水泳で痩せにくいのは本当か 体組成の変化と運動時間を研究から読み分ける

泳いでも体重が動かないとき、水泳そのものが減量に向かないと決めてよいのか。水泳と水中エアロビクスの比較研究から、体重・体脂肪・体力の変化、運動時間の目安を読む。効果がなかった試験も取り上げ、泳いだ後の食欲について分かる範囲と、暮らしで確かめたいことを整理する。

プールのコースを往復する水泳と、水の中で動くエアロビクス。同じ更衣室を使う運動でも、減量の研究では別のものとして扱われる。水泳のレビューでは体重の平均差が−2.90 kg、水中エアロビクスでは−2.69 kgと報告されたが、対象も試験も異なるため、この数字の大小で運動の優劣は決まらない。[5][3]

研究の答えは、単純な不向き判定ではない。水泳を続けた人の体重や体脂肪率が対照群より改善した研究のまとめがある一方、若い女性の水泳では体組成に有意な変化が認められなかった試験もある。[5][2] 結果を分ける条件を見ないまま、泳ぐという行為だけに成績をつけるのは早い。

見たいのは、泳ぐ運動なのか、水中で動く運動なのか、体重なのか脂肪なのかという違いである。泳いだ後の空腹も気になるが、ここで読む研究の要約には、食欲を直接測った結果が示されていない。体重が動かなかった理由を、空腹のせいだと先回りして決めずに読んでいこう。

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水泳と水中エアロビクスは同じ研究ではない

水泳の研究では、プールで泳ぐトレーニングが対象になる。競技の頂点を目指す選手ではない人を扱った系統的レビューとメタ分析では、無作為化比較試験だけでなく、準無作為化試験や対照群を置いた試験もまとめている。[5] 系統的レビューは条件に合う研究を集めて検討する方法、メタ分析は集めた結果を統計的に統合する方法である。まとめ方が丁寧でも、元の試験の対象や設計の違いは残る。

対して、水中エアロビクスのメタ分析は、過体重・肥満の人を対象にした無作為化比較試験を集めたものだ。[3] 無作為化とは、参加者を偶然に任せて群に振り分け、比較する条件をなるべくそろえる手続きである。この研究で得られた減量の数字を、そのまま自由に泳ぐ人の予測値として使うことはできない。水の中という場所が共通でも、行っている運動は区別して読む必要がある。

さらに広く、水中運動全体を扱った分析もある。健康な成人の無作為化比較試験を集めた研究では、体重、脂肪量、体脂肪率、除脂肪量、骨格筋量を評価している。[1] 除脂肪量は脂肪以外の体の量を指す言葉であり、骨格筋量と同じ指標ではない。この分析の好ましい結果は水中運動というまとまりへの評価であって、特定の泳法だけの効果ではない。

自分が通うプールの使い方を言葉にしてみよう。泳ぐ教室に参加するのか、水中で動くクラスなのか、自分のペースで泳いで休むのか。論文を選ぶ前に、この説明ができるだけでも照合はしやすくなる。歩くか走るかの優劣は「ランニングとウォーキング、痩せるのはどちらか」の記事に譲り、ここでは同じプールの中でも研究の対象が違うという点を押さえたい。

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非競技者の水泳では、体重が減る平均差もある

非競技者の水泳を扱ったレビューは、29件の研究を対象にしている。体重の統合結果では、泳ぐ群は対照群に比べて平均2.90 kg低く、95%信頼区間は−5.02〜−0.78 kgだった。複数の集団をまとめた体脂肪率の結果も平均−1.92ポイントで、95%信頼区間は−3.25〜−0.60ポイントである。[5] 体脂肪率のポイントは割合の差を表し、脂肪の重さの変化とは分けて扱う。

95%信頼区間は、平均の効果を推定する際の不確かさを示す範囲だ。参加者のほとんどがこの範囲だけ痩せた、という読み方はしない。対象には異なる集団が含まれており、平均差を読むときには年齢や健康状態も照合する。[5]

このレビューには好ましくない結果も載っている。高血圧のある成人を扱った2件の研究の統合では、腹囲は泳ぐ群で対照群より平均4.03 cm大きく、95%信頼区間は2.58〜5.49 cmだった。[5] 腹囲はお腹の周囲の長さである。体重と腹囲では変化の方向が違い、対象の健康状態も異なっていた。

また、他の運動との比較について、著者らはデータが限られることを明記している。概して類似した効果を示す一方、健康な成人の水泳とランニングの比較では、水泳側の運動後の体格指数が高い結果もあった。[5] 運動後の体格指数の群間差は1.18 kg/m2、95%信頼区間は0.54〜1.81だった。[5] 体格指数だけの差と、脂肪量や体力も含む評価を同じ競争にしないことが大切だ。

研究から受け取れるのは、水泳でも体重や体組成が改善する余地はあるということだ。[5] 「水泳では脂肪が減らない」という一律の評判には合わない。しかし、自分の年齢、運動内容、参加の仕方まで同じとは限らない。口コミの断言を、論文の平均という別の断言で置き換えないようにしたい。

水中エアロビクスでは、体重と腹囲に差が出た

過体重・肥満の人を対象にした水中エアロビクスのメタ分析には、10件の無作為化比較試験、286人が含まれている。統合した群間差は体重で−2.69 kg、95%信頼区間は−4.10〜−1.27 kg、腹囲で−2.75 cm、95%信頼区間は−4.41〜−1.09 cmだった。[3] 個別のクラスの参加者全員が同じ量だけ変わることを示した数字ではないが、比較対象より減る方向の結果である。

この分析で特に重要なのは、体重と腹囲以外の指標では効果が有意でなかったことだ。脂肪量や除脂肪量、体格指数などの証拠の確実性は低く、体脂肪率では非常に低いと評価された。体重と腹囲の確実性は中程度である。[3] 証拠の確実性とは、推定した効果をどれだけ信頼できるかという評価であり、効果の大きさとは別の軸になる。

つまり、体重が減ったという結果から、脂肪が同じ重さだけ減ったと計算することはできない。脂肪への効果を否定した研究と読むのも行きすぎだ。指標によって結果や確実性が違うというのが、この分析の姿である。[3] 服のウエストが気になる人にとって腹囲は読む価値のある指標だが、それだけで体の中身をすべて説明できるわけではない。

著者らは、10週間を超える介入、具体的には12週間の介入で体重と腹囲が減ったこと、女性や平均年齢45歳以上の集団でより好ましい傾向があったことを示している。[3] 平均年齢による集団の傾向として、対象を選ぶ手がかりになる。立川周辺で暮らす中年の読者も、体重と腹囲の結果を中心に見ていくと研究の焦点をつかみやすい。

健康な成人の水中運動を扱ったメタ分析は、20試験、565人を集めたものだ。全体として体重、脂肪量、体脂肪率が減り、除脂肪量と骨格筋量が増える方向の結果だった。強度別では中強度または中〜高強度が好ましく、低強度や水中の高強度インターバル運動は改善への寄与が小さいように見えた。[1] 高強度インターバル運動とは、強い運動と回復の時間を交互に置く形式である。

水中運動全体を週の運動時間別に分けた分析では、週120分未満で改善が十分に見られず、週120分超で改善との関連があった。[1] 種目をまとめた分析から得た時間別の傾向であり、自由に泳ぐ人の必要時間を直接検証した結果とは区別する。論文の要約では運動時間として着替えや移動を含むかは示されていない。予定表にはプールへ行った時間と、実際に動いた時間を分けて書くと、研究との距離が見えやすい。

数字で読む水泳と水中運動

水泳の29件の研究を集めたレビュー:体重の統合平均差は−2.90 kg。対象が混在する結果である。[5]

水中エアロビクスの10試験・286人:体重の平均差−2.69 kg、腹囲−2.75 cm。脂肪量とは分けて読む。[3]

健康な成人の水中運動20試験・565人:週120分超の群で体組成改善との関連があった。個人の境界値ではない。[1]

若い女性の水泳12週間・週3回・各60分:脂肪量や筋肉量などに有意な変化はなかった。[2]

肥満の高齢女性55人の水中運動:中強度群の体重変化は−0.7 kg。群内の前後比較の値である。[19]

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