噛みごたえのある食感で1食の量は減る 硬い昼食と濃い粥、パンの種類を変えた実験

噛みごたえのある食べ物は、食べる速さを落とし、1食で食べる量を減らすのか。硬さと加工度を変えた昼食、濃さを変えた粥、9種類のパン、小学生の給食の実験と、満腹感が変わらなかった実験を並べ、食感を食卓でどう使うか、長い期間の体重との距離まで確かめる。

噛む回数を数えながら食事をする人は、まずいない。それでも料理の硬さを変えるだけで、1食の量は大きく動く。硬くて加工の少ない昼食と、柔らかくて加工度の高い昼食を、それぞれ好きなだけ食べてもらった実験では、その差が約300kcalに達した[1]。最も少なかった食事は482.9kcal、最も多かった食事は789.4kcalだった[1]。食べた人は同じ50人で、出された料理の総エネルギーもそろえてあった[1]。

この差には、硬さと加工の度合いという2つの条件が重なっている。硬さだけを取り出しても、硬い食事は食べる重さで21%、エネルギーで26%少なかった[1]。誰かに「ゆっくり食べなさい」と言われたわけではない。料理の食感が違っただけで、食べる速さと量が変わった。

よく噛んでゆっくり食べるという心がけの話は「よく噛んでゆっくり食べるダイエットの科学 食事量と体重は同じように変わるか」で扱った。ガムの話は「ガムを噛むと間食は減るのか 空腹感と消費カロリー、体重で違う研究の答え」にある。ここで問うのは、心がけの側ではなく、皿の上の食べ物の側である。食感は1食の量をどこまで動かし、どこから先は動かさないのか。

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食べる速さは、食べ物の形でも決まる

食べる速さは、1分あたりに口に入る食べ物の重さで表される[16]。そして速く食べるほど、1回の食事の量が大きくなりやすいことが、これまでの研究で示されてきた[16]。問題は、その速さを何が決めているかだ。

食べ物の形や食感、内部の構造が食べる量と代謝に与える影響を整理したレビューは、まず飲み物と固形物の違いを挙げる[3]。液体は、固形物や半固形の食べ物より多く摂られやすい[3]。固形物の中では、厚み、硬さ、口の中でのなめらかさ、大きさと形が、噛み方、食べる速さ、食べる量に影響する[3]。加工によって食べ物の内部の構造が崩れると、栄養とエネルギーの吸収にも違いが出るという[3]。

口の中での処理と食欲、食べる量の関係を調べた研究をまとめたメタ分析もある[6]。6つのデータベースで見つかった12161件の論文から、条件に合う40件の研究を選び、70の小さな群のデータを統合している[6]。噛む回数、食べる速さ、食感の操作は、食べる量にははっきり影響したが、空腹感などの感じ方への影響はそれより小さかった[6]。噛むことにかかわる要素の効果の大きさは、空腹感で−0.20、食べる量で−0.28だった[6]。口の中のなめらかさも大切な要素だが、その効果を調べた研究はまだ少ないという[6]。

食感と満腹感の研究を集めた別のメタ分析では、固形の食べ物は液体に比べて空腹感を4.97mm下げた[2]。単位のmmは、空腹の程度を線の上の位置で答えてもらう尺度での差を表す。とろみの強い食べ物は満腹感を高めたが、空腹感の差は信頼区間がゼロをまたいでいた[2]。著者らは、研究ごとのばらつきが大きいので、結果は控えめに読むべきだとしている[2]。

食べる量への効果ははっきりしていて、感じ方への効果は小さい。この食い違いは、後で紹介する実験にも何度も顔を出す。噛みごたえは、満腹感を強く感じさせることより、満腹に届く前に食べる量そのものを抑える方向で働いているように見える。

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硬い昼食と柔らかい昼食、加工の度合いも変えた4つの食事

冒頭の実験を詳しく見る。標準体重の50人(うち男性24人)、平均24.4歳、BMIは平均21.3の若い成人が、4種類の昼食を別々の日に好きなだけ食べた[1]。4種類は、柔らかくて加工の少ない食事、硬くて加工の少ない食事、柔らかい超加工の食事、硬い超加工の食事である[1]。出された料理の総エネルギーはそろえ、重さあたりのエネルギーの差は1gあたり0.20kcal以内に収めていた[1]。

食べる様子は動画に撮られ、食べる速さが記録された[1]。硬い2つの食事は、加工の度合いにかかわらず、ゆっくり食べられていた[1]。食べた重さは21%、エネルギーは26%少なく、この差は料理のおいしさの評価で補正しても残っている[1]。

ここで、加工の度合いは食べる重さへの硬さの効果を変えなかったが、食べるエネルギーへの効果は変えていた[1]。硬さで減る重さはどちらの食事でも同じくらいだった。それでも、食事ごとに1gあたりのエネルギーに少し差があったので、エネルギーで見ると差の出方が違ってくる。エネルギーが最も少なかったのは、硬さと少ない加工が重なった食事だった[1]。

見落とせないのは、この昼食の後である。食事日誌でその日の残りの食事を調べると、1日の総エネルギーは昼食のエネルギーに沿って変わり、その差は15%だった[1]。日誌の上では、昼に少なく食べた分を夜にまとめて取り戻すことは起きていなかった。ただしこれは1日の記録であり、何週間も続けたときの体重の変化を測ったものではない。

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粥を濃くすると、満足は変わらずに量が減った

同じことを、朝食の粥で確かめた2つの研究がある[7]。1つ目は61人、2つ目は53人の成人が参加した[7]。米の粥を薄く作ると1分あたり140g、濃く作ると77gの速さで食べられ、濃い粥は食べる速さが45%遅かった[7]。2つの研究はどちらも、1gあたりのエネルギーが同じ条件どうしで濃い粥と薄い粥を比べ、食感だけを変えている[7]。水を減らして1gあたりのエネルギーを上げた粥とは、別の比べ方である。

1つ目の研究では、粥のエネルギーの密度を77%高めると、朝食で食べるエネルギーは80%増えた[7]。2つ目の研究では、量を50%増やすと食べる量が13%増えた[7]。量を増やしたときだけ食べる重さも増え、密度を高めたときは同じ重さでエネルギーだけが増えていた[7]。人は、出された皿の大きさと中身に合わせて食べる。

そこに濃い粥を組み合わせると、食べる重さとエネルギーは11〜13%減った[7]。エネルギーが最も少なかったのは、濃い粥を、密度を下げるか量を減らすかした条件だった[7]。

面白いのは満腹の感じ方だ。濃い粥は、食べる前には薄い粥より腹持ちがよさそうだと予想されたのに、食べた後の満足は薄い粥と同じだった[7]。量は減ったのに、満足は減っていない。食べた人の側から見れば、損をした感覚のないまま1食が小さくなった。参加者は21〜48歳で、BMIは16から29まで幅があった[7]。著者らは、エネルギーの密度、量、食感の自然な違いを組み合わせれば、満腹を保ったまま摂取を減らす食事を組み立てられるとしている[7]。

パンの種類で40%違う速さ、小学生の給食でも

主食のパンでも、食べる速さははっきり分かれた。平均25歳、BMIが平均22の36人が、9種類のパンを順に食べた実験がある[5]。速さは遅い順に、薄切りのパン、硬いパン、柔らかいパンだった[5]。最も遅かった全粒粉の薄切りパンは、最も速かった柔らかい白いパンより40%ゆっくり食べられた[5]。

その理由は、ひと口が小さく、噛む回数が多かったことにある[5]。中の部分がべたつくパンほど速く食べられ、ぱさついたパンほど遅かった[5]。高さと体積の大きいパンは速く、中身がまとまっているパンや外側の硬いパンは遅く食べられていた[5]。こうした物理的な性質から食べる速さを予測する式も、人が感じた食感の評価から予測する式も、どちらも食べる速さをよく言い当て、物理的な性質の式のほうがわずかに上回った[5]。袋越しに見えるパンの高さやふくらみも、食べる速さの手がかりになりうる。

子どもでも同じことが起きる。オランダの小学校で、4〜12歳の子ども73人(うち男子38人)の普段の昼食に、4週間にわたって柔らかい全粒粉のパンと硬い全粒粉のパンを出し分けた試験がある[16]。硬いパンでは、食べる速さが1分あたり6.67g遅くなり、食べる量は70g減った[16]。

同じ試験では、「よく味わって食べよう」という声かけも試された[16]。こちらは食べる速さにも量にも有意な効果がなかった[16]。著者らは、子どもの食べる速さと量には食感が支配的な影響を持つと結論している[16]。昼休みの教室で、言葉よりパンの硬さのほうが効いた。

数字で読む食感と食べる量

21%と26%:硬い昼食で減った、食べる重さとエネルギーの割合。50人が4種類の昼食を食べ比べた実験[1]。

1分140gと77g:薄い粥と濃い粥の食べる速さ。濃い粥では食べる量が11〜13%減った[7]。

40%:全粒粉の薄切りパンと柔らかい白いパンの、食べる速さの差[5]。

70g:小学生の昼食で、硬いパンにしたときに減った食べる量。声かけには効果がなかった[16]。

−0.28:噛むことにかかわる要素が食べる量に与える効果の大きさ。40件の研究のまとめ[6]。

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