COPDと体重管理 息切れがある人の減量で先に確かめたい筋肉と栄養の問題

COPDでは、体重が軽いほど健康とは限らない。死亡率をまとめた研究、日本人の体重変化、筋肉や栄養状態、歩く力の調査を照らし合わせ、意図しない体重減少と計画的な減量を分ける。肥満が有利に見える結果の読み方と、息切れのある人が減量を始める前に医師と確かめたい点を整理する。

食事を変えた覚えはないのに、服が緩くなっていく。息切れに加えて体重も減ってきたとき、喜んでよいのか迷うことがある。息切れのある肺の病気を抱えているなら、その変化をダイエットの成功として片づけない視点が大切だ。日本人のCOPD患者を追った研究では、出発点の体格とは別に、経年的な体重減少がその後の死亡リスクと関連していた。[17]

COPDは慢性閉塞性肺疾患のことで、空気の通りにくさが十分には元に戻らない特徴を持つ。肺の検査値だけでなく、体格や息切れ、運動する力も将来の見通しに関係する病気である。[4] それでも「体重を減らす」という言葉だけは、健康づくりの万能の合言葉のように届いてしまう。

ここで考えるのは、減った重さに拍手する前の判断だ。死亡率との関係、歩く力との関係、栄養状態との関係を分けて見ていく。ぜんそくや一般的な呼吸法の話とは切り口を変え、COPDのある人にとって体重の増減が何を意味するのかに焦点を絞る。

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「太めの人ほど長生き」と減量の効果は別の問いだ

Tendaらの系統的レビューとメタ分析は、COPD患者を対象とする120研究、計1,053,272人を集約した。複数の研究をまとめて体格と死亡率の関係を検討したもので、低体重は死亡リスクの上昇、過体重や肥満は低下と関連していた。ただし、関係は右下がりに続くのではなく、低い側と高い側で不利になるU字形だった。[10]

体格の指標であるBMIと全死亡の関係では、曲線の折り返しに相当する値が28.75kg/m²、相対リスクが0.83、95%信頼区間が0.80〜0.86と報告された。BMIは体重と身長から体格を表す指標で、ここでは全死亡との関連を曲線として捉えている。[10]

呼吸器の病気による死亡と心血管の病気による死亡では、曲線の折り返しも異なっていた。全死亡ではBMIが35.25kg/m²を超えると、低い死亡リスクとの関連が失われたとされる。呼吸器死亡では30.25kg/m²、心血管死亡では27.5kg/m²が折り返しに相当し、相対リスクはそれぞれ0.51と0.76だった。95%信頼区間は順に0.40〜0.65、0.64〜0.91である。[10]

こうした結果は「肥満パラドックス」と呼ばれる。肥満がある集団で、ある病気の経過が有利に見える現象を指す。Speltaらのレビューは、病気の重さや体組成の違いに加え、意図しない体重減少が関係を逆向きに見せる可能性を挙げている。このレビューでは、肥満が有利に見える傾向は気道の閉塞が重い人ほど目立つとされる。病気が進んで痩せた人を含めて比べると、太っていることの利益が大きく見えるかもしれない。[19]

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日本人では出発点より、その後の体重の動きにも目を向ける

Abeらは北海道のCOPD患者279人について、最初の5年間のデータから年間の体重変化を計算し、その後の経過との関係を調べた。さらに京都大学の247人の集団でも、その関連を確かめた。いずれも患者を追跡する観察研究である。[17]

北海道の解析では、年間の変化が−0.17kg未満の群、−0.17〜0.20kgの群、0.20kgを超える群に分けている。体重が減る群は、ほかの群より死亡の経過が不良だった一方、開始時のBMIには群間差がなかった。体重変化はほかの要因を考慮した解析でも全死亡と関連し、別の集団でも確認された。[17]

この分類は、最初の5年間の年間体重変化の四分位をもとに作られた。単発の測定よりも、複数年にわたる体重の推移を評価の中心に置いた研究である。[17]

むしろ持ち帰りたいのは、現在の体重を点で見るだけでは足りないという発想である。診察時に体格が似ている人同士でも、それまで体重を保っていたのか、少しずつ失ってきたのかで情報が変わる。健診票の同じ欄に並ぶ数字にも、過去からの方向がある。[17]

診察では、体重の方向に加えて、食事を変えた時期と生活の変化を伝えると、増減の背景を共有しやすい。

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同じ重さでも、栄養と体の中身は同じにならない

体重を保っていれば栄養状態も安心、という見方にも穴がある。StephensonらはCOPD外来患者86人の診療記録を調べ、体格、除脂肪量の指標、栄養状態を評価する質問票を比べた。対象の年齢中央値は71.5歳で、重いCOPDと症状の負担がある患者集団だった。[11]

低いBMIの人は28%、低い除脂肪量指数の人は27%いた。一方、栄養評価では22%が低栄養、43%が低栄養のリスクありと分類された。体格が正常または高い人に限っても、55%が低栄養またはそのリスクありに該当した。[11] 見た目のふっくら感と、食事や栄養の評価は一致しないのである。

この外来調査では、BMIが正常または高い人で除脂肪量指数が低かった割合は5%だった。栄養評価の質問票は、BMIと中程度の相関を示し、BMIや除脂肪量指数より多くの低栄養患者を見つけた。体格と体組成は強く相関する一方、質問票が拾う情報とは重なり方が異なる。さらに質問票による評価は、肺機能でみた病気の重さや、症状が生活に及ぼす負担とも関連していた。[11]

除脂肪量は脂肪以外の体の成分を捉えるもので、筋肉だけを直接量った値とは区別して扱いたい。Slindeらは、重症COPD患者86人の体組成を電気的な測定法で評価し、ほぼ6年の平均追跡期間における死亡との関係を調べた。除脂肪量指数は、年齢や性別などとともに、ほかの変数を考慮した後も予後の予測に関係していた。[3]

この研究の患者は、1年間の多職種によるリハビリテーションに参加していた。追跡中に亡くなったのは47人、55%だった。単変量の解析では、高齢であること、参加前年の入院日数が多いこと、男性であることが死亡リスクの高さと関連している。反対に、基準に対する体重の割合、除脂肪量指数、肺機能、6分間歩行距離が高いほど死亡リスクは低かった。複数の変数を同時に扱った解析でも有意な予測因子として残ったのが、性別、年齢、除脂肪量指数である。[3]

外来の栄養評価は、医療者が複数の情報から判断するための材料になる。体格だけでは拾えない問題があり、医師による評価に食事の状況や体組成の視点を加える意味がある、という話である。減量を希望するときにも、食事を削る前に、何を保つ必要がある体なのかを確かめる順番が生まれる。[3][11]

数字で読むCOPDと体重の研究

120研究・1,053,272人:BMIと死亡率の関連を検討した研究の集約規模である。[10]

279人と247人:年間の体重変化と予後の関連を確かめた、日本の別々の患者集団である。[17]

55%:重症例を多く含む外来調査で、体格が正常または高くても栄養評価上の問題があった割合である。[11]

オッズ比1.8:COPDのある人で肥満と歩行機能低下が関連した調整後オッズ比。95%信頼区間は1.1〜2.9だった。[15]

0.86:急性増悪で入院した患者の解析で、肥満と院内死亡の関係を調整した後のオッズ比。95%信頼区間は0.75〜1.00で、有意差は認められなかった。[16]

死亡率が低く見えても、歩く力まで有利とは限らない

日常生活では、将来の見通しとともに、今日の動きやすさも切実だ。駅までの移動、買い物、家の中の用事を、どの程度の負担で続けられるかも大事になる。COPDと体重の関係を考えるときには、生存に関する数字と、体を動かす機能に関する数字を別々に見る必要がある。[10][15]

KatzらはCOPDのある成人1,096人と、年齢・性別をそろえた比較集団について、およそ49か月離れた測定データを解析した。歩く機能は6分間歩行距離などで評価している。COPDの集団では肥満が、その時点の機能の低さだけでなく、その後の歩行機能の低下とも関連した。[15]

肥満と歩行機能低下の調整後オッズ比は1.8、95%信頼区間は1.1〜2.9だった。比較集団では同じ関連は認められず、COPDの重さで分けた追加解析では、重い群で関連が有意だった。[15] ここでいうオッズ比を、そのまま「歩けなくなる人の割合が同じ倍率になる」と読むのは避けたい。歩行機能が低下したかどうかという結果との関係を表す指標である。

この調査ではCOPD集団の53%が肥満に該当した。重症度別の追加解析で関連が有意だったのは重い群で、歩行機能低下のオッズ比は2.3、95%信頼区間は1.0〜5.4だった。機能評価には6分間歩行距離に加え、短時間の身体機能検査も用いられている。比較集団では肥満との横断的な関連が見られたのは歩行距離だけだったが、COPD集団では両方の検査と関連していた。[15]

Zewariらのレビューでは、肥満があるCOPD患者は、体重を支える歩行のような課題では運動能力に不利な影響がみられる一方、自転車のように体重が支持される運動では同じ影響がみられないと整理されている。息切れに対する肥満の影響には、なお一致した見解がないとも述べている。[9]

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