朝食前の空腹で運動するかどうかで結果が分かれた試験と、分かれなかった試験がある。食べ過ぎの6週間、4日間の食事と消費、HITと筋トレの数週間、1型糖尿病の人の120分の歩行を並べ、空腹という条件が効く場面と効かない場面、医師と決める場面を確かめる。
ふだんより約30%多い熱量を、6週間食べ続ける。そう頼まれた18〜25歳の男性のうち、運動しなかった人は体重が3.0kg、運動の前と最中に炭水化物をとって運動した人は1.4kg増えた。空腹で運動した人は0.7kgの増加で、有意な増加にはならなかった。[6]
ところが、ふつうに食べている人で比べると、景色が変わる。空腹で75分走った日と、食べてから走った日。その後の4日間に食べた量は1日15.0MJで並び、消費にも差はなかった。[4] 空腹かどうかで差が出る試験と、出ない試験。その分かれ目は、どこにあるのか。
空腹の運動で脂肪がどれだけ燃え、それが体脂肪の減少とどう違うかという基本の問いは「朝食前の運動は脂肪を燃やすか 空腹時の燃焼と体脂肪の減少を分けて読む」に譲る。ここで並べるのは条件の違いだ。食べ過ぎの期間、ふつうの食事の数日、数週間の訓練、筋トレ、そして血糖の治療を受けている人。条件ごとに、空腹という変数の重さは変わっていた。

食べ過ぎの6週間では、空腹の運動に差が出た
冒頭の試験の条件は、減量ではなく食べ過ぎだった。18〜25歳の健康な男性に、6週間、ふだんより約30%多い熱量で、熱量の50%を脂肪からとる食事をしてもらった。そのうえで、週4日の持久的な運動を空腹で行う10人、運動の前と最中に炭水化物をとる10人、運動しない7人に分けている。[6] 冒頭の体重の数字は、群ごとに始めと終わりを比べた結果だ。空腹の群と炭水化物をとった群の体重を、直接並べて検定した差は報告されていない。[6]
体重とは別の物差しでは、群の違いがはっきり出た。運動しない群と比べて全身のブドウ糖の処理能力とインスリンの効きの指標を高めたのは、空腹で運動した群だけだった。[6] 筋肉の中でも違いが出た。ブドウ糖を筋肉に取り込む運搬体のたんぱく質(GLUT4)は、空腹の群で28%多かった。AMPKという酵素のリン酸化が25%高まり、脂肪酸を取り込んで燃やす経路に関わる遺伝子の働きも約30%高まったのは、空腹の群だけだった。[6]
著者らは、食べ過ぎの高脂肪食のもとでは、空腹のトレーニングの方が筋肉の適応を促し、ブドウ糖の処理を改善しやすいと結論している。[6] ただし、これは若い男性が意図的に食べ過ぎた6週間の話だ。体重を落としたい人が、熱量を控えながら朝食前に運動したときの答えではない。高脂肪の食事で筋肉の中の脂肪はどの群でも増えていて、空腹の運動がそれを防いだわけでもなかった。ジアシルグリセロールやセラミドといった物質は、運動の有無にかかわらず増えていなかった。[6] 強い食べ過ぎという負荷がかかったとき、空腹の運動は体の糖の処理を守る側に回った。一つ目の条件は、そこにある。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
ふつうに食べている数日では、帳尻は同じだった
空腹で運動すると、脂肪の燃焼は一時的に高まる。それでも空腹の運動を続けて体重の減少が上乗せされることは一般的でなく、どこかで埋め合わせが起きているのではないかと考えられてきた。その埋め合わせを探しにいったのが、4日間を追った試験である。[4]
対象は健康で活動的な12人で、男性10人、女性2人、平均年齢は22.6歳、BMIの平均は22.5だった。全員が空腹と食後の両方の条件で75分走り、それぞれ4日間を過ごした。食べた量は出された食事から残りを引いて測り、活動による消費と1日の総消費は心拍数と加速度計を組み合わせて推定した。[4]
1日に食べた量は、両条件とも15.0MJ。活動による消費は7.6MJと7.8MJ、1日の総消費は15.9MJと14.9MJで、どれも有意な差はなかった。空腹の感じ方と、皮膚の下に付けた機器で測り続けた血糖の指標にも、違いは見られなかった。著者らは、2つのやり方は入れ替えて使ってよいと結論している。[4] 若く、活動的で、体重が標準的な人の結果ではあるが、空腹の運動で「その日の燃焼」が多少増えても、数日の帳尻を大きく動かすわけではない、という見通しは持てる。運動を終えた後に消費がどれだけ上乗せされるかは「運動のあとも消費は続くのか アフターバーン(EPOC)の大きさを測った研究」に譲る。[4]

数週間の訓練でも、空腹かどうかで体は分かれなかった
週単位の試験では、どうか。過体重や肥満の女性16人(平均27歳、BMIの平均29)を、空腹で運動する群と食後に運動する群に8人ずつ分けた試験がある。6週間に18回、自転車で最大心拍数のおよそ90%の強さの60秒のこぎと60秒の休みを10回くり返す、短い高強度インターバル運動(HIT)を行った。[2]
空腹の群と食後の群の間には、測ったどの項目にも有意な差がなかった。両群を合わせて見ると、体重は変わらなかったのに、X線を使った体組成の測定では、おなか、脚、全身の脂肪の割合が下がり、脚や尻回りの脂肪以外の組織が増えていた。筋肉の小さな標本では、ミトコンドリアの能力を示す2つの酵素の活性が高まっていた。インスリンの効きには変化がなかった。[2]
著者らの結論は、短く少ない量のHITは体組成と筋肉の酸化の力を改善する時間効率のよい方法だが、空腹か食後かはその反応を変えない、というものだ。体重が動かない6週間のあいだに、体の中身は動いていた。そして、その動き方は朝食の有無で分かれなかった。[2]
脂肪の燃焼が最も多くなる強さ、いわゆるファットマックスの強さで8週間訓練した試験もある。36人を、空腹で訓練する群、炭水化物の軽食をとってから訓練する群、食事を自由にして訓練する対照群の3つに分けた。同じ負荷での脂肪の燃焼も、最大の脂肪の燃焼も、全群で高まった。脂肪の使われ方には群と時間の組み合わせによる差がなかった。体重、脂肪量、筋肉量には時間の経過による有意な変化が見られたが、群ごとの違いは報告の概要に示されていない。著者らは、こうした訓練による脂肪を燃やす力の向上は、空腹か食後かに関係なく起きるとしている。[11]
直前の一食で変わるのは、運動中の燃料の配合まで
運動の直前に何を食べるかで、まず変わるのは運動中の燃料の配合だ。一晩の絶食の後、持久系の訓練を積んだ男性8人では、安静時のエネルギーの66%を脂肪がまかない、120分こいだ後には、I型と呼ばれる筋線維の中の脂肪が正味で62%減っていた。[10] 空腹の体は、筋肉に蓄えた脂肪も燃料に回す。訓練された男性の自転車選手17人の試験では、運動の30分前に炭水化物の食事をとると、空腹のときより、換気閾値と呼ばれる強さまでの範囲で脂肪の燃焼が少なかった。たんぱく質と脂質の食事の後は、空腹時と同じくらい高い脂肪の燃焼が保たれた。[8] 一方、高い強度の区間の平均の出力、きつさの感じ方、空腹感には、条件による差がなかった。[8]
大学生の年代の男性11人を調べた小さな試験では、たんぱく質か炭水化物を25gとってから30分後にトレッドミルで30分動いても、空腹のままの群が多く脂肪を燃やすことはなかった。[9] どちらも1回の運動の中を測った試験で、体脂肪の変化までは追っていない。運動中の燃料の配合は、何週間か後の体の中身を予言する数字としては作られていない。[8][9]
数字で読む空腹の運動
- 0.7kgと1.4kg:食べ過ぎの6週間に、空腹で運動した群と、炭水化物をとって運動した群で増えた体重。運動しない群は3.0kgだった。[6]
- 28%:同じ試験で、空腹で運動した群の筋肉に多かったブドウ糖の運搬体のたんぱく質。[6]
- 1日15.0MJと15.0MJ:空腹と食後で75分走った後、4日間の1日あたりの摂取量。総消費にも差はなかった。[4]
- 8人ずつ・6週間:空腹と食後に分けてHITを行った女性の試験。どの項目にも群の差がなかった。[2]
- 36人・8週間:脂肪の燃焼が最も多くなる強さで訓練した試験。燃やす力は全群で高まった。[11]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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