断食を模した食事とダイエットの科学 短い低カロリー期間で変わる数字と比較の条件

断食を模した食事は、毎日食事を控える方法より体重を減らせるのか。肥満女性の比較試験、糖尿病の通常診療に組み込んだ試験、短期の体脂肪や細胞の指標を調べた研究を照らし合わせる。低カロリー期間の長さだけに注目せず、比較相手と対象者、食事を戻した後の評価まで含めて、期待できる範囲を考える。

月に連続5日、これを3か月。断食を模した食事の比較試験では、毎日ずっと食事を制限する代わりに、短い低カロリー期間を繰り返した。[15] 食べない日を設けるだけでなく、食事の量や組成を変えて断食に似た反応を目指す方法である。一般に健康な成人を対象にした試験では、低エネルギー、低糖、低たんぱく質で、不飽和脂肪の割合が高い食事を用いている。[15]

名前には新しさがある。しかし、減量の比較結果は素直な勝利宣言にならない。肥満のある女性の試験では、毎日のエネルギー制限との体重減少の差は統計的に有意でなかった。一方、糖尿病の通常診療に組み込んだ試験では、通常診療だけの場合より体重が減った。比べた相手と参加した人をそろえて見ると、この違いの意味が見えてくる。[5][19]

ここで扱うのは、短い低カロリー期間を組み込む食事の試験である。食べる時刻を限る時間制限食や、宗教上の断食の生活全体とは論点を分ける。知りたいのは「断食らしい反応が起きるか」に加え、「普段の方法より体重が変わるか」「その変化が続くか」である。[1]

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断食を模すとは、何を変える食事なのか

断食模倣食は、英語の略称でFMDと呼ばれる。代表的な無作為化比較試験では、参加者を偶然の割り付けで群に分け、月ごとに連続した5日間の食事を変え、それを3か月繰り返した。残りの日々まで同じ低カロリー食を続ける設計とは異なる。試験で操作しているのは、期間と食事の内容を組み合わせたプログラムである。[15]

この構造を見落とすと、「少ししか食べなければ同じことだろう」と考えやすい。だが、低エネルギーであることに加え、糖やたんぱく質、不飽和脂肪の構成にも条件がある。普段の夕食を抜いた行動と、研究で用いた食事プログラムをそのまま同一視することはできない。名前をまねることと、介入内容が一致することには距離がある。[15]

食事の組成も固定した完成形にはなっていない。健康な男女を対象とする別の試験では、植物性中心の低カロリー食について、たんぱく質が少なく脂質が多い群と、たんぱく質が多く脂質が少ない群を比較している。同じ断食模倣食という分類の中にも、栄養素の配分が違う方法がある。[20]

たとえば、たんぱく質の配分を比べた試験では、低たんぱく質群の脂質はエネルギーの45%、高たんぱく質群では25%だった。低カロリーという条件は共通でも、栄養素の組み合わせは異なる。普段の食事から特定の食品を引くだけで、研究と同じ組成になるとは限らない。試験の食事は、単に我慢する日を数えたものではなく、量と配分を一緒に設定したものだと理解したい。[20]

日常で検討するなら、「断食」という看板より、何を食べる設計なのかを先に確かめたい。食べる量、食事の組成、通常の食事に戻る期間、支援の有無を別々に見るのである。食事法の名称だけでは、この中身までは分からない。レビューも、減量を起こす食事法は多い一方、長期の有効性を実際に示した研究は限られると整理している。[1]

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体重は減ったが、普段の食事との比較である

一般に健康な米国の参加者100人を割り付けた試験では、自由な食事を続ける群と、断食模倣食を月ごとに取り入れる群が比較された。3か月の介入で、断食模倣食群では体重、体幹部の脂肪、全身の体脂肪が減り、血圧やIGF-1も低下した。IGF-1は、研究で成長に関連する指標として扱われる物質である。[15]

体重だけでなく脂肪を測っている点は、この研究の読みどころである。「体重計の表示が動いた」から先へ進み、体の構成にも変化があったことを確認している。ただし、ここでの比較相手は自由な食事である。毎日の食事を同じように見直した方法より優れている、という問いへの答えは、この試験だけでは決まらない。[15]

対照群も後から同じプログラムに移り、合計71人が3回の食事サイクルを完了した。研究には、当初割り付けられた人数、後から介入を受けた人数、完了した人数という違う集計が登場する。100人という入り口の数字を、そのまま全員が最後まで同じ条件で続けた数字として読むのは避けたい。[15]

また、病気のリスクが高い参加者のほうが、正常な値の参加者より複数の指標が好ましく変化したという追加解析もある。これは試験後に群を分けて調べた結果であり、誰でも同じ幅で変わるという説明にはならない。元の値が違う人をひとまとめにして平均だけ眺めると、読者自身との接点がぼやけてしまう。[15]

重篤な有害事象は報告されなかったが、それも対象者と介入期間の中での結果である。研究者自身も、疾病の予防や治療への効果を確かめるには、より大きな研究が求められるとしている。体脂肪や血圧の変化を確認した試験と、将来の病気を防いだと確認する試験は、調べる目的が違う。[15]

毎日の節制より減る、とは言い切れなかった

直接の比較として重要なのが、代謝的には健康で肥満のある18〜55歳の女性60人を対象にした無作為化比較試験である。断食模倣食と、平均で毎日500 kcalのエネルギー不足を設ける継続的な食事制限を、2か月間比較した。こちらは「食事を変えるか、変えないか」から一歩進み、異なる減量方法どうしを比べている。[5]

体重変化の平均は、継続的な制限群で−2.29 kg、断食模倣食群で−1.13 kgだった。ばらつきを示す標準偏差は、それぞれ1.95 kgと2.27 kgである。群間差の検定はp=0.06で、統計的に有意な減量差は確認されなかった。断食模倣食のほうが数値上も大きく減った、という結果ではなかったのである。[5]

有意差がないことを、両者が完全に同じと証明された、と読み替えるのも早い。この試験で言えるのは、対象となった女性と期間の中では、減量差を明確に示せなかったということだ。平均値の方向と統計的な判断を両方書くと、派手な題名は作りにくくなる。それでも、方法を選ぶ人にはこちらのほうが役に立つ。[5]

一方で、基礎代謝量の低下は継続的な制限群で大きく、脂肪量や筋肉量の好ましい変化は断食模倣食群で認められた。基礎代謝量とは、体が安静時に使うエネルギーに関わる指標である。体重差だけで採点すると、こうした測定結果を取り落とす。ただし、この短い試験を根拠に、筋肉が必ず守られると保証することはできない。[5]

血糖の調整に関わるインスリン抵抗性の結果にも注意したい。インスリン抵抗性は、インスリンの働きに対する体の反応の弱さを表す。断食模倣食群に有利な変化があったものの、影響し得る要因を統計的に調整した後は有意でなかった。論文の結論に期待が示されていても、結果のこの部分を省かずに読む姿勢が大切である。[5]

食欲に関連するホルモンにも群による違いがあったが、検査値の変化と、本人が空腹に困らず続けられることは別の評価である。この試験の体重の答えは、あくまで群間に有意差なしだった。食欲に関する指標が動いたという情報を、長く楽に痩せられるという生活上の約束へ変えるのは控えたい。[5]

食欲に関する測定を詳しく見ると、継続的制限群では、交絡し得る要因を調整した後に総グレリンと神経ペプチドYの血中濃度が有意に増加した。一方、レプチンの結果は有意でなかった。いずれも食欲の調節に関わる物質として調べられている。同じ「食欲ホルモン」という呼び方でも、測った項目ごとに結果がそろったわけではない。[5]

この違いを読むときには、血液の値から空腹感の強さを勝手に換算しないことも大事だ。買い物中に食べたい気持ちが増えるか、夕食後に満足できるか、制限の後に食事を整えられるかは、読者にとって別に知りたい問題である。ホルモンの測定結果だけで、こうした場面の負担まで小さくなると説明しないほうが正確だ。[5]

数字で読む断食模倣食

100人:一般に健康な参加者を割り付けた試験の開始時の人数である。[15]

月5日を3か月:同試験で用いた介入の組み方である。[15]

−2.29 kgと−1.13 kg:肥満女性の比較試験での継続的制限群と断食模倣食群の平均体重変化で、群間差は有意でなかった。[5]

−3.6 kg:糖尿病の通常診療に追加した試験の12か月時点の調整済み体重差で、95%信頼区間は−5.2〜−2.1 kgだった。[19]

46人:たんぱく質配分の異なる食事を比べた短期試験の参加者数である。[20]

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