憲法２ 憲法の成立過程、法の支配、憲法保障

現行の憲法の前は、大日本帝国憲法（欽定憲法）であり、主権は天皇でした。その後、1945.8.14　ポツダム宣言受諾し、日本は連合国軍に占領され、連合国軍が日本に憲法改正を要求し、1946.10.7　大日本帝国憲法改正案として日本国憲法が成立（民定憲法）しました。こちらでは、主権は国民であり、主権者が変更するというところまで「改正」によってなしうるのか。結局今の日本国憲法は有効なものなのか？（問題意識１で「なしえない」とした場合は特に）どうやって、有効だと説明するのか、問題となります。

通説は、主権者の変更は改正の限界を超えており、本来しえないと考えるのが理論的とされます。しかし、日本国憲法は有効であると考えないと無理が生じるため、ポツダム宣言受諾の8月に革命が起こり、新たな主権者が憲法改正した、と説明できるとして、理解されており、これを八月革命説と呼びます。

０２　法の支配

法の支配とは、国家権力による専断的な支配（人の支配）を排斥し、権力を法で拘束することによって、国民の権利・自由を守るべきという考え方をいいます。「人の支配」に対立する反対概念であり、英米法の根幹として発展してきた基本原理です。日本国憲法は、その成立過程から、英米法の影響を強く受けており、「法の支配」の考え方も引き継いでいると理解されています（ただし、大陸法系の考え方も、混在しています。）。

法治主義とは、国民の権利と自由を守るため、「法律による行政」を志向しているものの、「法律によればどのようにも国民の権利が制限できる」との危険を含んでいました。というのも、法律の内容の適正について議会が自ら判断していたからです。そこで、法の支配では、立法権も憲法に拘束され、法の内容の適正が要求されるものとし、その内容の適正さについては裁判所が判断するとの考え方を取るようになりました。以下にまとめておきます。

０３　憲法保障

憲法保障とは、最高規範である憲法が、自ら設定している規範の意味を下位の法規範等によって変質させられることを未然に防止し、あるいは事後的に更正するための措置をいいます。憲法保障の目的は、基本的人権の保障であると考えられます。

→（事前の措置）最高法規性の宣言（98条１項）、公務員の憲法尊重擁護義務（99条）、厳格な改正手続（96条）等

→（事後の措置）違憲審査権（81条）

違憲審査権のあり方・目的にも、さまざまなあり方があります。裁判所による違憲審査制としては、「抽象的違憲審査制」と「付随的違憲審査制」とがあります。「抽象的違憲審査制」とは、具体的な争訟とは関係なく、ある法規範が憲法に違反していないかを審査できる制度をいいます。これに対して「付随的違憲審査制」とは、具体的な争訟を裁判する際に、その事件の解決に必要な限度で審査できる制度をいいます。日本国憲法は、「付随的違憲審査制」をとっていると解されています。

判例　最大判昭和27年10月8日　警察予備隊違憲訴訟

「わが裁判所が現行の制度上与えられているのは司法権を行う権限であり、そして司法権が発動するためには具体的な争訟事件が提起されることを必要とする。我が裁判所は具体的な争訟事件が提起されないのに将来を予想して憲法及びその他の法律命令等の解釈に対し存在する疑義論争に関し抽象的な判断を下すごとき権限を行い得るものではない。」

（あ）超法規的保障

その他、例外的な場合に、憲法的価値観を守るために、超憲法的保障というものが観念されることがあります。超憲法的保障とは、憲法に定めはないが、憲法を守り、あるいは回復させる制度をいいます。

　・抵抗権　→　主体は国民

　・国家緊急権　→　主体は国家

とりわけ、抵抗権とは、国家権力が人間の尊厳を侵す重大な不法をおこなった場合に、国民が自らの権利・自由を守り人間の尊厳を確保するため、他に合法的な救済手段が不可能となったとき、実定法上の義務を拒否する抵抗行為をいいます。人権思想の発達に大きな役割を果たしましたが、近代立憲主義の発展と共に、あえて憲法や法律に明記する必要はなくなっていきました。しかし、実定法上の救済手段が尽きたとき最後に機能する概念であり、その意味で自然法上の権利であるといえます。

（い）国家緊急権

戦争、内乱、恐慌、大規模な自然災害など、平時の統治機構をもっては対処できない非常事態において、国家の存立を維持するため、国家権力が立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限をいいます。一面では、国家存亡の危機に際して憲法の保持を図る機能を有しますが、同時に人権保障の停止と権力分立の停止をもたらす側面があります。大日本帝国憲法には緊急権の規定がありましたが、現在、日本国憲法には存在しません。

憲法3 人権総論（1）人権の権利性、平和主義