腹囲はBMIが見落とす危険を拾う 標準体重でお腹が大きい人の20年と、メジャーの限界

標準体重か過体重で腹囲か腰との比が高い人は、心臓や血管の病気の多くで危険が15〜50%高かった。約26万人を20年追った研究から、BMIの区分を腹囲で並べ替える意味を確かめる。一方で、医師の予測式に腹囲を足しても精度は上がらなかった研究もある。メジャーで測る価値と限界を、運動や食事の試験とともに考える。

体重計の上では「標準」なのに、腹囲は大きい。15のコホート研究を束ねた分析では、BMIが標準の人のうち5%がそうだった。[1] 腰回りとの比で見ると、その割合は18%に増える。[1] 健診の結果票でBMIの欄だけを見て安心している人の何人かは、別の欄で手を挙げていることになる。

標準体重か過体重で、腹囲か腰との比が高い人をまとめて追うと(追跡期間の中央値は20年)、心筋梗塞や脳卒中、心不全などの多くで、危険が15〜50%高かった。[1] では、腹囲は体重より大事な数字なのか。話はそれほど単純でもない。4万人あまりを13年追った別の研究では、医師が使う心臓病の予測式に腹囲を足しても、予測の精度はほとんど上がらなかった。[3]

腹囲は何を拾い、何を拾えないのか。両方の研究を並べると、メジャーの使いどころが見えてくる。腹囲を身長で割る指標の目安と使い方は「腹囲身長比で分かる健康リスク 体重だけでは見えない情報と目安の使い方」に、お腹だけを狙って痩せられるかという問いは「部分やせと腹筋運動の科学 お腹だけ痩せたい願いに、異なる試験が示した答え」に譲る。

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BMIの区分を、腹囲で並べ替えると

BMIは体重を身長の2乗で割った数で、全身の脂肪の多さのおおまかな目安になる。だが、体の組成、つまり脂肪と筋肉の割合や、脂肪がどこに付いているかは教えてくれない。[1] 腹囲と、腹囲を腰回りで割った比(腰との比)は、お腹まわりに集まった脂肪、いわゆる中心性の肥満の代わりに測る指標である。[1]

2026年に発表された研究は、15のコホートから259,388人のデータをそろえ、9つの結果を調べた。心筋梗塞、脳卒中、心不全、心房細動、冠動脈の病気、心臓や血管の病気全体、それらによる死亡、そしてあらゆる原因による死亡である。[1] 追跡期間の中央値は20.0年だった。[1]

BMIの区分ごとに腹囲を重ねると、ずれが見えた。標準体重の人の5%は腹囲が大きく、18%は腰との比が高かった。[1] 過体重の人では、腹囲が大きい人が39%、腰との比が高い人が40%いた。[1] 反対に肥満の区分の人でも、9%は腹囲が小さく、45%は腰との比が低かった。[1]

標準体重か過体重で、臨床の基準で腹囲か腰との比が高い人は、ほとんどの結果について危険が15〜50%高かった。[1] 一方、肥満の区分でも腹囲が小さい人は、標準体重で腹囲も小さい人と比べて危険に有意な差がなかった。[1] あらゆる原因による死亡に限っては、むしろ危険が低い側に出ている。[1] BMIの区分表だけで人を並べると、この人たちも「肥満」の列に立たされる。

肥満の区分の人については、もう一つ数字がある。腹囲や腰との比が高いことに帰せられる病気の割合は13〜49%と見積もられ、とくに腹囲の大きさは心不全と心房細動で高い値を示した。[1] この割合は、集団の中でその特徴が無かったとしたら、どれだけの病気が起きずに済んだかを計算上で示すものだ。同じ「肥満」の中でも、お腹まわりに脂肪が集まっているかどうかで、心臓にかかる重さが変わって見える。

男女差もある。男性と違い、肥満で腰との比が低い女性は、標準体重で比も低い女性に比べ、すべての結果で危険が高いままだった。[1] ただし、その危険の倍率は、肥満で比も高い女性より小さかった。[1] 著者らは、腹囲と腰との比が従来のBMIの区分の誤った分類を見つけ出し、危険を並べ替えることで、診断と予後の判断に価値を加えると結論している。[1]

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閉経の後は、腰との比が先に反応した

お腹まわりの変化は、30〜50代の女性にとって身近な話題だ。韓国の大学病院の健診センターで442人の女性(閉経前209人、閉経後233人)を調べた研究は、閉経の前後で指標の働きが違うことを示した。[6] 閉経の後は体の脂肪の付き方がより中心に寄る、という前提から出発した研究である。[6]

調べたのは、動脈硬化が症状として出る前の変化だった。首の動脈の壁の厚さと、腕と足首の間で測る脈の伝わる速さ、つまり動脈の硬さの指標である。[6] 閉経前の女性では、BMIも腹囲も腰との比も、これらの値と正の相関を示した。[6] ところが閉経後の女性では、脈の伝わる速さと相関したのは腰との比だけで(相関係数0.27)、首の動脈の厚さと相関したのは腹囲(0.15)と腰との比(0.21)だった。[6] 首の動脈の硬化を見分ける力を比べた分析でも、閉経後の女性では腰との比がほかの指標を上回った。[6] 閉経前はどの物差しでも傾向が見え、閉経後は物差しを選ぶ。年代によって、見るべき欄が移っていくということになる。

目を引くのは、BMIが23未満の「標準体重」の閉経後女性の結果である。腰との比が高い人の首の動脈の壁は0.76mmで、比が低い人の0.68mmより厚かった。[6] BMIが23以上の過体重の女性の0.70mmよりも厚かった。[6] 体重は軽いのに、血管の壁は過体重の人より厚い。体重計だけを見ていると、この逆転は見えない。閉経前後の体の変化そのものは「更年期の体重増加とダイエット 昔と同じ食事でもお腹が変わる理由を論文で読む」が詳しい。

BMIや体脂肪率と並べたとき、腹囲の見分ける力

病気を見分ける力そのものを、BMIと比べた研究がある。1950年から2008年の78件の研究を集めた系統的レビューでは、見分ける力の平均が、腹囲0.693、BMI0.671だった。[17] この値は1に近いほど見分けがよく、0.5なら当て推量と変わらない。差は大きくないが、平均では腹囲がBMIの上に来た。

将来に向けて追跡した22件の分析でも、腹囲は、BMIより多くの場合に糖尿病や心臓・血管の病気の有意な予測因子となり、BMIで調整した後も有意なことがあった。[17] 成人の横断的な分析44件と子どもの13件も、こうした予測を支えていた。[17] 体重計の数字に、メジャーの数字が情報を上乗せしている。このレビューの見立ては、腹囲はBMIより強い予測因子だ、というものだった。[17] このレビューは腹囲を身長で割った比も調べているが、その境界値と使い方は冒頭に挙げた記事に任せる。

腹囲を身長で割った比を、体脂肪率と並べて比べたのが、英国の468,333人を12年追った研究である。体脂肪率は、体に流す微弱な電流の通り方から推定された値である。[18] 追跡中に、血管が詰まって起きる虚血性の心臓・血管の病気が20,151件、そのうち心筋梗塞が13,604件、脳梗塞が6,681件記録された。[18] 腹囲身長比は、虚血性の心臓・血管の病気と直線的に関連し、比が5%上がるごとに危険は1.23倍になった(95%信頼区間1.20〜1.25)。[18] 心筋梗塞では1.24倍、脳梗塞では1.22倍で、心筋梗塞との関連は女性のほうが男性より強かった。[18] この関連は体脂肪率で調整しても残った。[18] 逆に、体脂肪率と病気の関連は、腹囲身長比で調整すると大きく弱まった。[18] 女性で体脂肪率の最も高い5分の1と最も低い5分の1を比べた危険は、1.94倍から1.04倍に下がった。[18] 体脂肪率と病気の結びつきは、その多くが、お腹まわりの脂肪との相関から来ていたと著者らは読んでいる。[18]

数字で読む腹囲

  • 5%と39%:標準体重の人と過体重の人のうち、腹囲が大きかった人の割合。[1]
  • 15〜50%:標準体重か過体重で腹囲か腰との比が高い人の、多くの病気の危険の上乗せ。[1]
  • 0.76mm:腰との比が高い標準体重の閉経後女性の、首の動脈の壁の厚さ。過体重の女性は0.70mmだった。[6]
  • 0.693と0.671:78件の研究で、腹囲とBMIが病気を見分けた力の平均。1に近いほど見分けがよい。[17]
  • 1.23倍:腹囲身長比が5%上がるごとの、虚血性の心臓・血管の病気の危険。[18]

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