運動をやめると体はどう戻るか 休止後の筋力と体脂肪、再開で変わること

運動を休むと、鍛えた体はすべて元に戻るのか。休止と再開を調べた研究から、筋力、筋肉の大きさ、歩く力、筋肉内の脂肪が違う動きをすることを確かめる。短い休息と長い中断の違い、体重だけでは見えない変化、忙しい時期に運動との接点を残す考え方を、対象者と期間を添えて整理する。

12週間筋トレを休んでも、鍛えて増えた筋力のすべてが失われるとは限らない。65〜77歳の男性11人を追った研究では、休止で失われたのは筋力増加分の29.9%だった。一方、採取した筋線維の太さはトレーニング前の値に戻っていた。同じ体の中でも、力と太さの戻り方が違ったのである。[8]

ところが、運動をやめた後の研究を並べると、体はそんなに一斉には動かない。筋力の一部が下がっても開始前より高い状態が残る例があり、筋肉の大きさが変わらなくても内部の脂肪を反映する指標が変化する例もある。休止を、鍛えた成果の一括返品として扱うと見落とすことが多い。[5][8][19]

ここで考えるのは、運動から離れた体に何が起こり、再び動き始めると何が変わるかである。やめてしまう理由や意欲の支え方は隣接する運動脱落の記事に譲り、休止期間と測定した項目に目を向けたい。

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休止の長さだけで、戻り方は決まらない

運動の中断に伴う適応の変化を調べるのが、ディトレーニングの研究である。ただし、同じ休止でも、数日間の休息と、月単位で練習から離れることでは研究上の意味が異なる。筋力トレーニングをしている男性の短い休止では成績の改善が見られた一方、より長い完全中断では筋力やパワーの低下が報告されている。[6][10]

短い休息を調べた試験には、筋トレ経験のある男性8人が参加した。それぞれが4週間の筋力トレーニングの後に、およそ3.5日、または5.5日の休止を経験した。最初の測定と休止後を比べると、跳躍の高さと、姿勢を固定して行うベンチプレスの最大の力が改善し、効果量はそれぞれ0.30、0.21だった。研究者は、神経と筋肉の疲労が軽くなる可能性を挙げている。[6]

この結果は、短い休息をただちに衰えと呼ばなくてよい材料になる。一方、運動をやめたこと自体が強くなる原因だとまでは判断できない。比較の起点はトレーニング前であり、運動による向上も含んでいるからだ。休止直前から休止直後へ、すべての指標が上がったという読み方は避けたい。[6]

別の無作為割付試験では、身体活動をしている男性46人が、16週間の重い負荷による筋トレの後、完全中断、運動量の縮小、対照の群に分かれた。完全中断は14人、運動量を縮小する群は11人で、その後の期間は4週間だった。完全中断では最大筋力が6〜9%低下し、腕と脚のパワーは17%、14%低下した。[10]

最大筋力は、どれだけ大きな力を出せるかをみる指標である。パワーは力を出す速さも関わる指標で、この試験では最大筋力より大きく低下した。同じ人の同じ休止でも、測る働きによって減り方が異なったのである。重いものを持てる感覚と、素早く動く感覚を、同じ採点表に押し込まないほうが研究に沿っている。[10]

対して、運動の強度を高く保ちながら量を減らす群では、腕と脚の最大筋力がさらに各2%向上した。パワーの追加の変化はなかった。これは競技的な筋トレの条件で得られた結果であり、忙しい人全員に高強度運動を勧める処方にはできない。それでも、完全に中断することと量を調整して続けることを、別の選択肢として考える根拠にはなる。[10]

休めばすぐ弱くなる、という心配と、休んでも何も変わらない、という安心のどちらにも、研究はそのまま当てはまらない。短い休息が含む疲労の変化と、長い中断が含む適応の変化を分けることが、戻り方を考える出発点になる。[6][10]

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筋肉の大きさと筋力は、一緒には戻らない

筋力が下がったと聞くと、筋肉そのものが消えていく映像を思い浮かべがちだ。しかし、運動を休んだ研究では、筋肉の太さと力を出す能力の変化が一致しない例がある。筋力だけから筋肉の大きさを逆算するのは難しい。[8][19]

65〜77歳の男性11人を追った研究では、24週間の筋トレを含む試験を終えた後、12週間の休止と8週間の再トレーニングを調べた。最初の試験には成長ホルモン投与群とプラセボ群が含まれ、休止と再開の期間には成長ホルモンを投与していない。この経緯も、普通の教室参加者へ結果を当てはめる際の条件になる。[8]

最初のトレーニングで筋力は平均40.4%増え、休止で失ったのは、その増加分の29.9%だった。「29.9%減った」の分母は鍛えて増えた分であり、持っていた筋力全体の約3割を失ったという意味とは異なる。筋力は一部が低下したが、増加分を全部失ったわけではなかった。[8]

筋肉の一部を採取して調べた結果では、筋線維の断面積は休止後にトレーニング前の値へ戻った。つまり、測定された筋線維の太さには元に戻る変化がありながら、筋力には残った向上があった。このずれから研究者は、神経の適応が、力の保持と再獲得に関わると考察している。[8]

再開後の8週間で、筋力はトレーニング終了時の水準に戻った。一方、筋線維の形態には有意な変化がなかった。力が戻った理由を筋肉の肥大だけで説明するのは難しく、再開時には「太さが戻らないなら成果がない」という判断も早すぎる。[8]

働く世代を含む別の無作為割付試験では、運動習慣のない22〜49歳の健康な成人32人が、ゆっくりした運動に全身振動を組み合わせる群と、振動なしの群に分かれた。13週間の運動の後に5週間休止すると、振動を加えた群では跳躍や膝を伸ばす筋力の一部が低下した。それでも休止後のすべての測定項目は、両群とも開始前より良好だった。[5]

振動を組み合わせた群の休止後の低下率は、跳躍の高さで4.8%、姿勢を固定して膝を伸ばす筋力で10.2%、膝を伸ばしながら力を出す筋力で17.2%だった。振動なしの群では、この3項目の有意な低下は見られなかった。また、両群の休止後の成績は、運動開始から7週時点の成績と有意に違わなかった。休止前の運動条件も、何をどの程度失うかを考える手掛かりになる。[5]

運動後に上積みされた差が薄れることと、運動前まで全部戻ることは区別したい。この試験では、振動を加えた群の優位性は休止後に有意でなくなったが、両群に開始前からの改善が残った。高かった成績から下がったという見方だけでは、残っているものが見えにくい。[5]

こうした研究は、休むことへの免罪符にも、休んだ人への採点にも向かない。対象や運動の種類が異なり、どの人にも同じ割合が残るとはいえないからだ。使い道は、休止を失敗の判定にせず、現在の筋力と動きから再開の条件を考えることである。[5][8]

体重が同じでも、体の中は同じとは限らない

ダイエット中の休止では、体重計の数字が最も気になるかもしれない。だが、体重、筋肉の量、筋肉内の脂肪を反映する指標は、それぞれ違う情報を持つ。筋肉の体積に有意な変化がなくても、内部の状態と筋力が変わった研究がある。[19]

65〜83歳の地域で暮らす健康な男女13人を対象にした研究では、24週間の筋トレ、24週間の休止、12週間の再開後に、太ももの画像と筋力を測った。画像検査では筋肉の密度を表す値を使い、筋肉内の脂肪の状態を間接的に評価している。皮下脂肪の厚さや全身の体脂肪率を、そのまま測った値とは区別しておきたい。[19]

筋力の平均変化は、トレーニング後が48.8%増、休止後が17.6%減、再開後が19.8%増だった。休止では太もも前側の筋肉の密度を表す値が7.7%低下し、再開で5.4%上昇した。一方、筋肉の体積には有意な変化がなかった。研究者は、休止で筋肉への脂肪浸潤が増し、再開で減ったと結論している。[19]

ここから「体脂肪が7.7%増える」と読み替えることはできない。変化したのは画像の指標であり、全身の体脂肪の増加率とは単位も対象も違う。体重計に筋肉の内部事情まで答えてもらうのは、少し業務の範囲が広すぎる。[19]

画像研究で使われたのは、太ももを断面として捉える検査である。前側の筋肉に加え、後ろ側の筋肉でも密度を表す値は休止後に低下し、再開後に上昇した。筋肉の量を保つことと、内部の組成を保つことを別々に評価すると、同じ脚でも見える変化が増える。家庭でこの検査を再現する必要はなく、筋肉量という数字だけに評価を任せないための知識として役立つ。[19]

太もも後ろ側の筋肉では、密度の指標は24週間の休止で11.9%低下し、12週間の再開で5.5%上昇した。前側と後ろ側で変化率は異なり、再開後の増加率が休止時の低下率と同じになるわけでもなかった。なお、この研究のトレーニングと再開後の運動は、ともに週2回行われた。[19]

数字で読む運動の休止と再開

4週間の完全中断:身体活動のある男性の試験で最大筋力が6〜9%低下した。[10]

12週間の休止:高齢男性で失われたのは、先行する筋トレによる筋力増加分の29.9%だった。[8]

8週間の再開:同じ高齢男性の研究で、筋力は以前のトレーニング終了時の水準に戻った。[8]

24週間の休止:高齢男女の研究で筋力は平均17.6%低下し、筋肉の体積に有意な変化はなかった。[19]

12週間の再開:同じ研究で筋力は平均19.8%増え、画像による筋肉密度の指標も改善した。[19]

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