クロスカントリースキーで体はどう変わるのか。若い競技選手の追跡、筋力トレーニングの系統的レビュー、栄養と体脂肪の観察研究をたどる。筋量と脂肪量、速さと減量を分け、市民が選手の数字を目標にする前に確かめたいことや、食事を減らす判断の落とし穴を整理する。
筋力を伸ばす運動を加えた研究と、体脂肪まで変わる研究は、同じ答えにならない。クロスカントリースキー選手の筋力トレーニングを集めたレビューでは、筋力の改善はそろっていたが、体組成の結果は混在した。若い選手を長く追った別の研究では、全体で除脂肪量が増し、脂肪量などの改善は女性に限られた。運動の成果は、見る項目によって顔つきが変わる。[6][1]

体重の内訳を見ると、持久運動の姿が変わる
Jonesらは、育成チームに所属する18〜23歳のクロスカントリースキー選手30人を、25か月分のデータで振り返った。女性14人、男性16人を対象に、体組成、運動中の生理指標、練習量、競技成績を解析した観察研究である。体組成には、エックス線を使って脂肪やそれ以外の組織を測り分ける検査が使われた。全身と上半身の除脂肪量は集団全体で増加した。[1]
除脂肪量は、筋肉を含む、体から脂肪を除いた部分の量である。この研究では、下半身の除脂肪量、全身の脂肪量、いくつかの運動能力の改善が確認されたのは女性だった。女性の距離競技の成績を予測するモデルでは、体重、脂肪量、除脂肪量に加え、酸素を取り込む能力や一定の乳酸濃度での速度が重要な変数だった。体重の数字だけで成績を説明していない点に目を向けたい。[1]
この追跡では、生理指標を段階的に負荷を上げるローラースキーのトレッドミルテストで評価した。練習についてはオンラインの日誌から総量と低強度・高強度の配分を解析し、成績には国際スキー連盟の距離競技とスプリントのポイントを使っている。体組成、実験室での能力、普段の練習、実際の競技成績という複数の層を結びつけた設計だった。[1]
女性で改善した生理指標には、血中乳酸濃度が2および4mmol/Lとなる時点の速度と酸素摂取量があった。タイムトライアルの所要時間、出力、ピークの酸素摂取量も女性で改善した項目に含まれる。下半身の除脂肪量や脂肪量といった体の構成に、一定条件でどれほど動けるかという変化が重なっていた。距離競技について成績の予測が成り立ったのも女性のみだった。[1]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
上半身の力と速さは、軽い体だけでは説明できない
Stogglらは、国内・国際水準の男性選手14人を対象に、ローラースキーを使った最大速度テストと体組成の測定を行った。体組成と速度を同じ時期に測り、個人差の関連を調べた横断研究である。両方のポールで押して進むダブルポーリングでは、体幹の除脂肪量と最大速度に正の相関があった。相関係数は0.75で、全身の除脂肪量や体重も速度と正に関連した。[10]
この研究では、身長そのものには各技術の最大速度との相関が見られなかった。一方、身長に対するポールの長さの比は、調べた両技術の速度と関連した。体格の大きさ、体の内訳、用具の条件は、別々の情報だったのである。著者らは高い除脂肪量の割合と少ない脂肪量に着目しているが、その結論を「体重は少ないほどよい」に短縮すると、体重と速度の正の関連を取り落とす。[10]
もう一つ調べた技術は、腕と脚を交互に使うダイアゴナル走法だった。この最大速度には、全身の除脂肪量の絶対量と相対量がともに正に関連し、相関係数はそれぞれ0.58と0.76だった。部位別では体幹、腕、脚の相対的な除脂肪量も速度と結びついた。ダブルポーリングでは体幹の量が目立ち、ダイアゴナル走法では腕や脚も含む体の構成が関係している。[10]
相対的なポール長と最大速度の相関係数は、ダブルポーリングで0.77、ダイアゴナル走法で0.60だった。複数の変数を合わせた回帰モデルで両方の技術に共通して残ったのは、このポール長の比である。体の計測だけを扱った研究のように見えても、実際には用具と動作を含めた比較になっている。研究者が速度の違いを説明する際には、身体の量と道具の条件の両方を検討していた。[10]
雪上を実際に滑る場面では、技術の使い分けも関係する。Anderssonらは、男性のエリート選手9人に雪上の速度テストと1,425mのスプリント計測を行った。衛星による位置情報と映像を合わせると、コース内で速度は毎秒2.9〜12.9mと大きく動き、滑走技術の切り替えも21〜34回あった。単一の一定速度で、ずっと同じ動きをするテストとは条件が違う。[2]
スプリント成績は上り区間の成績や技術の使用割合、最大速度と関連し、除脂肪量は出だしの速度やダブルポーリングの最大速度と関連した。また、最大酸素摂取量という、運動中に取り込める酸素量の上限を表す指標は、上りで速度を保つ能力と関連した。雪上で「速い」を支える要素には、体の内訳に加えて、酸素を使う能力と技術が並ぶ。減量だけを競技の説明にしてしまうには、測られているものが多い。[2]
筋力トレーニングは、体脂肪より先に力で評価する
競技者に筋力・パワー・速度をねらうトレーニングを追加すると、何が変わるのか。Stögglらの系統的レビューは、条件を満たした無作為化比較試験12本を集めた。対象は競技としてクロスカントリースキーに取り組む選手で、体に外部の抵抗をかける、4週間を超える介入が選ばれた。研究の方法の質は多くが低い〜中程度で、良好とされたのは2本だった。[6]
すべての介入で、1回だけ持ち上げられる最大重量で見る筋力は改善した。種目に即した競技能力への平均効果量は0.56だったが、改善の出方は一貫せず、ジャンプ、素早く力を出す能力、体組成の結果も混在した。効果量は違う尺度の結果を比べるための統計的な指標で、脂肪が何kg落ちたかを示す数字とは違う。筋力と体組成では、結果のそろい方が異なった。[6]
研究を生活に移す際の注意は、ここにまとめておく。競技者の練習量や体組成は一般の大人の目標値ではなく、観察された関連と介入の効果も分けて考える。たとえば後に紹介する食事の観察研究から、摂取量を増やせば脂肪が減るという因果までは言えない。筋力運動の評価には力の変化、体脂肪の評価には脂肪の測定結果というように、目標と指標を対応させるのが出発点となる。[6][7]
レビューで扱われた筋力の効果量は0.8〜6.8と幅があった。無酸素性の能力は、どの介入でも変化しなかった一方、最大酸素摂取量は多くの試験で維持または増加した。動く際の経済性や効率には、多くの介入で改善が報告されている。ただし、研究全体を通した経済性と酸素摂取能力への結論は確定しておらず、競技能力への中程度の効果と、一般的な筋力の改善が主な結論だった。[6]
競技成績の変化と減量を分ける例として、カフェインを用いた古い研究もある。Berglundらは、よく鍛えられた選手14人に、低地と高地でそれぞれカフェインと偽薬を用いたレースを行わせた。本人にも評価側にも条件を知らせない二重盲検の比較である。高地では全距離のタイムが平均タイムの3.18%に相当する分だけ短くなった。一方、低地の全距離では短縮が見られたものの、通常の有意水準には達していなかった。[9]
カフェイン研究では、約21kmの距離を標高300mと2,900mで滑っていた。低地では中間地点の短縮は平均タイムの0.94%に当たり、有意だったが、全距離の1.7%の短縮は有意水準に達しなかった。高地では中間地点も2.19%短縮し、全距離とともに有意な差が出た。参加者が感じるきつさは、摂取条件にかかわらず低地と高地で同程度だった。タイムの違いと主観的な運動のきつさも、別々に測られた結果なのである。[9]
数字で読むクロスカントリースキーの研究
25か月:育成チームの選手を振り返った体組成・生理指標・成績の解析期間だった。[1]
14人:体組成と滑走の最大速度の関係を調べた男性エリート選手の人数を示す。[10]
12試験:筋力・パワートレーニングなどの系統的レビューに採用された比較試験の数に当たる。[6]
0.56:同レビューで示された、種目に即した競技能力への平均効果量である。[6]
23人:食事と体組成、持久能力などの関係を追った若い女性選手の人数である。[7]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2







