誠実性や神経症傾向など5つの性格特性と体重の関係は、国や研究の型によって食い違ってきた。細かい特性で見た分析、50年を超える追跡、衝動性と食事の型を3年追った研究、減量手術のあとの研究を数字で確かめ、性格を変えずに仕組みで補う考え方を示す。
自分の性格のせいで痩せられない、と思ったことはあるだろうか。飽きっぽい。気分で食べてしまう。計画を立てても三日で崩れる。そう感じている人に、先に一つ考えてみてほしい問いがある。その「性格」は、人と人のあいだの体重の違いを、どれくらい説明しているのだろう。
公表された研究とまだ公表されていない研究を集め、14,848人のデータを重ねたメタ分析がある[10]。研究者たちは性格を細かい特性に分けて「危険の点数」を作り、別の3,569人に当てはめた[10]。その点数が説明できたのは、BMI(身長と体重から出す体格の指数)のばらつきのうち2.3%だった[10]。大まかな5つの特性で作った点数と比べれば409%多く、細かく分けた意味はあった[10]。それでも、体重の違いの大部分は、性格の点数の外にある。
性格で人を分けたいわけではない。分けたいのは、変えにくいものと、手を入れられるものだ。そのために、性格と体重の関係を調べた研究を、5つの大きな特性、細かい特性、50年を超える追跡、衝動性と食事の型、減量手術のあとの研究の順に読んでいく。食べたい衝動そのものとの付き合い方は「食べたい衝動とダイエットの科学 渇望を弱める工夫と食べる量が変わる条件」の記事に、ADHDと体重の関係は「ADHDと肥満のつながり 衝動だけに原因を求めず、食べ方と治療を考える」の記事に譲る。

5つの性格特性と体重の関係は、国と研究の型で食い違った
心理学でよく使われる5因子モデルは、性格を5つの軸で表す。不安や落ち込みの感じやすさを表す神経症傾向、人との関わりに向かう外向性、新しい経験への開かれ方を表す開放性、人に合わせる協調性、そして誠実性である。誠実性という言葉は「正直さ」と取り違えられやすいが、研究の上では、内なる衝動を調整する力と自己規律の尺度を指す[9]。
多くの研究をまとめた先のメタ分析では、5つの大きな特性のうち、BMIは神経症傾向と正の向きに、誠実性と負の向きに結びついていた[10]。不安を感じやすい人ほどBMIが高く、自己規律の強い人ほど低い、という向きである。ここまでは、世間の思い込みとそれほど離れていない。
ところが、国と研究の型を変えると、答えが入れ替わる。ドイツの世帯を1984年から追っている大規模な調査の、2005〜2013年のデータを使った研究がある[3]。性格は質問紙で、BMIは本人の申告で測られた[3]。ある時点で一斉に比べる横断研究では、神経症傾向、外向性、開放性、協調性の4つが肥満と統計的に結びついた[3]。交絡しうる条件を調整すると、外向性、開放性、協調性の結びつきが残り、誠実性も新たに意味のある結びつきを示した[3]。
同じデータを、同じ人の年ごとの変化として追う縦断研究で見ると、結びつきが残ったのは外向性と協調性の2つだけだった[3]。さらに調整を加え、同じ人の中での変化どうしを比べる固定効果モデルを使うと、残ったのは協調性だけで、その向きは負だった[3]。男女の差は統計的に意味のあるものではなかった[3]。著者らは、横断研究と縦断研究で結果が異なること、協調性が残ったことはそれまでの多くの研究の結果と対照的であることを述べている[3]。
韓国の地域と病院のコホートのデータを使った研究では、さらに別の景色が見える[17]。対象は男性1,495人(平均60.0歳)と女性2,547人(平均47.0歳)だった[17]。義務感の低い人ほど、BMIも腹囲も大きかった[17]。過体重と肥満の男性は、標準体重の男性より開放性が高く、誠実性が低かった[17]。男性では外向性がBMIと正の向きに結びついていた[17]。
女性では様子が違った。過体重と肥満の女性は、神経症傾向と開放性が低く、協調性が高かった[17]。神経症傾向はBMIと負の向きに結びつき、協調性はBMIとも腹囲とも正の向きに結びついた[17]。多くの研究を重ねた分析では神経症傾向はBMIと正の向きだったのに[10]、韓国の女性では逆になる。協調性は、ドイツの追跡では肥満と負の向き、韓国の女性ではBMIと正の向きだった[3][17]。
どの特性が「太りやすい性格」なのかは、測った国、人、方法によって入れ替わる。平均47.0歳の韓国の女性という、この記事の読者に近い年代の結果が、多くの研究を重ねた分析と逆を向いていたことは覚えておいてよい。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
大きな5つより、細かい特性のほうが体重と結びついた
結果がこれほど揺れるのはなぜか。冒頭のメタ分析は、5つの大きな特性の中身に目を向けた[10]。5つの軸の下には、合わせて30の細かい特性が置かれている。その30について一つずつBMIとの関係を調べると、15の細かい特性がBMIと結びついていた[10]。15は5つの大きな特性のすべてにまたがっており、神経症傾向と誠実性の細かい特性は、その一部だけが含まれていた[10]。
つまり、「誠実性が高い」「神経症傾向が強い」という大きな括りの中にも、体重と関係する部分と関係しない部分が混ざっている。大きな括りで平均すると、関係のある部分の結びつきが、関係のない部分で薄まる。大きな特性と肥満の結びつきが研究ごとに揺れたのは、結びつきが一部の細かい特性にだけあるからかもしれない、というのがこの研究の出発点だった[10]。
性格とBMIの結びつきのいくつかは、標本の性質によって強さが変わった。女性の割合や、肥満の参加者の割合である[10]。この傾向は、一人一人のデータに戻した分析でも再び確かめられた[10]。同じ特性でも、女性の多い集団と少ない集団、肥満の人の多い集団と少ない集団では、結びつきの強さが違う。
冒頭で見た点数の比べ方は、この細かい特性と大きな特性の違いを使ったものだった[10]。著者らは、性格とBMIの結びつきは細かい特性ごとに違い、それを描き分けることが肥満にかかわる行動の説明や介入の設計に役立つかもしれないとまとめている[10]。
細かく見れば見るほど、関係ははっきりする。同時に、その関係が体重の違い全体の中で占める場所は小さい。性格の点数で「あなたは痩せにくい」と言い切ることは、この数字の上ではできない。
50年を超えて追うと、体重の「揺れ」と性格が結びついた
性格は、体重がどう変わっていくかとも関わるのか。1,988人を50年以上追った縦断研究が、この問いに取り組んでいる[11]。体の計測は合わせて14,531回に及び、研究者たちはおとなになってからのBMIの道筋を描き、性格がその変わる速さを予測するかを調べた[11]。
同じ時点で測ると、神経症傾向や外向性が高い人、誠実性が低い人ほどBMIが高かった[11]。この結びつきは、体脂肪、腹囲、腰回りでも同じように再現された[11]。最も強い結びつきを示したのは、衝動性という細かい特性で、衝動性の得点が上位10%の人は、下位10%の人より平均で11kg重かった[11]。
11kgという差は大きく見える。だが、これは両端の1割どうしの平均の比較で、大多数の人はその間にいる。そして同じ時点の比較であり、衝動性が体重を増やしたのか、ほかの何かが両方に関わっているのかは、この数字だけでは分けられない。
時間を追った分析では、神経症傾向の高さと誠実性の低さ、そして衝動を抑えにくいことにかかわる細かい特性が、体重の揺れと結びついていた[11]。ここでいう揺れは、年月の中で体重がどれだけ上下したかのばらつきを指す[11]。また、協調性の低さと衝動性にかかわる特性は、おとなの期間を通じてBMIが大きく増えることを予測した[11]。
一方で、BMIの変化は、性格の変化とはほとんど関係しなかった[11]。体重の変化に合わせて性格の得点が動く、という関係はほとんど見られなかったことになる。痩せたら性格が明るくなる、という期待も、太ったせいで性格が変わった、という嘆きも、この研究の数字は支えていない。
著者らは、性格の特性は考え方、感情、行動の型によって定義され、それらが体重の増えすぎや体重の管理の難しさに関わっている可能性が高いと述べ、より効果的な介入の設計に役立つかもしれないとしている[11]。性格そのものより、性格を形づくる行動の型のほうに、手を入れる余地がある。
数字で読む性格と体重
2.3%:細かい特性で作った性格の点数が、別の3,569人のBMIのばらつきのうち説明できた割合。[10]
15:30の細かい特性のうち、BMIと結びついた数。5つの大きな特性のすべてにまたがっていた。[10]
11kg:衝動性の得点の上位10%と下位10%の、平均の体重の差。1,988人を50年以上追った研究から。[11]
14,531回:同じ研究で、おとなの体の道筋を描くために行われた体の計測の回数。[11]
2,547人:韓国の研究の女性(平均47.0歳)。神経症傾向はBMIと負の向きに結びついていた。[17]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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