生活習慣の減量で、始めて1〜3か月の体重の変化は1年後の結果やリバウンドをどこまで言い当てるのか。2,327人の試験が引いた2%と3%の線、12週目の数字だけで見分けた式、予測から外れた人、減りが小さかった人に研究が試した手の変え方を数字で確かめる。
2か月目までに体重の3%を減らせなかった人のうち、1年後に10%の減量に届いたのは8.2%だった[3]。2型糖尿病のある大人2,327人が、毎週の行動の講習を受けた大きな試験の数字である[3]。
この数字は、二通りに読める。始めて2か月の体重の動きで、1年後の行方がかなりの確かさで見えてしまうという読み方。もう一つは、見えた時点でまだ10か月が残っていて、手を打つ余地があるという読み方だ。研究者が早い時期の体重にこだわってきたのは、後者のためである。
減らす速さそのもの、つまり急いで減らすのとゆっくり減らすのとでどちらが戻りにくいかという問いは、「急速減量はリバウンドするのか ゆっくり痩せる安心感を比較試験から見直す」の記事に譲る。始める前の特徴と途中の変化を並べ、何が結果を言い当てるかを広く見渡すのは「減量成功の予測因子はどこまで当たるか 始める前の特徴と途中の変化を分けて考える」の記事が受け持つ。ここで扱うのは、始めて数週の体重の変化に引かれた線の高さ、その線から外れた人、そして早い時期の数字を見て手を変えるという考えを、研究がどこまで形にしたかである。

1か月目の2%と、2か月目の3%は何を分けたか
冒頭の試験はLook AHEADと呼ばれ、強化した生活介入の群に割り付けられた2,327人のデータが使われた[3]。参加者の体格の目安であるBMI(体重kgを身長mの2乗で割った値)は平均35.8で、全員が、身体活動を増やし摂取カロリーを減らすための行動の講習を毎週受けた[3]。研究者は1か月目、2か月目、1年目の体重の変化を計算し、早い時期にいくつかの線を引いて、1年後の結果と照らし合わせている[3]。
1か月目に2%以上減らせなかった人は、2%以上減らした人と比べて、1年後に10%以上の減量に届かない見込みが5.6倍(95%信頼区間4.5〜7.0)だった[3]。95%信頼区間は、同じ試験を何度もくり返したときに、倍率がおおむね収まると見込める幅を表す。線を2か月目の3%に引き直すと、倍率は11.6倍(95%信頼区間8.6〜15.6)まで広がった[3]。
1か月目の2%に届かなかった人のうち、1年後に10%の減量に届いたのは15.2%で、2か月目の3%に届かなかった人では8.2%にとどまる[3]。線を1か月後ろへずらし、高さも3%に上げると、分け方はずっと鋭くなった。1か月目の2%より、2か月目の3%という線のほうが、その人の1年をよく分けたことになる。
論文は、最初の数か月を、うまくいっていない人を見つけて立て直しの手を打つのに向いた時期だと位置づけた[3]。ただし、この分析が示したのは結びつきの強さである。立て直しの手を実際に打って1年後が変わったかどうかまでは、ここでは確かめられていない。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
12週目の数字ひとつで、1年後を見分けた式
試験の外の、ふつうの診療の場でも同じ形が出るのか。大きな医療機関の電子カルテから、2010〜2017年に12か月の生活改善プログラムへ参加した947人を拾い出した研究がある[1]。ここでの「効かなかった」は、開始から12か月の時点で体重が増えていたか、まったく減っていなかったことを指し、30%が当てはまった[1]。
研究者は、開始から2〜12週の体重の変化率を手がかりに、1年後に効かなかった人を早く見分ける式を作った[1]。年齢などの属性や開始時の病気の情報も候補に入れて試したが、最もよく見分けた式に残ったのは、12週目の体重の変化率ひとつだった[1]。式の確かさは、データを10に分け、作る部分と試す部分を入れ替えながら確かめる方法で調べられている[1]。
見分ける力の目安になる曲線下面積という指標は、0.789だった[1]。この物差しは、0.5なら当てずっぽうと同じ、1なら完全に見分けることを表す。0.789は、その間で1の側にかなり寄った値である。論文は、医療者がこの方法を使えば、追加の手や別の手が要りそうな人を見つけやすくなると結論した[1]。
開始時の年齢や病気の情報より、始めてからの12週の自分の体重のほうが、1年後をよく語った。体重計に乗るという誰でもできる測り方が、ここでは一番の手がかりになっている。

対面でも画面越しでも、4週目に分かれ道があった
最初の1か月の重みは、講習の形を変えても残るのか。12週のインターネットの減量プログラムに参加した181人を追った研究がある[7]。参加者のBMIは平均33.4で、83.1%が女性だった[7]。毎週の動画の講義に、減量とカロリーと身体活動の目標が添えられ、参加者は週に1回その記録をサイトに入力して、一人ひとりに合わせた助言を受けた[7]。
4週目の減量が2.0%未満だった人を「早い時期の反応が弱い人」、2.0%以上を「反応した人」と分けると、3か月の時点の減量は1.3%と6.3%で、大きく開いた[7]。6か月では1.7%と5.8%、12か月では0.05%と2.7%という差である[7]。5%以上の減量に届く見込み(オッズ)は、反応が弱かった人のほうが3か月で8.5分の1(95%信頼区間3.3〜22.1)、6か月で3.4分の1(同1.4〜8.3)と低かった[7]。
12か月になると、見込みの差は2.6倍で、信頼区間は0.93〜7.4と1をまたいだ[7]。統計的に確かな差とは言い切れない幅に入ったことになる。反応した人の平均の減量幅も、3か月目から12か月目にかけて半分より小さく縮んでいた[7]。早く反応した人も、講習が終わった後の戻りからは逃れられていない。
職場で行われた試験も、同じ方向を指す。米国のオハイオ州立大学で、糖尿病の手前の段階(前糖尿病)にある18〜65歳、BMI25〜50の人を対象に、糖尿病予防の指導法をもとにした16週の集団の講習を行った試験だ[5]。講習を受けた群の32人で、5週目の減量率は、4か月目と7か月目の減量率とはっきり結びついていた[5]。1か月目に2.5%の線を越えなかった人のうち、4か月目に5%以上減っていたのは11.1%、7か月目では12.5%にすぎない[5]。32人という小さな規模ながら、線の位置も結果の形も、2,327人の試験とよく似ている。
減りが小さかった人は、その後も遅いのか
早い時期の減りが小さかった人は、その後も減り方が遅いのか。それとも、出遅れた分を取り戻せないまま、ほかの人と同じ速さで進むだけなのか。この違いは、手を打つべきかどうかの判断に直結する。
肥満のある170人(BMIの平均40.8、87.6%が女性)が、毎週の生活指導と食事の置き換え(1日の一部の食事を決められた食品に替える方法)で減量した試験は、この問いに答えている[2]。最初の4週の減量は平均3.6%で、その大きさは14週目までの総減量をよく予測し、決定係数は0.61だった[2]。14週の減量のばらつきの6割ほどを、最初の4週の減り方で説明できたという意味だ。
さらに、最初の4週の減りが大きかった人ほど、その後の9週の減る速さも速かった[2]。減りの小さかった人は、出遅れを抱えたまま同じ速さで進んだのではなく、その後も遅かったのである。論文は、早い時期の減りが小さい人には治療のやり方を変えるという勧めを、この結果が支持すると結論した[2]。
kgで見るか割合で見るかにも、注意が要る。ヨーロッパの8つの施設で、過体重と肥満の932人が1日800kcalの低カロリー食を8週続けた研究では、開始時の特徴の中で、8週目の減量の大きさと最も強く相関したのは開始時の体重だった(順位相関係数0.62)[9]。もともと重い人ほど、kgでは多く減る。
施設の違いをそろえ、いくつもの要素を同時に入れた式に、8週目の減量を予測する確かな因子として最後まで残ったのは、開始時の体重、1週目の減り、3週目の減りの3つだった[9]。この式で、8週目の減量のばらつきの68%を説明できている[9]。1週目に2.6kg以上減ったことが、8週で10kg以上減る人を見分ける最適な線とされ、著者らは、開始時の体重と1週目・3週目の減りを、低カロリー食への反応を早く見る目印に使えるかもしれないと結論した[9]。この食事の条件では、最初の1週の数字も早い信号になっていたことになる。ただし、1日800kcalという、ふつうの食卓とはかけ離れた条件で得られた線であることは、添えておく。
数字で読む早い時期の体重
5.6倍:1か月目に2%減らせなかった人が、1年後に10%の減量に届かない見込みの大きさ[3]。
11.6倍:同じ試験で、線を2か月目の3%に引き直したときの見込みの大きさ[3]。
0.789:12週目の体重の変化率ひとつで、1年後に効かなかった人を見分けた力の目安[1]。
30%:ふつうの診療の場の12か月のプログラムで、体重が増えたか減らなかった人の割合[1]。
0.61:最初の4週の減量で、14週目までの総減量のばらつきを説明できた割合を表す決定係数[2]。
0.62:800kcalの食事を8週続けた932人で、開始時の体重と8週目の減量の相関の強さ[9]。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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