カロテノイドは食べ物の黄色から赤の色素である。4,202人の食事調査、血中濃度と肥満のメタ分析、補給の試験、皮膚の色素を測った研究を照らし、どの色素に関連が強く、何がまだ分かっていないのかを確かめる。サプリに頼る前に知っておきたい読み方の記事。
イタリアのカラブリア大学で、学生たちは身長と体重を測られ、地中海式の食事にどれだけ沿っているかを問う質問票に答えた。そのうえで、皮膚を小さな機械に押し当てた。機械は皮膚に光を当て、はね返ってきた光から、野菜や果物に由来する色素の量を点数にする[18][19]。
調べられたのは2,078人の大学生である。色素の点数は、BMI(体重を身長の2乗で割った体格の指数)と逆の向きに関連し、喫煙とも逆の向きだった。野菜を1日2皿より多く、果物を1日3皿より多く食べると答えた学生は、それより少ない学生より点数が高かった[18]。
この色素が、カロテノイドだ。体にこの色素が多い人は太りにくいのか。それとも、太っている人では色素がどこか別の場所にしまわれているだけなのか。食べた量、血液の濃度、皮膚の点数、補給の試験。物差しを一つずつ分けて読むと、同じ「カロテノイドと肥満」という言葉の下に、性格の違う結果が並んでいることが分かる。
カロテノイドは、体の外からしか入ってこない色素
カロテノイドは植物や微生物がつくる色素で、動物は自分ではつくれない[3]。食べ物の黄色から赤の色を受け持つ、脂に溶けやすい色素の仲間である[2]。人の体の中にあるカロテノイドは、食べ物か補給で入ってきたものということになる。

写真: George Chernilevsky / Public domain / Wikimedia Commons
仲間は多い。β-カロテン、α-カロテン、クリプトキサンチン、リコピン、アスタキサンチンは、肥満との関係を調べた試験や観察研究に名前が出てくる顔ぶれだ[4]。ルテインとゼアキサンチン、フィトエンも、食事調査で量が見積もられている[1]。海藻の色素フコキサンチンもカロテノイドの一つで、日本では機能性表示食品の成分として使われている[2]。
カロテノイドの一部は、ビタミンAの仲間であるレチノイドのもとになる[4]。マウスの脂肪前駆細胞を使った実験では、β-カロテンが脂肪細胞へ育つ過程を抑え、その働きにはビタミンAのもとになる性質が関わっていた[2]。細胞の実験の話ではあるが、色素が「色」だけの物質ではないことを示す例だ。
もう一つ、先に押さえておきたい事実がある。体の中でカロテノイドが主にしまわれている場所は、脂肪組織である[8]。この事実は、後で血液の数字を読むときに効いてくる。
読んだ分のカロリーは、石の上で返せる。
4,202人の食事を237項目で聞いた調査
食べた量と体格の関係を、まとまった人数で調べたのがPERSIANコホートの解析だ。参加者4,202人の食事を237項目の食物摂取頻度調査票(どの食品をどのくらいの頻度で食べるかを問う質問票)で聞き取り、米国農務省の食品データベースを使ってカロテノイドの摂取量を見積もった[1]。
そのうえで、交絡因子(結果をゆがめうる別の要因)の影響を差し引くロジスティック回帰という方法で、過体重や肥満であることとの関連を調べた。総エネルギー摂取量で調整した結果、カロテノイドの総摂取量が多いことは、過体重のオッズ比0.647、肥満のオッズ比0.395と関連した[1]。オッズ比が1より小さいほど、その状態に当てはまる人が少ない方向を示す。
色素ごとに見ると、差が出た。β-カロテンのオッズ比は0.510、ルテインとゼアキサンチンは0.479、フィトエンは0.450で、これらはリコピンやアスタキサンチンより強い逆の関連を示した[1]。トマトの赤で知られるリコピンは、この比較では主役の座に就かなかったことになる。
ただし、これは食べ方と体格の関連を見た観察研究である。カロテノイドを増やした人の体重が減ったかを確かめたものではない。カロテノイドの多い食事をとる人は、ほかの食べ方や暮らし方も違うかもしれない。研究者の結論も、特定のカロテノイドに富む食事が過体重と肥満の危険を「減らすかもしれない」という言い方にとどまり、仕組みを調べる研究を今後の課題に挙げている[1]。
血液の色素が少ない人に多かった太りすぎ
食事の聞き取りには、思い出し違いがつきまとう。そこで血液の濃度を物差しにした研究も多い。Yaoらのメタ分析は、2020年9月までの論文を5つのデータベースで探し、7本の無作為化比較試験と8本の観察研究、合わせて28,944人のデータを集めた[4]。
この分析では、血液中のカロテノイドが不足していることが、過体重と肥満の危険因子として浮かんだ。オッズ比は1.73、95%信頼区間は1.57〜1.91である[4]。数字の向きは食事調査と同じで、色素が少ない側に太りすぎが多い。
細胞と動物と人の研究をまとめたBonetらのレビューも、人の肥満では、カロテノイドの摂取量、血液の濃度、脂肪細胞に含まれる量がいずれも少ないと整理している[9]。食べた量でも血液でも、同じ向きの関連が繰り返し見つかっているわけだ。
困るのは、どちらが先かである。体脂肪が多い人は色素を食べる量が少ないのか。それとも、色素が脂肪組織にしまい込まれて、血液に出てくる分が少なく見えているのか。脂肪組織がカロテノイドの主なしまい場所であること[8]、同じレビューが、カロテノイドの必要量は体組成によって変わるかもしれないと述べていること[9]を並べると、太っている人の血中濃度の低さを「野菜を食べていない証拠」とだけ読むのは早い。この区別は、血液を一度測った比較からは付けられない。
補給の試験の「−2.34」をkgで読まない
観察研究の次は、色素を実際に飲んでもらった試験である。同じメタ分析には7本の無作為化比較試験が入っていて、期間は最も短いもので20日、最も長いもので16週間、1日の量は1.2〜60mgと幅が広かった[4]。
統合した結果、カロテノイドの補給は、体重、BMI、腹囲の減少と関連した。体重の標準化平均差は−2.34で、95%信頼区間は−3.80〜−0.87、BMIは−0.95、腹囲は−1.84だった[4]。
ここで一つ、読み違えやすい点がある。論文の要約はこの体重の値に kg を添え、BMIの値には kg cm-2 という単位まで付けている[4]。けれども標準化平均差は、試験ごとに違う測り方の結果をそろえて比べるための指標で、何kg減ったかを直接示す値とは別物である。「カロテノイドで2.34kg痩せる」と読むと、数字の性格を取り違えることになる。
研究者自身も、カロテノイドは過体重や肥満の人に「有望な効果」を示すとしたうえで、大きな臨床試験のデータがさらに要ると結んでいる[4]。最長16週間、量もばらばらの7本の試験から、長く続けた場合の体重までは言えない。
人で補給を試した研究の数については、レビューも慎重だ。特別に計画された人の介入試験はまだ少ないものの、お腹まわりの脂肪がたまっていくことに対して、カロテノイドの補給がよい方向に働くことを示している、とBonetらは書いている[9]。
中国の臨床試験登録に載った計画では、お腹まわりに脂肪がたまった18〜60歳の120人に、ルテイン10mgか偽薬を12週間飲んでもらう二重盲検の試験が予定されていた[6]。この記録は試験の計画書であり、結果は載っていない。体組成や炎症の指標がどう動いたかは、この記録からは分からない。
補給の試験の量は、食事で自然にとる量と同じとは限らない。試験で使われた量をそのまま自分の1日の目安にするのは、論文の読み方としても危うい。サプリを使うかどうか、持病の薬との組み合わせに問題がないかは、医師か薬剤師に相談して決める話だ。
数字で読むカロテノイドと肥満
- 0.395:PERSIANコホートの4,202人で、カロテノイドの総摂取量が多いことと肥満との関連を示したオッズ比。総エネルギー摂取量で調整した値で、95%信頼区間は0.244〜0.640[1]。
- −1.84:カロテノイドの補給を調べた7本の無作為化比較試験を統合した、腹囲の標準化平均差。試験ごとの測り方をそろえた値で、何cm減ったかを直接示すものではない。95%信頼区間は−3.14〜−0.54[4]。
- 1.73:血液中のカロテノイドが不足していることの、過体重・肥満に対するオッズ比。メタ分析の統合値で、95%信頼区間は1.57〜1.91[4]。
- 28,944人:そのメタ分析に入った7本の無作為化比較試験と8本の観察研究の、対象者の合計[4]。
- 23.30:皮膚の色素を測ったカラブリア大学の学生2,078人の、BMIの平均値[18]。
- 391.67と349.27:野菜を1日2皿より多く、果物を1日3皿より多く食べる学生と、それより少ない学生の、皮膚の色素の点数の平均(順に)[18]。
読んだ分のカロリーは、石の上で返せる。
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