵当権者) B…債務者 C…第2抵当権者

(1)まず、Cは、AのBに対する被担保債権の消滅時効166Ⅰ)を援用し、担保権の付従性により、Aの抵当権(369Ⅰ)も消滅することを理由に、抵当権に基づく妨害排除SQとしての抵当権設定登記抹消登記手続SQをすることが考えられる。

(2)<これに対して>Aは、後順位抵当権者であるCは、「当事者」(145)には当たらないため、Bの債務の消滅時効を援用できないと反論することが考えられる。そこで、「当事者」、すなわち、「権利の消滅について正当な利益を有する者」(同条括弧書)に後順位抵当権者が当たるかが問題となる。

…この点、後順位抵当権者の配当額の増加に対する期待は、抵当権の順位の上昇によってもたらされる反射的な利益にすぎないため、正当な利益を受けるわけではない。そこで、後順位抵当権者は「当事者」に当たらないと解する。

*改正後は、「当時者」の範囲につき解釈は不要となった。

*取得時効の場合には、「当事者」、すなわち、「権利の取得について正当な利益を有する者」(同条括弧書)に当たるか、と問題提起をすることになる。

*債務者の時効援用権を代位行使(423Ⅰ)することはできるので注意。

Q時効援用後の債務の承認と時効の利益の喪失

時効完成後、これを知らずに債務の承認をした場合、かかる承認が時効利益の「放棄」(146)に当たり、債務者は時効援用できないのではないかが問題となる。

…この点、時効利益の放棄は債務者が時効完成を知って行うことが必要なので、債務者が時効完成後にこれを知らずに債務の存在を承認しても、「放棄」には当たらないと解する。

<もっとも>相手方の、債務者が時効を援用しないとの期待が保護に値する場合には、債務者は信義則(1Ⅱ)上、時効を援用できないと解する。

*「放棄」に引き付けて論じること。

*債務者が時効援用権を信義則上行使できない理由は、相手方の正当な信頼(主観)の保護にある。

*あてはめでは、相手方の主観事情に着目し、債務者が時効を援用しないとの期待が、保護に値するか否かを検討する。

債務者の救済の必要性といった事情は、認定しても構わないが、結論には影響しないので注意。

→相手方の主観の話であって、債務者の事情は関係ないから。仮に、債務者の事情を書いたとしても、「それを知っていた相手方はとしては、~。」のように、最終的には相手方の事情に流すこと。

*当該債務者以外の第三者による時効の援用が信義則に反するのではないか?という場合の処理パターン

①まず、当該債務者による時効の援用が信義則に反するか?を検討する。

②次に、第三者による援用はどうか?を検討する。

→当該債務者による時効の援用が信義則に反するとしても、信義則の適用は相対的になされることから、第三者の援用は、信義則に反せず許される

Q「第三者」(177)の意義 予R1、司H26

【二重譲渡の問題が出てきた場合にQ】

前提:譲渡人…A 第一譲受人…B 第二譲受人‥C 転得者…D

まず、Bは、Cに対し、所有権(206)に基づく所有権移転登記手続SQをすることが考えられる。

<これに対して>Cは、自己が「第三者」(177に当たり、所有権移転登記を備えたことによって、Bは甲土地所有権を喪失すると反論することが考えられる。そこで、Cが「第三者」に当たるかについて検討する。(「第三者」の意義が問題となる。)

…この点、(177の趣旨は不動産取引の安全を図る点にあるため、)「第三者」とは、当事者及びその包括承継人以外の者であって、(不動産物権変動についての)登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する者をいう。

そして、自由競争原理の下、悪意者であっても上記正当な利益を有するが、自由競争原理を逸脱した背信的悪意者については、信義則(1Ⅱ)上上記正当な利益を有しないと解する。

*反論の中で書くこと。

*あてはめでは、「悪意」と「背信性」とを分けて検討すること。

取得時効完成後の譲受人が背信的悪意者に当たるか否かの判断基準(P180)

→判例(H18.1.17)は、譲受人が、当該不動産の譲渡を受けた時点において、①時効取得者が多年にわたり当該不動産を占有している事実認識しており、②その者の登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情がある場合には、譲受人は背信的悪意者に当たるとしている。

*①について、譲受人は、時効取得者の多年にわたる占有継続の事実を認識していれば足り、取得時効の成立要件のすべてを充足していることを認識している必要はない。

*悪意の判断基準時は、売買契約締結時である。

*反論として、対抗要件の抗弁、又は対抗要件具備による所有権喪失の抗弁を主張する場合にQになることが多い。

*「第三者」に当たらない者4つ

①無権利者

②不法占有者、不法行為者

③前主後主の関係にある者

④背信的悪意者

Q背信的悪意者からの転得者の地位

【背信的悪意者から土地を譲り受けた場合にQ】

前提:譲渡人…A 第一譲受人…B 第二譲受人‥C 転得者…D

Cが背信的悪意者に当たる場合、Dは「第三者」(177)に当たるかが問題となる。

…この点、背信的悪意者の出現は契約の無効を招来せず、背信的悪意者は無権利ではないといえるので、その転得者も有効に所有権を取得できると解する。

そこで、背信的悪意者からの転得者は、自身が背信的悪意者に当たらない限り、「第三者」に当たると解する。

Q転得者が背信的悪意者である場合の処理

【第二譲受人が背信的悪意者に当たらない場合にQ】

前提:譲渡人…A 第一譲受人…B 第二譲受人‥C 転得者…D

Cは背信的悪意者ではないが、Dが背信的悪意者である場合、Dは「第三者」に当たるかが問題となる。

…この点、前主が確定的に所有権を取得している場合には、法律関係の早期安定の見地から、その後の転得者は、たとえ背信的悪意者であっても「第三者」に当たる(=権利を取得する)と解する。(絶対的構成)

<もっとも>具体的妥当性を図るため、転得者が背信性を遮断するために善意者をわら人形として介在させたような場合には、例外的に背信性は遮断されないと解する。

 

 

Q545Ⅰただし書の「第三者」の意義

「第三者」(545Ⅰただし書)の意義が問題となる。

…この点、双務契約の拘束から債権者を解放するという解除制度の趣旨から、解除によって当該契約は遡及的に消滅すると解する。

そして、同項ただし書の趣旨は、かかる遡及効により害される者を保護する点にあるため、「第三者」とは、解除された契約から生じた法律関係を基礎として、解除までに新たな権利を取得した者をいうと解する。

また、(解除権者には何の帰責性もない以上、)「第三者」は権利保護要件としての登記を具備する必要があると解する。

されに、(債務不履行があったからといって当然に解除されるわけではないため、)「第三者」の善意は不要である。

*反論の中で書くこと。

*あてはめでは、解除であることの認定からすること。

Q解除後の第三者〈処理手順〉

前提:A…解除権者 C…第三者 X…目的物

(1)まず、Aは、Cに対して、所有権(206)に基づくXの返還SQをすることが考えられる。

→本当は、ここで所有権喪失の抗弁+解除してるよって話が出てくるはず。

(2)<これに対して>Cは、「第三者」(545Ⅰただし書)に当たるため、Aは所有権を失うと反論することが考えられる。そこで、同項の「第三者」の意義が問題となる。

545Ⅰただし書の「第三者」の意義のQの論証を展開

*Cは、解除の第三者であるため、「第三者」には当たらないことを認定。

(3)<そうだとしても>解除の遡及効は法的擬制にすぎず復帰的物権変動を観念できるため、二重譲渡類似の関係となり、解除権者と解除後の第三者とは対抗関係(177)に立つと解する。

そこで、第三者は、対抗要件としての登記を具備すれば保護されると解する。

*545Ⅰただし書→177の流れで書くこと。

*詐欺取消し後の第三者とパラレルに考えること。

Q時効取得者と時効完成前後の第三者

…この点、時効取得者は、時効完成の第三取得者に対しては、当事者類似の関係にあるので、登記なくして時効取得を対抗できると解する。

他方、時効完成の第三取得者に対しては、二重譲渡類似の関係にあるので、登記なくしては時効取得を対抗できないと解する。

*それぞれどういう関係にあるのかをしっかり書くこと。

Q共同相続と登記(遺産分割前)

【遺産分割前に自己の持分が譲渡された場合にQ】

遺産分割に、共同相続人の一人が、相続財産である不動産について単独名義の相続登記をして第三者に譲り渡した場合、他の共同相続人は、自己の持分を登記なくして対抗できるかが問題となる。

…この点、共同相続人は、他の共同相続人の持分について無権利であり、登記に公信力がない以上、第三者は権利を取得できず、他の共同相続人は、第三者に対して自己の持分を登記なくして対抗できると解する。

*「第三者」(177)に引き付けて論じる場合がある(∵対抗要件の抗弁)。

*①の持分が譲渡されて、②どこの持分が問題となっているのかを問題提起部分でしっかりと明示すること。

*第三者は、譲渡相続人の持分については、909ただし書(善悪問わず権利保護要件としての登記が必要)で保護される。

*第三者の保護は、94Ⅱ類推適用で図ること。→他の共同相続人は無権利である以上、公信の原則の問題。

*共同相続と登記の問題が出た場合のポイント2つ

自己の持分他人の持分とを分けて考えること

㋑第三者に土地を譲渡した時期に着目(遺産分割や相続放棄のか)

Q共同相続と登記(遺産分割後)

【遺産分割後に、遺産分割により取得した他人の持分が譲渡された場合にQ】

遺産分割によって、当該不動産についての持分が減少した共同相続人の一人が、遺産分割前の自己の持分を第三者に譲渡した場合、遺産分割により権利を取得した相続人は、自己の相続分を超える権利の取得を登記なくして対抗できるかが問題となる。

…この点、遺産分割の遡及効(909本文)は、遺産分割第三者に対する関係では、新たな物権変動と同視できるため、対抗問題(177)として処理すべきである。

そこで、遺産分割により権利を取得した相続人は、その旨の登記を経なければ、第三者に対して自己の相続分を超える権利の取得を対抗できないと解する。

*「第三者」(177)に引き付けて論じる場合がある(∵対抗要件の抗弁)。

*前提として、遺産分割後の第三者は909ただし書によっては保護されないことを書くこと。

*①の持分が譲渡されて、②どこの持分が問題となっているのかを問題提起部分でしっかりと明示すること。

*第三者は、遺産分割により権利を取得した相続人の持分については、一切保護されない(∵譲渡相続人は無権利)。

*いったん移った権利が戻るというわけではないので、取消し後や解除後のように復帰的物権変動にならないので注意。

*遺産分割の譲受人は、譲渡共同相続人の持分については、909ただし書によって権利保護要件としての登記を備えれば、善意・悪意を問わず保護される。<これに対して>遺産分割の譲受人は、対抗問題(177として処理される。

*共同相続と登記の問題が出た場合のポイント2つ

自己の持分他人の持分とを分けて考えること

㋑第三者に土地を譲渡した時期に着目(遺産分割や相続放棄のか)

*改正後は、8992により、遺産分割の前後を問わず、相続分を超える部分については、登記が必要となる。→この場合にも、単に条文を示すだけでなく、従来の議論を書けるとGOOD。

Q相続放棄と登記

【相続放棄後に当該相続人の持分が差し押さえられた場合にQ】

共同相続人の一人の相続放棄、その債権者が当該相続人の相続持分を差し押さえた場合、相続放棄により権利を取得した他の共同相続人は、自己の相続分を超える権利の取得を登記なくして対抗できるか。

…この点、相続放棄は(相続資格の遡及的消滅をもたらすものであり、)遺産分割の場合(909ただし書)とは異なり、遡及効が貫徹されている939

そうだとすると、放棄をした者は初めから相続人ではなくなるから、その者の持分についてなされた差押えは無効となる。

そこで、相続人は、差押債権者に対して自己の相続分を超える権利の取得を登記なくして対抗できると解する。

*「第三者」(177)に引き付けて論じる場合がある(∵対抗要件の抗弁)。

*①の持分が差し押さえられて、②どこの持分が問題となっているのかを問題提起部分でしっかりと明示すること。

*相続放棄の差押えは、当然保護されない(∵939にはただし書がない)。

*相続放棄後は登記なくして対抗できるのに対して、遺産分割後は登記なくして対抗できない理由3つ

→㋐相続放棄は、遺産分割と異なり遡及効が絶対的なものとされている。

㋑相続放棄は、相続開始後短期間のみ可能であり、かつ相続財産に対する処分行為があれば放棄は許されなくなるため、第三者が登場する可能性が遺産分割に比べて高くない

㋒第三者が遺産分割の有無を知ることは簡単ではないのに対し、相続放棄の有無は家庭裁判所で確かめることができる(938以上、第三者を保護するために登記を持ち出す必要はない。

Q遺贈(特定遺贈)・死因贈与と登記

【遺贈を受けた不動産が差し押さえられた場合にQ】

被相続人から特定不動産の遺贈(or死因贈与)を受けた者は、その不動産を差し押さえた相続人の債権者に自己の所有権を登記なくして対抗できるか。

…この点、遺贈(or死因贈与)は被相続人の生前における意思表示に基づく物権変動であり、相続人は被相続人と同一人格であるから、差押債権者と受遺者(or受贈者)は対抗関係に立つと解する。

そこで、受遺者(or受贈者)は、差押債権者に対し、自己の所有権を登記なくして対抗できないと解する。

<もっとも>遺言執行者がある場合には、遺言執行者に遺言の公正な実現を図らせるという1013の趣旨から、(相続人の処分行為は無効であり、)受遺者(or受贈者)は、差押債権者に対し、自己の所有権を登記なくして対抗できると解する。

*「第三者」(177)に引き付けて論じる場合がある(∵対抗要件の抗弁)。

*誰と誰が同一人格であり、誰と誰が対抗関係に立つのかということを混乱しないように注意。

*改正後は、遺言執行者がある場合の処理につき、1013Ⅱ、Ⅲが新設された。

Q遺贈(包括遺贈)と登記

【遺贈を受けた不動産が差し押さえられた場合にQ】

被相続人から包括遺贈を受けた者は、遺贈を受けた財産中の特定の不動産を差し押さえた相続人の債権者に対し、自己の持分を登記なくして対抗できるか。

…この点、(包括遺贈の)受遺者は相続人と同一の権利義務を有することになる(990、896)ところ、相続人は受遺者の持分について無権利であるため、差押債権者は権利を取得できない。

そこで、受遺者は、差押債権者に対して自己の持分を登記なくして対抗できると解する。

*「第三者」(177)に引き付けて論じる場合がある(∵対抗要件の抗弁)。

*共同相続と登記(遺産分割前)のQとパラレルに考えること。

*特定遺贈…遺産の対象が特定の財産である場合や種類によって指定されている

場合exこの土地をあげる

包括遺贈…遺産の全部又は一定割合を対象とする場合ex半分あげる

Q特定財産承継遺言と登記

【特定財産承継遺言がなされた場合にQ】

特定財産承継遺言(1014Ⅱ参照)が特定相続人に対してなされた場合、かかる相続人は所有権取得を第三者(他の相続人からの転得者)に登記なくして対抗できるかが問題となる。

…この点、当該相続人も当該不動産を共同相続する立場にあったことから、かかる遺言は、当該不動産を当該相続人に単独相続させる趣旨であるとみるのが遺言者の合理的意思解釈といえる。

そこで、特定財産承継遺言は、(遺贈であるとみるべき特段の事情のない限り、)遺産分割方法の指定(908と解すべきであって、何らの行為も要せずして、被相続人の死亡時に直ちに当該不動産が当該相続人に承継されるものと解する。

したがって、他の相続人は当該不動産について無権利であるため、第三者は権利を取得できず(「第三者」(177)に当たらず)、当該相続人は、第三者に対して登記なくして物権変動を対抗できると解する。

<ただし>当該相続人は、法定相続分を超える部分については、登記を経なければ、第三者に対抗できない(8992と解する。

*「第三者」(177)に引き付けて論じる場合がある(∵対抗要件の抗弁)。

*共同相続と登記(遺産分割前)のQとパラレルに考えること。

*遺産分割方法の指定と解釈した帰結として、①特段の事情のない限り、何らの行為も要せずして死亡時に当該不動産が承継されること、及び②それが法定相続分の相続の場合と本質において異ならないことの2点がポイント。

*特殊パターン:特定財産承継遺言により相続させるとした推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、遺言者が当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、その効力を生じない(=無効)。

∵遺言者は通常、遺言時における特定の推定相続人に当該財産を取得させる意思を有するにとどまるから。

*代襲相続の可否の問題ではなく、遺言者の遺言の合理的意思解釈の問題である点に注意。

Q制限行為能力者や意思表示の瑕疵・不存在による取消し・無効の場合の相手方

制限行為能力者や意思表示の瑕疵・不存在を理由に処分行為が取り消され、又は無効となった場合に、その相手方に192を適用することができるかが問題となる。

…この点、制限行為能力などを理由に処分行為が取り消され、又は無効となった以上、有効な「取引行為」によって権利を取得したとはいえない。

また、かかる場合に即時取得の規定の適用を認めると、制限行為能力者保護制度や、表意者保護制度(93以下)無意味となる。

そこで、192を適用することはできないと解する。

*192によって治癒されるのは、処分権限の瑕疵のみであって、無効・取消事由の瑕疵が治癒されることはないということ。

Q占有改定と即時取得

【占有改定の方法によって動産の引渡しがなされた場合にQ】

占有改定が「占有を始めた」(192に当たるかが問題となる。

…この点、即時取得は、真正権利者の権利喪失という犠牲の下、譲受人の信頼を保護する制度であるため、保護に値するほどの強い物的支配を確立しなければ「占有を始めた」に当たらないと解する。

そして、占有改定は、占有状態に変化を来さない点で公示の信頼性が低く、強い物的支配を確立しているとはいえない

そこで、占有改定は「占有を始めた」には当たらないと解する。

*「占有を始めた」に引き付けて論じること。

*指図による占有移転と即時取得のQの論証:「そして、指図による移転は、占有状態に変化を来す点で公示の信頼性が高く、強い物的支配を確立しているといえる。そこで、指図による占有移転は、「占有を始めた」に当たると解する。」

*占有改定じゃダメのもの2つ:①即時取得、②質権設定

Q193の回復SQ権の法的性質〈処理手順〉

【即時取得による所有権喪失の抗弁に対する再抗弁としてQ】

前提:A…所有者 B…泥棒 C…第三者 X…目的物

(1)まず、Aは、Cに対して、所有権(206)に基づくXの返還SQをすることが考えられる。

(2)<これに対して>Cは、X(の所有権)を即時取得(192したことにより、Aは所有権を失うと反論することが考えられる。→丁寧に書くなら、他人物売買だから所有権を取得できない。

…本件において、Cは、Bとの売買契約という有効な「取引行為によって」、Xという「動産」を、「善意で、平穏に、かつ、公然と」(186Ⅰ)「占有を始め」ている。また、Cは、Bが権利者であると信じることにつき「過失」もないから、188による無過失の推定を覆す事情もない

そこで、Cの上記反論は認められ、Aの上記SQは認められないとも思える。

*即時取得は、相手方の所有権を失わせる場合に、反論として書くもの。

→即時取得による所有権喪失の抗弁

*推定規定の場合には、「当該推定を覆す事情はない」といった認定をすること。

(3)<もっとも>(Aは、)Xは、Bにより盗まれた「盗品」(193に当たり、2年間は即時取得の効力は発生せず、Aは所有権を失わないと再反論することが考えられる。そこで、193の法的性質が問題となる。

…この点、193は「被害者又は遺失者」と規定しており、主体を所有者に限定していないことから、同条の法的性質は占有の回復SQ権であり、(回復SQまでの間も)動産の所有権は原所有者に帰属すると解する。(原権利者帰属説)

*Aの再反論が認められた場合には、上記AのSQは認められる。

*「所有権あり→所有権失う→所有権失わない」の流れで書くこと。

*「被害者又は遺失者」は、所有者に限られず、動産の賃借人や受寄者も含まれる。

*193の役割2つ

即時取得(192)による所有権喪失の抗弁に対する再抗弁

 占有の回復SQ権の根拠条文

*即時取得の要件である「取引行為」(192)に当たるのは、売買、質権設定、動産売買先取特権、動産譲渡担保、弁済、代物弁済、強制競売などの処分行為としての性質を持つものである。すなわち、処分行為(直接に権利変動を生じさせる行為)は「取引行為」に当たるが、債務負担行為(義務付けを基礎づける行為ex賃貸借)は「取引行為」に当たらない。

Q目的物(盗品等)返還後の代価弁償SQの可否

【代価弁償SQ(194)をする前に目的物を返還した場合にQ】

まず、前提として、194の各要件を満たすことを認定。

<もっとも>Aは、既に目的物をBに返還しているところ、目的物返還後の代価弁償SQの可否が問題となる。

…この点、194の趣旨は、被害者と占有者との保護の均衡にあるところ、目的物を素直に返還した占有者がかえって不利になることはかかる趣旨に反する

そこで、占有者は目的物を返還したであっても、回復者に対して代価をSQできると解する。

*SQする前提として、SQの要件を満たすことの検討を忘れずに。

*被害者には、回復SQ(193)するか否かにつき選択の余地があるから、目的物が直接任意に返還され、被害者が自ら代価弁償を選択して引渡しを受けたと認められる場合に限り、目的物返還後の代価弁償SQをなし得ることに注意。

→任意に返還された場合でも、回復請求する気がなかったら、これは問題にならない。

Q占有者の使用収益権

【使用利益の返還SQ(703、190Ⅰ)がなされた場合にQ】

前提:被害者…A 占有者…B

Aは、Bに対し、目的物の使用利益について不当利得返還SQ(703)をすることが考えられる。

①Bが「善意の占有者」(189Ⅰ)に当たる場合→「法律上の原因」がある

②Bが「悪意の占有者」(189Ⅱ)に当たる場合→「法律上の原因」がない

よって、②の場合(返還請求後)には、Bの上記SQが認められるとも思える。

<もっとも>Bは、代価弁償を受けるまで目的物の使用収益権を有するから、AのSQは認められないと反論することが考えられる。

そこで、194により代価弁償を受けるまで目的物の引渡しを拒むことができる占有者は、その間目的物の使用収益権を有するかが問題となる。

…この点、占有者は、被害者が目的物の返還をあきらめた場合には使用利益を得ることができるが、被害者が弁償を選択した場合には使用利益を返還しなければならないとすると、占有者の地位が不安定になり、不公平である(or194の趣旨に反する)。

そこで、占有者は代価の弁償があるまでは、目的物の使用収益権を有すると解する。

*「法律上の原因」(703)に引き付けて論じること。

*占有者が善意の場合には703を根拠とし、悪意の場合には190を根拠とする。

*帰結:Bは目的物の使用収益権を有する結果、「法律上の利益」があることになる。

*この帰結は、193の法的性質のQにつき、占有者帰属説と親和的な考え方であることに注意。

*189、190は、契約関係にない当事者間の侵害利得に適用される規定であるため、契約関係にある当事者間ではその適用がない

*善意取得者の果実取得には「法律上の原因」があるとして、不当利得返還SQが認められないとするほか、そもそも189Ⅰは703の特則であるとして、不当利得規定の適用が排除されるという考え方もある。

Q相続と「新たな権限」(185)

【被相続人の占有が他主占有であった場合+他主占有者が時効取得をする場合にQ】

被相続人の占有が他主占有であった場合、相続人は185後段によって、自己固有の占有が自主占有に転換したと主張することができるか。

(1)まず、相続により占有も承継されると解するところ、(包括承継人たる)相続人も「承継人」(187Ⅰ)に当たり、相続人は自己固有の占有のみを主張することができると解する。

(2)もっとも、相続が「新たな権限」(185後段)に当たるか。

…この点、真の権利者の時効中断の機会の保障相続人に時効取得を認める必要性との調和の観点から、①相続が新たな事実的支配により占有を開始し、②その占有外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものである場合には、相続は「新たな権限」に当たり、自主占有への転換が認められると解する。

*「所有の意思」の中で論じること。

→あくまで取得時効との関係で問題になることに注意。

*「承継人」→「新たな権限」の流れで書くこと。

*前提として、他主占有者が時効取得するためには、自主占有に転換する必要がある

*要件②の考慮要素

相続人が所有者らしく振る舞うこと(自主占有事情の有無)

㋑㋐の振る舞いが外部に表示されて、権利者が知り得る状態にあること

㋒権利者が、㋐の振る舞いを認識していること

㋓権利者が、㋐の振る舞いを認識しながら、異議を述べていないこと

要件①②を満たした時点が、占有開始時として善意・悪意の判断基準時となる。

×相続時

*要件①②は、時効取得を主張する相続人自身において主張・立証すべきものである。

∵相続人の新たな事実的支配により従来の占有の性質が変更されたものであるため、かかる変更の事実は時効取得を主張する者が主張・立証すべきだから。

→「所有の意思」は推定されない。

Q必要費・有益費 予H28、司H25

必要費:物の保存・管理に必要な費用or物の原状を維持・回復する費用

有益費:物を改良し、物の価値を増加する費用

*書き方:「必要費償還請求権に基づき、○○万円の支払いを求めることが考えられる。」

*必要費・有益費償還請求は、回復者に対してすることができる請求である。

→占有の回復者ではない者に対してはできないので注意。

*必ず定義を書いてからあてはめること。(実感)

*占有者の費用償還SQ権:196Ⅰ、Ⅱ

留置権者の費用償還SQ権:299Ⅰ、Ⅱ

賃借人の費用償還SQ権:608Ⅰ、Ⅱ

*299Ⅰ、Ⅱは、留置権が成立した後に支出した費用を指すので、これを被担保債権として留置権を成立させないように注意。

→あくまで被担保債権は占有者の費用償還請求権であるため、「物に関して生じた債権」に引き付けて論じること。

*有益費かどうかは、客観的に判断する。×回復者の主観

∵趣旨が占有者を保護して費用を回収させる点にあるから。

Q妨害排除SQの相手方(敷地所有者の建物名義人に対するSQ) 司H26、30

【登記名義を保有する建物の元所有者に建物収去・土地明渡SQする場合にQ】

建物の元所有者が登記名義を保有している場合、建物を他に譲渡したことによる建物所有権の喪失を主張して、建物収去・土地明渡しの義務を免れることができるか。

…この点、建物を実際に所有し土地を占有している者に対して建物収去・土地明渡SQするのが原則である。

<もっとも>実質的所有者の探求困難性から、①建物の所有者が自らの意思に基づいて建物所有権登記を具備した場合には、建物を譲渡したとしても、②引き続き登記名義を保有する限り、(土地所有者に対し、)譲渡による建物所有権の喪失を主張して、建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできないものと解する。

*原則→例外の流れで書くこと。

Q物権的SQ権の行使と費用負担

【物権的SQ権の費用負担をSQされた場合にQ+費用負担の話が出てきた場合にQ】

まず、Aは、Bに対して、所有権(206)に基づく妨害排除SQとして、目的物の撤去及びその費用をSQすることが考えられる。

<これに対して>Bは、(目的物に対する自己の所有権を認めた上で、)目的物の撤去費用を負担する義務はないと反論することが考えられる。

(そこで、物権的SQ権を行使する際の費用は誰が負担するのかが問題となる。)

…この点、判例は、物権的SQ権は、原則として相手方の費用負担での行為SQ権であると解する。

<もっとも>①不可抗力に起因する場合、及び②被害者自ら侵害を忍容すべき義務を負う場合には、相手方が費用負担するのは不合理であるため、例外的にSQ者の費用負担での忍容SQ権であると解する。

*物権的SQ権は、相手に行為をSQする権利(行為SQ権)なのか、それとも所有権者が権利行使するのに対し相手に文句を言わせない権利(忍容SQ権)なのかという問題である。

*妨害排除SQと費用負担SQはセットで考えること。

*相手方であるBの反論としては、「目的物の所有権は自己にない。」ということも考えられるので注意。

Q「付合」の意義 司H27

【動産が不動産にくっついた場合にQ】

動産が不動産に「付合」(242本文)した場合、その所有権は不動産の所有者に帰属するため、~(実益ex収去義務を負わない)ではないか。「付合」の意義が問題となる。

…この点、242本文の趣旨は、社会経済的価値の保存にあることから、「付合」とは、付属させられた動産を分離・復旧することが事実上不可能ないし社会経済上著しく不利益な場合をいうと解する。

*権限(242ただし書)に基づいて付属させた場合には、所有権を失わないことから、反論として「権限」があることを主張することが考えられる。

*付合によって損失を受けた者は、償金請求(248することができる。

*償金請求の要件:①付合による受益

②損失

③因果関係

→償金請求は、不当利得(703以下)の特則であるため、これに従った要件検討が必要となる。

*「損失」は付合時を基準に算定すること。

*付合による所有権の移転は、「法律上の原因」に当たらない。そして、248は法律上の原因がないことを前提とした規定である。

*添付のポイント2つ:㋐所有権帰属の問題であり、分離・復旧の請求を認めない。

㋑効果は原始取得

*利得の押し付け

→添付の場合、所有者は復旧を請求できないだけでなく、248により償金債務を負わされることとなる。そして、248には「有益費」の償還に限るといった規定がないため、付属物が所有者にとって不要なものであったとしても、償金請求されれば現存利益額の支払に応じなければならないのが原則である。<もっとも>このように解するのは所有者にとってであるため、所有者にとって不要なものである場合には、「利益の存する」ものとはいえないとして、償金請求権は発生しないとするのが妥当である。

Q共同所有者相互間の明渡SQの可否 予H27

【多数持分権者が少数持分権者に明渡SQする場合にQ】

少数持分権者が共有物の全部を正当な権限によらずに占有している場合(=協議が整ってない場合)、他の共有者(多数持分権者)は、少数持分権者に対して共有物全部の明渡しを求めることができるか。共有者相互間において明渡SQが認められるかが問題となる。

…この点、少数持分権者も、自己の持分権に基づいて共有物を使用する権限を有する(249ため、ほかの共有者の明渡SQは、当然には認められないといえる。

そこで、他の共有者が共有物の明渡しを求めるためには、その明渡しを求める理由が必要となると解する。

*この論点は、明渡請求に対する抗弁として出てくる。

*協議が整っている場合には、それに違反する行為に対しては当然に明渡請求できる。

*明渡しを求める理由は、①全共有者の協議を経て、持分の過半数によって、現に共有物を単独使用する共有者(少数持分権者)による使用を許さない旨の決定がなされた場合や、②少数持分権者の占有手段・態様信義則違反、権利濫用等の一般条項に反するような場合に認められる。

*他の共有者が採り得る手段としては、㋐少数持分権者の占有資格を奪う協議を成立させて返還請求する(この協議の成立が明渡しを求める理由になる)、㋑持分権を他に譲渡する、㋒不当利得や不法行為を根拠に金銭の支払を求める(∵共有持分を超える部分の占有は不法占有に当たるから)などが考えられる。

Q未登記の通行地役権と承役地の譲受人

【未登記の通行地役権の承役地が譲渡された場合にQ】

要役地の所有者は、未登記の通行地役権を、承役地の譲受人に対して主張できる

か。承役地の譲受人が「第三者」(177)に当たるかが問題となる。

…この点、「第三者」とは、登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する者をいう。そして、承役地の譲渡時に、①承役地の継続的利用が客観的に明らかであり、かつ②譲受人がそのことにつき悪意有過失であった場合には、特段の事情のない限り、承役地の譲受人は、上記正当な利益を有しないと解する。

*「第三者」(177)に引き付けて論じること。

*帰結:善意無過失に限り保護される。

*要件①について、客観的に明らかであったか否かは、承役地の位置・形状・構造等(通路といえるか否か)を考慮して判断すること。

*「特段の事情」とは、承役地の譲受人が通路としての使用は無権限でされているものと認識しており、かつ、そのように認識するについては地役権者の言動が原因となっている場合をいう。

*判例は、上記のような場合における通行地役権者は、承役地の譲受人に対し、地役権設定登記手続請求をすることができ、譲受人はこれに応じる義務を負うとしている。

*上記結論は、通路が日常生活に不可欠なものであり、地役権には排他性がないので、承役地の受ける制約はそれほど大きくないという通行地役権の特殊性によるものと理解されている。

*正当な利益を有しないのは、譲受人が要役地の所有者による承役地の継続的利用を知ることができた場合には、譲受人は通行地役権の有無・内容を容易に調査することができ、何らかの負担のあるものとしてこれを譲り受けたものといえるからである。

*譲受人が、たとえ善意であっても保護されない場合があるという珍しいパターン。

*通行地役権は物権であるため、登記をしなければ第三者に対抗できないのが原則である。

*通行地役権の取得時効完成後の承役地譲受人との関係のQも同じ。

Q取立債務(履行のために債権者の行為を要する債務)の特定と弁済の提供

①特定の有無(401Ⅱ):無限の調達義務から解放

→目的物の分離・準備・通知が必要

②弁済の提供(口頭の提供)の有無(493ただし書):履行遅滞責任から解放

→弁済の準備・通知・受領の催告が必要

*①は、代物SQに対する反論として書き、②は、履行遅滞に基づく損賠SQに対する反論として書くこと。

*①の特定の有無の中で本件債務の性質(持参債務か取立債務か)を認定すること。

瑕疵ある物を給付しても「物の給付をするのに必要な行為を完了し」(401Ⅱ)たとはいえない(=特定しない)ので注意。

*②については、493の文言にもかかわらず、債務者は弁済の準備をすれば足り、通知・受領の催告は不要と解されている。そして、答案では、準備がある限り端的にあてはめてしまってOK。

*特定と弁済の提供は同時に生じるとは限らないことに注意。

Q売主の変更権の有無

【売主が不特定物の特定後に過失によって当該目的物を滅失してしまった場合にQ】

不特定物が特定した場合、債務者(売主)に変更権(給付すべき物を他の物と取り換える権利)が認められるかが問題となる。

…この点、特定の趣旨は、債務者の不特定物の調達義務を免れさせ、もって債務者の保護を図る点にあるところ、債務者が特定によって生じる利益を欲しなければ、これを強制する必要はない。

そこで、債権者の利益を害さない限り信義則(1Ⅱ)上、変更権が認められると解する。

*帰結:債務者は変更権を行使することで、債権者からの債務不履行責任を免れることができる。

*信義則上、債務者(売主)に不利益とならなければ、債権者(買主)側からの変更請求権も認められる。

Q債務不履行に基づく損賠SQの要件 予H27、28

  • 具体的な債務と、その不履行(履行遅滞・履行不能・不完全履行)

②履行しないことが違法であること→債務者に留置権や同時履行の抗弁権などがないこと

具体的な損害の発生

因果関係(因果関係の判断基準がQ)

⑤債務者に帰責事由がないこと→金銭債務の場合は不要(419Ⅲ)

*履行不能については、改正により4122で明文化されたため、しっかり引用すること。

*損害と因果関係は必ず分けて検討すること。

*損害とは、債務の本旨に従った履行がなされたならば債権者が有したであろう利益と、不履行によって債権者が現に有している利益との差額をいう。(差額説)

そして、損害を丁寧に認定したい場合にはこれを書くこと。

*⑤について、債務者の免責事由(415Ⅰただし書)については、「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」判断される。そして、あてはめでは、従来のように故意・過失を検討するのではなく、契約の目的・性質、対価関係がつり合っているか否か、当事者の交渉過程、専門家の目線で債務不履行は防止可能なものだったか否か等の事情を考慮し、債務者がどこまでのリスクを引き受けていたかを検討すること。

→答案では、「また、免責事由もない。」みたいな感じで簡単に書いてOK。

*改正により、債務者がその帰責事由の不存在(免責事由の存在)を主張立証することとなった。

*全ての要件を具体的に検討すること。(必ず配点あり)

Q履行補助者の故意・過失 司H25、30

【債務者の帰責事由を認定する場合にQ】

債務者が履行補助者を用いた場合、債務不履行責任を負うか。

…この点、通常の債務不履行責任の判断と同様、債務内容、債務不履行の事実(415Ⅰ本文)、及び「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念」に照らした債務者の免責事由の有無(同項ただし書)を個別的に検討すべきである。

*あてはめでは、単に履行補助者の行為が債務不履行に当たるか、免責事由に当たるか、を検討すること。

*履行補助者の負担する債務(義務)は、債務者の負担する債務(義務)の内容と一致する必要がある。よって、履行補助者が、債務者が負担する義務以外の義務に違反した場合には、これによって生じた損害につき、債務者は責任を負わない。

Q安全配慮義務の認定の仕方 予H30

【SQの基となる契約関係が存在しないことからQ】

(パターン1:AB間に何らかの直接の契約関係が存在する場合)

まず、Aは、Bに対して、債務不履行に基づく損賠SQ(415)をすることが考えられる。

では、Bが「債務の本旨に従った履行をしな」かったといえるか。

…この点、契約関係という緊密な関係にある当事者は、当該契約関係の付随義務として、相手方の生命・健康などを危険から保護するよう(安全に)配慮すべき信義則(1Ⅱ)上の義務を負うと解する。

そこで、かかる安全配慮義務違反が認められる場合には、債務不履行責任を負うと解する。

*「債務の本旨に従った履行をしないとき」に引き付けて論じること。

*あてはめでは、①当該事案における具体的な義務を安全配慮義務として負っていること、②その義務の懈怠があること、の2点を検討すること。

*論証の中で具体的な義務を明示しないように注意(あくまで、一般・個別を意識)。

*安全配慮義務違反が認められたとしても、債務不履行要件しか満たしていないので、これ以外の要件検討を忘れずに。

*不法行為責任における「過失」の要件でも使える。

(パターン2:AB間に直接の契約関係が何ら存在しない場合) H30

まず、Aは、Bに対して、債務不履行に基づく損賠SQ(415)をすることが考えられる。

<もっとも>AB間には直接の契約関係は存在しないところ、Bが「債務の本旨に従った履行をしな」かったといえるか。

…この点、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係にある当事者は、当

該法律関係の付随義務として、相手方の生命・健康などを危険から保護するよう

配慮すべき信義則(1Ⅱ)上の義務を負うと解する。

*あてはめでは、①特別な社会的接触の関係にあること、②当該事案における具体的な義務を安全配慮義務として負っていること、③その義務の懈怠があること、の3点を検討すること。

Q因果関係の判断基準 予H28、司H24

【債務不履行と損害の発生との間に因果関係がなさそうな場合にQ】

因果関係の判断基準が問題となる。

…この点、416の趣旨は損害の公平な分担にあることから、Ⅰは相当因果関係の原則を規定し、Ⅱはその基礎とすべき特別の事情の範囲を示すものと解する。

そして、「当事者」とは、債務者を意味し、債務不履行時に予見すべきといえれば足りると解する。

→ここまで書くこと。(司H24実感)

*特別損害:当該債務不履行の場合に特有の事情によって発生した損害

*因果関係について考える場合に、予見可能かな?っていう思考に陥った時点で特別損害だと思ってOK。

*あてはめでは、①Ⅱで予見すべき事情であり、基礎事情に組み込まれるとして、②では、Ⅰの相当因果関係があるか?という流れで検討すること(②を検討し忘れないように注意)。

*損賠SQ債務の債務者が、債務不履行時に、損害を予見すべきということを、債権者において立証する必要がある。

 

 

Q債務不履行責任における損害賠償額の算定時期

【履行不能の場合にQ】

損害賠償額の算定時をいつとすべきかが問題となる。

…この点、原則として履行不能(債務不履行)時を基準とすべきである(416Ⅰ)。

<もっとも>①目的物の価額が騰貴しつつあるという特別の事情があり、かつ②履行不能時において、債務者がかかる特別の事情を予見すべきであった場合には、騰貴した現在の価格を基準とすべきである(416Ⅱ)。

また、目的物の価格がいったん騰貴し、後に下落した場合には、㋐目的物の価格が騰貴しつつあるという特別の事情があり、かつ㋑履行不能時において、債務者がかかる特別の事情を予見すべきであり、㋒債権者が転売等によって騰貴利益を確実に取得できたであろうことを債務者が予見すべきであった場合には、中間最高価格を基準とすべきである(416Ⅱ)。

*①②㋐㋑㋒はすべて債権者が主張立証責任を負う。

Q履行利益と信頼利益

①履行利益(+⇒0):契約が有効であり、それが完全に履行されていたら債権者が受けていた利益

ex転売利益、営業利益、債務不履行責任、契約不適合責任

②信頼利益(0⇒-):契約が無効・不成立となった場合に、それを有効に成立すると信頼したために被った損害

ex代金支払のために融資を受けた利息

*損害賠償について、改正後は、契約不適合を理由とする場合も過失責任となる(546・415ただし書)。

また、信頼利益だけでなく履行利益まで契約不適合に基づく損害賠償の範囲に含まれることになる。

*これらは損害概念であって、損害賠償の範囲の問題ではない。よって、契約不適合責任に基づいて「信頼利益」の全てが損害賠償の範囲に入るわけではなく、損害賠償の範囲は416によって決まる。

Q第三者の債権侵害と不法行為の成否〈処理手順〉

【自己が有する権利ではなく、他人に対する権利が侵害を受けた場合にQ】

債権侵害を理由に不法行為(709)に基づく損賠SQできるか。

Q1:債権侵害が、「権利……侵害」といえるか否かが問題となる。

…この点、債権も財産権である以上、その侵害行為は「権利……侵害」といえる(いい得る)と解する。

*この論点は、①そもそも債権侵害が、「権利……侵害」といえるか?という問題であるため、②では、本件において債権侵害があったといえるか?ということの検討も忘れずに。

*明らかな違法行為によって債権侵害があった場合には、ここで終わり。

Q2:<もっとも>権利侵害といえるためには、違法性を要すると解されるところ、債権には公示性がないことから、第三者による権利侵害には違法性が認められないのではないかが問題となる。

【侵害行為が明らかに違法とはいえない場合に限ってQ】

…この点、債権の非公示性及び自由競争原理の見地から、侵害行為が公序良俗や強行法規に反する場合にはじめて違法性が認められ、「権利……侵害」といえると解する。Rf背信的悪意者

*あてはめでは、本件の事情を考慮して個別具体的に検討すること。

*侵害行為といえるためには、その前提として、第三者が債権の存在を認識している必要がある。

Q受領遅滞を理由とする解除・損賠SQの可否〈処理手順〉

【債権者が受領を拒んだことにより、債務者が損害を被った場合にQ】

(1)まず、前提として、受領遅滞(413)があることを認定。

*要件:①弁済の提供、②受領拒絶又は受領不能

*本件債務が、「履行のために債権者の行為を要するとき」である場合には、①要件を丁寧に認定する必要がある⇒ex「本件債務は、取立債務であり、「履行のために債権者の行為を要するとき」(493ただし書)に当たる。そして、債務者は、「弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告」をしているため、弁済の提供があったといえる。」

(2)では、債務者は、(債権者の受領遅滞を理由に契約を解除した上、)目的物の保管費用等の(債権者の受領の遅れにより生じた)損害につき、賠償SQできるか。

受領遅滞を理由とする解除及び損賠SQの可否が問題となる。

…この点、債権を行使し目的物を受領することは、権利であって義務ではない(し、413も受領義務を認めていない)。

そこで、受領遅滞を理由とする(解除及び)損賠SQは認められないと解する。

<もっとも>債権者が受領しなければ債務者に不利益が生じることが、㋐当事者双方にとって、㋑明白であるような特段の事情がある場合には、債権者に信義則(1Ⅱ)上の受領義務が生じ、その不履行につき債権者に帰責性などがあれば、(解除及び)損賠SQが認められると解する。

*<もっとも>~以下は、a目的物の保管がきかない場合や、b引き渡さなければ他に使い道がない場合、c保管費用が多大にかかる場合に限って書くこと。

*あてはめでは、「双方」と「明白」の認定をしっかりすることがポイントである。

*この論点は、あくまで受領義務が認められるかどうかの論点であるため、受領義務違反があったとして、解除できるかどうかは、全く別の話である。すなわち、解除するためには、催告・期間の経過などの要件検討が必要となる。

Q原状回復請求権と同時履行の抗弁権

契約の取消し又は無効により、互いに原状回復請求権を有する場合(121の2Ⅰ)、両請求権は同時履行の関係に立つか。

…この点、<たしかに>原状回復義務は双務契約上の債権債務ではない。

<しかし>互いの原状回復義務は、一個の法律関係から生じており、対価的牽連性を有する。また、かかる場合にも、当事者間の公平という533の趣旨が妥当する。

そこで、互いの原状回復請求権は同時履行の関係に立つ(533類推適用)と解する。

<もっとも>同時履行の抗弁権を主張することが当事者間の公平を害する場合には、信義則(1Ⅱ)上、かかる主張は認められないと解する。

 

 

Q受取証書・債権証書と同時履行の抗弁権

…この点、二重弁済の危険から、受取証書の受領と弁済とは同時履行の関係に立つ(486参照)と解する。

<これに対して>受取証書を受領できれば二重弁済の危険はない以上、債権証書(ex契約書)の受領と弁済は同時履行の関係に立たない(487参照)と解する。

Q建物買取SQ権と同時履行の抗弁権

【土地明渡SQに対して建物買取SQ権が行使された場合にQ】

建物買取SQ権が行使された場合、土地の明渡しと建物代金の支払は同時履行の関係に立つか。両者は対価関係にないため問題となる。

…この点、建物買取SQ権によって対価関係に立つのは、建物代金の支払と建物の明渡しのみであるが、このことの反射的効果として土地の明渡しをも拒絶できると解する。

そこで、土地の明渡しと建物代金の支払とは同時履行の関係に立つと解する。

*建物買取SQ権は、買取SQ権者の一方的意思によって当然に売買契約が成立する形成権である。+強行規定でもある。

*判例:留置権の併存を肯定

Q造作買取SQ権と同時履行の抗弁権

【建物明渡SQに対して造作買取SQ権が行使された場合にQ】

造作買取SQ権が行使された場合、建物の明渡しと造作代金の支払は同時履行の関係に立つか。両者は対価関係にないため問題となる。

…この点、建物と造作では著しい価値の差があるため、同時履行の抗弁権を認めると、かえって公平の理念に反する

そこで、建物の明渡しと造作代金の支払は同時履行の関係に立たないと解する。

*判例:留置権の併存を否定

Q二重の催告の要否

期限の定めのない債務について債務者が履行しない場合、債権者は412Ⅲの「SQ」をしてその後に541の「催告」をしなければ、解除できないか。

期間の定めのない債務について解除権が発生するためには、二重の催告が必要かが問題となる。

…この点、債務者が履行遅滞にあることは、解除権発生の要件にすぎず「催告」(541)の要件ではない

そこで、二重の催告は不要であり、債権者は一度相当の期間を定めて催告をし、債務者を遅滞に陥れれば、重ねて催告する必要はなく、相当期間の経過によって解除権が発生すると解する。

*この論点は、解除権の発生に関する論点である。

*この論点は、あくまで期限の定めのない債務に限って問題となる。

Q 付随義務違反を理由とする契約全体の解除の可否

【情報提供義務や説明義務の違反があった場合にQ】

Aは、本件契約の解除(541)を主張することが考えられる。

では、「債務の不履行」があったといえるか。

…まず、本件契約における具体的な付随義務を認定。

そして、双務契約の拘束から債権者を解放するという解除制度の趣旨から、当該付随義務違反が契約の目的を達成できないほど重大である場合には、付随義務違反を理由に契約全体の解除をなし得ると解する。

*債務不履行要件の中で論じること。

*付随義務違反が認められたとしても、債務不履行要件しか満たしていないので、これ以外の要件検討を忘れずに。

*付随義務とは、契約締結によって発生する、必要な情報を提供する義務使用方法について説明する義務などのことをいう。

*改正後は、債務の不履行が「契約及び取引上の社会通念に照らして軽微である」か否かに従って判断される。そして、軽微性の判断に当たっては、ある債務の履行が契約目的達成に必要不可欠か(or重大な影響を与えるか)どうかを考慮すること。

Q二つ以上の契約のうち一方の契約の不履行を理由とした他方の契約解除の可否

【契約を二つと考えた場合にQ】

まず、前提として、二つ以上の契約が別個独立の契約であることを認定。

では、同一当事者間(前提要件)で、二つの契約が締結されている場合において、一方の契約の不履行を理由に、他方の契約を解除し得るかが問題となる。

…この点、各契約は別個の契約であるため、一方の契約の不履行は他方の契約の解除権発生原因とはならないのが原則である。

<もっとも>双務契約の拘束から債権者を解放するという解除制度の趣旨から、一方の契約の不履行によって、債権者が契約の目的を全体として達成できないような場合には、解除を認めるべきである。

そこで、①二つの契約の目的(=内容)が密接に関連し、②いずれかが履行されるだけでは契約の目的が全体として達成できないような場合には、一方の契約の不履行を理由に、他方の契約の解除をなし得ると解する。

*そもそも解除できるのか?という問題である。

*二つの契約を分けて書くこと。そして、この論点は、債務不履行がない方の契約の解除で問題になる話である。

→債務不履行がある方の契約の解除⇒債務不履行がない方の契約の解除という流れで書くこと。

*要件①の「目的」は、契約に基づく給付の内容という意味であり、要件②の「目的」は、契約を締結した狙いという意味である。

*要件①では、二つの契約の㋐同時性、㋑随伴性、㋒相互補完的必要性を検討すること。

*要件②では、債務不履行が重要な要素であったか否かを考慮すること。

*形式的にみて、契約が異なる当事者間で締結された場合には、「同一当事者間で二つの契約が締結されたこと」を要件①として書くこと(すなわち、要件は3つになる)。

*上記論証は、改正後の催告解除でも無催告解除でも使える。

*改正後は、542Ⅰ③類推適用(直接適用ではない)という法律構成も考えられる。

そして、その場合、上記の要件を542Ⅰ③に読み込んで解釈する。

ただし、難しいので、541で処理する方が無難である。

Q数量指示売買

【単位当たり×数量で代金が定められた場合にQ】

数量に関する契約不適合責任(562以下)が認められるためには、売買の「目的物」が「数量に関して契約の内容に適合しない」といる必要がある。

…この点、数量に関する契約不適合の判断は、一定の数量を基礎として代金額が定められたか否かを基準に判断する。

Q契約不適合責任の期間制限

「買主がその不適合を知った時」及び「通知」の意義が問題となる。

…この点、「買主がその不適合を知った時」(566本文)とは、売主に対し契約不適合責任を追及できる程度に確実な事実関係を知った時をいうと解する。

また、「通知」(566本文)の趣旨は、売主に対し、契約不適合の存在を知る機会を与える点にあるため、「通知」とは、単に契約の不適合がある旨を抽象的に知らせるだけでなく、不適合の内容を把握できる程度に、不適合の種類・範囲を具体的に知らせる必要があると解する。

Q契約不適合責任と錯誤の競合

【契約不適合責任に基づくSQと錯誤に基づくSQとの両方がSQできる場合にQ】

契約不適合責任に基づくSQと錯誤に基づくSQとの両方がSQできることを前提に、両者が競合した場合、どちらが優先するかが問題となる。

…この点、これらは別の制度であり優先関係はない上、選択的な主張を認めた方が買主保護に資する

そこで、買主は両者を選択的に主張できると解する。

*契約不適合責任優先説の論証:「この点、短期の期間制限(566本文)を定めている点で、契約不適合責任は錯誤の特則であるため、契約不適合責任が優先すると解する。」

*答案の分量上、片方しか書けない場合には、冒頭で優先する方を論じた上で、そちらのみを書くというテクニックもある。

Q土地賃借権付き建物売買のおける敷地の瑕疵

【敷地に物理的欠陥があった場合にQ】

土地賃借権付き建物売買において、敷地物理的欠陥があった場合、買主は売買の目的物である賃借権(87Ⅱ類推適用、370類推適用)「品質に関する契約不適合」があるとして、売主(元土地賃借人)の契約不適合責任(562Ⅰ)を追及できるか。敷地の瑕疵が賃借権の「品質に関する契約不適合」といえるかが問題となる。

→土地利用権が賃借権の場合

…この点、売買の目的物は、建物の敷地そのものではなく、その賃借権であり、敷地の欠陥は、修繕義務(606Ⅰ)を負う賃貸人にその修繕を請求すべきである。

また、債権の売主が債務者の資力を当然には担保しないとされる(569)こととの均衡を図る必要もある。

そこで、敷地の瑕疵は売買の目的物たる賃借権の「品質に関する契約不適合」には当たらず、建物の買主は、売主の契約不適合責任を追及できないと解する。

*建物を買っただけだから、87Ⅱ類推適用、370類推適用から書き始めること。

*買主は、売主ではなく、賃貸人に対しては、当然に修補請求(606Ⅰ)及び契約不適合責任(559562Ⅰ)を追及できるので注意。

*土地利用権が地上権の場合の論証:「この点、地上権は設定者を介することなく、直接土地を使用する物権であるから、使用できなければ権利の瑕疵といえる。また、土地の所有者(地上権の設定者)は物権の負担を負うのみで修繕義務を負わないため、解除を認めなければ買主を保護することが出来ない。そこで、敷地の瑕疵は売買の目的物たる地上権の「品質に関する契約不適合」に当たり、建物の買主は、売主の契約不適合責任を追及できると解する。」

Q第三者のためにする契約(537Ⅰ)のポイント2つ

①要約者と諾約者との間の補償関係は、第三者のためにする契約の内容となり、その不存在や瑕疵は、契約の効力に影響を及ぼす

②要約者と受益者との間の対価関係は、第三者のためにする契約の内容とはならず、その不存在や瑕疵は、契約の効力に影響を及ぼさない

Q債務者の事後承諾の効力

【譲渡制限特約に違反した債権譲渡に債務者が承諾した場合にQ】

譲渡制限特約に違反した債権譲渡がなされた場合において、債務者が事後的に承諾した場合、当該債権譲渡は有効となるか。

…この点、466が悪意・重過失の譲受人に対し譲渡制限特約の対抗を認めた趣旨は、債権者確定手続の煩雑化を避け、債務者の便宜を図る点にあるところ、かかる債務者が承諾している場合には、これを有効として構わないはずである。

そこで、(明文の規定はないものの、)債務者が承諾した場合には、譲渡制限特約をもって譲受人に対抗することができないと解する。

*帰結:承諾前の第三者に対してはその有効性を対抗できない。

*譲渡制限特約付き債権が預貯金債権の場合の論証:「この点、預貯金債権については、譲渡制限特約違反の債権譲渡は無効となる4665Ⅰ)が、譲渡制限特約は債務者の便宜を図るためのものである以上、債務者が承諾している場合には、これを有効として構わないはずである。そこで、債務者が承諾した場合には、116条を類推適用し、債権譲渡は譲渡時に遡って有効になると解する。<ただし>116ただし書に照らし、第三者の権利を害することは許されないと解する。」

Q債権の二重譲渡(1)

【両譲受人が確定日付ある証書による通知を備えている場合にQ】

本件債権は、XからAとBに二重に譲渡され、両者共に確定日付ある証書による通知(又は承諾)(467Ⅱ)を具備しているが、かかる場合でもAが本件債権を取得するか。両者の優劣が問題となる。

…この点、467の対抗要件制度の趣旨は、債権譲渡に関する債務者の認識を通じて、債務者により公示機能を営ませようとした点にあるため、債務者が債権譲渡の事実を知る必要がある。

そこで、両譲受人の優劣は、通知の到達した日時(又は債務者の承諾の日時)の前後によって決まると解する。

*Aが本件債権を取得するか?という実益まで書くこと。

*あくまで両譲受人が対抗要件を備えている場合の論点なので注意。

Q債権の二重譲渡(2)

【確定日付ある通知が複数同時に到達した場合にQ】

債権が二重譲渡され、確定日付ある通知が複数同時に到達した場合(先後不明の場合も含む)、いずれの譲受人が優先するか。

…この点、同時到達の場合には、両者共に対抗要件を具備しており、また債務者も義務を免れる理由はない

そこで、各譲受人は、債務者に対して全額の履行をSQでき、債務者は他に譲受人がいることを理由にそのSQを拒むことはできないと解する。

*帰結:先にSQした方が勝つ。

*確定日付ある通知が先後不明で到達し、債務者がそれを供託した場合には、各譲受人は、供託金額を按分した額の供託金返還SQ権をそれぞれ分割取得する。

すなわち、債務者にSQした場合と、供託したお金を供託所にSQした場合とでは処理が違うことに注意。

Q債権の二重譲渡(3)

【譲受人の一人が、全額の弁済を受けた他の譲受人に対して分配SQした場合にQ】

債権が二重に譲渡され、確定日付ある通知が複数同時に到達した場合において、債務者が譲受人の一人に全額弁済した場合、他の譲受人は、弁済を受けた譲受人に対して分配SQできるか。

…この点、譲受人相互間に優劣がない以上、債権者平等の原則が妥当する。

そこで、公平の観点から、他の譲受人は債権額に応じて(按分比例)、不当利得に基づく分配SQできると解する。

Q将来集合債権譲渡の有効性 予H25、司R1

【将来発生する複数の債権を譲渡した場合にQ】

本件債権譲渡は将来集合債権譲渡に当たるところ、その有効性が問題となる。

…この点、①目的債権が特定されており、②債権譲渡が公序良俗(90に反しなければ有効となると解する。

*将来か集合かで要件が変わるのではなく、債権か物かで要件が変わる。

*要件①は、対象となる債権の範囲が明確になっていればOK(他の債権と識別できるか)。

*要件①の考慮要素4つ:㋐当事者、㋑発生原因、㋒成立時期、㋓金額

*要件②の考慮要素4つ

期間の長さ等の契約内容

契約締結時における譲渡人の資産状況

 ㋒契約締結時における譲渡人の営業等の推移に関する見込み

㋓契約が締結された経緯

*要件②について、期間の長さ等の契約内容が、a譲渡人の営業活動を不当に制限したり、b他の債権者に不当な不利益を与えたりするものである場合には、公序良俗に反し、当該債権譲渡契約は無効となる。

*将来集合債権譲渡担保の有効性のQも同じ要件が問題となる。(予H25)。

Q二重資格者の負担割合

【保証人と物上保証人の二重資格を有する者がいる場合にQ】

前提:BのAに対する400万の債務につき、保証人C、物上保証人Dがいる場合に、Dが保証人でもあった場合

まず、債務を消滅させたCは、AがDに対して有していた権利をAに代位して

行使することができる500501。そして、保証人と他の求償者との負担割合は頭数に応じて平等であり501Ⅲ④)、Cは支払った額の半額である200万円の限度で代位し、Dが有する甲土地について抵当権を行使できるとも思える。

<もっとも>Dは物上保証人の地位をも兼ねているところ、かかる場合の代位の割合が問題となる。

…この点、同号の趣旨は公平の理念にあるところ、二重資格者故に二人分を負担させることはかかる趣旨に反する

また、担保物の価格を考慮して代位の割合を決することは、基準が不明確であり困難である。(=物上保証人として扱うのは困難)

そこで、二重資格者も頭数を基準に1人の保証人として扱うと解する。

*物上保証人としての地位を否定するわけではない以上、頭数で分割された額の限度で物上保証人としての責任を負う。

Q代理人と称した者が「受領権者……以外の者であって、取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するもの」に当たるか

代理人と称した者に対する弁済も、債権の「受領権者……以外の者であって、取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するもの」に対する弁済(478)として有効になるか。かかる者が「受領権者としての外観を有するもの」に含まれるかが問題となる。

…この点、同条の趣旨は、弁済の簡易迅速な処理を図り、受領権限者たる外観を信頼した債務者を保護する点にあるところ、代理人と称した者もかかる外観を有する。

(また、契約締結段階の場面とは異なり、既に弁済義務が発生し、遅滞責任の危険を負う弁済者に、代理人の受領権限を確実に調査せよと要求するのは酷である。)

そこで、代理人と称した者も債権の「受領権者としての外観を有するもの」に含まれ、弁済者が善意無過失である場合には、弁済は有効となると解する。

*「受領権者としての外観を有するもの」に引き付けて論じること。

*478の要件2つ

①弁済受領者が「受領権者としての外観を有するもの」に当たること

  • 弁済者が善意無過失であること

QATMによる払戻しへの478の適用の可否〈処理手順〉

【無権限者がATMで預金を払い戻した場合にQ】

1まず、Xは、本件預金の預金者ではないため、払戻し権限を有しない。

そのため、Y銀行のXに対する払戻しは、原則として無効である479参照)

2<もっとも>Xのような通帳持参者に対する払戻しが常に無効となると、金融機関が二重弁済の危険を負うことになり、妥当でない。

そこで、Y銀行の払戻しは478により有効とならないか。

(1)Q1:まず、ATMによる払戻しに同条が適用されるか。

…この点、同条の趣旨は、弁済の簡易迅速な処理を図り、債務者を保護する点にあるところ、かかる趣旨は、ATMのような機械による払戻しについても妥当する

そこで、ATMによる払戻しにも同条を適用し得ると解する。

(2)次に、Xが「受領権者としての外観を有するもの」に当たることを認定。

(3)では、Y銀行に過失があるといえるか。

Q2:ATMによる払戻しに銀行が負う注意義務の内容が問題となる。

…この点、ATMによる払戻しは、窓口による場合と異なり、弁済受領者の権限の確認について銀行側が一方的に組み立てたシステムにより機械的・形式的に行われ、行為者の人格同一性を個別に問わないものである。

そこで、銀行は、システムの設置管理全体について、可能な限度で無権限者による払戻しを排除し得るよう構築・運営する注意義務(ex預金者による暗証番号等の管理に遺漏がないようにさせるため、通帳機会払いの方法により預金の払戻しが受けられる旨を預金者に明示すること)を負うと解する。

*478の「善意」とは、無権利者であることを知らないというだけではなく、積極的に真正の権利者と信じたことをいう(積極的信頼)。

*受領権者としての外観を有する者への弁済の効果

①弁済は有効

②真の権利者から受領者に対して不当利得の返還請求ないし不法行為による損害賠償請求ができる

③弁済者は受領者に対して、受領物の返還請求をすることはできない

Q相殺の書き方

…Aは、甲債権を自働債権、乙債権を受働債権とする相殺(505Ⅰ)をし、乙債権はその対当額において消滅したと反論することが考えられる。

*ポイント2つ

①自働債権と受働債権をそれぞれ具体的に明示すること。

②相殺を主張してどうしたいのか?(=受働債権の消滅)という実益部分まで書くこと

Q双方の債権が不法行為によって生じた場合

受働債権が不法行為によって生じた場合には、相殺は許されない(509各号)が、自働債権も不法行為によって生じた債権である場合には、相殺が許されないか。

…この点、双方の債権が不法行為によって生じた場合でも、被害者に対する現実の支払確保という509の趣旨は妥当する。

そこで、かかる場合でも相殺は許されないと解する。

*509の趣旨2つ

被害者に対する現実の支払確保

不法行為の誘発防止

Q差押えと相殺の優劣

【自働債権の弁済期が未到来の場合にQ】

弁済期の到来している受働債権が差し押さえられ、自働債権の弁済期が未到来の場合、第三債務者は、自働債権の弁済期到来後の相殺を差押債権者に対抗できるか。(511は、受働債権の差押え後に取得した自働債権による相殺を禁止するのみであるため、問題となる。)

…この点、受働債権につき担保権を有するにも似た地位が与えられるという相殺の担保的機能を重視し、相殺への期待を保護すべきである。

そこで、511の文言どおり反対解釈し、自働債権が受働債権の差押えに取得されたものである限り、弁済期の前後を問わず、第三債務者は差押債権者に相殺を対抗できると解する。

→対抗できるだけであって、相殺できるわけではないので注意。

*自働債権が差し押さえられた場合には、処分禁止効により、当然に相殺は認められない。

*実際に相殺するためには、相殺適状に達すること、すなわち、自働債権の弁済期が到来することが必要である。

*改正後は、この論点が511によって明文化された。

Q「前の原因」(469Ⅱ①)の意義

…この点、469Ⅱ①が「対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権」を自働債権とする相殺を肯定するのは、相殺への合理的期待が認められるからである。

そうだとすれば、自働債権の発生原因が形式的に対抗要件具備時より前に生じていたというだけでは足りず、自働債権と受働債権の内容及び関連性等の事情を考慮し、具体的な相殺への合理的期待が直接的に認められるか否かによって判断すべきと解する。

*債権発生の原因が、具体的な相殺期待を生じされる程度に直接的なものである必要があるということ。

*511Ⅱの「前の原因」の意義のQも同じ論証である。

Q債権譲渡と相殺の優劣〈処理手順〉

【自働債権の弁済期が未到来な場合にQ】

弁済期の到来している受働債権が譲渡・通知され、自働債権の弁済期が未到来の場合、第三債務者は、自働債権の弁済期到来後の相殺を譲受人に対抗できるか。

Q1:まず、債務者の相殺の意思表示は、債権譲渡通知になされているところ、債権譲渡通知後の相殺による債権消滅が、「事由」(468Ⅰ)に当たるかが問題となる。

→通知前だったら当然に対抗可能。通知後だからこそ問題になる。

…この点、債権譲渡に関与しない債務者保護の観点から、通知時点抗弁事由それ自体が発生している必要はなく、抗弁事由発生の基礎となる事由が存在していれば足りると解する。

*「事由」に引き付けて論じること。

*あてはめ:「通知時点で、債務者が譲渡人(債権者)に対する債権を取得していれば、抗弁事由発生の基礎となる事由が存在しているといえる。よって、「事由」に当たる。」

Q2:次に、債権譲渡通知に債務者が譲渡人に反対債権を有していれば、債務者は、両債権の弁済期の前後を問わず、相殺をもって譲受人に対抗できるか。

…この点、受働債権につき担保権を有するにも似た地位が与えられるという相殺の担保的機能を重視し、相殺への期待を保護すべきである。

そこで、債権譲渡通知に取得した債権である限り、債務者は、弁済期の前後を問わず、相殺をもって譲受人に対抗できると解する。

→対抗できるだけであって、相殺できるわけではないので注意。

*「受働債権につき担保権を有するにも似た地位が与えられる」とは、自働債権を被担保債権とする担保権が、受働債権に設定されている場合と同視できるということである。Rf債権質

*改正後は、469Ⅰによって明文化された。

Q逆相殺と順相殺の優劣

【逆相殺と順相殺が両方行われた場合にQ】

債権の譲受人が第三債務者に対してする相殺(逆相殺)と、第三債務者が譲渡人に対してする相殺(順相殺)とのいずれが優先するか。両者の相殺は両立し得ないため問題となる。

…この点、相殺の遡及効(506Ⅱ)も、相殺前に生じた法律関係の変更を覆す効力を有するものではない

また、いったん相殺適状が生じていたとしても、相殺の意思表示がなされる前に一方の債権の消滅が生じていた場合には、債権の対立を欠き、相殺適状は消滅する。

そこで、相殺の意思表示を先になした者が優先し、その後の相殺は無効と解する。

Q「当時者の一方」の意義(改正後は消滅)

【解約手付による解除をする場合にQ】

既に履行に着手した当事者は、解約手付による解除557Ⅰ)をなし得るか。

同項が「当事者の一方が履行に着手」と規定するため問題となる。

…この点、同項が解除権行使を制限した趣旨は、履行に着手した当事者を解除による契約の遡及的消滅から保護する点にある。

そこで、「当事者の一方」とは、解除により不利益を受ける者、すなわち解除の相手方をいうと解する。

*帰結:自ら履行に着手している場合でも、相手方が未だ履行に着手していない限り、自由に解除権を行使し得る

*「履行に着手」

債務の内容たる給付の実行に着手すること、すなわち客観的に外部から認識できるような形履行行為の一部をなし、又は履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をすること。

ex第三者所有不動産の売買で、売主がその第三者から不動産の所有権を取得して登記を得ることや履行期到来に、履行の準備(代金を用い)をして請求(催告)することは履行の着手に当たる(履行期到来でも履行の着手はあり得る)。

Q旧賃貸人との間の債務不履行と解除

【旧賃貸人との間の債務不履行を理由に、新賃貸人が解除権を行使した場合にQ】

旧賃貸人との間の債務不履行を理由に発生した解除権は、新賃貸人に移転するか。

…この点、継続的契約たる賃貸借契約の解除は遡及効をもたない(620ため、賃貸人たる地位は将来に向かってのみ移転し、既に発生した解除権は、原因となる個別の債権が移転しない限り、新賃貸人に移転しないと解する。

*この論点は、解除権の移転に関する論点である。

*解除権が移転しない場合でも、新賃貸人との関係で新たに賃借人の債務不履行があり、信頼関係が破壊されるに至った場合には、新賃貸人の下で新たに解除権が発生する。

*解除権は契約当事者のみ行使できる権利なので、賃貸人たる地位にあるものでなければ行使できない。

*無断転貸解除を根拠に、賃貸借契約の終了を主張する場合の処理マニュアル

①解除を主張するためには、賃貸人たる地位を有することが必要

賃貸人たる地位の移転のQ解除する場合の登記の要否のQが問題となる。

②解除を主張するためには、解除権が発生していることが必要

無断転貸の場合の解除権の制限のQが問題となる。

③解除を主張するためには、解除権が移転していることが必要

旧賃貸人との間の債務不履行と解除のQが問題となる。

Q無断転貸(・譲渡)の場合の解除権の制限 予実H25、司H29

【無断転貸がなされた場合にQ】

前提:A…賃貸人 B…賃借人

Aは、Bに対し、解除612Ⅱ)による本件賃貸借契約(601)の終了に基づき、本件建物の明渡しをSQすることが考えられる。

そして、Bは、Aの承諾なく本件建物を転貸しているため、Aに解除権(612Ⅱ)が発生していると主張することが考えられる。

<これに対して>Bは、本件転貸には、背信的行為と認めるに足りない特段の事情があり、解除権は発生していないと反論することが考えられる。

そこで、無断転貸により当然に解除権が発生するかが問題となる。

…この点、612Ⅱの根拠は、無断転貸をすると、継続的契約たる賃貸借契約の基礎である人的信頼関係が破壊される点にある。→使用方法や占有状態が変わるため。

そこで、無断転貸が、賃借人の背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合には、解除権は発生しないと解する。

*この論点は、解除権の発生に関する論点である。

*改正後は、613Ⅲただし書の中で問題になる。

*無断転貸の要件は、①承諾なく、②転貸し、③使用収益したこと、である。

*背信性の有無の考慮要素

①転貸の動機・目的営利的人道的か)

②転貸の範囲(転貸部分が一部全部か)→2分の1は大きいと評価

③転貸の継続性(転貸が一時的継続的か)

④目的物の利用状況変化の有無(ex石材置場→建物使用)

⑤目的物の利用主体変更の有無(転貸人が賃借人の親族全くの赤の他人か、同居の有無)

⑥原賃貸人の無断転貸認識後の行動直ちに明渡SQしたか、事後承諾の有無)

⑦転借人の資力・人間性・行動

⑧賃貸人を害する意図の有無

⑨転貸によって賃貸人が被る不利益の大きさ

*無断転貸をしていることが前提なので、背信性のあてはめでかかる事情を使わないように注意。

*賃料を遅滞なく支払っているという事情は、無断転貸における背信性とは無関係である。

→当該事情が本当に背信性に結びつくのかを吟味すること。

*背信性のあてはめでは、解除の時点の背信性を問題としているため、解除後の事情を考慮しないように。

*解除を制限すべきとする反論2つ

㋐そもそも賃借権の無断譲渡・転貸に当たらない(ex賃借人が小規模閉鎖会社である場合の実質的経営者の変更(∵構成員が変動しても法人格は同一))

㋑仮に当たるとしても、背信性がない

*上記特段の事情は、賃借人が抗弁として主張・立証するものである。<もっとも>無催告解除する場合には、賃貸人が請求原因事実として背信性の評価根拠事実を主張することになる。

*無断転貸譲渡による解除(612Ⅱ)を制限する背信性の法理:賃借人が非背信性を主張立証

債務不履行解除(541)を制限する信頼関係破壊の法理:賃借人が信頼関係不破壊を主張立証

*賃貸人の承諾がなくても無断転貸が有効になる場合2つ

a背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合

b裁判所が承諾に代わる許可の裁判をした場合(借地借家法1920

*承諾転貸が行われた場合において、転借人の故意・過失によって目的物が滅失・損傷した場合には、賃借人自身に故意・過失がなくても、賃借人は、賃貸人に対して債務不履行責任を負う。∵転借人の地位は履行補助者と同様であるから

Q賃貸借契約の債務不履行解除と転借人に対する催告の要否

承諾転貸がなされた場合において、賃貸人が賃借人の債務不履行を理由に賃貸借契約を解除するためには、転借人への催告が必要か。

…この点、(転借人保護の見地からすれば、信義則(1Ⅱ)上、催告が必要であるとも思える。

<もっとも>)賃貸人は転借人に対して何ら義務を負わないところ(613Ⅰ前段反対解釈)、(債務不履行の際に)転借人への催告が必要とすれば、賃貸借の解除権を不当に制限することになる。

また、転貸借は賃貸借を前提とするものであり、転借人の地位は賃貸借の帰すうによって決まるところ、転借人もそのことを承知しているため格別の不利益はないといえる。

そこで、転借人への催告は不要である。

Q賃貸借契約の債務不履行解除と転貸借契約の終了時期

【いつの時点から転貸借契約が無効であるかを特定する場合にQ】

承諾転貸がなされた場合において、賃貸人が賃借人の債務不履行を理由に賃貸借契約を解除した場合の転貸借契約の終了時期が問題となる。

…この点、転貸人の使用収益させる債務は、賃貸人が転借人に明渡SQをした時点で社会通念上履行不能となる。そして、転貸借契約は個人的信頼関係を基礎とする継続的契約であるため、かかる履行不能の時点で終了すると解する。

*賃貸人から明渡SQされるまでの間は、転貸借契約は依然として有効である。

*帰結:その後の転借人による使用収益は、所有者との関係で不法行為による損害賠償義務又は不当利得返還義務となるが、転貸人との関係では、賃料支払義務を発生させない

*改正後は、賃貸人から明渡請求されたことが「その他の事由」(6162に当たるため、転貸借はかかる時点で終了する。そして、転貸人の貸す債務が履行不能になるか否かは、「契約その他の債務の発生原因に照らして」判断する。

Q賃貸借契約の合意解除の転借人への対抗の可否 予H29

【転貸借契約を終わらせて、転借人を追い出そうとしている場合にQ】

賃貸借契約を合意解除(賃借権を放棄)した場合、賃貸人はこれを転借人に対抗できるか。

…この点、賃借人が自己の権利を放棄して転借人の権利を害することは、398の趣旨から許されない。また、賃貸人と賃借人との合意解除により転貸借契約も消滅するとなると、転借人を害する

そこで、転借人保護の見地から、特段の事情のない限り、信義則(1Ⅱ)上、合意解除を転借人に対抗できないと解する。

*帰結:使用収益債務は没個性的であり、賃貸人が誰であるかは転借人にとって問題ではなく、賃料額等の条件も従前の内容が継続すれば十分であるから、転貸借契約が原賃貸人に承継される(賃貸人が転貸人の地位を引き継ぐ)

*あてはめでは、特段の事情の有無を検討すること。

*改正後は、613で解決される。

Q他人名義の建物登記の対抗力

借地上の建物登記の名義人が借地人本人でない場合であっても、借地権を第三者に対抗(借地借家法10Ⅰ)することができるか。→近親者名義の場合

…この点、他人名義の建物登記によっては自己の建物所有権すら第三者に対抗できないのであるから、建物所有権を対抗できる登記があることを前提として、これを(土地の)賃借権登記に代えようとする法の趣旨に反する

また、他人名義の登記では当該建物の真の所有者が借地人であることを推知できないため、(これに借地権の対抗力を認めると、)取引の安全を害する

そこで、近親者名義の建物登記では対抗力が認められないと解する。

<もっとも>(土地の賃貸人からの)土地譲受人からの建物収去土地明渡請求が権利濫用(1Ⅲ)に当たる場合には、かかる請求は許されないと解する。

譲渡担保権者名義の場合の論証:「この点、譲渡担保の対抗方法としては建物登記の具備による方法しかなく、借地権の対抗力を否定するとなると、借地人が建物を譲渡担保に供することが事実上不可能となってしまう。そこで、譲渡担保権者名義の場合には、他人名義の建物登記にも対抗力が認められると解する。」

*権利濫用に当たるか否かの考慮要素

①土地利用の必要性

②土地を利用できないことによる不利益の程度

③土地の利用状況に関する譲受人(買主)の認識の有無

④買主が明渡請求をするに至った経緯

⑤借地権者が借地権につき対抗要件を具備していなかったことがやむを得ないといえる事情の有無

Q土地(不動産)賃借人の妨害排除方法

①占有訴権:現に占有侵害がある場合…占有回収の訴え(200)

将来占有侵害が生じるおそれがある場合…占有保全の訴え(199)

  • 所有者(賃貸人)の有する妨害排除SQを代位行使

…賃借人は、不法占有者に対し、土地の使用収益権(601被保全債権として、賃貸人の所有権に基づく土地明渡SQ権(返還SQ権)代位行使する(423Ⅰ本文)ことにより、土地を明け渡せと主張することが考えられる。

*改正後は、605条の4第2号で請求可能。

*その後、土地の使用収益権のような特定の債権が、被保全債権足り得るか?ということで、債権者代位権の転用の可否のQが問題となる。

③土地賃借権(601)に基づく妨害排除SQ

土地賃借権(601)に基づく妨害排除SQの可否が問題となる。

…この点、対抗要件を備えた土地賃借権は、物権と同様に排他性を有する(605、借地借家法10、31)ため、対抗要件を備えれば、土地賃借権に基づく妨害排除SQを主張できると解する。

*改正後は、605条の4第1号で請求可能。

*①は忘れやすいので注意。

*②③の手段を書くに当たり、流れを出すことがポイント

㋐対抗要件を備えている場合には、代位行使は迂遠なので、②→③の流れ

㋑対抗要件を備えていない場合には、手段の有効性から、③→②の流れ

Q賃借人の債務不履行による契約解除

【賃貸人が賃借人の債務不履行を理由に賃貸借契約を解除する場合にQ】

Aは、Bに対し、解除541による本件賃貸借契約(601)の終了に基づき、本件建物の明渡しをSQすることが考えられる。

(場合によっては、ここで解除の要件を満たすことを認定。)

そして、AのかかるSQが認められるためには、Aに解除権が発生していることが必要となるところ、継続的契約たる賃貸借契約にも541の適用があるか。

…この点、賃貸借契約は、人的信頼関係を基礎とした継続的契約であるところ、(賃借人の)債務不履行が信頼関係破壊に至る程度の不誠実とは言えない場合には、解除の必要性は乏しい(or債務不履行による信頼関係の破壊が著しい場合には、催告による是正の機会を賃借人に与える必要性はない)。

そこで、賃貸借契約にも541の適用があるが、信頼関係を破壊しない程度の僅少な義務違反である場合には、「軽微」といえ、解除権は発生しないと解する(or著しく信義に反する義務違反がある場合には、無催告解除を認めるべきであると解する)。

*この論点は、解除権の発生に関する論点である。

*債務不履行とは、賃料未払、用法遵守義務違反、無断増築等を指す。

*信頼関係破壊の有無の考慮要素(賃料未払の場合)

①賃借人の債務不履行による賃貸人の不利益の程度

不利益継続のおそれ

a不履行に至った事情

b賃借人の支払能力・支払意思

既発生の不利益の程度

a不履行額・期間の程度(土地と建物とで差異あり)

b反対債権の存在(相殺なし得る以上、賃貸人の不利益は小さい)

賃貸人の賃貸借契約継続に対する阻害行為の有無

㋐賃貸人の非協力的行為

㋑賃貸人の恣意的行動(矛盾挙動の有無)

*あくまで原則は解除できるのであって、一定の場合には例外的に解除できない(or無催告でOK)という位置づけに注意。だからこそ、信頼関係不破壊の抗弁の主張立証責任を負ているのは賃借人である。

*信頼関係破壊の法理は、あくまで不動産賃貸借にのみ適用されるので注意。

*例外的に無催告解除できる場合2つ

a信頼関係の破壊を賃貸人が主張立証した場合

b無催告解除特約がある場合(ただし、この場合でも「無催告」で解除するには、信頼関係破壊の証明が必要である)。

*改正後は、軽微性の判断基準という位置付けになる。

Q製作物の所有権の帰属 司R1

【製作物の所有権の帰属につき特約がない場合にQ】

特約がない場合、請負契約によって製作された物の所有権は、請負人と注文者のいずれに帰属するか。

…この点、材料の提供者がそのものの所有権を有するところ、物権法の原則に従い、製作物の所有権の帰属は、材料の供給態様によって決する。

*注文者に所有権を帰属させる特約がある場合にはそれに従う。

*帰結:①注文者が材料の主要部分を供給した場合

原始的注文者に所有権が帰属

②請負人が材料の主要部分を供給した場合

原始的請負人に所有権が帰属し、引渡しによって注文者に移転する

*判例は、請負契約の実情に合わせるため、比較的緩やかに特約の存在を認定し、所有権を注文者に帰属させている。例えば、注文者が代金の全部又は大部分を払っている場合には、黙示の特約の存在が推認され、制作物の所有権は原始的に注文者に帰属するとしている。

Q注文者・元請負人間での特約の下請負人への主張の有無

注文者・元請負人間で完成した制作物の所有権は注文者に帰属するとの特約があったが、下請負人が材料を供給して仕事を完成した場合、制作物の所有権はだれに帰属するか。かかる特約を下請負人に対しても主張できるかが問題となる。

…この点、下請負人は、注文者との関係では、元請負人の履行補助者にすぎず、注文者に対して元請負人と異なる権利関係を主張できる立場にない。

そこで、注文者は下請負人に対して特約を主張でき、注文者・下請負人間に格別の合意があるなど、特段の事情がない限り、所有権は注文者に帰属すると解する。

Q瑕疵修補SQにおける「瑕疵」の意義 予H26

…この点、「瑕疵」とは、目的物が通常有する性質や性能を欠いていることをいうところ、請負契約は当事者が合意した内容の仕事の完成を目的とするため、当事者間の合意を考慮してこれを判断する。

*「瑕疵」に引き付けて論じること。

*あてはめでは、①当事者間の合意(契約内容)に違反していること、②その合意が重要であること、の2点を検討すること。

*瑕疵修補SQにおける同時履行の抗弁権の条文は633本文なので注意(×533)。

Q損害賠償SQにおける「損害」の範囲(認定で済ませてOKの論点)

【瑕疵修補以外の損害(履行利益)が生じた場合にQ】

(1)まず、目的物の「瑕疵」(634Ⅰ本文)によって、営業上の損害が生じている。

…そして、かかる損害は履行利益に当たるところ、請負においては瑕疵のない仕事を完成することが契約上の義務であることから、請負の担保責任は債務不履行(415)の特則といえるので、「損害」の範囲も、信頼利益にとどまらず履行利益にまで及ぶと解する。

(2)次に、上記損害は瑕疵により通常生じるものといえるため、かかる損害についても賠償SQできる416Ⅰ)

*損害と因果関係は分けて検討すること。

*瑕疵修補による損害は、「瑕疵の修補に代えて」当然に損賠SQできるため、損害と因果関係を認定する必要はない。

*改正後は論点消滅(当然に履行利益までいける)。

Q損害賠償SQ権と報酬SQ権との同時履行

【注文者が請負人に損賠SQする場合にQ】

注文者の請負人に対する損賠SQ権(562Ⅰ本文、564、415Ⅰ)と請負人の報酬SQ権とは同時履行の関係に立つ(533かっこ書)が、注文者はかかる同時履行の抗弁権を主張し、報酬全額の支払を拒めるか。(全額の支払を拒めることを前提とした瑕疵修補SQではなく、単純な損賠SQだからこそ問題となる。)

…この点、瑕疵修補SQ(562Ⅰ本文)がなされた場合との均衡、及び(報酬債権全額の支払が受けられない場合の)請負人の不利益との調和の観点から、注文者が報酬全額の支払を拒むことが信義則(1Ⅱ)に反する特段の事情のない限り報酬全額につき同時履行の抗弁権を主張できると解する。

*特段の事情の有無は、①損害額(修補に要する費用)と報酬額との均衡や、②瑕疵の程度、③交渉態度等を考慮して判断すること。

*全額について同時履行を使えると、遅延利息は発生しない。

<これに対して>対当額についてしか使えないと、残りの部分については遅延利息が発生する。

*上記特段の事情が認められる場合であっても、わずかとはいえ現に損害が発生していることに変わりはないため、一切同時履行関係が認められないということではなく、対等額においては同時履行関係が認められると解すべきである。

*特殊パターン:請負人の過失で、注文者が損賠SQされた場合には、716を用いること。

→請負人は注文者から独立した地位にあるから、純粋な履行補助者とはいえず、注文者の注文・指図に過失がない限りは、注文者は責任を負わない。

Q損害賠償SQ権と報酬SQ権との相殺の可否

【注文者が請負人に損賠SQする場合にQ】

Xは、自己の有する損賠SQ権とAの有する報酬SQ権とを、その対当額において相殺(505Ⅰ)し、残代金についてのみ支払うと反論することが考えられる。

<もっとも>注文者の損害賠償SQ権と請負人の報酬SQ権とは同時履行の関係に立つため、自働債権に抗弁権が付着しており、「債務の性質がこれを許さないとき」(同項ただし書)に当たり、相殺は許されないのではないか。

…この点、同項ただし書の趣旨は、抗弁権喪失の不利益を与えることを防止する点にあるところ、かかる両債権については相互に現実の履行をさせる利益は存在せず、不利益を与えることはない

そこで、注文者の相殺は許されると解する。

*「債務の性質がこれを許さないとき」に引き付けて論じること。

*相殺をしてどうしたいのかという実益をしっかり書くこと。

*相殺のその他の要件もしっかり検討すること。

瑕疵修補SQ権と報酬SQ権とは「同種の目的を有する債務」に当たらないため、相殺は許されない

*自働債権に同時履行の抗弁権が付着していても、互いに金銭債権であれば相互に履行する利益が認められないため、このような相殺は許される、という考え方はよく使う。

Q完成した建物に重大な瑕疵がある場合の建替費用SQの可否

【建替費用SQする場合にQ】

Xは、瑕疵修補SQに代えて、建替費用相当額の損害賠償SQ(634Ⅱ前段)をすることが考えられる。

<もっとも>かかるSQは、事実上請負契約の解除に等しく、(建物の請負契約の解除を制限した)635ただし書の趣旨に反し、認められないのではないか。

…この点、同条ただし書の趣旨は、建物の収去は①社会経済的損失が大きく、②請負人にとっても過酷であることから、解除を制限して請負人を保護する点にある。

そこで、これらの趣旨に反しない場合には、上記SQも認められると解する。

*635ただし書の「趣旨」なので注意。

*解除前なら債務不履行一般の規定でいける。

*要件①のあてはめ:「建物に重大な瑕疵があって建て替えるしかない場合には、建物の収去は社会経済的損失が大きいとはいえない。」

*要件②のあてはめ:「建替費用相当額を請負人に負担させても、契約責任を負担させるものにすぎず、請負人にとって過酷とはいえない。」

*改正後は、有償契約一般のルールが適用されるため、415条に基づく損害賠償請求をすることができる。よって、論点消滅。

Q無理由解除制限の要件

【委任者が無理由解除をする場合にQ】

委任契約は、各当事者がいつでも解除できるところ651Ⅰ)、かかる無理由解除は制限されないかが問題となる。

…この点、受任者の不利益委任者の利益との調和の見地から、①委任契約が受任者の利益も目的としており、②(受任者が著しく不誠実な行動に出る等)解除をするにつきやむを得ない事由がない場合であっても、③委任者が解除権を放棄したと認められる事情のない限り、委任者は同項に基づいて解除できると解する。

*受任者の「利益」とは、単なる報酬ではなく、それを超えたものを指す。

ex債権担保や債権回収目的の取立委任、建物の管理委託に伴う保証金の自由運用

*より簡単に説明すると、②やむを得ない事由があるときは委任者が契約を解除することができるのはもちろん、やむを得ない事由がなくても、③委任者が解除権を放棄したと解されない事情があるときは、同項によって解除することができ、①受任者がこれによって不利益を受けるときは、損害賠償により填補されれば足りるということ。

*改正後は、651Ⅱで解決。

Q和解と錯誤 司H26

和解の確定効(695)によって、錯誤取消し(95)の主張が認められなくなる範囲が問題となる。

…この点、和解契約の直接の目的となった法律関係(当事者が争いの対象とし、互譲によって決定した事項)は、和解によって終結した争いそのものであるから、錯誤取消しは主張できないが、それ以外の法律関係については、(真実と異なっても法律関係を確定しようとする意思が認められないため、)錯誤取消しを主張できると解する。

Q転用物訴権〈処理手順〉 司H23

【修繕人が、賃借人に有する修理代金債権を、賃貸人に対してSQする場合にQ】

Yが所有するトラックをAに賃貸し、Aが当該トラックの修理をXに請け負わせ、Xは修理を完成させたが、Aが修理代金を支払わないまま無資力となった場合、Xは、Yに対して、修理代金相当額について不当利得返還SQ(703)できるか。

(1)まず、Yには修理による客観的な価値の増加という「利益」があり、Xには修理代金相当額の「損失」がある。

(2)次に、Aが無資力のため、YのAに対する債権が無価値であるときは、その限度において、Xの受けた利益はYの労務に由来するといえ、(「利益」と「損失」には、)社会通念上因果関係が認められる。

→判例のフレーズなのでこのまま書けるように。

(3)では、Xの得た利益には「法律上の原因」がないといえるか。

…この点、「法律上の原因なく」とは、公平の理念からみて、財産的価値の移動をその当事者間において正当なものとするだけの実質的・相対的な理由がないことをいうと解する。

そこで、賃貸借関係を全体としてみて、賃貸人が対価関係なしに利益を受けた場合に限り、当該利益の移動には実質的・相対的な理由がないといえ、(修繕人との関係では、)「法律上の原因なく」といえると解する。

*あてはめでは、対価関係なしに利益を受けたか否かを検討すること。そして、①賃借人が自己の負担で修理する分、賃料が相場よりも低く設定されているような場合や、②賃借人が費用償還SQ権を放棄した場合には、対価関係あり(=「法律上の原因」あり)とするのが一般的である。

*不当利得のポイント

㋐契約の相手方に対して主張する場合

:詐欺取消し、錯誤取消し、解除等をしてから請求(121の2Ⅰ)。

→契約が有効なまま不当利得請求はおかしい

㋑契約の相手方以外の第三者に対いて請求する場合:いきなり請求OK。

Q 騙取金による弁済〈処理手順〉

【被騙取者が、騙取金を、弁済受領者に対してSQする場合にQ】

騙取金によって債務の弁済がなされた場合、被騙取者は、弁済受領者に対して、不当利得返還SQ(703)できるか。

(1)まず、弁済受領者には「利益」があり、被騙取者には「損失」がある。

(2)次に、社会通念上、被騙取者の金銭で弁済受領者の利益を図ったと認められるだけの連結がある場合には、因果関係が認められる。

(3)では、弁愛受領者の得た利益には「法律上の原因」がないといえるか。

…この点、「法律上の原因なく」とは、公平の理念からみて、財産的価値の移動をその当事者間において正当なものとするだけの実質的・相対的な理由がないことをいうと解する。

そこで、弁済受領者が騙取金による弁済であることにつき悪意・重過失である場合には、かかる金銭の取得には実質的・相対的な理由がないといえ、(被騙取者との関係では、)「法律上の原因なく」といえると解する。

*弁済受領者が軽過失であっても保護されるのは、動産の場合における即時取得との均衡を図るためである(金銭は動産より流通を保護すべきである)。

*他人の金銭によって弁済がなされた場合には、「騙取金」が、「他人の金銭」に代わるだけ。

Q愛人関係維持目的や殺人依頼目的で契約が締結された場合のポイント2つ

司H28

①そもそも当該契約自体が、公序良俗違反無効になる(90)

②契約に基づき交付された金や物は、不法原因給付に当たり、不当利得返還SQできない(708)

*「不法」(708):公序良俗違反のこと。

*「給付」(708):終局的な利益移転のこと。

登記不動産→移転登記がされた場合

登記不動産→引渡しがされた場合

Q708と所有権に基づく返還SQ

【不法原因給付物を所有権に基づいて返還SQする場合にQ】

708は、所有権に基づく返還SQに類推適用されるか。

…この点、708を無意味な規定としないため、所有権に基づく返還SQにも同条が類推適用されると解する。

そして、かかる場合、物権的SQ権が認められなくなったことの反射的効果として、(不法原因給付物の)所有権は受益者に帰属すると解する。

Q不法行為(709)の書き方

…Aの~という「過失」に基づく行為に「よって」、Bの~権という「権利」が「侵害」され、~という「損害」が生じている(709)。

*709の要件を全て検討すること。

*誰から誰に対するSQかをしっかり明示すること(直接の被害者から、直接の加害者にSQする必要あり)。

*使用者責任のように、SQ先が2つ出てきた場合には、①まず、直接の加害者(被用者)にSQ(709)し、②次に、間接の加害者(使用者)にSQ(715)すること。

*「損害」の中身は具体的に書くこと(財産的損害:709 精神的損害:710711)。

*710:被害者自身の慰謝料SQ権

711:近親者の慰謝料SQ権

*不法行為に基づく損賠SQの事案において、相続が発生した場合には、被相続人固有のSQなのか、相続人自身のSQなのかということをしっかり区別すること。

Q被害者が傷害を受けたにとどまる場合の近親者の慰謝料SQの可否

【被害者が傷害を受けたことによる苦痛を慰謝料SQする場合にQ】

Xは傷害を受けたにとどまるところ、その近親者たるYは、精神的苦痛に基づく慰謝料SQをすることができるか。711からは被害者の生命侵害の場合に限られるとも思えるため問題となる。

…この点、同条は立証責任を軽減したにすぎず、生命侵害以外の場合のSQを妨げるものではない

そこで、近親者が、被害者が生命を害された場合にも比肩すべき程度の精神的苦痛を受けた場合には、709710に基づき慰謝料SQできると解する。

*問題の所在である711をしっかり明示すること。

*近親者ではなく、ある種の被害者として請求できるということ。

*被害者が生命を害された場合にも比肩すべき程度の精神的苦痛を受けた場合とは、直接被害者負った肉体的欠陥や機能障害が生涯にわたって残る場合などのことをいう。

*711に基づき慰謝料SQできるわけではないので注意。711だと、立証責任が転換されてしまうという不都合がある。傷害を受けたにすぎないのに立証責任を転換するのは少し違う。

→一般不法行為の規定である709、710を示すこと(×711類推)。

Q711所定の近親者以外の者の慰謝料SQの可否

【近親者以外の者が711に基づいて慰謝料SQする場合にQ】

不法行為によって被害者の生命が侵害された場合、711所定の近親者以外の者(内縁配偶者・未認知の子)であっても、慰謝料SQをすることができるか。711はSQ権者を被害者の父母・配偶者・子に限っているとも思えるため問題となる。

…この点、①同条所定の者と同視すべき身分関係が存在し、②被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受ける者は、同条の類推適用により、慰謝料SQできると解する。

*711に基づいて慰謝料SQする場合には、「他人の生命を侵害した者」に当たることの認定をしっかりすること。

Q間接損害の損害賠償SQの可否

会社の経営者が重傷を負ったため、会社に多大な損害が発生した場合、会社は加害者にその損害の賠償SQをすることができるか。いわゆる間接損害の損害賠償の可否が問題となる。

…この点、加害行為と会社の損害との間に相当因果関係がないため、原則として会社はSQできない

<もっとも>①経営者個人に(会社の機関としての)代替性がなく、②経済的にも被害者と会社とが一体をなす関係にある場合には、経営者に対する加害行為と損害との間に相当因果関係があるため、会社は損害賠償SQできると解する。

Q不法行為後の別原因による死亡と逸失利益の賠償SQの可否

被害者が不法行為後に別の原因で死亡した場合、死亡逸失利益についても損賠SQできるか。

…この点、不法行為制度の趣旨は、損害の公平な分担にあるところ、賠償額の算定において別原因による死亡を考慮することは、偶然の事情により(賠償義務者の)賠償義務を免れさせることになり、上記趣旨に反する

そこで、①不法行為時にその死亡の原因となる具体的事由が存在し、②近い将来における死亡が客観的に予測されていた等の特段の事情がない限り、死亡の事実は考慮すべきではなく、死亡後の逸失利益もSQできると解する。

*逸失利益:本来得られるべきであったにもかかわらず、得られなくなった利益

ex推定年収(全年齢平均賃金額を基準に判断)-生活費

*転売利益も逸失利益の一種である。

Q不法行為後の別原因による死亡と介護費用の賠償SQの可否

被害者が不法行為後に別の原因で死亡した場合、死亡介護費用についても損賠SQできるか。

…この点、不法行為制度の趣旨は、損害の公平な分担にあるところ、被害者が死亡すれば、それ以降の介護は不要となるため、死亡後の介護費用を加害者に負担させることは、かえって上記趣旨に反する

そこで、死亡の介護費用はSQできないと解する。

*死亡までの介護費用は当然にSQできるので注意。

*逸失利益は得べかりし利益であるのに対し、介護費用は現実に支出すべき金額の補填であり、両者はその損害の性質を異にする。

Q 過失相殺の書き方 司H27

…Aは、Bにも~という「過失」があるため、過失相殺(722Ⅱ)により、賠償額が減額され得ると反論することが考えられる。

*ポイント2つ

①「過失」の中身を具体的に明示すること。

②過失相殺を主張してどうしたいのか?(=賠償額を減額したい)という実益部分まで書くこと

Q過失相殺における責任能力の要否

【過失のある被害者が責任能力を有していない場合にQ】

過失相殺における「過失」が認められるためには、被害者に責任能力が備わっていることを要するか。

…この点、損害の公平な分担という過失相殺の趣旨から、722Ⅱにおける「過失」とは、通常の意味の「過失」とは異なるものであるといえる。

そこで、被害者に責任能力は不要であり、事理弁識能力があれば足りると解する。

*事理弁識能力は、4、5歳であればあるとされる。

Q被害者側の過失 司H27

【考慮したい過失が被害者自身のものではない場合にQ】

過失相殺において考慮しようとしている過失は、被害者自身たるAのものではなく、Bのものであるところ、Bの過失を被害者側の過失として考慮できるか。

…この点、損害の公平な分担という過失相殺の趣旨から、被害者本人と身分上・生活関係上一体をなすとみられる関係にある者の過失は、考慮できると解する。

<もっとも>配偶者の一方の過失は、夫婦の婚姻関係が既に破綻に瀕している等の特段の事情がある場合は、考慮できないと解する。

*<もっとも>~以下は、被害者と過失がある者の間に夫婦関係がある場合に限って書くこと。

*あてはめでは、身分上の一体性と生活関係上の一体性とを分けて検討すること。

*考慮したい過失が被害者自身の者である場合には、当然に考慮できるので注意。

そして、混乱しないためにも、被害者は誰であって、過失者は誰であるか、ということを常に意識すること。

Q被害者の素因 司H23

被害者の肉体的・精神的要因(被害者の素因)を、賠償額の減額事由として考慮できるか。

…この点、被害者の素因は「過失」(722Ⅱ)そのものではないため、同項を直接適用することはできない

<もっとも>損害の公平な分担という過失相殺の趣旨から、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失する場合には、同項を類推適用し、被害者の素因を考慮できると解する。

<そうだとしても>疾患に至らない身体的特徴は、個々人の個体差の範囲として当然にその存在が予定されているものというべきであるから、特段の事情のない限り考慮すべきではないと解する。

*「特段の事情」とは、日常生活において通常人に比べてより慎重な行動をとることが求められるような場合をいう。

Q被害者即死の場合の損賠SQ権(財産的損害)の相続の可否 司H26

【被害者が即死した場合にQ+権利能力のQ】

被害者即死の場合、被害者に損賠SQ権が発生し、これが相続されるか。

権利能力のない死者に、死亡に関する損賠SQ権が発生するかが問題となる。

…この点、死亡は身体傷害の極限的概念といえるため、死者にも死亡に関する損賠SQ権が発生すると解する。

Q慰謝料SQ権(精神的損害)の相続の可否

【慰謝料SQ権を相続する場合にQ+一身専属権だからQ】

慰謝料SQ権は相続されるか。

…この点、慰謝料SQ権は一身専属権(896ただし書)とも思えるが、結局は単純な金銭債権であるため、相続性が認められると解する。

Q未成年者に責任能力がある場合における監督者に対する損害賠償請求の可否

【責任能力ある未成年者が他人に損害を加えた場合にQ】 司H27

責任能力有する未成年者が不法行為により他人に損害を加えた場合、その監督義務者(820)である親権者は不法行為責任を負うか。

…まず、18歳のBには、「自己の行為の責任を弁識する」能力があり、責任能力(712)を有するため、Bの親権者たるAは714の責任を負わない

<しかし>同条は(責任無能力者の監督義務者の)過失推定規定にすぎず、709の責任の成立を妨げるものではない

そこで、監督義務者の義務違反損害との間に相当因果関係がある場合には、709の責任を負うと解する。

*714の責任を負わないという前提部分をしっかり書くこと。

*あてはめでは、①監督義務者に監督義務違反があること、②①と(未成年者の不法行為によって生じた)損害との間に相当因果関係があること、の2点を検討すること。

*①では、㋐当該事案における具体的な監護義務を負っていること(予見可能性があることが前提)、㋑その義務の懈怠があること、の2点を検討すること。そして、㋐については、820を示せば足りる(未成年者である以上、親権者が監督義務を負っていないことはない)。

*判例は、㋑のあてはめについて、「親権者の直接的な監視下にない子(責任能力のない未成年)が、通常は身に危険が及ぶものとはみられない行為によって、たまたま人身に損害を生じさせた場合には、当該行為について具体的に予見可能であるなど、特段の事情のない限り、子に対する監督義務に懈怠があったということはできない。」としている。

→本来、「監督義務者がその義務を怠らなかったとき」(714Ⅰただし書)に引き付けて論じる話である。

*709による責任は中間責任ではないため、監督義務者の故意・過失の立証責任は被害者が負う。

*監督義務(820):あくまで未成年者の親権者が負う義務。

*親権者(818Ⅰ):ハイハイ親権者

監護権者(820):初丸監護権者

Q「監督する法定の義務を負う者」(714Ⅰ本文)の意義(H28.3.1)

同居の配偶者が「監督する法定の義務を負う者」(法定監督義務者)に当たるか。

…この点、法律上、同居配偶者に第三者との関係で精神障害者の監督を義務付ける規定は存在しないため、同居配偶者は法定監督義務者には当たらない

<もっとも>法定監督義務者に当たらない者であっても、(責任無能力者との身分関係や日常生活における接触状況に照らし、第三者に対する加害行為の防止に向けてその者が当該責任無能力者の監督を現に行い、その態様が単なる事実上の監督を超えているなど、)その監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情がある場合には、法定監督義務者と同視でき、714Ⅰに基づく責任を問うべく、法定監督義務者に準ずべき者(準監督義務者)として、714Ⅰが類推適用されると解する。

*「監督する法定の義務を負う者」に引き付けて論じること。

*準監督義務者該当性の考慮要素

現実の監督の有無

監督の可能性・容易性

㋐その者自身の生活状況・心身の状況

㋑その者と精神障害者との関わりの実情(精神障害者との親族関係の有無・濃淡、同居の有無、日常的な接触の程度、精神障害者の財産管理への関与の状況)

㋒精神障害者の心身の状況や日常生活における問題行動の有無・内容

㋓これらに対応して行われている監護や介護の実態

*「監督義務」とは、第三者に対する加害行為の防止を目的とする義務である。

*判例は、752が定める夫婦の同居・協力・扶助義務は、相互に相手方に対して負う義務であって、第三者との関係で夫婦の一方に何らかの作為義務を課すものではなく、法定監督義務者該当性を肯定する法の根拠にはならないとしている。

Q被用者の職務の範囲

被用者の行為は、「事業の執行について」なされたとはいえないのではないか。

…この点、715の趣旨である報償責任の原理から、客観的に行為の外形を基準に判断する。(外形標準説)

*「事業の執行について」に引き付けて論じること。

Q取引的不法行為(ex手形行為)において、外形的には被用者の職務の範囲といえるが、現実には職務の範囲である場合、使用者は、常に使用者責任を負うか。【取引的不法行為の場合にQ】

…この点、715の趣旨である報償責任の原理、及び相手方の信頼保護の観点から、使用者は、相手方が適法な職務権限外の行為であることにつき悪意重過失である場合には、使用者責任を負わないと解する。

*相手方の悪意重過失は使用者が証明する。

Q外形標準説の事実的不法行為(ex交通事故)への適用の可否

本件事故は私用目的で会社の車を運転していた際に起こったものであるところ、「事業の執行について」なされたとはいえないのではないか。

…この点、715の趣旨である報償責任の原理、及び被害者保護の観点から、「事業の執行について」といえるかは、客観的に行為の外形を基準に判断する。

*「事業の執行について」に引き付けて論じること。

*取引的不法行為ではない以上、相手方の信頼を保護する必要はない。

Q使用者から被用者への求償権の制限の有無

【使用者が被用者に求償する場合にQ】

使用者から被用者への求償権(715Ⅲ)は制限されるか。(使用者責任を代位責任とみると、加害者に全額の求償ができるとも思えるため問題となる。)

…この点、損害の公平な分担という不法行為の趣旨から、信義則上相当と認められる限度においてのみ、被用者に求償できると解する。

*考慮要素:①使用者の事業について(態様・規模・施設状況)

                 ②被用者の業務について(態様・労働条件、勤務態度)

      加害行為について(態様・予防の有無

Q「土地の工作物」(717Ⅰ本文)の意義 司R1

…この点、「土地の工作物」とは、土地に接着して人工的に作り出されたあらゆる物及びそれと機能的に一体となって危険性を有する物をいうと解する。

*ex電柱、看板

Q共同不法行為(719)のポイント

実益:各加害者は、不真正連帯債務を負うため、全額の損賠SQが可能となる。

要件:①各人の行為が709の要件を充足

②「共同」…被害者保護という719の趣旨から、客観的関連共同性があれ

ば足りると解する(主観的関連共同性までは不要)。

*「連帯」とは不真正連帯債務を負うことをいう。→一言書くこと。

*要件②のあてはめ:「AとBの過失行為が競合してCに~という不可分一個の結果(損害)を生じさせたといえるため、Aらの行為に客観的関連共同性あり、「共同」といえる。」

→結果の不可分一体性を理由に共同関係を肯定すること。

*いきなり共同不法行為から書くのではなく、709→719の流れで書くこと。

Q求償の可否

共同不法行為者の一人が被害者に全額賠償した場合、他の共同不法行為者に求償できるか。

…この点、(不真正連帯債務関係は、被害者との関係で各共同不法行為者の負う債務の性質を規律するのみであり、各行為者間の求償関係について規律するものではない。

そして、)損害の公平な分担という不法行為制度の趣旨からすれば、各行為者の寄与度に応じて各負担部分を認定し、その負担部分について求償を認めるべきであると解する。

Q債権者代位権(423)の書き方 司H23

…Aは、自己の有する~権を被保全債権として、Bの~権を代位行使する(423Ⅰ本文)ことにより、~(実益)と主張することが考えられる。

*ポイント2つ

①被保全債権を具体的に明示すること。

②債権者代位権を行使してどうしたいのか?(ex引き渡しを拒みたい)という実益部分まで書くこと

*留置権(295Ⅰ)の場合は「被担保債権」なので注意。

*債権者代位と物上代位はセットで思いつけるように。

Q時効援用権の代位行使

時効援用権は一身専属権として代位行使が認められない(423Ⅰただし書)のではないかが問題となるも、無資力に陥った場合まで債権者の自由意思を尊重する必要はないため、一身専属権には当たらないと解する。

Q物又は金銭の自己への引渡SQの可否

取消権の行使として相手方から物の引渡し又は金銭の給付を求める場合に、債権者は、直接自己に引き渡すようにSQできるか。

…この点、債務者が給付を受け取らない場合にも債権保全を可能とする必要があるため、債権者は、直接自己に引き渡すようにSQできると解する。

*改正後は、423の3で解決。

Q自己への移転登記SQの可否

被代位債権が不動産の移転登記SQ権の場合、代位債権者は、自己に移転登記するようにSQできるか。

…この点、登記を債務者名義にすることは、債務者の意思に反してでも可能であるため、代位債権者は自己に移転登記するようにSQすることはできず登記の抹消をSQできるにすぎないと解する。

Q債権者代位権の転用の可否

【被保全債権が金銭債権でない場合にQ】

~のような特定の債権が被保全債権たり得るか。

債権者代位権の転用の可否が問題となる。

…この点、423文言上、被保全債権を金銭債権に限定しておらず、また、同条には「すべての債権者の利益のために」(425)という文言がない。さらに、法は、転用を許容した規定4237を置いている。

そこで、債務者の資力の有無を問わず、債権者代位権の転用を認めることができると解する。

*類推適用ではなく、直接適用であることに注意。

Q建物買取請求権の代位行使

建物賃借人は、自己の賃借権を保全するために、建物賃貸人(借地権者)の有する建物買取請求権を代位行使することができるか。

…債権者代位権の転用の可否のQの論証を展開

<もっとも>債権保全の必要性が認められるためには、代位権を行使することによって、債権者の権利が保全されるという関係にある必要があるところ、建物買取請求権の行使によって得られる借地人の利益は、建物の代金債権であり、賃借権の保全とは無関係である。

そこで、建物賃借人が建物買取請求権を代位行使することはできないと解する。

Q債権者代位権と債務者の無資力

【事案】

AはDに土地を売却し、その後死亡。B・CがAを相続した。BはAから土地の売却代金を受けることを欲したが、CはBへの移転登記義務の履行を拒絶した。他方、Dは土地の引渡し及び移転登記がなされるまでは代金を支払わない(533)と主張するものの、Cに対して移転登記請求権を行使しようとはしなかった。かかる場合、Bは、Dに対する代金支払請求権を被保全債権として、DのCに対する移転登記請求権を代位行使することができるか。

…この点、被保全債権が金銭債権である以上、債権保全の必要性は債務者(D)の無資力をいうとも思える。

<もっとも>本件における代位行使の目的は、債務者の同時履行の抗弁権を消滅させることにある。

かかる代位行使も債権保全の必要性がある場合には認められるべきであるが(423の7参照)、責任財産の保全を目的とするものではないため、債務者の無資力を要求する必要性がない。そして、この理は被保全債権が金銭債権でも異なるところはない

そこで、債務者が無資力でなくても、代位行使は認められるべきであると解する。

Q詐害行為取消権(424)の書き方

…Aは、Bに対し、~権を被保全債権とする詐害行為取消権(424Ⅰ)を行使して、~を取り消し(実益)、~SQをする(実益)ことが考えられる。

*ポイント3つ

誰に対してSQするのかを明示すること(受益者又は転得者のみを被告とすれば足りる ×債務者 ∵相対的無効)。

②被保全債権を具体的に明示すること。

③詐害行為取消権を行使してどうしたいのか?(ex財産分与を取り消したい+自己への移転登記手続をしたい)という実益部分まで書くこと

*留置権(295Ⅰ)の場合は「被担保債権」なので注意。

Q離婚による財産分与と詐害行為取消権 予H30

離婚による財産分与(678は、財産権を目的とした法律行為(424Ⅱに当たり、詐害行為に当たるか。

…この点、責任財産保全本人意思尊重との調和の観点から、財産分与は、①(夫婦の共同財産の清算配分という)768Ⅲの趣旨に反して不相当に過大で、②財産分与に仮託してなされたといえるような特段の事情のない限り、財産権を目的とする法律行為に当たらず、詐害行為に当たらないと解する。

*「財産権を目的とした法律行為」と「詐害行為」の2点に引き付けて論じること。

離婚に伴う慰謝料支払合意遺産分割協議と詐害行為のQも同じ問題提起。

*あてはめでは、詐害行為の認定と同じように、財産分与の客観面と主観面とを相関的にみて判断すること。

Q不動産譲渡における登記移転行為の詐害行為性〈処理手順〉

【不動産譲渡の後に被保全債権が成立し、その後移転登記がなされた場合にQ】

前提:債権者…A 債務者…B 受益者…C

(1)まず、Aは、Cに対し、消費貸借契約(587)に基づく貸金返還SQ権を被保全債権とする詐害行為取消権(424Ⅰ)を行使して、BC間の不動産譲渡契約を取り消し所有権移転登記抹消登記手続SQすることが考えられる。

…<もっとも>債権者は債権成立時点の債務者の責任財産を引当にするため、被保全債権成立に行われた行為は、詐害行為に当たらないところ、本件におけるBC間の不動産譲渡契約は、貸金返還SQ権の成立に行われている。

よって、かかる行為は詐害行為に当たらず、Aの上記SQは認められない

(2)次に、Aは、BC間の登記移転行為を取り消し所有権移転登記抹消登記手続SQすることが考えられる。

ここで、登記移転行為は貸金返還SQ権の成立に行われているところ、対抗要件具備行為たる登記移転行為は詐害行為に当たるか。

…この点、424Ⅰ本文の趣旨は責任財産の保全にあるため、詐害行為とは責任財産を減少させる行為をいう。

そして、登記移転行為は、物権の移転を第三者に対抗し得る効果を生じさせるにすぎず、物権移転の効果を生じさせるものではないため、責任財産を減少される行為とはいえない

そこで、登記移転行為それ自体は詐害行為に当たらないと解する。

*詐害行為に引き付けて論じること。

*詐害行為取消権の趣旨に遡って論証すること。

債権譲渡の通知行為の場合には、「そして、債権譲渡の通知行為は、債権の移転を第三者に対抗し得る効果を生じさせるにすぎず、債権移転の効果を生じさせるものではないため、責任財産を減少させる行為とはいえない。」に代わる。

Q詐害行為取消権の範囲

…この点、424Ⅰ本文の趣旨は責任財産の保全にあるため、現物返還原則とすべきである。

そこで、目的物が不可分である場合には、債権額を超えて全額につき取り消すことができ、現物返還を請求することができると解する(424の8参照)。

<もっとも>(抵当権者に抵当目的物を代物弁済し、抵当権者がその登記を抹消した場合など、)①現物返還が不可能又は著しく困難であり、また、②それを認めることが当事者間の公平を欠くこととなる場合には、全部取消しを否定し、価額賠償にとどめるべきであると解する(424の6Ⅰ後段、2後段参照)。

Q保証契約・保証委託契約に基づくSQの書き方

前提:債権者…A 主債務者…B 保証人…C

①保証契約…Aは、Cに対し、保証契約(446Ⅰ)に基づき、保証債務の履行として、~SQすることが考えられる。

②保証委託契約…Cは、Bに対し、保証委託契約に基づき、事後求償権(459Ⅰ)を行使して、~の支払を求めることが考えられる。

*両方とも、根拠は446Ⅰなので注意。

*保証委託契約は委任契約(643)の一種であるため、委任に関する規定の適用があることに注意。(司H28)

Q契約の解除による原状回復義務に関する保証人の責任

【債権者が保証人に対して、解除による原状回復に基づくSQをした場合にQ】

契約解除に伴う原状回復義務(545Ⅰ)について保証人は責任を負うか。

契約の遡及的消滅の結果、主たる債務は消滅するから、付従性により保証債務も消滅するとも思えるため問題となる。

…この点、保証契約は債権者保護を目的とする以上、保証人の通常の意思としては、債務者が負担する一切の債務を保証し、債権者に損害を被らせないというものであると解される。

そこで、保証人は、反対の特約のない限り、原状回復義務についても責任を負うと解する。

*問題の所在部分をしっかり明示することが大切。

*保証人はどこまで責任を負うか?系の問題では、保証人はどこまで保障するつもりだったのか、ということから考えること。

*解除による損賠義務は、債務不履行による損賠義務と同様に解され、責任が肯定される。そして、その際、545(解除と損賠を同時にしたい時に引用すべきもの)の引用を忘れずに。

Q合意解除から生じる責任についての保証人の責任

主債務者が債権者と契約を(債務不履行解除ではなく)合意解除した場合、保証人はその合意解除から生じる債務についても責任を負うか。

…この点、合意解除の場合に責任を肯定することは、保証人の意思に反するとともに、保証人に過大な責任を負担させるおそれがあるため、原則として保証人は責任を負わないと解する。

<もっとも>①合意解除が主債務者の債務不履行に基づくものであり、かつ②合意解除から生じる保証人の債務が(債務不履行)解除によって生じる主債務者の原状回復義務より重いものでない場合には、実質的に債務不履行と異ならないため、保証人は、特段の事情のない限り、合意解除から生じる債務についても責任を負うと解する。

Q保証人の抗弁権

【保証人が主たる債務者の取消権・解除権を行使する場合にQ】

主たる債務が取り消し得るものである場合、保証人は、主たる債務者の取消権を行使できるか。

…この点、保証人は取消権者(120)ではないため、取消権を行使できないが、保証債務の付従性から、主たる債務の存否が取消権の存在によって不確定である間は、保証債務の履行を拒むことができると解する。

*解除権の場合には、「取消権者」が「当事者」に代わり、「取消権」が「解除権」に代わるだけである。

Q求償権の成立要件2つ

【求償権に基づくSQをする場合にQ】

「自己の財産をもって」(459Ⅰ)

「債務を消滅させる行為をした」(同項)

*求償権の問題が出てきた場合に検討すべきこと3つ

①成立→そもそも求償権が発生しているか

②制限→弁済に際して通知をしているか

③範囲→委託を受けた保証人か、保証人の意思に反していないか

*時効完成に保証債務を履行した場合には、要件②との関係で、時効の法的性質のQが問題となる。

*事後求償権の根拠条文

保証人の事後求償権…459

物上保証人の事後求償権…372351459

Q物上保証人の事前求償権 予H24

【物上保証人があらかじめ求償権を行使する場合にQ】

物上保証人の事求償権は認められるか。

パターン1:委託を受けた保証人の事前求償権についての460本文が、「保証人」

としており、これを物上保証人に直接適用することはできないこと

から、同条を類推適用できるかが問題となる。

パターン2:372・351、459Ⅰは物上保証人の事求償権を認めているところ、事

求償権については明文がないことから、問題となる。

…この点、460本文の趣旨は、委任事務処理者の費用前払SQ権(649)を保証人にも観念できることから、これを認めた点にある。

そして、物上保証人は責任を負担するのみであり、債務の履行という事務の委託を受けていない以上、かかる趣旨が妥当しない。(保証人との比較)

また、物上保証人の求償権の存否・範囲は、抵当権が実行されるまで不確定であり、事前求償権を認めるとかえって法律関係の混乱を招く。(事後との比較)

そこで、物上保証人に事前求償権は認められないと解する。

*パターン1、2の両方の観点から問題となり、論証においても2つの観点から論じる必要がある。

*保証人は自ら債務を負担するのに対して、物上保証人は債務を負担せず、責任を負担するのみである。

Q従物の付加一体物性

【主物に設定された抵当権が実行された場合にQ+従物は独立性を有していて、付合していないからQ】

まず、Aは、主物たるBの「常用に供するため」附属させた「従物」(87Ⅰ)であるところ、かかる従物も「付加して一体となっている物(以下、「付加一体物」という。)」(370)

に含まれるかが問題となる。

…この点、抵当権は目的物の交換価値を把握する権利であるため、「付加一体物」とは、抵当目的物と価値的に一体となったものをいうと解する。

そして、従物は主物の経済的価値を高める点で、主物たる抵当目的物と価値的に一体となったものといえ、「付加一体物」に含まれると解する。

*「付加一体物」に引き付けて論じること。

*最初に「従物」であることを認定すること。

→「従物」の要件に引き付けながら認定すること

①継続的に主物の効用を助けること

②主物に附属すると認められる程度の場所的関係にあること

③主物と同一の所有者に属すること

④独立性を有すること

*帰結:従物にも抵当権が及ぶ。

*抵当権設定の前後を問わず、従物は「付加一体物」に含まれる。

Q従たる権利の付加一体物性

【建物に設定された抵当権が実行された場合にQ】

まず、土地賃借権は、主物たる本件建物の経済的価値を高める従たる権利であるところ、かかる従たる権利も「付加して一体となっている物(以下、「付加一体物」という。)」(370)に含まれるかが問題となる。

…この点、抵当権は目的物の交換価値を把握する権利であるため、「付加一体物」とは、抵当目的物と価値的に一体となったものをいうと解する。

そして、従たる権利は「物」(370)ではないため同条を直接適用できないものの、主物の経済的価値を高める点で、主物たる抵当目的物と価値的に一体となったものといえる。

そこで、370を類推適用し、従たる権利も「付加一体物」に含まれると解する。

*「付加一体物」に引き付けて論じること。

*最初に「従たる権利」であることを認定すること。

*帰結:従たる権利にも抵当権が及ぶ。

*抵当権設定の前後を問わず、従たる権利は「付加一体物」に含まれる。

*従たる権利が土地賃借権の場合、賃借権を譲渡するには賃貸人の承諾を要するので612Ⅰ)、抵当権の効力が及ぶとしても、競落人は賃貸人たる土地所有者に対して賃借権の競落を対抗できないのが原則である。そこで、裁判所に対し、承諾に代わる許可を求める必要がある(借地借家法20

Q分離物の付加一体物性

【付加一体物たる従物が、抵当目的物から搬出された場合にQ】

まず、前提として、Aの抵当権が、従物にも及ぶことを認定。

従物の付加一体物性のQの論証を展開

<これに対して>Bは、従物が主物たる抵当目的物から搬出され、Bに転売されている本件においては、Aが自己に抵当権を対抗できないと反論することが考えられる。

そこで、抵当目的物から分離された動産も「付加一体物」に含まれるか、含まれるとしても第三者に対抗できるかが問題となる。

…この点、前述した抵当権の性質から、分離物も抵当目的物を価値的に一体となっている限り、「付加一体物」に含まれると解する。

そこで、第三者が即時取得(192)の要件を満たすまでは、これを第三者に対抗できると解する。

*「付加一体物」に引き付けて論じること。

*反論の中で書くこと。

Q物上代位の書き方

…まず、BのCに対する~SQ権は、「目的物」の「売却」によって「債務者が受けるべき金銭」に当たるため、Aは、かかるSQ権に対して、物上代位できる(304)。

*304の文言に引き付けて書くこと。

*物上代位は、目的物が売却されるなどして交換価値が現実化した場合に、それに対して行使するものであるため、いまだ目的物が存在する段階においては、普通に抵当権や動産売買先取特権そのものを行使すれば足りる。→目的物が存在するか否かがメルクマール。

*物上代位できるか?と聞かれた場合には、304の要件充足について必ず書くこと。

*抵当権に準用する場合、物上保証人担保物の第三取得者も「債務者」に含まれることに注意。そして、答案では、「抵当権においては、債務者と抵当目的物の所有者が異なることもあるため、「債務者」には、第三債務者も含まれるところ、~。」と書くこと。

→第三債務者が有する金銭債権に対して物上代位する場合には、一言書くこと。

*債権者代位と物上代位はセットで思い付けるように。

*物上代位の条文

①先取特権に基づく場合…304Ⅰ

②質権に基づく場合…350・304Ⅰ

③抵当権に基づく場合…372・304Ⅰ

  • 譲渡担保権に基づく場合…304類推適用

Q売買代金債権に対する物上代位権行使の可否

…この点、抵当権には、動産売買先取特権(333)と異なり、追及効がある以上、物上代位の対象にはならないとも思えるが、文言を無視するものであり、妥当でない。

売買代金債権は、「その目的物の売却……によって債務者が受けるべき金銭その他の物」(372、304Ⅰ本文)に当たるため、物上代位の対象になると解する。

*追及効との関係で問題になる。

Q保険金請求権に対する物上代位権行使の可否

…この点、保険金請求権は、保険契約に基づき保険料を支払うことの対価として生じるものであるため、「滅失又は損傷」(372304Ⅰ本文)によって生じるものではなく、物上代位の対象にはならないとも思える。

<もっとも>保険料と保険金では価値の差が著しいし、保険金請求権は実質的には担保目的物の価値代表物といえる。

そこで、保険金請求権も物上代位の対象になると解する。

*「滅失又は損傷」に引き付けて論じること。

Q請負代金債権に対する物上代位権行使の可否

まず、Aは、BがCに対して有する請負代金債権について、動産売買先取特権に基づく物上代位(304Ⅰ本文)をしているところ、請負は「売却、賃貸、滅失又は損傷」のいずれにも当たらないため、請負代金債権が物上代位の対象となるかが問題となる。

…この点、請負代金債権は、当該動産以外の材料や労力などの対価をも含むので、当然に転売代金債権に相当するとはいえず原則として物上代位の対象とはならない

<もっとも>①請負代金全体に占める当該動産の価額の割合や、②請負債務の内容などに照らし、当該動産の転売代金債権と同視するに足りる特段の事情がある場合には、例外的動産の価額分につき物上代位の対象となると解する。

*「売却、賃貸、滅失又は損傷」に引き付けて論じること。

*要件②のあてはめでは、売買契約としての性質が強いといえるか否かを検討すること。

*物上代位の対象となるのは、請負代金全体ではなく、あくまで当該動産の価額分に限られるので注意。

Q抵当権に基づく物上代位と一般債権者による差押えとの優劣

【物上代位に対して、一般債権者による差押えが反論された場合にQ】

抵当権者は、物上代位の目的債権を一般債権者が差し押さえた後でも、自ら目的債権を差し押さえて、物上代位できるか。

抵当権者の物上代位と一般債権者の差押えとの優劣が問題となる。

…この点、304Ⅰただし書の趣旨は、第三債務者を二重弁済の危険から保護する点あるところ、抵当権においては、抵当権設定登記によって優先弁済を受け得ることが公示されているため、物上代位を認めても第三債務者が不測の損害を被るおそれはない

そこで、両者の優劣は、抵当権設定登記と差押命令の第三債務者への送達との先後によって決すべきである。

*「払渡し又は引渡し」に引き付けて論じないように注意。

Q動産売買先取特権に基づく物上代位と一般債権者による差押えとの優劣

【物上代位に対して、一般債権者による差押えが反論された場合にQ】

動産売買先取特権者は、物上代位の目的債権を一般債権者が差し押さえた後でも、自ら目的債権を差し押さえて、物上代位できるか。

一般債権者による差押えが「払渡し又は引渡し」(304Ⅰただし書)に含まれるかが問題となる。

…この点、304Ⅰただし書の趣旨は、第三債務者を二重弁済の危険から保護する点あるため、一般債権者が目的債権の差押えの執行をしたにすぎない場合には、「払渡し又は引渡し」には含まれないと解する。

*「払渡し又は引渡し」に引き付けて論じること。

*抵当権とは説明の仕方が異なるので注意。

*動産売買先取特権の根拠条文は311⑤、321である。

*差押えの効果は弁済禁止効、処分禁止効にすぎず、債権は依然として債務者に帰属する。Cf債権譲渡

*先取特権の効果は優先弁済を受けること。答案でも、「先取特権を行使することが考えられる。」と書けば十分。

*先取特権を行使する場合には、留置権などと同様に、被担保債権をしっかり明示すること。

Q抵当権に基づく物上代位と債権譲渡との優劣

【物上代位に対して、債権譲渡が反論された場合にQ】

抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され、第三者に対する対抗要件が備えられたでも、自ら目的債権を差し押さえて、物上代位できるか。

債権譲渡そのものが「払渡し又は引渡し」(372・304Ⅰただし書)に含まれるかが問題となる。

…この点、304Ⅰただし書の趣旨は、第三債務者を二重弁済の危険から保護する点あるところ、抵当権においては、抵当権設定登記によって優先弁済を受け得ることが公示されているため、物上代位を認めても第三債務者が不測の損害を被るおそれはない

そこで、債権譲渡は「払渡し又は引渡し」には含まれず、抵当権者は(債権譲渡の対抗要件が備えられた後でも、)物上代位できると解する。

*「払渡し又は引渡し」に引き付けて論じること。

*債権質との優劣のQも同様に考えることができる。

Q動産売買先取特権に基づく物上代位と債権譲渡との優劣

【物上代位に対して、債権譲渡が反論された場合にQ】

動産売買先取特権者は、物上代位の目的債権が譲渡され、第三者に対する対抗要件が備えられたでも、自ら目的債権を差し押さえて、物上代位できるか。→対抗要件具備の認定をしっかりすること(467Ⅱ)。

債権譲渡そのものが「払渡し又は引渡し」(304Ⅰただし書)に含まれるかが問題となる。

…この点、304Ⅰただし書の趣旨は、第三債務者を二重弁済の危険から保護する点あるところ、動産売買先取特権においては、抵当権と異なり公示方法が存在しないため、物上代位を認めると第三債務者が不測の損害を被るおそれがある

そこで、債権譲渡は「払渡し又は引渡し」に含まれ、動産売買先取特権者は(債権譲渡の対抗要件が備えられた後では、)物上代位できないと解する。

*「払渡し又は引渡し」に引き付けて論じること。

*抵当権との違いをしっかり明示すること。

*動産売買先取特権の根拠条文は311⑤、321である。

*先取特権を行使する場合には、留置権などと同様に、被担保債権をしっかり明示すること。

*動産譲渡担保権も公示性がないのは同じなので、動産先取特権の論証で書くこと。

Q物上代位と転付命令との優劣

【物上代位に対して、転付命令が反論された場合にQ】

抵当権者は、物上代位の目的債権について転付命令の送達がなされたでも、自ら目的債権を差し押さえて、物上代位できるか。

転付命令が「払渡し又は引渡し」(372・304Ⅰただし書)に含まれるかが問題となる。

…この点、強制執行の安定性確保の見地から、第三債務者に対する転付命令の送達までに差押えをしなければ、抵当権者は物上代位できないと解する。

*「払渡し又は引渡し」に引き付けて論じること。

Q賃料債権に対する物上代位と相殺との優劣〈処理手順〉 司H25

【賃料債権に対する物上代位に対して、相殺が反論された場合にQ】

前提:A…債権者、抵当権者 B…債務者、抵当権設定者、不動産の賃貸人

C…不動産の賃借人

(1)まず、AのBに対する債権につき、Bの不履行があるため、抵当権の効力はその後に生じた果実たる賃料にも及ぶ(371

よって、Aは、Bの有する賃料債権に物上代位(372・304Ⅰ)し得る。

*賃料債権に物上代位する場合には、必ず371から書き始めること。

(2)<これに対して>Cは、Aが賃料債権を差し押さえるにBに対する債権を取得しており(511)、「二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合」に当たり、「双方の債務が弁済期にある」として、Bに対する相殺の主張をしている(505Ⅰ本文、506Ⅰ前段)。

そこで、抵当不動産の賃借人(C)は、抵当権設定登記のに賃貸人に対して取得した債権を自働債権とする賃料債権との相殺をもって、賃料債権に差押えをした抵当権者(A)に対抗できるか。物上代位と相殺との優劣が問題となる。

…この点、304Ⅰただし書の趣旨は、第三債務者を二重弁済の危険から保護する点あるところ、抵当権においては、抵当権設定登記によって優先弁済を受け得ることが公示されているため、物上代位を認めても第三債務者が不測の損害を被るおそれはない

そこで、抵当権者による賃料債権の差押えは、賃借人は、抵当権設定登記後に取得した債権と賃料債権との相殺を、抵当権者に対抗できないと解する。

*相殺を主張する場合には、要件検討をしっかりすること。

*あてはめでは、①相殺が、差押えになされていること、及び②自働債権が、抵当権設定登記に取得されたものであることの2点を検討すること。

*反対解釈:①差押えの相殺はOK

②抵当権設定登記に取得した自働債権による相殺もOK

*差押えの前後ではなく、抵当権設定登記の前後で考えること。

*物上代位と相殺のQと差押えと相殺のQは異なるので注意。そしてこれは、担保権の効力としての優先弁済SQ権のQと差押えの処分禁止効のQとが全く別のものであることに基づく。

Q物上代位と敷金充当との優劣

【物上代位に対して、敷金充当が反論された場合にQ+建物の明渡しがあった後にQ】

賃料債権に対する物上代位と敷金充当との優劣が問題となる。

…この点、敷金充当による未払賃料等の消滅は、敷金契約から当然に発生する効果であって、相殺のような当事者の意思表示は不要であるため、511の問題にならない

そこで、敷金契約が締結された場合、賃料債権は敷金充当を予定した債権になるため、(敷金充当によりその限度で当然に消滅し、)敷金充当が物上代位に優先すると解する。

*あてはめでは、敷金契約が締結されていることを認定すること。

*上記論証は、敷金の充当による賃料債権の消滅を、賃料債権と敷金返還SQ権の相殺と考えるのではなく、当然充当と考える立場である。

*帰結:賃借人が建物を明渡した時に敷金返還SQ権が発生し(622の2Ⅰ①)、それと同時に、未払賃料債権は敷金充当により当然に消滅する。

→未払賃料と敷金返還請求権が同時に存在するということはあり得ない。

Q法定地上権の成否

更地に抵当権を設定した場合、法定地上権は成立するか。

…この点、抵当権設定当時に土地上に建物が建築されていることは、法定地上権の成立要件であると解される388前段参照)

そこで、法定地上権は成立しないと解する。

*法定地上権は借地権の一種と考えてOK。

*法定地上権が設定されるということは、土地抵当権者にとっては極めて不利になる。逆に、建物抵当権者にとっては有利になる。

→法定地上権が成立するか否かのメルクマールは、抵当権者が不測の不利益を被るか否かである。

*法定地上権の価格は賃借権の価格より高額である。

∵地上権では、譲渡に賃貸人の承諾が必要な賃借権とは異なり、土地所有者(地上権設定者)の承諾を必要とせず、さらに、地上権の登記請求も可能であるから。

*法定地上権を第三者に対抗するためには、地上権の登記又は建物の登記(借地借家法10条)必要である。

Q法定地上権の成否

土地建物共同抵当において建物が滅失した後、新建物が再築された場合、法定地上権は成立するか。

…この点、土地建物に共同抵当権を設定した場合、土地・建物の価格はその価値全体を一体として把握、評価される。

とすれば、建物が滅失した場合、土地利用権の価格は当然に土地に吸収されると考えることが、抵当権者の合理的意思に合致する。

そこで、原則として法定地上権は成立しないと解する。

<もっとも>①新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ②新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物に土地と同順位の共同抵当権の設定を受けたとき特段の事情がある場合には、抵当権者を害することにはならないため、法定地上権が成立すると解する。

Q法定地上権の成否

【二番抵当権設定時にのみ要件を満たす場合にQ】

土地を目的とする一番抵当権設定当時、土地と建物の所有者が異なっていたが、土地を目的とする二番抵当権設定当時には、土地と建物の所有者が同一人であった場合、法定地上権は成立するか。

…この点、かかる場合に法定地上権が成立するとなると、土地の担保価値が下落し、一番抵当権者が不測の損害を被る

また、一番抵当権設定当時に建物所有者は何らかの土地利用権を有していたはずであり、かかる権利は一番抵当権にも優先し存続する以上、新たに法定地上権を成立させる必要がない

そして、かかる土地利用権は土地・建物が同一人に帰属した時点で、混同によって消滅するように思われるが(179Ⅰ本文)、これは抵当権の目的となっている(87Ⅱ類推、370類推)ことから、例外的に消滅しない(179Ⅰただし書)

そこで、法定地上権は成立しないと解する。

<もっとも>二番抵当権設定時に、一番抵当権が設定契約の解除によって消滅していた場合には、一番抵当権者を保護する必要がないため、法定地上権が成立すると解する。

Q法定地上権の成否

【抵当権設定契約が解除された場合にQ】

土地を目的とする先順位の甲抵当権と後順位の乙抵当権が設定された後、甲抵当権が設定契約の解除により消滅し、その後、乙抵当権の実行により土地と地上建物の所有者を異にするに至った場合において、当該土地と建物が、甲抵当権の設定当時には同一の所有者に属していなかったとしても、乙抵当権の設定当時に同一の所有者に属していた場合、法定地上権は成立するか。

…この点、抵当権の性質上、被担保債権の弁済や設定契約解除等により消滅することは、乙抵当権者は当然に予測できる

よって、乙抵当権者は、甲抵当権消滅による順位上昇の利益法定地上権成立の不利益を考慮して担保余力を把握できるため、法定地上権が成立したとしても乙抵当権者に不測の損害はない

そこで、法定地上権が成立すると解する。

Q担保目的物が滅失・損傷した場合に担保権者の採り得る手段4つ

①物上代位(304)

②担保権侵害の不法行為に基づく損賠SQ(709)

③増担保SQ(特約)

④期限の利益喪失によるSQ(137②)

*③④は、担保権者かつ債権者であれば可能である。

Q抵当目的物の明渡しを求める場合に抵当権者の採り得る手段2つ

①抵当権に基づく妨害排除SQとしての明渡しSQ

②抵当権設定者の明渡SQ権の代位行使(423Ⅰ)

*これらの論点に関しては、以下記述。

*抵当権に「侵害」があるといえるためには、侵害により目的物の交換価値が被担保債権額を下回ることを要しない。∵抵当権の不可分性

<これに対して>抵当権侵害により「損害」(709)が生じたといえるためには、侵害により目的物の交換価値が被担保債権額を下回ることを要する。∵抵当権の本質(目的物の交換価値を把握する権利)

*抵当権実行であっても、被担保債権の弁済期以降は、損賠SQ(709)できる

そして、損害額の算定は、㋐抵当権実行時、又は㋑損賠SQ時を基準にする。

Q抵当権に基づく明渡しSQ(不法占有者の場合)

【抵当不動産に不法占有者がいる場合にQ】

抵当権も物権である以上、妨害排除SQが認められ得るところ、抵当権者は、(抵当不動産の所有者から占有権原の設定を受けずに抵当不動産を占有する)不法占有者に対して、抵当権に基づく妨害排除SQとして抵当不動産の明渡しをSQできるか。

…この点、抵当権は非占有担保であるため、原則としてかかるSQはできない

<もっとも>抵当権の本質は、目的物の交換価値を把握し、優先弁済を受ける点にある。

そして、これらが侵害されている場合には、抵当権侵害があるといえるところ、不法占有者の存在により、抵当権侵害があるといえる。

そこで、妨害排除SQとしての明渡しをSQできると解する。

*抵当権に基づく妨害排除SQをするための要件2つ

①抵当権が及んでいること

②抵当権が侵害されていること

*この論点は、要件についてのものである。

*抵当権は本来、占有を内容としない物権であるため、返還請求としての引渡し、明渡しは認められない

しかし、物権であることには変わりはないため、妨害排除請求としての引渡し、明渡しが認められる

Q抵当権に基づく明渡しSQ(占有権原ある者の場合)

【抵当不動産に占有権原を有する占有者がいる場合にQ】

抵当権も物権である以上、妨害排除SQが認められ得るところ、抵当権者は、抵当不動産の所有者から占有権原の設定を受けてこれを占有する者に対して、抵当権に基づく妨害排除SQとして抵当不動産の明渡しをSQできるか。

この点、抵当権は非占有担保であるため、原則としてかかるSQはできない

<もっとも>抵当権の本質は、目的物の交換価値を把握し、優先弁済を受ける点にある。

そして、これが侵害されている場合には、抵当権侵害があるといえる。

また、相手方に占有権原がある場合、侵害要件は厳格に解すべきである。

そこで、①占有権原の設定に競売手続を妨害する目的があり、②その占有により目的物の交換価値の把握が妨げられ、優先弁済を受けることが困難となる場合には、抵当権侵害があるといえ、妨害排除SQとしての明渡しをSQできると解する。

*抵当権に基づく妨害排除SQをするための要件2つ

①抵当権が及んでいること

②抵当権が侵害されていること

*この論点は、要件についてのものである。

Q抵当権に基づく明渡しSQに当たり、抵当権者は、占有者に対して、直接自己への抵当不動産の明渡しを求めることができるか。(問題提起不要の論点)

…この点、抵当権は非占有担保であるため、原則としてかかるSQはできない

<もっとも>(抵当不動産の)所有者において、抵当権侵害が生じないよう、抵当目的物を適切に維持・管理することが期待できない場合には、(抵当権者は、占有者に対し、)直接自己への明渡しを求めることができると解する。

*自己に直接返せといえるか?系の論点は、序盤で書くべきではなく、相手方が反論を全て言い終えて、それでもSQできるってなった場合に限って書くべきである。

Q抵当権設定者の明渡SQ権の代位行使の可否

抵当権者は、抵当権侵害を理由に、抵当権設定者の有する明渡SQ権を代位行使(423Ⅰ)できるか。

…この点、抵当権の本質は、目的物の交換価値を把握し、優先弁済を受ける点にあるところ、不法占有者の存在により、抵当権侵害があるといえる。

そして、抵当権者は、抵当不動産の所有者に対し、抵当目的物を適切に維持・管理するよう求めるSQ権を有する。

そこで、抵当権者は、かかる担保価値維持SQ権を被保全債権として、設定者の有する明渡SQ権を代位行使できると解する。

そして、この際、所有者において、受領することが期待できないといった事情がある場合には、(抵当権者は、占有者に対し、)直接自己への明渡しを求めることができると解する。

Q権利の放棄

【権利を放棄する主張がなされた場合にQ】

Aは、権利を放棄しているため、~(実益)と主張することが考えられる。

…この点、所有権その他の物権の放棄は、他人の利益を害しない限度において認められるものなので398参照)、他人の利益を害する~権の放棄は認められないと解する。

*条文の引用を必ずすること。

Q留置権の書き方

…Aは、~の費用償還SQ権を被担保債権とする留置権(295Ⅰ)を行使して、Bからその償還を受けるまでは、目的物の引渡しを拒むと反論することが考えられる。

*ポイント2つ

①被担保債権を具体的に明示すること。

②留置権を主張してどうしたいのか?(=引き渡しを拒みたい)という実益部分まで書くこと

*責任財産の保全(423、424)の場合は「被保全債権」なので注意。

*反論が認められた場合は引換給付判決が下される。

*相手に目的物を引き渡すの売買代金債権の担保→留置権

相手に目的物を引き渡したの売買代金債権の担保→動産売買先取特権

*短い書き方:「弁済期にある、甲土地「に関して生じた債権」を有する。」

Q留置権の牽連性 司H27

【被担保債権成立時において、被担保債権の債務者と物の引渡(明渡)SQ権者とが異なる場合にQ】

被担保債権たる本件SQ権は「その物に関して生じた債権」(295Ⅰ本文)に当たるかが問題となる。

…この点、留置権の趣旨は、目的物を留置して債務者の弁済を間接的に促すことにあるため、被担保債権成立時において、被担保債権の債務者物の引渡SQ権者とが同一である(or被担保債権引渡義務とが同一の法律関係から生じている)必要があると解する。

*「その物に関して生じた債権」に引き付けて論じること。

*規範2つ使いこなせるように。

*留置権のもう一つの趣旨は当事者間の公平である。→価値判断の問題では、公平を害しないか?の観点

*被担保債権の債務者と物の引渡SQ権者とが明らかに同一である場合は論点展開不要である。

*いったん留置権が成立すれば、その留置物の譲受人に対しても留置権を主張できる。∵物権

*牽連性が認められる場合2つ

①債権が物自体から生じた場合

②債権が物の返還(引渡)義務と同一の法律関係又は事実関係から生じた場合

Q二重譲渡と留置権

Aが不動産をBとCに二重譲渡し、Bが引渡しを受けたが、Aは第二譲受人Cに登記名義を移転し、CがBに対して、本件不動産の明渡SQをした場合、Bは、Aに対する売買契約の債務不履行に基づく損賠SQ権被担保債権とする留置権(295Ⅰ)を行使して、Cからその支払いを受けるまでは、本件不動産の明渡しを拒むと主張することができるか。

かかる損賠SQ権が、「その物に関して生じた債権」に当たるかが問題となる。

…留置権の牽連性のQの論証を展開

*あてはめ:「本件において、BのAに対する損賠SQ権は、Cが登記を具備し、確定的に権利者となった時点で成立する。そうだとすると、Bの被担保債権成立時において、被担保債権の債務者はAであり、目的物の引渡SQ権者はCであるから、かかる損賠SQ権は「その物に関して生じた債権」には当たらない。そこで、Bは留置権を行使できない。」

*留置権の牽連性のQのあてはめに関する論点である。

*被担保債権成立時の特定をしっかりすること。

Q占有が不法行為によって始まったものではないこと(295Ⅱ)

【占有の無権原者が、留置権の主張をした場合にQ】

占有開始時には権原があったが、その後に無権限となった者の費用支出に対し、留置権の主張が認められるか。295Ⅱを類推適用できるかが問題となる。

…この点、占有の無権原につき悪意・有過失である者の占有は、295Ⅱと同じく不法であるため、かかる者に対しては、同項を類推適用し、留置権の主張を否定すべきと解する。

*典型事例:家屋賃借人が賃貸借契約解除後も依然として家屋を占拠し、その間に修繕を行った場合

Q譲渡担保権の法的性質

【譲渡担保権の設定により所有権を取得するか?という場合にQ】

所有権者であったAがBに譲渡担保権を設定したことにより、所有権がBに移転するか。(譲渡担保権の法的性質が問題となる。)

…この点、譲渡担保の実質債権担保であるところ、かかる実質を重視し、債権者は担保権を有するにすぎないと解する。(担保的構成)

*担保的構成に立つことによって抵当権などと同様に考えることができる。

*所有権的構成の論証:「この点、所有権移転の形式重視し、所有権は譲渡担保権者に移転するが、ただ、譲渡担保権者は、その所有権を担保の目的以外には行使しないという義務(債権的拘束)を設定者に対して負うにすぎないと解する。」

*譲渡担保の実行方法→譲渡担保権を実行することで確定的に所有権を取得し、動産の引渡しを請求する。(競売手続を介さない私的実行)

Q受戻権の消滅

【帰属清算型なのに処分清算型でやることをやった場合にQ】

帰属清算型譲渡担保において、弁済期到来(=履行遅滞)清算譲渡担保権者が目的物を第三者に処分した場合、譲渡担保権設定者の受戻権は消滅するかが問題となる。

…この点、譲受人の背信性を必ずしも確知できない債権者保護の見地から、帰属清算型の場合においても、目的物の処分によって設定者の受戻権は消滅すると解する。そして、この理は譲受人(第三者)が背信的悪意者であっても異なるとことはない

*帰属清算型の場合、本来、清算することによって初めて受戻権が消滅すると解されるところ、債権者が目的物を第三者に処分したことから、これによっても受戻権が消滅するのか?という問題である。

*結論の妥当性

→譲渡担保権設定者は、第三者に対し、譲渡担保権者に対する清算金請求権を被担保債権として留置権を主張でき、清算金を確実に取得することができるため、不都合はない。

Q譲渡担保権に基づく物上代位の可否(問題提起不要の論点)

【譲渡担保権に基づいて物上代位する場合にQ】

…この点、譲渡担保の実質債権担保であるため、担保権についての規定である304を類推適用し、譲渡担保権に基づく物上代位ができると解する。

*所有権留保に基づく物上代位の可否のQも同じ論証。

Q集合物譲渡担保の有効性

【一切の~のように、集合物を一括して譲渡担保の目的とした場合にQ】

本件契約は、Xの一切の~という集合物を目的とする集合物譲渡担保契約であるところ、かかる契約は有効か。

一物一権主義(Q1)及び特定性(Q2)との関係でその有効性が問題となる。

…この点、集合物全体に担保権を設定するという当事者の意思を重視し、集合物譲渡担保とは、集合物を全体として一つの物とみて、その上に譲渡担保権を設定するものであり、一物一権主義には反しないと解する。(集合物論)

そして、種類、所在場所及び量的範囲を指定する等、何らかの方法で目的物の範囲が特定される場合には、特定性要件を満たす(一つの集合物として譲渡担保の目的物となり得る)と解する。

*Q1は一般的・抽象的な問題であり、Q2は個別的・具体的な問題である。

*集合物論に立った場合、詐害行為の成立時点は譲渡担保権の設定時となる。×動産の搬入時

*Q2のあてはめ:「本件契約は、種類が「~」、所在場所が「~」、量的範囲が「~」と指定されており、所在場所には~しか存在しないため、目的物の範囲が特定されている。」

*量的範囲は、「一切」「全部」という場合に限って特定されていると考える。

そして、「3分の1」などは特定に欠けるため、標識を付したり、別置したりする必要がある。

*集合物譲渡担保における対抗要件は集合物全体占有改定で足りる。そして、対抗力は、その構成部分が変化したとしても、集合物としての同一性が失われない限り新たにその構成部分となった動産を包含する集合物について及ぶと解する。

∵権利関係の公示の要請は、特定性要件を満たす以上、満たされているため

→集合物という特殊性から、占有改定のみで公示の要請を満たすのかという特殊性がある。

Q集合物譲渡担保と動産先取特権との優劣

【動産先取特権の目的物が譲渡担保に供せられた場合にQ】

動産先取特権の目的物が譲渡担保に供せられた場合、いずれが優先するか。

…この点、譲渡担保の実質債権担保であるため、譲渡担保権の設定は333の「引き渡し」に当たらないと解する。(前提論点)(対抗要件が具備されていない場合)

そして、動産の譲渡担保権に最も近い担保物権は動産質権であるため、334を類推適用し、譲渡担保が先取特権に優先すると解する(330Ⅰ)。

*「引き渡し」に引き付けて論じること。

*前提論点として、333との関係で譲渡担保の法的性質が問題となる。

*上記論証は、担保権の競合と考える立場に立つ。

*集合物譲渡担保の対抗要件(占有改定)が具備されている場合には、「引き渡し」(333)があるといえる以上、「第三取得者」(333)に引き付けて論じることになる。すなわち、「この点、~解する。」が「この点、譲渡担保の実質債権担保であるところ、担保目的物の所有権は設定者が有し担保権者は担保権を有するにすぎないため、「第三取得者」に当たらないと解する。」に代わる(担保的構成)。

*「第三取得者」とは所有権取得者のことをいうため、所有権的構成に立った場合には、譲渡担保権者は「第三者」に当たると解する。そして、その結果、例外なく譲渡担保が優先することとなる。

→担保権的構成に立った場合、330Ⅱ前段という例外がある。

*この論点は、どちらが優先するかの論点であって、どちらが権利を行使できるかの論点ではないので注意。よって、劣後した方も権利の行使自体は可能である。

Q集合物譲渡担保権に基づく物上代位の可否〈処理手順〉

【集合物譲渡担保権に基づいて物上代位する場合にQ】

Q1:まず、前提として、譲渡担保権に基づく物上代位ができることを認定。

譲渡担保権に基づく物上代位の可否のQの論証を展開

Q2:<もっとも>本件契約は、Xの一切の~という集合物を目的とする集合物譲渡担保契約である。

そこで、集合物譲渡担保権に基づく物上代位の可否が別途問題となる。

…この点、集合物譲渡担保権は、集合物を構成する動産の価値を把握するものであるため、その価値代替物にも及ぶ。(前提論点)

<もっとも>集合物譲渡担保設定契約は、設定者が目的動産を販売して営業を継続することを前提とする。

そこで、設定者が通常の営業を継続している場合には、特段の事情のない限り、集合物譲渡担保権者は物上代位できないと解する。

*前提論点として、集合物譲渡担保において個別動産に譲渡担保権の効力が及ぶかが問題となる。

*集合物譲渡担保権の場合、通常の動産譲渡担保権と異なり、構成部分が変動するという特殊性があるため、Q2が別途問題となる。

*あてはめでは、設定者の行為が通常の営業の範囲内にあることを認定すること。

*特段の事情とは、目的物の売却などにより発生した代金債権に対して直ちに物上代位できる旨の合意がされている場合などのことをいう。

*集合物譲渡担保では、設定者には「通常の営業の範囲」で集合物内の個別の動産を処分する権限が与えられている。そして、個別動産の処分が通常の営業の範囲内か否かは、①第三者の抜け駆け的な債権回収か否か、②補充可能性、③営業活動の態様、④譲渡担保権者の優先弁済権の侵害の可能性などの事情を考慮して判断する。

*担保権者の犠牲において、ほかの一般債権者を利するような態様の処分は、通常の営業の範囲を超えるものといえる。

*集合物譲渡担保が二重に設定された場合、第一順位の譲渡担保権者が採り得る手段としては、第二順位の譲渡担保権の実行を第三者異議の訴えによって排除するしかない。

Q所有権留保の法定性質 司H27、30

【所有権留保特約が出てきた場合にQ】

まず、Bは、Cに対して、所有権に基づく返還SQをすることが考えられる。

<これに対して>Cは、AB間の売買契約には、所有権留保特約が含まれており、Bは未だ代金完済していないため、目的物の所有権を有しておらず、Bの上記SQは認められないと反論することが考えられる。

(そこで、所有権留保の法的性質が問題となる。)

…この点、所有権留保特約は、代金完済を停止条件とする所有権移転の合意であり、所有権売主(留保所有権者)が有し、買主は、①目的物の利用権と②代金完済という条件成就によって所有権を取得する期待権のみを有すると解する。(所有権的構成)

*所有権留保特約によって、代金支払い時まで売主が目的物の所有権を有する(所有権的構成)のか、代金未払いであっても買主に所有権が移転しており、売主は一種の担保物権としての留保所有権を有するにすぎない(担保的構成)のかという問題である。

Q相続の条文

・相続開始(882) ゴ:母に相続開始

・相続人(子)(887Ⅰ) ゴ:母泣いて子が相続

→Aの死亡により、そのであるBは、Aの権利を相続する(882、887、896)

・代襲相続(887Ⅱ)

・相続人(配偶者)(890) ゴ:白鳳配送

→Aの死亡により、その配偶者であるCは、Aの権利を相続する(882、890、896)

・相続人の欠格事由(891) ゴ:白衣着て結核

・相続により一切の権利義務承継(896) ゴ:白老死んで一切承継

・共同相続の効力(898)

・相続分に応じて承継(899)

・遺言の効力の発生時期(985)

Q相続欠格と二重の故意

【相続人が不当な利益を得ようとする意思なく遺言書を隠匿等した場合にQ】

Xは、遺言書を自宅に保管し、Yに見せずにいた。そのため、Xは、「相続に関する被相続人の遺言書を……隠匿した」(891⑤)ことになり、「相続人とすることができない」(同条柱書)のではないか。

…この点、同条5号の趣旨は、遺言に関し著しく不当な干渉行為をした相続人に対して、相続人となる資格を失わせるという民事上の制裁を課す点にある。

そこで、相続人の隠匿行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでない場合には、(遺言に関する)著しく不当な行為をしたとはいえず、相続人は、同号所定の相続欠格者には当たらないと解する。

Q相続開始後、遺産中の不動産から生じた賃料債権

相続開始、遺産分割に、遺産中の不動産から生じた賃料債権は、遺産分割の対象となるか。

…この点、上記賃料債権は、相続開始に生じたものである以上、遺産とは別個の財産といえる(896本文参照)。→共有にはならない。

そこで、賃料債権は可分債権として当然に分割され427、各共同相続人がその相続分に応じて、分割単独債権として確定的に取得すると解する。

*帰結:遺産分割の対象にはならない。

*遺産分割に生じた賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないが、遺産分割に生じた賃料債権の帰属は、当然に遺産分割の影響を受けるので注意。

*遺産分割後に、それによって得た権利に基づいて請求する場合には、909本文から書き始めること。

Q被相続人の担保責任に基づく解除の可否

遺産分割によって取得した財産に瑕疵がある場合に、当該財産を取得した相続人は、当該遺産分割の担保責任(911)に基づく解除をなし得るか。

「担保の責任」に解除権(565、564、542Ⅰ①)が準用されるかが問題となる。

…この点、解除を認めると遡及効(909本文)により遺産の再分割を余儀なくされ、法的安定性が著しく害される

そこで、解除権はその性質上、(共同相続人間の担保責任には)準用されないと解する。

Q「相続分に応じて」(911)の意義

担保責任に基づく損賠SQ(911、565、564、415Ⅱ①)をする場合において、「相続分に応じて」の意義が問題となる。

…この点、911は共同相続人間の担保責任に関する規定であることから、「相続分に応じて」とは、瑕疵がなかったとすれば遺産分割の結果取得したであろう財産の価値に比例して、という意味と解する。

Q884条の適用範囲

【共同相続人の一人が自己の相続分を超えて相続財産を自己のものとして占有管理する場合等にQ】

相続回復SQ権の時効期間経過に、遺産分割から排除された相続人がその回復を求めることはできるか。

共同相続人間の相続争いに884が適用されるかが問題となる。

…この点、権利関係の早期確定の観点から、共同相続人間においても、原則として同条が適用されると解する。

<もっとも>自己の相続資格の欠缺につき悪意・有過失の者に短期消滅時効の利益を享受させるのは妥当でない

そこで、かかる共同相続人を相手方とする場合には、例外的に同条は適用されないと解する。

*帰結:相手方が884の短期消滅時効を援用できるのは、他に共同相続人が存在することについて善意であり、かつ、そのように信ずべき合理的事由のある場合(無過失)に限られる。

*善意かつ合理的事由の判断時期は、相続権侵害の開始時点である。

*合理的事由とは、戸籍上はその者が唯一の相続人であり、かつ、他人の戸籍に記載された共同相続人のいることが明らかでないこと等である。

Q預金債権が遺産分割の対象になるかが問題となる。

…この点、普通預金債権は、確実かつ簡易に換価できる点で現金と似ており、遺産分割において調整に資する財産といえる。

そして、当該債権は常にその残高が変動し得るものであり、この理は預金者が死亡した場合においても異ならない。

かかる特殊性から、普通預金債権について427の適用はなく(相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく)、被相続人が死亡時に有していた普通預金債権は相続人らが準共有(898264本文)し、相続開始後に預金残高が変動した場合であっても、その額につき相続人らが普通預金債権を準共有すると解する。

*帰結:遺産分割の対象になる。

*準共有する結果、預金の払戻しは変更行為(251に当たるため、他の共有者の同意が必要となる。

Q特約の処理

…特約は、契約に付随するものであり、契約の本質部分ではないため、契約上の地位の移転が生じた場合、新たな地位を取得した者には原則として及ばない

<もっとも>当事者の合理的意思解釈から、及ぼすことが妥当な場合及ぶ

*特約の存在を前提に地位を引き継いだ場合や、特約が承継されたとしても相手方に何ら不利益が生じない場合には、及ぶとするのが一般的。

*特約の問題が出てきたら、①地位の移転があるか、②特約が及ぶか、の2点がQとなる。

(2)処理パターン

Q「法律構成」が聞かれた場合の処理

→2つの構成を比べなければならない以上、『比較の視点』を持つことがポイント

*比較の視点:①実体に沿っているか

②誰か不利益を被る人がいないか

*最終的にどちらの構成が優れているのか、ということを示すこと。

Q生の主張から、SQへ流す根拠

①生の主張:金(物)返せ

根拠:㋐解除による原状回復SQとして(545Ⅰ)

解除原因:ex債務不履行契約不適合責任 ×錯誤無効

㋑不当利得返還SQとして(703、704)

不当利得原因:錯誤無効

②生の主張:損害を賠償しろ

根拠:㋐債務不履行に基づく損賠SQとして(415Ⅰ)

㋑契約不適合責任に基づくSQとして(562Ⅰ本文、564、415Ⅰ)

㋑不法行為に基づく損賠SQとして(709)

Q売買契約の巻き戻しの処理

①売主のSQ

㋐契約を解除(取消)した上で、所有権に基づく引渡しSQ

→買主の反論:所有権喪失の抗弁、同時履行の抗弁(533類推

㋑目的物の使用利益の返還SQ(明渡請求や引渡請求とセット)

→解除の場合:545Ⅱとの均衡から、使用利益を付して返還(判例)×不当利得

詐欺取消し・錯誤無効の場合:不当利得に基づく使用利益の返還SQ

→買主が善意の場合には、果実収取権(189を展開

㋒損賠SQ

②買主のSQ

㋐(原状回復SQとして・不当利得返還SQとして)代金返還SQ

㋑損賠SQ

Q債権の一生の処理

①買主のSQ

㋐引渡SQ(代物SQ 555)

調達義務(引渡債務)の存続

⇒要件:a不特定物売買であること(物の個性に着目していないこと)

b目的物が特定(401Ⅱ)していないこと

*特定物とは、取引の目的物として、当事者が物の個性に着目した物をいう。

<これに対して>不特定物とは、具体的な取引に当たって、当事者が単に種類、数量、品質等に着目し、その個性を問わずに取引した物をいう。

*特定の有無の中で本件債務の性質を認定すること。

→持参債務なら現実の提供(484後段)

取立債務なら口頭の提供(484前段)

瑕疵ある物を給付しても「物の給付をするのに必要な行為を完了し」(401Ⅱ)たとはいえない

債務不履行に基づく損賠SQ(415)+解除(541)

→SQ×なら、契約不適合責任に基づく損賠SQ(相手方の過失不要)

②売主のSQ

㋐代金支払SQ(555)

危険負担が問題となる

㋑損賠SQ(415)

受領遅滞が問題となる

*ここで増加費用を請求したとしても、485でも請求できる以上、書く実益がない

→損害賠償請求だからこそ請求可能な損害を具体的に書けるとポイント高い。

ex転売利益の減少など+倉庫が空かないことで商売のチャンスを逃した

増加費用SQ(413Ⅱ、485ただし書)

立川で学ぶ「ヨガの思想」

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