アロマ(アロマテラピー)の効果
五感の中で唯一脳にダイレクトに伝わるのが「嗅覚」です。香りの分子を嗅覚がキャッチすると、感情や本能をつかさどる「大脳辺縁系」や、自律神経系をつかさどる「視床下部」にその情報が伝わり、体温や睡眠、ホルモンの分泌、免疫機能などのバランスを整えます。また、アロマテラピートリートメントなどによって、精油成分が皮膚から身体に働きかけることもわかっています(▶アロマテラピーとヨガについてはこちら)。
01 そもそも自律神経の働きとは?
ストレスが強くかかったり、それが継続すると、心や体に不調が生じやすくなるのは自律神経系の働きが低下するから。自律神経系は、内臓や血管などの働きを調節し、体温維持など体内環境を一定に保つよう働く神経系のこと。アロマには、そんな自律神経系のバランスを整える働きがあるのだそう。
02 “リラックス”“リフレッシュ”2種の精油を使い分けて
自律神経系は、交感神経系(車のアクセルのような働き/活動)と、副交感神経系(車のブレーキのような働き/休息)、2つの神経系が拮抗することでさまざまな機能を調整しています。
ストレスがかかると体は緊張した状態になり、交感神経系が優位になります。その状態が続いてしまうと慢性的なストレス状態に陥ってしまうため、鎮静作用のある精油を取り入れることで副交感神経系が働き、休息のためのバランスをつくり出し、ストレスリリースが可能になります。逆に、リラックスした状態からシャキッとしたい時などは、刺激作用のある精油を取り入れることで活動に適したバランスに導くことが可能です。
03 アロマの使い分け
ストレスの感じ方には、大きく分けて2つの傾向があります。ひとつは、一時的な疲労や負荷、ちょっとイラっときてしまった時。こういった時にはリラックス系のアロマで神経系を鎮静させると効果的です。
もうひとつのストレス傾向は、過度の疲労や負荷が蓄積して、常にイライラ感を覚えるような状況です。こういった時は意欲が減退しているため、意外かもしれませんが、まずは神経系を刺激するようなリフレッシュ系のアロマがおすすめです。清々しい香りを嗅ぐことで、巡りを促して活力を作りだします。
自律神経系のバランスを整えるにはリラックス系とリフレッシュ系、そのどちらも必要です。その日のご自身の状態やタイミングに合わせて使い分けてみてください。ただアロマオイルを用いたアロマセラピーは、漢方のように作用が穏やかなので、継続して取り入れていくことがポイントとなります。
04 リラックス系とリフレッシュ系の代表的なアロマオイル
一時的なイライラや疲れを癒したい時に役立つリラックス系精油でのおすすめは、ラベンダーやフランキンセンスです。ラベンダーには酢酸リナリル、フランキンセンスにはα-ピネンという、鎮静作用によって副交感神経に働きかける化学成分が含まれていることが分かっています。
一方、継続的なストレスで意欲が減退してしまっている時に役に立つ、リフレッシュ系精油でのおすすめはベルガモットやオレンジです。どちらもリモネンという、巡りを促して交感神経を刺激、活性化してくれる化学成分が含まれています。柑橘系の精油は基本的にリフレッシュが得意なものが多ですが、なかでもベルガモットはラベンダーに含まれる酢酸リナリルも約30%含まれているので、同時にリラックス効果も備えています。どちらの状態の時でも効果のある便利な精油と言えるでしょう。
05 香りの作用の仕組み
香りの作用の仕組みは長らく謎のままでしたが、近年、医療や脳科学の進歩とともに徐々に解明されはじめています。
認知症にもアロマが効果的であることが分かっています。鳥取大学医学部が2005年に、「香り」で脳の機能が回復するとの研究結果を発表しています。アルツハイマー型認知症は、記憶を司る脳の部位「海馬」に障害が起き、認知機能が下がるものですが、介護老人保健施設の高齢者に28日間アロマテラピーを実施したところ、認知機能に大きな回復が認められました。
これは「香り」が大脳辺縁系にダイレクトに届き、香りの刺激で衰えていた海馬の神経を復活させたためです。海馬の神経が回復すると、それに連動する自律神経の症状も回復していきます。しかもそのときの回復効果は、認知症の薬にも匹敵するほどだったそうです。
そのほか、不妊症にもアロマテラピーが有効だと考えられており、統合医療の一貫として取り入れる医院も増えているそうです。アロマテラピーはホルモンバランスや自律神経を整えることが得意なので、排卵を促す効果も期待できると考えられています。