ヨガしながら学ぶ決算書
決算書の中身
貸借対照表と損益計算書の二つの決算書をもう少し詳しく見ていきましょう。これらの書類には次のグループに分かれて記載がされます。
資産グループ
負債グループ
純資産グループ
費用グループ
収益グループ
この五つのグループです。それぞれどんな内容かというとこうなります。
資産▶今持っているお金など
負債▶いつか払わなくてはならないお金など
純資産▶資産から負債を差し引いたお金など
費用▶出費したお金など
収益▶稼いだお金など
この五つのグループのうち、資産、負債、純資産は貸借対照表に記載され、費用と収益は損益計算書に記載されます。
電車賃、携帯代、ジュース代、ヨガスタジオの会費などは別の呼び方になります
ここまでのことをちょっと整理しておきましょう。複式簿記の最終ゴールは決算です。そして決算では2つの代表的な決算書である貸借対照表と損益計算書の二つを作ります。
これれらの書類に現されている内容には、先ほどの五つのグループがありました。貸借対照表は、資産、負債、純資産の3つ、損益計算書は、費用と収益の2つです。
さて、決算書にあらわされる5つのグループは更に細かく区分されます。どんなお金が出切りしたのか、お金の内容や性格を正しく掴むには、五つのグループだけで大雑把過ぎますからね。この区分のことを「勘定科目」と言います。
一つ一つの勘定科目は、複式簿記の世界で名前が大体決まっています。とはいえ、正確にはどのような勘定科目の名前を作ろうと税務申告上は自由なので、あまり杓子定規になる必要はありませんが、一般的な名称ぐらいは覚えておいて損はありません。
たとえば、電車賃。家計簿につけるなら「電車賃」のままでいいのですが、複式簿記では一般的に「旅費交通費」という名前の勘定科目名になります。他にも例をあげると、銀行からお金を借りた場合は、借金ではなく、「借入金」、会社の連絡に携帯電話を使った場合には携帯代ではなく「通信費」、会議に出す飲み物を買った場合にはジュース代ではなく「会議費」、会社の福利厚生などでヨガスタジオに通う場合には「福利厚生費」といった具合です。
泥棒に入られたのに取引になる?!
取引先に訪問するのに電車を利用して電車賃を支払った、というのは旅費交通費になりますが、このように勘定科目はなにかをすることによって発生するものですが、その「なにか」というのは一体何なのでしょうか?それは「取引」といいます。電車賃を支払ったというのは、複式簿記上の「取引」にあたるのです。
ここで、わざわざ複式簿記上の取引と前置きしたのには理由があります。複式簿記でいう取引という言葉は、普段私たちが使っている取引という言葉とは微妙に意味が違うのです。
複式簿記では会社の財産が増えたり、減ったりすることを取引といいます。なので、たとえばヨガスタジオをやりたいので、店舗の賃貸借契約をした、というような場合は法律的には取引に該当しますが、簿記の世界では取引になりません。ヨガスタジオの店舗の賃貸借契約をしただけでは、会社の財産は増えたり減ったりしません。なので、お金の出入りが発生していないため簿記の世界では取引と言わないのです。
また、ピラティススタジオに泥棒が入り、レジ金が盗まれたとします。これは通常取引とはいいませんが、会社の財産である現金(正確には小口現金という勘定科目を使う場合が多いでしょう)が減ったので、取引になるのです。泥棒に入られたことが取引というのは、日常生活の感覚からは少しズレるでしょうが、お金の出入りを計算する簿記の世界では取引になるわけですね。
取引が発生したら仕訳をします
さあ、ここからが簿記のポイントです。複式簿記上の取引が発生しました。そうしたら、あなたはその取引に、勘定科目の名前をつけて金額と一緒に帳簿に記入しなければなりません。もちろん、今時紙の帳簿を使っていることは少ないと思うので、クラウド上の会計ソフトなどに入力するわけですね。このように発生した取引を、帳簿に記入するまでの一連の作業を仕訳(しわけ)といいます。では早速仕訳のやり方をみてみましょう。
まず、仕訳をする大前提として知っておくことがあります。それは一つ目はこれです。
勘定科目と金額を書き込む欄は左右に一つずつある
実際には、このようになっています。
左 借方(かりかた) | 貸方(かしかた) 右 |
勘定科目 金額 | 勘定科目 金額 |
左側と右側に勘定科目と金額を記入する欄があります。そして、欄の左上には借方、右上には貸方と書いてありますよね。借方は「かりかた」といい、貸方は「かしかた」と良きます。実は、複式簿記の世界の大事な約束事え、左側を借方、右側を貸方と呼ぶのです。
ただし、借方だから借りること、貸方だから貸すことという意味ではありません。深い意味は全くなく、ただ単純に左側を借方といい、右側を貸方というのです。
では実際に仕訳を一つやってみましょう
もう一つ仕訳をする大前提として知っておかなければならないことがあります。単式簿記は取引の一つの面からだけ見ましたが、複式簿記では取引を2つの面から見るのでしたよね。
取引を2つからの面から見る。だから勘定科目も二つの別のものになります。具体的な例で見てみましょう。仕訳をする取引は「電車賃300円を現金で支払った」です。これを二つの面から見ると、こうなります。
見方1:現金300円という資産を支払った
見方2:旅費交通費300円という費用が発生した
この「現金」と「旅費交通費」は、どちらも勘定科目です。電車賃は「旅費交通費」という勘定科目でしたよね。そして、「資産」「費用」はどちらも決算書に現される5つのグループの一つです。「現金」という勘定科目は「資産」のグループであり、「旅費交通費」という勘定科目は「費用」のグループなのです。これで仕訳をするとこうなります。
借方 | 貸方 |
旅費交通費 300 | 現金 300 |
なぜ左右が違うのか?
上の仕訳をみて、何故旅費交通費は左の借方で、現金は右の貸方になるのか、疑問に思ったと思います。実は、複式簿記では、左側に書く勘定科目と、右側に書く勘定科目は自動的に簿記のルールで決まっています。だから仕訳をする際にそのルールさえ覚えておけば誰でも簡単にできます。それについてはまた後述しますね。