
ヨガやピラティスは、何と比べたかで答えが変わる
ヨガを選びたい人にとって参考になるのが、2025年の無作為化比較試験である。40歳以上で変形性膝関節症があり、痛みが一定以上の117人を、ヨガと筋力運動に割り付けた。平均年齢は62.5歳、女性は72.6%であった。若い健康な人の柔軟性を調べた研究とは対象が異なる。[2]
両群とも、最初の12週は週2回の監督下の運動と週1回の自宅運動、その後の12週は週3回の自宅運動を行った。主要な評価は最初の12週での痛みの変化で、痛みを0〜100 mmの線で表す尺度を使用した。ヨガという名前だけでなく、支援を伴う実施条件まで含めた試験である。[2]
主要評価の群間差は−1.1 mmで、95%信頼区間は−7.8〜5.7 mmだった。ヨガが筋力運動より優れているという有意差は認められなかった。一方で、事前に定めた10 mmの非劣性の範囲内に収まった。非劣性とは、比較相手より許容範囲を超えて劣ることは示されなかった、という考え方である。[2]
このため、「ヨガが筋力運動に勝った」と書くのも、「差がないからヨガは無意味」と書くのも、どちらも研究から離れる。膝の状態に応じた運動の選択肢として考える根拠になる。主要評価である12週の膝の痛みの変化には有意差がなく、あらかじめ決めた非劣性の幅には収まっていた。12週と24週に調べた27の副次評価のうち、7つはヨガに有利な有意差があった。[2]
有害事象は両群で同程度で、軽度だった。この成績が対象とするのは研究で実施したプログラムで、温度環境や内容が異なる一般のクラスに同じ結果を保証しない。[2]
ピラティスについては、2025年の系統的レビュー・メタ分析が11研究、476人を検討した。運動を行わない場合との比較では痛みが改善したが、通常の運動と比べた優位性は認められなかった。何もしない対照に勝つことと、別の運動に勝つことは、必要な証拠が違う。[8]
通常の運動と比べた痛みの標準化平均差は−0.28、95%信頼区間は−1.06〜0.50で、証拠の質は非常に低いとされた。一方、膝の動く範囲ではピラティスに有利な結果があったが、こちらも証拠の質は低い。種目名の人気で順位表を作るより、痛み、動く範囲、生活機能のどれを目指すかを先に決めると選びやすい。[8]
室内自転車にも、系統的レビュー・メタ分析がある。11研究、724人を確認し、最終的に8研究を統合した。運動を行わない対照と比べ、痛みやスポーツ関連の機能は改善したが、こわばり、日常活動、生活の質などの改善は、臨床的に重要とされる差を超えなかった。[3]
室内自転車の痛みの差は、研究規模などを考慮した加重平均差で12.86、95%信頼区間は6.90〜18.81だった。一方、生活の質は0.99、95%信頼区間は−4.27〜6.25で、有意な改善は認められなかった。どの項目が改善したかによって、運動に持つ見通しも変わる。[3]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
筋力、痛み、膝の負荷は同時に変わるとは限らない
運動すれば筋力が増え、膝への負担が減り、痛みが消える。そう一直線に想像すると、実際の結果に戸惑うことがある。筋肉が縮みながら力を出す運動と、伸ばされながら力を出す運動を比べた試験では、その違いが見える。[4]
この無作為化試験で4か月の監督下の運動を完了したのは54人で、年齢は60〜85歳だった。どちらの筋力運動でも、運動を行わず待機する群と比べ、脚の筋力に16〜28%の改善があった。一方、WOMACの総合点や各項目の推移には、群間の有意差が認められなかった。[4]
筋力が改善したという成果は残る。しかし、そこから痛みも同じ割合で改善したと補うことはできない。体重計、筋力の測定、痛みの自己評価はそれぞれ別の質問をしている。この試験は参加に同意した90人のうち完了者が54人だった点も踏まえ、小さな試験の成績として捉えたい。[4]
膝への負荷を測る研究では「膝関節内転モーメント」が使われる。これは膝の内側への負荷の指標である。2015年の系統的レビューは、運動後のこの指標と、痛み、機能、筋力を同時に扱った3研究、233人を検討した。[20]
結果は、筋力運動群で痛みや筋力が改善しても、膝関節内転モーメントには対照群との差が認められない、というものだった。機能が改善した研究もあった。臨床上のよい変化を、測定した負荷指標の低下だけでは説明できなかったのである。痛みが軽くなったことから、関節の負荷や構造もすべて改善したと飛躍しないことが大切だ。[20]
この区別によって、痛みが軽くなった、動きやすくなったという成果を、そのまま正確に評価できる。歩行や日常動作を支える結果と、関節の構造を守る結果とを同じ言葉にしなければ、成果を過小にも過大にも扱わずに済む。[19][20]
支援の量を変える研究もある。平均60歳の345人を対象にした無作為化比較試験では、インターネットを使う運動から始め、痛みや機能の改善が十分でない場合に電話での支援、さらに対面の理学療法へ進む仕組みを試した。9か月後のWOMACは、教育資料を受け取る対照群より6.8点低く、95%信頼区間は−10.5〜−3.2点だった。[6]
支援の切り替えは、最初の3か月のインターネットによる運動後に、痛みと機能の反応基準を満たすかで判断した。次の段階では3か月間、隔週の電話コーチングを行い、それでも基準に届かない場合に対面へ進んだ。対照群には隔週で教育資料を郵送している。支援の有無だけでなく、反応を見て届け方を変える仕組みを比べた試験だった。[6]
運動群の65%は電話の支援に、35%は対面の理学療法に進んだ。大半が男性の退役軍人で、結果を当てはめられる対象には限りがある。それでも、初めの方法で改善しなければ本人の努力不足と決めず、支援を追加する、という設計は参考になる。初めから支援の追加を組み込んだ計画だった。[6]

よくある誤解
「体重を減らせば、誰でも同じだけ膝が楽になる」という理解は広すぎる。大きな減量と痛みの改善を示した試験は、肥満と診断された膝関節症があり、痛みも強い人を対象に、薬と生活面の相談を組み合わせている。痛みのない人、体重が標準的な人、別の原因で膝が痛い人まで同じ数値を約束する結果ではない。[1]
「運動で体重が減らなければ、膝にも意味がない」という見方も、評価項目を取り違えている。自宅運動や歩行能力の研究は、体重の減少を成功条件にせず、痛み、機能、歩く力を調べている。減量の経過とは別に、取り組みの価値を確認できる項目がある。[15][19]
「ヨガやピラティスなら、筋力運動より必ず膝に優れる」という順位づけもできない。ヨガの主要評価では筋力運動に対する優越性はなく、ピラティスも通常の運動に対する痛みの優位性を示さなかった。比較相手が筋力運動なのか、運動をしない対照なのかで、選択肢としての位置づけが変わる。[2][8]
今日からできること
運動の種類と負荷の適否は、膝の状態に応じて医師に確認する。そのうえで、以下の実施日や区間は自分の生活に合わせて選ぶための工夫である。研究の実施回数を一律の推奨量にせず、確認できた内容を生活に置く。
- 受診する日を決め、膝が痛む動作と現在の体重の経過をまとめて、減量と運動の進め方を医師に相談する。
- 歩行を取り入れる人は、普段の外出から歩く区間を1つ選び、確認した負荷の範囲で歩く。
- 自宅で筋力運動を行う人は、教わった動作を始める時刻を1つ決めて実施する。[15]
- ヨガを選ぶ人は、教わった自宅用の動きを行う日を次の週の中から選ぶ。[2]
- 食事のエネルギー摂取を減らす方針を立てた人は、普段の献立から量を調整する食事を1つ選び、食卓に出す量を変える。

膝を気にかける人へ、常温ヨガという選択肢
オンザショア立川店には、常温で行うヨガがある。溶岩プレートを敷いたスタジオでのホットヨガのほか、ピラティスやパーソナルトレーニングも実施している。ヨガの種類は25以上。女性専用のキックボクササイズ、ボクササイズ、HIITも扱っている。
膝の状態について医師に確認したうえで常温ヨガを検討するなら、朝から夜までの営業時間の中で、通える時間帯のレッスン内容を事前に確認するのも一案だ。
ヨガ体験の料金1,980円(税込)には、60分のレッスンとタオル類、マットのレンタルが含まれる。タオルはバスタオル2枚にフェイスタオル1枚という内容だ。医師から運動を止められている方は利用できない。妊娠中の方は溶岩ホットヨガには参加できない。常温のマタニティヨガがある。
所在地は東京都立川市曙町2-14-10、エトロワビルの3Fだ。JR立川駅の北口を出て徒歩1分の距離にある。8:00に開店し23:30まで営業、休みはなく全曜日で同じ営業時間となっている。店舗情報と料金の案内、体験予約を確認し、膝が気になる人は参加前に種目とレッスン内容を確かめよう。
参考文献
- Once-Weekly Semaglutide in Persons with Obesity and Knee Osteoarthritis. — Bliddal et al., 2024, The New England journal of medicine. DOI: 10.1056/NEJMoa2403664
- Yoga or Strengthening Exercise for Knee Osteoarthritis: A Randomized Clinical Trial. — Abafita et al., 2025, JAMA network open. DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2025.3698
- Stationary cycling exercise for knee osteoarthritis: A systematic review and meta-analysis. — Luan et al., 2021, Clinical rehabilitation. DOI: 10.1177/0269215520971795
- Eccentric and Concentric Resistance Exercise Comparison for Knee Osteoarthritis. — Vincent et al., 2019, Medicine and science in sports and exercise. DOI: 10.1249/MSS.0000000000002010
- Stepped Exercise Program for Patients With Knee Osteoarthritis : A Randomized Controlled Trial. — Allen et al., 2021, Annals of internal medicine. DOI: 10.7326/M20-4447
- Effect of Pilates Exercise on Health-Related Outcomes in Patients With Knee Osteoarthritis: A Systematic Review and Meta-Analysis. — de Oliveira et al., 2025, International journal of rheumatic diseases. DOI: 10.1111/1756-185x.70434
- Effect of Home Exercise Program in Patients With Knee Osteoarthritis: A Systematic Review and Meta-analysis. — Anwer et al., 2016, Journal of geriatric physical therapy (2001). DOI: 10.1519/JPT.0000000000000045
- Effects of exercise therapy on walking ability in individuals with knee osteoarthritis: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. — Tanaka et al., 2016, Clinical rehabilitation. DOI: 10.1177/0269215515570098
- The effect of exercise therapy on knee adduction moment in individuals with knee osteoarthritis: A systematic review. — Ferreira et al., 2015, Clinical biomechanics (Bristol, Avon). DOI: 10.1016/j.clinbiomech.2015.03.028
冒頭の写真: 日差しの中で、太ももから膝、ふくらはぎにかけての両脚が写っている写真。(写真: Elements Of This World / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons)
この記事の情報は2026年10月時点のものです。個別の健康状態については医師にご相談ください。
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初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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