基礎代謝の計算値を食事量の判断に使う前に、何を確かめるべきか。Mifflin-St Jeor式を検証した地域在住の成人とベルギーの肥満外来の研究を比べ、対象による精度の違いを読む。平均の偏り、個人の一致の幅、体組成を使う式の限界を区別し、画面に残しておきたい情報を整理する。
朝、体重を入力した画面に基礎代謝が出る。別の計算ページへ同じ身長と年齢を入れると、少し違う数字になる。どちらを信じて昼食を選べばよいのか。小さな桁まで並んでいると、体の中を見てきた数字のように感じる。
だが、計算された代謝は測定された代謝とは別である。非肥満者と肥満者を扱った系統的レビューでは、よく使われる式の中でMifflin-St Jeor式が比較的信頼できた一方、個人に使う際には無視できない誤差が残るとされた。[15] 問題は計算の間違いだけではない。正しく入力しても、自分が式のよく当たる側にいるとは限らないのだ。
食べた量をどう記録するかは「食事記録の過小報告はなぜ起こるのか」の記事に譲る。ここでは消費側の数字の出所をたどる。計算値を捨てるためではなく、どの程度の重みを持たせて扱うかを決めるためである。

基礎代謝の欄にあるのは、測定値か推定値か
研究には基礎代謝を表すBMRと、安静時代謝を表すRMRが登場する。前者は基礎代謝、後者は安静時の代謝という測定対象の名称である。本記事では論文の表記に従って区別し、両者を無条件に同じ値として読み替えない。基礎代謝の式を検証した研究も、安静時代謝の式を検証した研究も、比較の基準には間接熱量測定を使っている。[2][15]
間接熱量測定は、これらの論文で代謝の実測に用いられる方法である。身長や体重から代謝を予測する式とは役割が違う。一般成人のレビューは、推定が広く使われる一方、適切な手順での実測が推定の誤差を避ける手段となり、測定自体の誤差も抑える必要があると述べている。[15] 「実測」という言葉にも測定条件が伴う。
推定式が選ばれる理由は手軽さだ。過体重や肥満のある人の研究は、間接熱量測定には手間と費用がかかるため代わりに式が使われると説明している。[2] 計算式は、測定機器のない場所でも予測を得るための道具である。道具の価値はあるが、入力項目から体のすべてが分かるわけではない。
また、安静時代謝と総エネルギー必要量も同じ項目ではない。高齢者の式を開発した研究では、安静時代謝は総必要量の50〜70%を占めると説明されている。[6] 高齢者を対象とした説明なので、割合の適用には対象の確認が要る。食事量を決めるときは、安静時の代謝と生活全体の必要量を区別する。
夕食の前に計算値を見たときには、まず何を表示しているかを確認したい。「代謝」とだけ書いてある欄では、測定か予測かも、どの式かも分からない。日々の食事判断に使う前の確認事項は、数字の大小より、その数字がどこから来たかである。[15]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
平均の誤差が小さくても、自分には大きく外れうる
式の評価で出てくる「バイアス」は、予測と実測が平均としてどちらへずれるかを表す。「個人の精度」は、それぞれの予測が実測にどれほど近いかを見る。競技者の系統的レビューでは、平均予測値の近さと、実測の±10%以内に入る人の割合を明確に分けて評価している。[4] この区別が、論文を読む入口になる。
平均の差が小さいと、皆の差も小さいと思いやすい。ところが高く予測された人と低く予測された人がいれば、集団としての差は打ち消し合う。平均は集団の中心を見る数字であって、各人の予測がどの範囲に散らばるかを直接は示さない。[1][6] 自分の食卓には集団の中心ではなく、自分の誤差が関わってくる。
標準体重の中国成人で基礎代謝の新しい式を開発した研究は、この違いを具体的に見せる。開発に使われた成人は516人で、新しい式の平均バイアスは0.2 kcal/日と小さかった。一方、予測と実測の一致の限界は−514.3〜513.9 kcal/日だった。[1] 平均のずれだけを紹介すると、この広がりが隠れてしまう。
「一致の限界」は、予測と実測の差の広がりを見る指標である。この研究の範囲を、自分の誤差が必ず収まる保証や、食事を増減させてよい幅と解釈してはならない。開発とは別の41人での検証では精度は75.6%だったが、著者らも追加検証が必要としている。[1] 平均がほぼ一致したことと、別の人にも安定して使えることは別の検討課題なのだ。
さらに開発時には統計的な基準により30人が除外されている。[1] 除外基準も式の成績を支える条件の一部だ。分析対象と開発方法を含めて評価する必要がある。結果の良い数字だけを切り取って「ほぼ誤差なし」と言うと、研究が示した範囲を超えてしまう。
画面に表示できる桁数と、体について分かっている細かさは違う。小数点は整然としていても、個人の誤差まで整列しているわけではない。[1][6] 推定値を読むときには、平均バイアスに加えて個人の一致の幅や的中率が報告されているかを見ると、数字の印象が変わる。
一般成人では有用な式でも、肥満度で評価が変わる
2005年の系統的レビューは、非肥満者と肥満者の個人データを重視して、広く使われる式を比較した。検討された式の中ではMifflin-St Jeor式が、実測の10%以内に入る人がより多く、誤差の範囲も最も狭かった。ただし、高齢者や米国在住の民族的少数集団は開発・検証の両方で十分に代表されていなかった。[15] 有力な候補であることと、全員向けの正解であることを分けたい。
地域で生活する歩行可能な成人337人を調べた2013年の検証研究も、この式の有用性を支持した。実測の10%以内に入る精度はMifflin-St Jeor式で82%、Livingston式で79%だった。前者の平均差の95%信頼区間は−26〜8 kcal/日で、集団として明確な偏りは認められなかった。[16] ただし、この信頼区間は個々人の誤差の範囲を表すものではない。
同じ研究ではMifflin-St Jeor式の精度が非肥満者の87%に対し、肥満者では75%だった。[16] 同じ名前の式でも、調べる集団によって成績が変わる。全体の的中率だけで判断するより、自分に近い体格の集団でも検証されているかを読む必要がある。
ベルギーの肥満外来で731人を調べた横断研究では、平均年齢は43歳、女性は79.5%で、平均BMIは35.6だった。BMIは体重と身長を使う体格の指標である。比較された14式のうち、Henry、Ravussin、Mifflin-St Jeorの各式の精度が最も高く73%だった。平均として偏りがなかったのはMifflin-St Jeor式とHenry式である。[2] 的中率が同じでも、平均の偏りまで同じとは限らない。
一方、重度肥満の成人を対象にした2024年の系統的レビュー・メタ分析では評価が変わる。対象研究のBMIは40.0〜62.4で、40研究を集め、そのうち平均の差を報告した20研究を統合した。全体ではWHO式とHarris-Benedict式がより正確で精密と評価され、その他の式は基礎代謝を低く推定する傾向があった。[3]
WHO式の平均差は−12.44 kcal/日、95%信頼区間は−81.4〜56.5 kcal/日、Harris-Benedict式は−18.9 kcal/日、同区間は−73.2〜35.2 kcal/日だった。[3] ただし多くの研究でバイアスのリスクが高く、肥満度の範囲によって式の成績が変わる可能性も示されている。[3] メタ分析という研究の型だけで、結果を無条件に確定させることもできない。
「おすすめの式」を検索するなら、推薦の根拠が一般成人なのか、肥満外来なのか、重度肥満なのかまで読む。同じ式への異なる評価は必ずしも矛盾ではない。答えている集団と評価指標が異なるのである。[2][3][15]
数字で読む基礎代謝の推定誤差
一般成人337人の検証:Mifflin-St Jeor式の精度82%。実測の10%以内に入った割合である。[16]
肥満外来731人の検証:最高の精度73%。平均の偏りとは別に評価する。[2]
標準体重の中国成人の新しい式:平均バイアス0.2 kcal/日。一致の限界は−514.3〜513.9 kcal/日だった。[1]
高齢者1686人の式:集団の平均バイアスは約1%。個人の一致の限界は約±25%である。[6]
競技者のメタ分析:Ten-Haaf式で80.2%が実測の±10%以内。競技者集団での成績である。[4]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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