痩せると脂肪細胞は減るのか縮むのか 数は変わらず、お腹の細胞は運動を足すと縮んだ

体脂肪の量は脂肪細胞の大きさと数で決まる。人の皮下脂肪を追った研究では、太ると細胞は大きくなり数も増えたが、痩せても数は減らなかった。35件の研究の分析、運動を足した減量の試験、細胞の大きさと糖尿病の追跡から、減量で細胞に起きることを確かめる。

「脂肪が減った」という一言には、少なくとも3つのものが混ざっている。指でつまめる皮下の層、つまり脂肪組織。その組織を形づくる個々の脂肪細胞。そして細胞の中にためられた油である。日常の会話ではどれも「脂肪」で済んでしまうが、細胞の側から見ると、この3つは別々に動く。

白い脂肪組織の量は、脂肪細胞の大きさと数の2つで決まる[16]。人の皮下脂肪を前向きに調べた研究では、体重が増えると細胞は大きくなり、数も増えた[16]。ところが体重が減ったあとも、数は変わっていなかった[16]。「痩せて脂肪細胞が減った」という言い方は、少なくとも細胞の数については当たっていない。体重とともに動いたのは、主に個々の細胞の大きさのほうである[10]。

では、細胞が大きいこと、小さくなることは、体にとって何を意味するのか。お腹の皮下の細胞が大きい人ほど、体脂肪率とは別に、のちに2型糖尿病になりやすかった追跡研究がある[8][17]。寒さで熱をつくる褐色脂肪の話は「褐色脂肪は寒さで働く 消費カロリーの増加が減量の約束にならない理由を読む」に譲り、ここでは脂肪をためる白い脂肪細胞の数と大きさだけを追う。

脂肪の量は、大きさと数のかけ算で決まる

組織の重さを左右するのは、細胞1つの大きさと、細胞の総数である[16]。どちらが増えても組織は重くなる。同じ重さの脂肪組織でも、大きな細胞が少しあるのか、小さな細胞がたくさんあるのかで、中身は違う。どちらの形で増えるかは、体の場所によっても違うらしい。

数のほうが効いている場所もある。お腹の中で胃から前掛けのように垂れ下がる大網は、内臓脂肪の一部で、手術で丸ごと取り出せる。減量手術と同時に大網を取り出した肥満の患者55人では、その重さは平均0.6kgで、CTやDXA(エックス線で体の組成を測る装置)で推定した内臓脂肪全体の量と相関していた(相関係数0.48〜0.7)[19]。大網の重さの個人差は、細胞の平均の大きさと細胞の総数でほとんど説明でき、段階的に要因を足していく分析では、数の寄与が62%、大きさの寄与が35%だった[19]。著者らは、肥満で内臓脂肪が増えるのは、主に細胞が増えることによると読んでいる[19]。

同じ人の中でも、場所が違えば細胞の振る舞いは違う。亡くなった人43人の解剖の際に4か所の脂肪を取った研究では、鎖骨のあたりの皮下脂肪、心臓を包む膜の外側の脂肪、虫垂のまわりの腸間膜の脂肪で、BMIが高い人ほど細胞が大きかった(相関係数0.5829〜0.5893)[4]。ところが心臓の表面に直接つく心外膜の脂肪だけは、細胞の大きさとBMIの間に相関がなかった(相関係数0.1242)[4]。年齢と性別で調整しても、この結果は変わらなかった[4]。体重が増えれば全身の細胞が一様に膨らむ、という絵は、少なくともこの解剖の結果とは合わない。

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太るときは数も増え、痩せても数は戻らない

脂肪細胞は、一度できたら同じものが一生居座るわけでもない。人の体で入れ替わる細胞の量全体のうち、脂肪細胞の入れ替わりは4%を占めるとされる[1]。2025年の総説によれば、肥満では脂肪組織の環境が変わって細胞が死にやすくなる[1]。死んだ細胞を片づけるために、免疫の細胞であるマクロファージが集まり、死んだ細胞を王冠のように取り囲む構造をつくる[1]。そのあと、組織の中に控える幹細胞や前駆細胞から新しい脂肪細胞が生まれ、空いた場所を埋める[1]。死ぬ、片づける、新しくつくる、の3段階が組になって回っている。マクロファージが集まるこの場面は脂肪組織の炎症の話にもつながっていて、炎症の目印が減量で全身でどう動くかは「減量で炎症はおさまるのか 1年でCRPが4割下がった試験と、10%痩せても動かなかったIL-6」が扱う。

脂肪細胞の模式図と顕微鏡写真を左右に並べ、ためた脂質と核の位置を示した図(スペイン語の注記)
脂肪細胞の模式図と顕微鏡写真を左右に並べ、ためた脂質と核の位置を示した図(スペイン語の注記)
写真: OpenStax College de la traducción Lorito987 / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

入れ替わりがあるのに、数はどう決まるのか。人の皮下脂肪を前向きに追った研究は、体重の増加で細胞の大きさも数も増える一方、体重が減っても数は変わらないことを示した[16]。細胞は死んでも補われる、という先の総説の描く仕組みと、この観察は食い違わない[1][16]。

同じ研究は、細胞の数の変化と足並みをそろえて働きが変わる遺伝子を79個見つけた[16]。その中の成長因子の1つ、TGFβ3は、脂肪細胞のもとになる前駆細胞を増やし、試験管の中で脂肪細胞へ育つ細胞の数を増やした[16]。この遺伝子を半分しか持たないマウスでは、前駆細胞の増え方が鈍く、脂肪細胞が大きく膨らみ、糖の処理も悪くなっていた[16]。新しい細胞をつくる力が弱いと、ためる仕事を今ある細胞が膨らんで引き受ける。そういう筋書きである。

マウスの結果を人にそのまま重ねることはできない。ただ、2015年の総説も、人の内臓脂肪で細胞が大きくなっていることは、皮下脂肪で細胞を増やす力が限られていることの目印かもしれない、と述べている[14]。数が増えることは悪いこと、大きくなることも悪いこと、と単純に分けられないのが、脂肪細胞の扱いにくいところだ。

35件の研究を並べると、細胞は縮む向きにそろっていた

減量の前後で脂肪細胞の大きさを測った研究を集め、何が縮み方を左右するかを調べた系統的レビューとメタ回帰分析がある。メタ回帰分析は、多くの研究の結果を並べ、研究ごとの条件の違いと結果の違いの関係を探る方法だ。条件を満たした研究は35件で、生活習慣の改善による減量と手術による減量の両方を含んでいた[10]。

主な解析では、体重が1.0%減るごとに、脂肪細胞の大きさは0.64%小さくなっていた[10]。上半身の細胞は、下半身の細胞より5%多く縮んでいた[10]。年齢、性別、減量の方法(手術か生活習慣か)は、縮み方に独立した影響を示さなかった[10]。ただし、この0.64%は多くの研究を並べたときの傾きで、一人ひとりの細胞がどれだけ縮むかの見込みとして読むものではない。しかも、生活習慣による減量の研究だけに絞って解析し直すと、体重の減り方と縮み方の関係も、上半身と下半身の差も、統計的に有意ではなくなった[10]。食事と運動で痩せようとする多くの人にとっては、傾きの数字よりも、縮むという向きのほうが確かな情報である。

著者らの結論は、肥満の人の減量は一貫して細胞の縮小を伴い、それは上半身の細胞で目立つ、というものだ[10]。そのうえで、縮んだ細胞が病気の危険の低下とどこまで重なるのかは、まだはっきりしないと書いている[10]。

細胞の縮み方を細かく見た小さな試験もある。健康な成人10人(男性6人、女性4人、平均33歳、BMIは平均35)が6週間カロリーを制限し、その前後にお腹と太ももの皮下脂肪を少し取った[9]。脂肪組織には、大きな細胞の群れと小さな細胞の群れの2つの山がある[9]。6週間の後、お腹の大きな細胞の直径は13.2μm縮み、2つの山の間の谷の位置も7.3μm小さい側へ動いた[9]。一方、小さな細胞が占める割合は変わらず、脂肪の量の減り方とも結びついていなかった[9]。縮んだのは大きな細胞の側だった。

この試験は、取った脂肪組織を燃やして熱量を測る、という言葉どおりの「脂肪燃焼」の測定までしている[9]。お腹の脂肪組織1gあたりの熱量は、減量の前後で変わらなかった[9]。1gあたりの熱量で見るかぎり、組織の中身が薄まったわけではなく、組織そのものが小さくなっていた。大きな細胞の縮み方は、脂肪の量の減り方や腹囲の減り方と相関し、お腹の大きな細胞の縮み方は、血中のレプチンの変化とも相関した(反復測定の相関係数0.77)[9]。著者らは、大きな脂肪細胞を減量の標的として考えるべきだとしている[9]。10人という小ささは割り引いて読む必要があるが、平均の大きさだけでは見えない動きを示した点で、ほかの研究にない情報を持っている。脂肪細胞がつくるホルモンのレプチンそのものは「レプチンは多いほど痩せるホルモンなのか 肥満の人で高く、減量で下がる数値の読み方」に詳しい。

数字で読む脂肪細胞

  • 4%:人の体で入れ替わる細胞の量のうち、脂肪細胞が占める割合[1]。
  • 62%と35%:大網の重さの個人差に対する、細胞の数と大きさの寄与[19]。
  • 0.64%:35件の研究を並べた傾きで、体重が1%減るごとに縮んだ脂肪細胞の大きさ。一人ひとりの見込みではない[10]。
  • 13.2μm:6週間のカロリー制限の後に縮んだ、お腹の大きな細胞の直径[9]。
  • 5.8倍:お腹の細胞の大きさの下から10%の位置と90%の位置を比べた、2型糖尿病の起こりやすさの差[8]。

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宮川涼 Founder

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