内股（Uchimata）／大外刈り（Osoto Gari）
それぞれ柔道の“投げ技”に分類されるが、性格や戦略的意図は対照的です。
以下の構成で、個別に丁寧に解説します：
① 内股（うちまた／Uchimata）
■ 技の定義・概要
内股は、
**相手の内ももに自分の脚をかけ、体をひねりながら前方に投げる足技（腰技に近い）**です。
✅ 腰・足・腕の三位一体の連動がポイント
✅ 相手の体が前傾したときや、内側に崩れたときに極めやすい
✅ 絞技・寝技への導入としても有効
🛠 技の基本構造
引き手・釣り手でバランスを前に崩す
自分の軸足を相手の足元へ差し込み、蹴り足（内股）を相手の内ももに添える
腰を入れながら、蹴り足で相手の内ももを跳ね上げるようにし、
体をひねりながら前に倒すように投げる
🎯 ワンポイントアドバイス・コツ
✔ 「軸足と上半身の位置関係」＝命：相手の足の外に深く差し込むことで、遠心力とひねりが生まれる
✔ 「跳ね上げ」ではなく**「吸い上げる」ような意識**で内ももを刈ると、自然と浮き上がる
✔ 相手が「前に出てきた瞬間」や「自分の内側に入ってきた時」がベストタイミング
🥇 得意とした選手・逸話
井上康生（柔道）
→ 柔道史に残る“世界一美しい内股”の持ち主。2000年シドニー五輪金メダル。
→ 「内股は芸術」と言わしめた空中一本投げで多数の勝利。堀口恭司（MMA）
→ スタンド組み合いから内股風の“ひねり倒し”→寝技へ連携する流れを多用。
② 大外刈り（おおそとがり／Osoto Gari）
■ 技の定義・概要
大外刈りは、
相手の体を後方に崩し、自分の足で相手の外足を刈り倒す基本足技です。
✅ 柔道では「一本」につながる王道技
✅ レスリング・MMAでもバランス崩し→大外で崩してグラウンドへが実用的
🛠 技の基本構造
引き手・釣り手で相手を後ろ斜めに崩す
自分の重心を相手に預けつつ、相手の外側の足を自分の足で引っ掛ける
自分の体重ごと相手を後方へ倒し込むようにして、軸足ごと刈り取る
🎯 ワンポイントアドバイス・コツ
✔ 相手の重心が前にあると投げにくいので、しっかり“後ろに引かせる”崩しを作る
✔ 脇を締めて上体を密着させることで刈りが通りやすくなる
✔ 投げ終わりにそのまま“上に乗る意識”を持つと、MMAではスムーズにマウントへ
🥇 得意とした選手・逸話
石井慧（柔道→MMA）
→ 組んだ瞬間に相手を後ろに引き→腰で寄せて一気に大外。寝技への導入に活用。ハビブ・ヌルマゴメドフ（MMA）
→ ケージ際で相手の足をまとめて→大外刈り風にトリップしてグラウンドへ。壁レス職人。阿部詩（柔道）
→ 鋭い引き→スピードある刈りで、女子柔道における“大外刈りの美学”を体現。
✅ 技比較と使い分け
| 比較項目 | 内股 | 大外刈り |
|---|---|---|
| 主な方向 | 前方へ投げる | 後方へ倒す |
| 足のかけ方 | 相手の内もも | 相手の外足 |
| タイミング | 相手が前進・内に入った時 | 相手が引いた／踏ん張った時 |
| 決まりやすい場面 | 相手が攻めに出た瞬間 | 相手が守りに入った瞬間 |
| 連携技との相性 | 腰技・浮技・内回し系 | 外回し系・ケージ押し込み系 |
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| 【監修者】 | 宮川涼 |
| プロフィール | 早稲田大学大学院文学研究科哲学専攻修士号修了、同大学大学院同専攻博士課程中退。日本倫理学会員 早稲田大学大学院文学研究科にてカント哲学を専攻する傍ら、精神分析学、スポーツ科学、文学、心理学など幅広く研究に携わっている。 |
