ホットヨガの消費カロリーと汗の科学 体重が減った夜に脂肪まで減ったのか

ホットヨガの後に体重が減ると、脂肪も減ったと思いたくなる。汗による水分の減少、心拍数の上昇、運動中の脂肪利用は同じ意味ではない。系統的レビューと温熱・常温の比較試験から、消費カロリーの実測値、水分補給、長期の変化の読み方を確かめ、暑さとの付き合い方を考える。

レッスンの帰りに体重計に乗ったら、朝より軽い。タオルは重くなり、自分は軽くなった。今日はよく動いたという手応えと、数字が下がった喜びが重なる場面である。しかしホットヨガの直後に起きた体重変化を、体脂肪の減少とそのまま読むことはできない。参加者の水分収支を調べた研究では、汗と飲水の差に伴う体重減少が観察されている。[7]

暑い部屋では、同じ動きでもきつく感じることがある。その感覚は気のせいではない。ただし、心拍数や主観的なきつさが増した比較試験でも、酸素消費から見た運動強度は常温と変わらなかった。[15] 汗、心拍、消費エネルギー、体脂肪。身体の中では関係があっても、測定しているものはそれぞれ異なる。

ヨガ全般と体重・食行動の関係は、ヨガで体重は変わるのか 体組成と食行動の研究から読む、期待できることの境界に譲る。ここで追うのは、ヨガに「暑さ」が加わったときの変化だ。温熱環境ならではの負担と、温熱環境だからこそ得られると期待される効果を、同じ物差しで判定しないことが出発点になる。[1]

公園でグループが集まり屋外でヨガの運動に取り組んでいる様子 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

汗をかいた日の体重は、水分収支を含んでいる

ホットヨガ参加者の水分を調べた観察研究は、減量の達成度ではなく、身体から出た水分と入った水分に注目している。男女21人、平均年齢33.0歳の参加者が、平均38.7℃の環境で1時間のクラスを受けた。発汗量は平均0.9±0.6 L/時、飲水量は平均0.2±0.2 L/時だった。運動後の体重は平均0.9±0.6%減っていた。[7]

この数字を見て「脂肪がそれだけ落ちた」と考えるのは、測定の目的を取り違えている。この研究は、前後の体重や飲水量などから水分収支を評価し、発汗率を計算している。[7] 参加者のおよそ半数は体重の1%以上を失ったが、それは水分管理上の観察結果として読むべき数字だ。[7]

同じ研究では、飲み物を利用できる環境でも、33%の参加者がクラス中に何も飲まなかった。飲めることと、実際に飲むことは別である。また、参加者は自分の汗の量を過小評価していた。[7] 汗は目に見える一方、参加者の見積もりと実測値の間には有意な差があった。[7]

開始前の水分状態にも差があった。尿の比重で評価すると、十分な水分状態で参加を始めた人は76%で、残る約4分の1はその条件を満たしていなかった。[7] 水分への対応は、汗をかいてから始めるだけでは遅れる。参加する日は開始前に水を飲んでおき、クラス中も少しずつ飲む。飲み物を用意しただけで終わらず、実際に口にするところまでを準備に含めたい。

暑熱環境での運動を扱う生理学のレビューでも、身体の深部の温度上昇と、発汗による体内の水分喪失が取り上げられている。暑さは水分不足やナトリウムの乱れ、場合によっては運動時の熱による健康障害につながりうる。[8] 直後の体重が軽いという結果には、水分の変化も含まれる。水分の出入りを確認するきっかけにもなる。

系統的レビューでは、ホットヨガの実践後に体調が悪化した症例報告もあり、注意が必要だとされている。[1] 症例報告だけでは、体調悪化がどの程度の頻度で起きるかは分からない。暑熱のレビューも、水分不足や熱による健康障害の危険を挙げている。[8] これらを踏まえた安全上の対応として、めまい・吐き気・頭痛などで気分が悪くなったら、レッスンを中断し、暑い部屋を出て涼しい場所で休み、指導者に伝える。症状が続くなら医師に相談する。持病や服薬がある人は、参加前に医師へ参加の可否や水分管理を確かめる。飲水の観察研究は症状ごとの中断基準を検証したものではない。[7]

体重を軽く表示することと、体脂肪を長期に減らすことを分けて考えたい。汗を減量のノルマにすると、水分を失った状態に点数を付けることになる。水分研究では発汗量と飲水量に個人差があり、個別の水分管理の必要性が示されている。[7]

この観察研究は、汗に含まれるナトリウムもパッチを用いて測定した。平均濃度は49.1±19.2 mmol/Lで、汗の量だけでなく、その成分も測定対象だった。[7] 暑熱のレビューがナトリウムの乱れを取り上げるのも、体内の水分管理が体重の数字だけで完結しないためである。[8] ここから補給する塩分の量を自分で算出するより、まずクラス前からの飲水と、途中での体調の確認を行動にしたい。

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心拍数が高くても、消費カロリーが高いとは限らない

心拍数は心臓が拍動する頻度である。運動のきつさを知る手がかりになるが、暑さの加わる条件では、酸素消費に基づく強度と一致しないことがある。2018年の比較試験では、14人が同じ約20分のヨガを、暑い環境と常温に近い環境で行った。同じ参加者が両条件を経験する交差試験で、条件の順序は無作為に設定された。[15]

室温は、暑い条件では35.3±0.8℃、常温側では22.1±0.2℃に設定された。最大酸素消費量に対する運動中の酸素消費の割合は、暑い側が30.9±2.3%、常温側が30.5±1.8%で、有意差はなかった。一方、最大心拍数に対する割合は67.0±2.3%と60.8±1.9%で、暑い側が高かった。主観的なきつさの評点にも、暑い側で高くなる差が認められた。[15]

酸素消費とは、身体が取り込んで使う酸素の量である。この研究では、それを運動強度の客観的な指標として測った。同じポーズを同じ時間行っていても、心拍と酸素消費が別の答えを返した点が重要だ。研究者は、暑い環境で循環系への負担やきつさの感覚が加わる一方、酸素消費は似ていたと報告している。[15]

つまり「今日は心拍が上がった」という記録は、身体にかかった負担の記録として意味がある。しかし、そこから直ちに「今日は脂肪を多く減らした」と翻訳することはできない。測定は約20分の実践中の酸素消費と心拍数、それに主観的なきつさを対象としていた。[15] 時計が示す数字を読むときにも、運動の内容と室内環境を一緒に思い出す余地がある。

心拍数については、条件間で似た結果を報告した研究もある。経験者16人が同じ1時間のヨガを40℃と23.3℃で行った2020年の研究では、酸素消費、心拍数、消費カロリーのいずれにも条件間の有意差はなかった。[2] 短い試験と長い試験では、参加者や温度などの条件も違う。短時間の試験では一定強度の同じヨガを比較し、1時間の試験では標準化した一連のポーズを比較していた。[2][15]

この違いを含めて見ると、きつさは無視してよいものでも、カロリーへ機械的に換算してよいものでもない。身体が感じた負担として受け止めつつ、減量効果については別の測定が必要になる。[2][15] 呼吸や姿勢に集中できたかという体験と、エネルギーの実測値は、競わせずに並べておけばよい。

実測されたカロリーには幅と条件がある

2014年の研究は、標準化した90分のホットヨガを実施し、呼気を集めて酸素摂取から消費エネルギーを求めた。参加者は18〜57歳の男女24人で、女性19人、男性5人だった。平均消費エネルギーは286±72 kcal、参加者間の範囲は179〜478 kcalだった。「±72」は標準偏差で、測定値のばらつきを表す。[4]

平均の286 kcalだけを大きく掲げると、範囲の広さが消える。実測値が参加者によって違っていたことも研究の結果である。また、この数字は研究で用いた90分の内容に対する値であり、ホットヨガという名前の付いたすべてのクラスの保証値ではない。[4] 時間やポーズが異なるレッスンの消費を知るには、その内容に応じた測定が必要になる。

経験の違いもあった。研究では参加経験20回以上を経験者、それ未満を初心者に分類している。体重当たりの消費エネルギーは、初心者が平均3.7±0.5 kcal/kg、経験者が4.7±0.8 kcal/kgだった。発汗率も初心者0.6±0.2 kg/時、経験者1.1±0.5 kg/時と異なっていた。[4] 同じ場にいる人の汗を見ても、自分の消費エネルギーは分からない。

ここで気をつけたいのは、経験者の汗が多かったことを「汗を増やせば経験者のように消費できる」と逆向きに読むことである。この比較は経験を割り付けた試験ではなく、経験の異なる人の結果を比べている。研究では経験の区分ごとに、心拍数、終了時の深部体温、発汗率にも有意な差があった。[4] 経験の違いは、消費だけでなく身体が受けた負担の違いとしても現れていた。

研究者は、ポーズを軽度から中等度の強度に分類し、繰り返し実践した場合には理論上、体重維持や減量に利用できる可能性を述べている。[4] 「理論上」という留保を落とすと、短期の生理測定が長期の減量試験に化ける。測定の単位は1回のクラスであり、継続した場合の体重変化は今後の問いとして残っている。

さらに、この研究だけでは常温より消費が多いかは決まらない。温度の上乗せ分を知りたいなら、同じ内容を常温でも行う比較が必要だ。そうした比較を行った2020年の研究では、温熱環境による消費エネルギーの有意な増加は認められなかった。[2] 実測値を知る問いと、暑さが追加の消費を生むかという問いは、別の研究設計を求める。

対象の違いにも目を向けたい。温度を比較した1時間の研究はヨガ経験者で、平均の体格指数は22.6±1.8 kg/m²だった。[2] 体格指数はこの研究が対象の体格を記述するために示した値である。女性14人、男性2人という構成も、この比較の背景である。[2] 初めてヨガをする人を集めた試験とは異なる。経験者が決まったポーズを行ったときの数値として、参加者の条件ごと受け取りたい。

読者が論文から持ち帰れるのは、自分用の正確なカロリー表よりも、数字を読む順序だ。まず対象と運動内容を確かめ、次に実測された幅を見て、それから常温との比較の有無を確認する。これなら「暑い」という印象だけが、測定結果より先に結論を決めることを防げる。[2][4]

数字で読むホットヨガの暑さと消費

43研究・942人:ホットヨガの系統的レビューに含まれた規模。参加者の76%が女性だった。[1]

90分で平均286 kcal:男女24人の実測値。範囲は179〜478 kcalで、個人差を含む。[4]

14人・約20分:同じヨガを暑い環境と常温側で比較。酸素消費に基づく強度は変わらなかった。[15]

1時間に平均0.9 L:男女21人の発汗量。平均飲水量は0.2 Lだった。[7]

0.05から0.09 g/分:経験者16人の比較で、常温側から暑い側へ脂肪の酸化量が増えた。ただし消費カロリーには有意差がなかった。[2]

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