孤食と体重の研究が示す違い 高齢者の体重減少と子どもの家族の食卓

ひとりで食べることを、そのまま肥満の原因にしてよいのか。高齢者の孤食と体重減少を追った日本の研究、子どもの家族との食事をまとめたメタ分析、食材支援の比較試験をたどる。食事の人数と中身、短期の変化と長期の結果を分け、家族を責めずに食卓を見直す具体的な手掛かりを考える。

家族の帰りを待てずに、ひとりで夕食を済ませる。食卓に椅子がいくつ埋まっていたかだけで、体重管理の成否は決まるのだろうか。孤食を調べた日本の高齢者の研究では、ひとりで食べ続けた人は、誰かと食べ続けた人より体重減少を報告するオッズが高かった。[17]

子どもの家族との食事をまとめた研究では、食事の質がよく、体格の指標が低いこととの小さな関連が報告されている。同じ「誰と食べるか」でも、対象と確かめた結果が違う。[18]

人との距離の話は「孤独と肥満はどう関係するか」の記事に譲る。ここでは食事の場面へ焦点を移す。ひとりの大人の減量法に、子どもの家族の食卓の結果をそのまま当てはめず、何が測られ、何を変えた研究なのかをたどりたい。[4][15][18]

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孤食と体重の関係は、誰の食卓を見たかで変わる

地域で暮らす65歳以上の高齢者について、ひとりで食べる場合と誰かと食べる場合を比較した系統的レビューがある。関連する研究を決めた手順で集めて検討する方法で、採用されたのは24研究だった。横断研究、つまり同じ時点の状態を比べたものが19研究、経過を追うコホート研究が4研究、症例対照研究が1研究である。[15]

調べた項目は、栄養状態、食事摂取、食欲、体格、体重減少、筋肉量、フレイルに及んだ。フレイルとは体の衰えに関わる状態で、このレビューでは体重だけに絞らず検討している。ひとりで食べる人に不利な関連がなかった研究も5本あった。研究の答えには違いがあった。[15]

残る研究では、食事の質や食品の多様性が低いこと、果物・野菜・肉の摂取が少ないこと、体重減少やフレイルのリスクが高いことが報告された。研究の方法上の質は主に中立的と評価されている。ここから読めるのは、孤食に伴う栄養上の懸念であり、ひとりで食べる高齢者は太りやすいという一本の筋書きには収まらない。[15]

対して子どもを対象とした研究では、家族との食事の頻度と、よりよい食事や低い体格の指標との関連が中心になる。[18] 年齢が違えば、気に掛ける結果も変わる。体重が落ちたという同じ言葉でも、食事の支援が必要な高齢者の話と、肥満の治療中の子どもの話では、読み方を分けなければならない。[6][15]

たとえば離れて暮らす親から「最近はひとりだから簡単に済ませる」と聞いた場面では、太るかどうかだけを尋ねると、食べる量や種類が減っている可能性を取りこぼす。レビューが挙げた食事の多様性、食品の摂取、体重の変化という別々の結果を、会話の入口にする考え方がある。[15]

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日本の高齢者では、体重が減った人が多かった

岐阜県美濃加茂市で行われた縦断研究は、感染症流行期の2020年3月と10月に調査した。地域で暮らす高齢者1,071人の質問票を解析し、平均年齢は81.1歳だった。ひとりで食べるか誰かと食べるかの変化と、体重の状態との関連を調べている。[17]

両方の調査でひとりで食べていた人は、両方で誰かと食べていた人より、体重減少を報告するオッズが高かった。調整後のオッズ比は2.25、95%信頼区間は1.06〜4.78だった。比較しているのは体重減少の報告の有無で、オッズ比はその報告の起こりやすさを比べた指標である。[17]

解析では、年齢、性別、同居の状態、教育、治療中の病気、認知の状態、うつ、日常生活の活動などを考慮している。それでも、観察研究から「ひとりで食べたことが原因だった」とは決められない。誰かと食べるように割り付けた試験ではなく、食べ方と体重を質問票で追った研究だからだ。[17]

同居の状態を考慮した点にも目を向けたい。調査で区別したのは食事の相手であり、住まいの人数とは区別している。家族と同じ家にいても食事の時刻は別かもしれず、ひとり暮らしでも誰かと食べる機会はありうる。研究を日常に当てはめる際は、「同居か独居か」という質問だけで食事の状況まで済ませないことになる。[17]

この調査では、回答に欠けたデータを統計的に補う多重代入法も用いた。認知状態や日常生活の活動も考慮しながら、感染症流行期に地域で暮らす高齢者の食事を追った点が特徴である。[17] 高齢の家族に意図しない体重減少があるなら、食事の状況も医師に伝える材料になる。

家族の食事と子どもの体格には、小さな関連がある

子どもの家族との食事を扱ったメタ分析は、57研究、203,706人をまとめた。家族との食事が多いことと、食事全体の質がよいこととの相関係数は0.13、健康的な食事とは0.10、不健康な食事とは−0.04、体格指数であるBMIとは−0.05だった。[18]

相関係数は関係の方向や強さを示す値で、この数字は食事の回数を増やせば何kg痩せるかを表していない。食事の質に関する関連と、体格に関する関連の大きさには違いがある。この研究を「家族と食べる減量法」とだけ紹介すると、むしろよく見えていた食事の中身が背後へ退いてしまう。[18]

子どもの年齢、国、食卓にいる家族の人数、朝食か昼食か夕食かという区分は、健康的・不健康な食事やBMIとの関連を有意には変えなかった。家族全員が集まることと、片方の親と食べることの両方を含めて、よい栄養状態との関連が示されている。[18] 全員が同時に着席できた日だけを成功と数える必要がある、という結果ではない。

長期の観察研究では、思春期の家族との食事と、若い成人になってからの体格も調べられた。2,117人を対象とする10年後の追跡では、思春期に家族と食べる機会があった各頻度群で、まったくなかった群より、後の過体重や肥満のオッズが低かった。ただし、家族との食事は、もともとの習慣を調べている。[3]

別の5年間の縦断研究は、高校生だった女性946人、男性764人を追っている。思春期の家族との食事が多いことは、若い成人になってからの果物や野菜などの摂取が多いこと、清涼飲料の摂取が少ないことと関連した。開始時の食事を考慮すると関連は弱くなったが、いくつかは有意なままだった。[5]

この変化は大切である。後の食事の差の一部には、最初からあった食べ方の違いも関わりうる。家族との食事だけが未来を作ったと読むより、食卓を囲む習慣と、そこですでに食べていた物の両方を見る必要がある。[5] 目指したいのは人数の達成表を埋めることより、実際に何を食べられる食卓なのかを確かめることである。

家族との食事の頻度とBMIとの関連では、社会経済的な状態による違いも報告された。ほかの食事の結果とは、関連の現れ方が一様ではなかった。[18] 食事の回数だけを取り出すと、暮らしの条件を含めて比較した研究の構造が見えにくくなる。食卓の予定を変えにくい人に、回数という指標だけを返しても、研究が測ったことの一部しか伝わらない。

10年追跡の参加者は19〜31歳で、平均25.3歳、女性が55%だった。少数派の人種・民族に属する人が52%、低所得層が38%を占め、背景の異なる若い成人を含んでいた。思春期の家族との食事は週1〜2回、3〜4回、5回以上に分けて比較され、いずれも機会がなかった群に比べて後の過体重・肥満のオッズが低かった。肥満との関連は、黒人の若い成人で白人より強かった。[3]

5年追跡では、食べた食品に加えて食事の組み立ても調べていた。女性では朝食の回数が多いこと、男女とも夕食の回数が多いことや、食事の構成と誰かと食べることを大切にしていることが、思春期の家族との食事の頻度と関連した。調査時の平均年齢は15.9歳から20.4歳へ移っている。食品の摂取と食事を暮らしの中でどう位置付けるかを、並行して追った研究だった。[5]

数字で読む孤食と家族の食卓

24研究:地域で暮らす高齢者の孤食と栄養・身体の状態を比較した系統的レビュー。[15]

2.25:日本の高齢者で、ひとりで食べ続けた人の体重減少に関する調整後オッズ比。[17]

203,706人:家族との食事の頻度と子どもの栄養状態をまとめたメタ分析の規模。[18]

−0.05:同分析における、家族との食事の頻度とBMIとの小さな相関。[18]

160家族:家族の食事を軸にした肥満予防の無作為化比較試験の対象。[4]

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宮川涼 Founder

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