減量しては戻るたび、代謝が落ち、脂肪だけが増えるのか。体重サイクルを調べた人の研究と動物実験を読み分け、筋肉量や血糖への影響、結論が食い違う理由を確かめる。過去のリバウンドを再挑戦の禁止理由にせず、年齢や意図しない体重減少にも目を向けて、続け方を見直すための科学の読み物。
しまい込んだ服が着られるようになったのに、季節が変わるころにはまた窮屈になる。体重計の数字よりつらいのは、「戻ったぶんだけ、次は痩せにくい体になったのでは」という疑いかもしれない。過去の減量が体に借金を残した気がして、次の一歩まで重くなる。
減量と再増加を繰り返すことを、体重サイクル、あるいはヨーヨーダイエットと呼ぶ。[1] ただし、それを経験した人の体が必ず壊れるという結論は、人を対象にした現在の根拠からは支持されていない。[1][7] 一方、動物実験や高齢者の体組成を論じたレビューには、見過ごせない懸念もある。[8][12] 安心と警戒のどちらかだけを選ぶと、研究の半分が見えなくなる。
ここで考えたいのは、体重維持に成功した人の習慣をまねる方法でも、筋トレの種目でもない。戻った経験そのものが何を意味するかである。維持の工夫や筋肉を守る運動は特集の別記事に譲り、まず「失敗を重ねた体」という見方が、論文に照らしてどこまで妥当かを確かめたい。

体重が戻った事実と、体が傷んだ証拠を分ける
体重サイクルの研究を読むとき、最初に確認するのは何をサイクルと数えたかである。食事で意図的に減らして戻った場合もあれば、病気などで意図せず減って増えた場合もある。体重変動を扱う研究と、減量の試みを扱う研究は、同じ問いに答えているとは限らない。[7][19] 朝の体重計の上下を、そのまま長期間の減量と再増加の研究に重ねることもできない。
次に、何が変わったかを見る。体重、体脂肪、脂肪以外の組織、代謝、血糖、病気や死亡は、それぞれ異なる評価項目である。[1][7][19] 体重が元に戻ったことと、元の体重のときより代謝が悪くなったことは別の結果だ。前者を見ただけで後者まで決めつけると、秤が測っていないものまで秤に読ませることになる。
人の観察研究では、研究者が参加者に何度も減量と再増加をさせるのではなく、すでに経験した体重変化と、その後の健康状態を調べる。この方法には、現実の生活を追えるよさがある一方、変動の理由を切り離しにくい問題がある。動物研究の系統的レビューも、人の結果が食い違う背景に観察研究の制約を挙げている。[8]
たとえば、体重が変動した人と安定していた人の健康に差があっても、その差が体重の上下だけから生まれたとは限らない。加齢、意図しない減量、肥満になった時期、肥満で過ごした期間などが関係する可能性がある。人と動物の根拠を批判的に検討した見解論文は、こうした事情を有害な結果の解釈に挙げている。[7] 年齢や健康状態まで同じだったか、という問いが必要になる。
この見解論文は新しい無作為化比較試験ではない。既存研究を評価して、体重サイクルそのものと臨床的な害の因果関係は、肥満のある人で現在の根拠からは支持されないと述べている。[7] 「因果関係が支持されない」は、「どんなやり方でも安全」と同じ言葉ではない。必要な減量まで否定しないための判断と、極端な減量を推奨する判断は分けるべきだ。
服がまた窮屈になった日の振り返りにも、この区別は使える。「戻った」という記録の横に、食事を変えた理由、続けられなくなった場面、体調の変化を書き足す。これは病気を判定する方法ではなく、次に相談するときの状況整理である。研究を自分に当てはめる前に、自分の体重変化が研究のどの種類に近いかを確かめる。その順番なら、過去の経験を悪い体質の証明にしなくてすむ。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
代謝が壊れるという通説を、人の研究で確かめる
一般に健康な成人を対象とする研究を系統的に検討したレビューは、23件の横断研究、コホート研究、介入研究を集めた。対象には標準体重、過体重、肥満の人が含まれ、年齢や性別もさまざまであった。[1] 横断研究はある時点の状態を比べ、コホート研究は集団を追跡する方法である。介入研究と一緒にまとめられていても、すべてが因果関係を同じ強さで示すわけではない。
体重または体格指数を調べた18件中13件では、体重サイクルとの有意な関連がなかった。脂肪量を評価した20件中15件では増加が見られず、除脂肪量を調べた18件のどれにも減少は認められなかった。[1] 除脂肪量とは脂肪以外の組織の量であり、筋肉だけの重さではない。結果を「筋肉が絶対に減らない」と読み替えるのは、評価項目を狭くしすぎる。
安静時代謝量、つまり安静にしているときのエネルギー消費についても、14件中12件で悪化が報告されなかった。[1] 「リバウンドするたびに代謝が永久に下がり、減量が不可能になる」という見方に対し、このレビューは反証となる。著者らは、過体重や肥満に悩む健康な人の再度の減量の試みを、思いとどまらせるべきではないとしている。[1]
ここで並んだ数字は、減量の効果量ではなく、各結果を報告した研究の件数だ。[1] 代謝がどれだけ変化したか、脂肪がどれだけ増減したかを、件数の比率から計算することはできない。小さい研究と大きい研究を単純に同じ票として数えれば、参加者全体での効果の大きさも分からない。この資料の要旨には統合された代謝の変化量や信頼区間は示されていないため、それ以上の数字を足さない。
以前の人の研究をまとめたレビューは、少し違う景色を示す。31件を採用し、体脂肪や中心部への脂肪蓄積について19件中11件が体重サイクル歴との関連を報告した。将来の体重増加については8件中4件が関連を示した。[6] 中心部の脂肪蓄積とは体の中心側に脂肪が集まることであり、ここで示されたのは関連である。体重サイクルが直接それを起こしたとまでは言えない。
同じレビューで、2型糖尿病のリスクに有害な影響を示さなかった研究は17件中13件であった。著者らは体組成や将来の肥満についての根拠は決着していないとしつつ、過体重や肥満の人の減量努力は引き続き勧められると結論している。[6] 悪い関連を示す研究が含まれていても、記事の結論を「だから減量してはいけない」に飛ばしてはいない点が大切だ。
新旧のレビューを並べる意味は、都合のよいほうを選ぶことではない。採用する研究、対象、測定項目が違えば、体重サイクルという同じ言葉の下でも結果はそろわない。[1][6][7] 家族に「戻るなら減らさないほうがよい」と言われたときは、人体研究の総体が再挑戦を否定しているわけではない、と受け止められる。同時に、自分の年齢や体調を無視して結論を持ち帰らないことも必要である。
動物実験の警告は、比較相手によって意味が変わる
動物実験は、食事や減量と再増加の条件を研究者が管理できる。人の生活では切り分けにくい条件を確かめるために重要な方法だ。[8] ただし、マウスの食事切り替えで生じた変化を、そのまま立川で働く成人の将来の病気の確率にはできない。動物で起きたことと、人にどれだけ起きるかは別の段階の問いになる。
動物研究の系統的レビューとメタ分析では、体重サイクルを経験した動物を、生涯にわたって肥満であった動物と比べた場合、健康上の評価項目に差はなかった。一方、後になって肥満になった動物と比べると、再増加後の空腹時血糖が高く、糖への耐容能が悪かった。[8] 糖への耐容能とは、糖を処理して血糖を調節する能力のことである。
この結果の要点は、「何と比べたか」にある。ずっと肥満であった動物と同程度だったことは、減量の間に得た健康上の利点が再増加後まで残るとは限らない、という解釈につながる。後から肥満になった動物より悪かったことは、同じ最終体重でも、それまでの経過を無視できない可能性を示す。[8] 体重が戻れば一切が元どおり、という理解にも修正が必要だ。
ただし、この要旨は統合した血糖差の具体的な大きさや信頼区間を示していない。[8] 人で病気が増える割合も分からない。警告を読者の身近な数字へ置き換えるために、根拠のない発症率を作ることはできない。ここで持ち帰れるのは、再増加後の代謝を調べる価値があることと、比較相手によって結果の意味が変わることである。
動物実験にも反対方向の結果がある。食事の組成を変えずに体重のサイクルを起こしたマウスの実験では、対照群より体重や脂肪量が増えず、血液中の糖や脂質なども悪化しなかった。[9] サイクルを作る際に食事の中身まで変わるかどうかは、研究を読むうえで確認したい条件である。この結果だけで人の安全性が確定するわけではないが、動物なら必ず害が出るという説明には合わない。
さらに、高脂肪食で肥満になった成体マウスの研究では、最初に555匹を飼育し、その後、各性別で重い200匹を食事条件の異なる群へ無作為に分けた。体重サイクル群の体重、脂肪量、相対的な体脂肪は、食べる量を制限せず肥満が続いた群より有意に大きくなかった。[20] これも人への食事指示ではなく、実験条件を明記した動物の結果である。
同研究では、長期間の中等度のエネルギー制限で、雄に体重が低いのに相対的な脂肪が多いという結果も見られたが、雌では同じ結果ではなかった。[20] 体重の軽さだけでは体組成の評価が終わらないこと、性別による違いもありうることが分かる。体重サイクルの有害性を一本の法則として説明するには、こうした条件の違いが残っている。
数字で読む体重サイクル
23件:一般に健康な成人の体重や体組成、代謝を検討した系統的レビューの採用研究数。[1]
18件中13件:体重または体格指数との有意な関連がなかった研究数。減量の成功率ではない。[1]
14件中12件:安静時代謝の悪化を報告しなかった研究数。代謝の変化量を表す数字ではない。[1]
19件中11件:以前のレビューで体脂肪や中心部の脂肪蓄積との関連が報告された研究数。因果の証明ではない。[6]
74件:競技者の減量後の回復を扱ったレビューの採用研究数。一般の成人とは対象が違う。[14]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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