ボクシング・格闘技とダイエットの科学 消費量と体脂肪、競技の減量を分ける

ボクシングで消費するエネルギーは、そのまま体脂肪の減少になるのか。非接触ボクシングの実測、テコンドーの体組成研究、過体重・肥満者のメタ分析を比較する。競技前の急減量と日常のダイエットを区別し、研究対象や運動内容の違いを踏まえて、体重計だけに頼らない教室選びを考える。

グローブを構えて打ち終えたあと、「よく動いた」という感触と、「これなら痩せそうだ」という期待が重なる。ところが研究では、その場で消費したエネルギーと、運動を続けたあとの体脂肪は、別々の方法で調べられている。非接触ボクシングの実測は前者を、テコンドーの介入研究は後者を考える材料になる。[6][7]

さらに、格闘技の「減量」には、計量に合わせて体重を急に落とし、その後に戻す競技特有の行動が含まれる。プロの総合格闘技選手を調べた研究では、計量から試合までに512人中503人、98%の選手で体重が増えていた。運動教室で長く体脂肪を減らしたい人とは、同じ体重計を使っていても、目指す時間軸が違う。[9]

打つ運動を選ぶとき、知りたいのは選手の体重の落とし方より、自分の目的に近い研究があるかどうかだ。ここでは打つ運動の消費量を入口に、体組成、つまり体の脂肪や筋肉などの構成を調べた研究へ進む。太極拳全般の紹介は「太極拳と気功は体重や腹囲を変えるか」の記事に譲り、ボクシング型運動と他の格闘技をどこまで一緒に考えられるかに焦点を置く。

ボクシングで両手に着ける黒い革製の一対のボクシンググローブ 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

非接触ボクシングの消費量は、誰を測った数字か

ボクシングの消費量を直接調べた研究に、健康な男性8人を対象とする実験がある。参加者は非接触ボクシングに慣れていた。研究室での練習中に、呼吸の測定からエネルギー消費量を求める間接熱量測定を行い、スタジオでの練習では心拍数を測り、さらにトレッドミルで走る検査も実施した。[6]

研究室での60分間の消費量は2519〜3079 kJ、平均は2821±190 kJだった。kJはエネルギーの単位である。研究者は、この平均をトレッドミルで60分間に約9 km走る場合の消費に相当すると説明している。人と打ち合わなくても、まとまったエネルギー消費を伴う運動になりうることを示す実測である。[6]

ここで大切なのは、「非接触」という条件だ。この実験では、対戦相手との接触を伴わない練習を測った。一方、参加者はすでに練習に慣れた男性だった。これから動きを覚える人や、女性を中心とするクラスに同じ平均を当てはめるだけの比較は、この実験では行われていない。[6]

測った場所にも違いがあった。8人中7人は、スタジオより研究室で心拍数が高かった。研究者は、個別に見守られる状況が研究室での運動強度を少し高めた可能性を挙げている。同じ人が同じ種類の練習をしても、実施環境まで同一とは限らないという具体例だ。見守られると少し頑張る。実験室にも、人前で張り切る余地はある。[6]

この結果を教室選びに使うなら、練習の内容を照らし合わせるところから始めたい。何をどのように行う時間なのか、動作を覚える時間も含むのかを確認したい。論文が測ったのは、特定の人が特定の条件で終えた練習である。[6]

次に知りたいのは、運動を続けたあとに体脂肪がどう変わるかだ。その問いには、継続介入の研究を読む段階へ進むことになる。[6][7]

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体組成のメタ分析には、違う方向の答えがある

テコンドーの体組成を扱った系統的レビュー・メタ分析は、37研究をまとめている。系統的レビューでは決めた手順で研究を探して検討し、メタ分析では集まった研究の結果を統計的に一つの推定へまとめる。この分析では、体重、BMI、腹囲、腹囲と臀囲の比、脂肪量、体脂肪率、除脂肪量、筋肉量に、対照群との統計的に有意な差が報告された。[7]

BMIは体重と身長から求める体格の指標、除脂肪量は脂肪を除く体の量である。体重だけでなく複数の項目に差があったことは、運動を評価する窓を広げてくれる。年齢層による差も体重、BMI、体脂肪率で報告されている。体重の変化を読むときにも、対象者の年齢まで確かめる視点が要る。[7]

過体重・肥満の人を対象に絞った別の系統的レビュー・メタ分析では、結論が慎重になる。無作為に群を分けた6試験、計258人が対象で、BMI、腹囲、体脂肪率について、格闘技の運動による有意な利益は対照群との比較で確認されなかった。研究者は、研究数の少なさ、内容のばらつき、介入の短さ、小規模性、方法上の制約を指摘している。[17]

数字も見ておこう。BMIの差は−1.34 kg/m²で、95%信頼区間は−2.72〜0.05だった。体脂肪率の差は−0.75%で、信頼区間は−5.58〜4.08。腹囲の差は1.41 cmで、信頼区間は−0.72〜3.54だった。信頼区間は、効果の推定にどの程度の幅があるかを示す範囲で、これらはいずれも差がない値をまたいでいる。[17]

体脂肪率の平均だけを抜き出して「減った」と言い切ると、この幅を落としてしまう。研究者が挙げた方法上の制約も、結果の読み方に含めたい。現時点では、過体重・肥満者の体組成を改善する効果が十分に確定していない、と読むのが研究者の評価に沿っている。[17]

研究の中身も違う。過体重・肥満者の分析では、6試験のうち4試験が太極拳、1試験がカンフー、残りが格闘技の運動だった。この内訳では、太極拳が多くを占める。テコンドーの分析とは、対象種目と対象者を分けて読む必要がある。[7][17]

思春期女子の試験で変わったのは、脂肪だけではなかった

女性のデータとして参考になるのが、思春期の女子を対象とするテコンドーの介入研究だ。運動群21人と対照群10人に分け、運動群は1日50分、週2日、12週間練習した。脂肪量などは、体組成を調べる画像検査であるDXAで評価されている。[3]

運動群では脂肪量と体脂肪率が低下し、一定の速さで動かしたときの筋力、立ち幅跳び、座って前屈する検査の成績が改善した。一方、握力、腕を曲げた姿勢でぶら下がる時間、速さと敏捷性、心肺持久力には変化がなかった。脂肪が減ることと、あらゆる体力が同じように上向くことは分けて考えたい。[3]

この試験は、女性の運動を考える手がかりにはなるが、対象は思春期で、学校体育が限られた環境にある女子だった。成人女性の減量効果を同じ幅で見積もることはできない。練習の頻度や期間と対象者を、セットで受け止めたい。[3]

より広く体力を検討したレビューでは、23論文を批判的に検討し、テコンドーは有酸素能力、体組成のうち脂肪の減少、柔軟性に利益がある可能性を示した。その一方で、無酸素性の体力や筋力を改善するという決定的な証拠は得られていないと評価した。息が上がる運動、柔らかさ、強い力を出す能力は、研究でも別々の項目である。[14]

教室の紹介文に「全身運動」とあっても、自分が変えたいものは具体化しておきたい。体脂肪なのか、同じ動作を繰り返す余裕なのか、柔軟性なのか。検査によって結果が分かれた女子の試験は、目的を言葉にする助けになる。運動の名前だけで全部の成果を予約してしまうと、変化した項目まで見落としかねない。[3][14]

試験で何を比べたかも、教室への期待を調整する材料になる。女子の研究はテコンドー群と対照群を設けているため、練習をした人の前後だけを見る説明より、比較の枠組みが分かりやすい。ここでは、テコンドーを行う群と対照群に分けた介入研究として読む。[3]

体組成の統合結果についても、対照群との比較が軸になる。テコンドーの分析で報告されたのは、体重や腹囲などの項目における差だった。教室を比較する場面では、手元の結果がどの相手との比較なのかまで確かめると、運動の名前だけの勝ち負けから離れられる。[7]

数字で読む打つ運動と体組成

非接触ボクシングの実測対象は、練習に慣れた健康な男性8人である。[6]

60分の研究室練習では、平均2821±190 kJを消費した。[6]

テコンドーの体組成メタ分析は37研究を統合し、複数の指標に対照群との差を報告した。[7]

過体重・肥満者のメタ分析は6試験258人で、体脂肪率の差は−0.75%、95%信頼区間は−5.58〜4.08だった。[17]

思春期女子のテコンドー試験は12週間で、脂肪量は低下したが、心肺持久力には変化がなかった。[3]

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