夫婦で同じ食卓を囲んでも、体重が同じように減るとは限らない。共同参加の試験、同居する相手への波及、本人の選択を尊重する支援を調べた研究から、家庭で変えられることを考える。二人の体重を競わせず、買い物や運動の予定を共有するための、数字の読み方と具体的な工夫を紹介する。
「私は始めるけれど、あなたはどうする」。減量の宣言は、自分に向けた言葉のつもりでも、同じ家に住む相手の食卓や予定に届く。冷蔵庫を別々に置く家庭はそう多くない。自分だけで完結するはずの計画に、買い物係、料理係、帰宅の遅い人の都合が入ってくる。
夫婦で取り組む減量プログラムには、単独参加より終了時の成績がよかったというメタ分析がある。一方、その優位性は長い追跡まで一貫して続かなかった。共同参加には可能性があるが、「二人で始めれば成功する」という約束には距離がある。[4]
ここで見たいのは、励ます人の人数より、同じ家で何が一緒に変わるかである。同居する二人の体重変化が同じ方向を向いた研究も、介入条件によって逆方向の関連を示した研究もある。家庭は味方になり得るが、その働き方は支援の設計によって異なる。[20]

夫婦で参加する利点は、終了後まで続くのか
夫婦向けの減量プログラムを評価したBlackらのメタ分析は、パートナーを正式に治療へ組み込んだ行動的な体重管理と、本人が単独で参加する類似のプログラムを比較した。夫婦参加と単独参加の差を各研究から取り出し、統計的に統合して評価するのが、このメタ分析の方法だ。治療終了時には夫婦参加が有意に優れていた。夫婦参加の利点が現れたのは、正式な治療を終えた時点での比較だった。[4]
追跡の結果には時間の区切りがある。終了後2〜3か月の比較では夫婦参加が優れる傾向があったものの、統計的な有意差には届かず、その後には優位性が確認されなかった。終了時、終了後2〜3か月、それ以降という評価時点によって、比較の結果が変わっていた。[4]
この分析では、パートナーが行った支援の種類が研究ごとに異なっていた。どの支援が最も有用かは特定できず、正式な治療が終わった後の支援も十分に調べられていなかった。したがって、「一緒に参加する」という入口と、「家に帰ってからどう関わるか」という運用を分けて考える。申し込むところまで共同でも、その後に片方だけが食事や予定の調整を抱え込むなら、何を共有したのかが曖昧になる。[4]
この研究は1990年の報告である。古い研究だから無意味という扱いも、複数研究をまとめたから現在の夫婦全員に当てはまるという扱いも適切でない。共同参加が役立つ可能性を示す土台として読み、具体的な関わり方は後の試験に照らす。そのように読むと、夫婦参加そのものよりも、その中に何を加えたかという比較が次の焦点になる。[4][19]
Gorinらは64組の夫婦を、二人で参加する標準的な行動的減量プログラムと、相手の自律性を支える働きかけを加えたプログラムへ無作為に割り付けた。この無作為化比較試験では、夫婦をどちらのプログラムへ割り付けるかを偶然に任せ、支援の訓練を加える違いを比較した。両群とも6か月間、毎週の集まりに参加した。つまり、これは「一人か夫婦か」の比較ではなく、「夫婦参加に特別な支援の訓練を足すと違いが出るか」を調べた試験である。[19]
研究全体で示された体重減少率は6か月で10.4%±6.5%、12か月で9.2%±8.2%だった。しかし、二つの介入群の間で減少率の差は認められなかった。減少率には、このように平均とともにばらつきも報告されている。[19]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
相手の体重にも届く「波及」は、何を測った結果か
片方への働きかけが、相手にも変化を及ぼすことを、ここでは波及と呼ぶ。Kulisらの研究は、成人同士の320組を対象に、運動の計画を個人で立てる条件、相手と本人のために立てる条件、二人のために共同で立てる条件、対照条件へ割り付けた。測ったのは開始時と36週後の体脂肪と、エネルギー密度の高い食品の摂取である。エネルギー密度は、食品の重さに対してどれだけエネルギーを含むかという見方である。[9]
主な対象者では、時間経過に伴う体脂肪の変化に介入条件による違いが認められなかった。一方、パートナーでは、いずれかの運動計画介入に参加した場合、対照条件と比べて体脂肪が減った。本人の体脂肪に明確な介入差が出なくても、相手には変化が見られる。このずれこそ、二人を別々に測る意味である。[9]
対象を組単位で集めたうえで、主な対象者とパートナーを分けて評価したのがこの研究の設計だ。体脂肪と食べ方を開始時と36週後に調べたため、運動計画から相手の身体や食生活へどこまで変化が広がったかを、異なる指標で追っている。[9]
食べ方の結果も単純な連鎖ではなかった。エネルギー密度の高い食品の摂取は、条件を通じて本人も相手も時間とともに減った。ただし、個人で運動計画を立てた主な対象者では、対照条件より減り方が小さかった。研究者は、運動の計画に伴って食べ方が相殺的に変化する可能性を指摘している。「運動を予定したから、食事も自動的によくなる」とは限らない結果である。[9]
この結果を家庭に置くなら、共有する予定表と、実際の食卓を別々に見るという工夫になる。たとえば「歩く予定を決めた」という話の後で、運動した日の食べ方についても振り返る。研究で運動の計画と食品摂取を別々に測ったように、家庭でも運動の実行と食べ方の両方へ目を向ける。[9]
家の条件を変えると、二人の動き方も変わる
Corneliusらは、無作為化された減量介入のデータを使い、201組の参加者と同居パートナーを18か月にわたって分析した。一方は行動的減量治療、もう一方はそれにパートナー参加と家庭で健康的な選択を助ける物品の提供を加えた条件だった。単に励ましの言葉を増やすだけでなく、家の環境にも働きかけた点が特徴である。[20]
開始時には、どちらの条件でも二人の体格指数が正に関連していた。体格指数は身長と体重から体格をみる指標である。さらに、家庭への働きかけを加えた条件では、二人の体格指数の変化の軌跡も正に関連した。対して通常の行動的減量治療の条件では、その変化の軌跡が負に関連した。同居しているという事実だけで、変化の方向まで決まるわけではない。[20]
正の関連は片方と相手の変化が同じ方向に結びつく傾向、負の関連は逆方向に結びつく傾向を表す。この分析が捉えたのは、介入条件ごとに異なる二人の変化の結びつきである。家庭への働きかけが、支援や関係のあり方を変えた可能性が論じられている。[20]
開始時のパートナーの体格指数が高いことは、主な参加者の減量が小さいこととも関連していた。ここを「相手が原因だ」と読むと、研究の用途を取り違える。参加者を無作為に分けた試験のデータであっても、パートナーの体格そのものを無作為に割り付けたわけではない。相手の体格と本人の結果の関連は、責任の所在を示す数字として使えない。[20]
家庭環境への介入には、パートナーの参加と物品の提供が一緒に含まれていた。この組み合わせで得られた結果を、物品だけの効果、あるいは同行だけの効果へ切り分けることはできない。家庭で応用するときも、何かを買えば整うと急がず、食材を選ぶ人、片づける人、運動に出る間の家事を引き受ける人の間で、どこを変えたいかを具体化するのが一案になる。[20]
共同参加の研究と波及の研究では、出発点も違う。前者では二人が参加する介入を比較し、後者では主な対象者と相手を分けて変化を見る。この違いを押さえると、相手が同じ熱意で減量を宣言しない場合にも、研究を無理なく読める。共に申し込むこと、同じ家の選択肢を変えること、相手に変化が見られることは、それぞれ確かめるべき別の事柄である。[4][9][20]
数字で読む夫婦と同居パートナーの減量
64組:自律性を支える訓練の追加を比較した夫婦の試験。両群とも共同参加である。[19]
10.4%:同試験の6か月時点の体重減少率。追加訓練による群間差はなかった。[19]
9.2%:同試験の12か月時点の体重減少率。全員に約束される値ではない。[19]
320組:運動計画の研究に参加した成人同士の組。夫婦だけの集団とは限らない。[9]
201組・18か月:同居する二人の変化の関連を、家庭への介入条件別に分析した規模と期間である。[20]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2






