憲法1 憲法の全体構造、人権、統治
01 憲法の全体構造
(1)憲法の意味
まず、一定の限定された地域(領土)を基礎として、その地域に定住する人間が、強制力をもつ統治権のもとに法的に組織されるようになった社会を国家と呼びます。従って、領土と人と権力は、古くから国家の三要素といわれてきました。この国家という統治団体の存在を基礎づける基本法を憲法と呼ばれてきた法になります。
そこで、憲法の意味についてですが、憲法の概念は多義的でありますが、(1)形式的意味、と(2)実質的意味、の二つの側面があります。形式的意味においては、憲法という名前で呼ばれる成文の法典(憲法典)を意味し、たとえば現代日本では日本国憲法がそれにあたります。存在形式による概念であり、憲法の内容は関係ありません(憲法という名前の物)。
それに対して、実質的意味においては、ある特定の内容をもった法を憲法と呼ぶ場合です。存在形式を問わず、憲法の内容による概念です(憲法と呼ぶに値するか)。この実質的意味においける憲法には二つのものがあります。一つは固有の意味で、これは国家の統治の基本を定めた法としての憲法であり、通常「固有の意味の憲法」と呼ばれます。国家は、いかなる社会・経済構造をとる場合でも、必ず政治権力とそれを行使する機関が存在します。この機関、権力の組織と作用および相互の関係を規律する規範が、固有の意味の憲法です。この意味の憲法は、いかなる時代のいかなる国家にも存在します。
次に、実質的憲法のもう一つの意味として、立憲的意味というものがあります。これは自由主義に基づいて定められた国家の基礎法であるということです。一般に「立憲的意味の憲法」あるいは「近代的意味の憲法」といわれます。18世紀末の近代市民革命に主張された、専断的な権力を制限して広く国民の権利を保障するという立憲主義思想に基づく憲法です。その趣旨は、「権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていない社会は、すべて憲法をもつものではない」と規定する1789年のフランス人権宣言16条に示されています。
この意味の憲法は、固有の意味の憲法と異なり、歴史的な観念であり、その最も重要な狙いは、政治権力の組織化というよりも権力を制限して人権を保障することにあります。以上、三つの憲法の観念のうち、憲法のもっとも優れた特徴は、その立憲的意味になると考えられるべきで、憲法学の対象とする憲法とは近代に至って一定の政治的理念に基づいて制定された憲法であり、国家権力を制限して国民の権利・自由を守ることを目的とする憲法です。次にそのような立憲的意味の憲法の特色についてお話しします。
(02)立憲的憲法の特色
立憲的意味の憲法の深淵は、思想史的には、中世に遡ります。中世においては、国王が絶対的な権力を保持して臣民を支配したが、国王といえども従わなければならない高次の法(highher law)があると考えられ、根本法(fundamental law)とも呼ばれた。この根本法の観念が近代立憲主義へと引き継がれ、ロックやルソーにより近代自然法ないし自然権(natural rights)の
思想によって基礎づけられ、この思想によれば、(1)人間は生まれながらにして自由克つ平等であり、生来の権利(自然権)をもっている、(2)その自然権を確実なものとするために社会契約(social contract)を結び、政府に権力の行使を委任し、そして、(3)政府が権力を恣意的に行使して人民の権利を不当に制限する場合には、人民は政府に抵抗する権利を有すると考えました。
このような思想に支えられて、1776年から1789年にかけてのアメリカ諸州の憲法、1788年のアメリカ合衆国憲法、1789年のフランス人権宣言、1791年のフランス第一共和政憲法などが制定された。立憲的憲法とはその形式の面では、成文法であり、その性質においては硬性(通常の法律よりも難しい手続きによらなければ改正できないこと)であるのが通常である。
(3)憲法の特質
近代憲法の特質を列挙すると、①自由の基礎法②制限規範③最高法規の三つがある。まず、自由の基礎法であるが、近代憲法は何よりもまず自由の基礎法であり、このような自由の観点は前述の自然権の思想に基づくものであり、この自然権を実定化した人権規定は、憲法の中核を構成する根本規範であり、この根本規範を支える核心的価値が人間の人格不可侵の原則(個人の尊厳・個人の尊厳の原理)である。次に、制限規範としての憲法とは、憲法が何よりも権力を制限する基礎法(制限規範)であることを意味します。
そして、憲法は最高法規であり、国法秩序の段階構造においてもっとも強い形式的効力を持つ規範です。憲法は、法律以下国内法に対して最上位にあるということを形式的最高法規性といいます。憲法98条1項が「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」と定めているのは、その趣旨を明らかにしているものです。国法秩序は、形式的効力の点で、憲法を頂点とし、その下に法律→命令(政令、府省令等)→処分(判決を含む)という順序で段階構造をなしているものと解されています。
次に、実質的最高法規性としては、最高法規としての憲法の本質は実質的に法律と異なるという点に求められます。憲法は、本来、人間の権利・自由をあらゆる国家権力から不可侵のものとして保障するという理念に基づいて制定された。このような自由の基礎法であるところに、最高法規性の実質的根拠があり、これを実質的最高法規性という。以上から、「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪え、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」(97条)というのは、「この憲法の改正は、各議員の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする」(98条)として硬性憲法の建前、そこから当然に帰結される憲法の形式的最高法規性として98条1項の実質的根拠を明らかにした重要な規定となる。
(4)憲法の基本原理
憲法の基本原理は、国民主権(国民主権主義)、基本的人権の尊重、平和主義であり、これらは憲法の三大原理と称される。
国民主権とは、①国家権力そのものとして、立法、行政、司法の三権を総称する統治権という意味であり、ポツダム宣言8項の「日本国ノ主権ハ本州、北海道、…ニ局限セラルベシ」はこの意味と解されます。②次に最高独立性(権力が1つしかない)として、前文3段「自国の主権を維持し」はこの意味で解されます。また、③(国政についての)最高決定権として、前文1段「主権が国民に存する」や1条はこの意味として解されます。
国民主権の要素としては、権力的契機(きっかけ)として、国の政治のあり方を最終的に決定する権力を国民自身が行使する側面(「国民」とは具体的な民衆の集合のこと)、正当性の契機として、国家の権力行使を正当づける究極的な権威が国民に存する側面(「国民」とは抽象的な代表者のこと)とされています。
人権を保障した条文としては、
・幸福追求権(13条)「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で最大の尊重を必要とする。」
・表現の自由(21条1項)「集会、結社、及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。検閲は、これをしてはならない。通信の秘密はこれを侵してはならない。」
などがあります。人権は、固有性、不可侵性、普遍性を保障しています。ちなみに、人権の類型としては、
①自由権
・精神的自由権(表現の自由(21条1項)等)
・経済的自由権(財産権(29条)等)「財産権はこれを侵してはならない。財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。私有財産は、正当な補償の下にこれを公共のために用いることができる。」、人身の自由、
②社会権
・生存権(25条)「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」、教育を受ける権利(26条)「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育はこれを無償とする。」
③参政権
・選挙権・被選挙権(15条)「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。すべての公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。すべての選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問われない。」
などが挙げられます。また、統治においては、
・国会(41条)「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」
・内閣(65条)「行政権は、内閣に属する。」
・司法(76条)「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」
などと定められています。細かい各条文については次回以降の記事で解説していきます。
平和主義については、基本的人権が保障されるためには、何よりもまず平和が保障されていなければならないと考えられます(価値判断)。前文で平和主義と平和的生存権を宣言し、さらに9条で戦争の放棄を宣言しています。(比較憲法的に見れば)日本国憲法の顕著な特徴ですが、9条について理解しておけば概ね足ります。「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」(前文1段)と「恒久の平和を念願し、…平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、平和のうちに生存する権利を有する」(前文2段)、「国権の発動たる戦争」「武力による威嚇」「武力の行使」の放棄、「戦力の不保持」など(9条)を理解しておきましょう。
ちなみに、憲法前文には、こう書いてあります。
「日本国民は正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民と協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基づくものである。われらはこれに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。われらは全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和の内に生存する権利を有することを確認する。
われらは、いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけて、全力をあげて崇高な理想と目的を達成することを誓う。」(憲法前文))
尚、憲法前文の法的性質については、憲法の一部をなし、本文と同じ法規範的性格(法的性質)をもつと解されています(法的規範性承認説)。論点としては、前文が本文と同様に裁判規範としての生活を持つかについて通説は、前文の規定は抽象的な原理の宣言にとどまるので、裁判規範性としての性格はもたず、裁判所に対して前文の執行を求めることまではできないとされています。一方、前文2段の「平和のうちに生存する権利(平和的生存権)の裁判所における解釈・適用の有無という問題について、前文の裁判規範制を認めることは出来るという考えもある。
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【監修者】 | 宮川涼 |
プロフィール | 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。 |