食前のスープと水で食事量は減るか 一杯を足す前に知りたい満腹感と総量の科学

食前にスープを飲めば、その後の食べ過ぎを防げるのか。低エネルギー密度のスープを使った試験から、満腹感と食事全体の摂取量の違いをたどる。具の形やうま味による差、先に食べた分を含める計算、水だけの効果を切り分ける理由まで、短期の実験と減量の研究を区別して考える。

スープまで飲んだのに、食事全体のエネルギーは少なくなった。標準体重の成人を対象とする実験では、先に低エネルギー密度のスープを食べると、スープを含めた昼食の摂取エネルギーが平均20%減った。主菜を減らした分からスープの分を差し引いても、減少が残ったのである。[5]

ただし、この結果を「食前に何か飲めば痩せる」と受け取ると、肝心な条件が抜け落ちる。何を先に入れたのか、比較する日は何を食べたのか、数えたのは主菜だけか食事全体か。先に食べる物や食事そのもののエネルギー密度の高低を比べたメタ分析では、全体では次の食事の摂取エネルギーに明確な差がなかった。食前摂取の比較では、重さとエネルギーのどちらをそろえるかで、結果の向きが変わっていた。[12]

一杯の役割を考えるなら、胃袋をいっぱいにする想像だけで済ませず、食卓のどこにその一杯を組み込むかを見たい。水とスープを同じものとして扱わず、食べた量と感じた満腹、さらに体重の変化を順に見ていく。

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スープを足しても、昼食全体が減った試験

食事の前に一定の食品を食べ、その後の反応を調べる方法を、ここでは食前摂取、研究用語ではプレロードと呼ぶ。Floodらは標準体重の男女60人に、週ごとに条件を変えて実験室で昼食を食べてもらった。参加者は5週間にわたり、異なる形のスープを先に食べる日と、何も先に食べない日を経験した。同じ人の条件を変えて比較する設計である。[5]

スープが出されてから15分後、好きな量を食べられる試験食が提供された。先に出されたスープは決められた分を食べる条件だった。結果は、後の試験食が減っただけでなく、先に食べたスープと試験食を合計しても減少した。平均の差は134±25 kcal、割合では20%であった。[5]

この「含めても」が大切だ。食前に食べ物を足して主菜が少し減っても、足した分のほうが多ければ合計は増える。食前の器だけを見るのでも、主菜の皿だけを見るのでも足りない。今回のスープの結果に実用上の意味があるのは、食前分を帳簿の外に出していないからである。[5]

もっとも、測定したのは実験室での昼食だ。そこで分かったのは、その昼食での平均的な摂取エネルギーの差である。家庭で応用するときの問いは「この分だけ体重が落ちるか」より、「汁物を食事の一部にした日に、無理なく食べ終えられる量は変わるか」である。試験が示した範囲を、その日の食卓に対応させたい。[5]

対象が標準体重の成人だった点も残しておく。ダイエットを考える読者の体格や生活は一様ではなく、過体重の人や忙しい夕食での効果量は、別の対象や場面で確かめる課題として残る。昼食の条件を丁寧にそろえた結果として受け止めると、使える発見と、まだ試していない場面の境目が見えやすい。[5]

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具を残すか、なめらかにするか

同じ実験は、スープの形も比べていた。汁と野菜を分けたもの、具の形を残した野菜スープ、一部をすりつぶしたもの、全体をすりつぶしたものという条件である。後の食事量と、スープを含む食事全体のエネルギーには、形による有意な差が認められなかった。少なくともこの試験では、ミキサーを使うことが成功の必須条件とはならなかった。[5]

一方、Himayaらによる若い男性の比較試験では、具のあるスープが目立つ結果を示した。やせた男性12人と過体重の男性10人を対象に、野菜と水、こした野菜スープ、具のあるスープを、何も先に食べない条件と比較している。食前に出すものの組成と体積をそろえつつ、液体と固体への栄養の分かれ方や、固体の粒の大きさを変えた研究だ。[15]

食前摂取によって空腹感は低下したが、具のあるスープでは野菜と水よりも空腹の抑制が大きかった。どちらの体格の群でもスープの後は昼食の摂取エネルギーが少なく、具のあるスープで最も効果が大きかった。過体重の男性では、昼食が減った後に夕食の量も減っていた。[15]

形の差が出た研究と、差が出なかった研究がある。片方を消して「具を大きくすれば必ずよい」とするより、対象や比べ方の違いを含む結果として読むほうが正確だ。前者は若い男性を対象に野菜と水の条件も比較し、後者は標準体重の男女で複数のスープの形を比較している。形に関する結論はそろっていないが、スープを先に食べた条件で食事量が減る結果は共通している。[5][15]

家庭では、なめらかなスープしか作れない日を失敗扱いしなくてよい。逆に、具が大きいという理由だけで器を増やす根拠にもならない。調理の手間を増やして理想の形に近づける前に、そもそも食事の中に無理なく置ける形を選ぶ。これは特定の調理法への処方ではなく、形の優劣が一致していない研究から導く実用上の判断である。[5][15]

水分の多さだけでは説明しきれない満腹感

スープには水分が多い。それでも、栄養を含む飲み物と同じ反応を示すとは限らない。Mattesの研究では、男性13人、女性18人の成人が、同じ食品を固体と液状の形で摂取する条件などを経験した。食前摂取のエネルギーは300 kcalにそろえられ、食欲や満腹感が追跡された。[2]

スープによる空腹の低下と満腹の増加は、固体の食品と同程度だった。比較された飲料は満腹への作用が最も弱かった。また、その日の摂取エネルギーはスープの日に少ない傾向を示したが、「傾向」として報告された部分を確実な減少へ言い換えることはできない。[2]

著者は、スープを食事としてどう受け止めるかという認知的な要因が、満腹感に関わると推測している。認知とは、食べ物をどう捉えるかという頭の働きである。この説明は仕組みについての仮説であり、実際に観測された満腹感の結果とは区別して読む。[2]

水に関しても同じ慎重さが要る。野菜と水を別に出す条件とスープを比較した研究は、水単独を飲む効果を取り出した実験ではない。サラダ、ヨーグルト、水を組み合わせた試験も、食品を組み合わせた条件全体の結果として読む。[14][15]

水単独の減量試験は「食前の水500mlはダイエットに効くのか」の記事に譲る。このページの主役は、汁と具を含む食事の組み立てである。塩分と体重については「塩分を控えると体重は落ちるのか」の記事に譲り、ここでは食べたエネルギーと満腹の反応を追う。水分という共通点だけでは、研究の問いまで同じにはならない。

Mattesの実験をもう少し細かく見ると、飲み終えた直後の感想に加え、時間経過も調べている。参加者は一晩の絶食後に来室し、食前の食品を食べた後、初めは15分ごと、その後は30分ごとに質問へ回答している。さらに、その日の残りの食事も記録した。食べた瞬間の印象と、時間がたった後の食欲を追いかける設計だった。[2]

対象者の平均年齢は23.7歳で、平均の体格指数は23.0だった。体格指数は体重と身長の関係を表す指標である。年齢と体格も、研究の対象を読み取るための情報となる。ここで拾いたい発見は特定の年齢向けの食事法ではなく、同じエネルギーでもスープ、固体、飲料の満腹感を区別して調べる意味である。[2]

もう一つ、スープの形を比べた実験では、参加者が好きなスープを選んだ日の感想を集めたわけではない。決められたスープを食べる条件を設け、その後の試験食を好きなだけ食べてもらった。食前分を一定にしたからこそ、その後の量と合計を比べやすい。家庭では器の大きさも献立も変わるため、実験の減少率をそのまま自分の毎食へ貼り付けるより、合計を見るという比較方法を持ち帰るのが現実的だ。[5]

数字で読む食前スープ

60人:標準体重の男女がスープの形と食前摂取なしを比較した試験の参加者数である。[5]

20%:スープを含めた昼食全体の摂取エネルギーが減った平均の割合である。[5]

134±25 kcal:同じ試験における食事全体の差であり、将来の減量量への換算値ではない。[5]

39研究:エネルギー密度と後の食事量を統合したメタ分析の研究数である。[12]

68人:うま味調味料を加えたスープを比較した、過体重・肥満の女性の試験対象者数である。[9]

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