オリーブ油やナッツを取り入れれば痩せるのか。地中海食の大規模試験から、摂取量を制限しない食事と、エネルギー調整・運動・行動支援を組み合わせた減量の違いを読む。体重、体脂肪率、内臓脂肪の数字を分け、差が出なかった研究や閉経後女性の比較試験も踏まえて、日常で続ける条件を考える。
オリーブ油とナッツを買い物かごに入れるとき、それらを普段の献立に足すのか、食事全体を組み替えるのか。地中海食を減量に取り入れようとすると、この違いが気になる。大規模試験でも、摂取量を制限しない設計と、エネルギーを減らす設計は分かれている。[17][2]
その距離を読む鍵は、食事の名前より試験の中身にある。摂取エネルギーを制限しない地中海食では、比較対象との体重差が有意ではなかった。一方、地中海食にエネルギー調整、身体活動、行動支援を組み合わせた試験では、体重や内臓脂肪に改善が見られた。どちらも地中海食の研究であり、矛盾するようで、比べている条件が違う。[17][2][1]
ここでは、食事の名前を減量の保証にせず、何が変わり、何が測られたかを追う。植物性の食事全般やナッツ単独の話は特集の別記事に譲り、地中海食という食事パターンを、生活全体の介入として読んでいく。

地中海食という名前だけでは、減量の条件は決まらない
研究で試された地中海食には、食事への助言を中心とする設計も、減量の支援を加える設計もある。オリーブ油やナッツを補う食事、食べる量を制限しない食事、エネルギーを減らす食事など、複数の設計がある。地中海食を勧めるという点は共通でも、減量を目標にするかどうか、運動を促すかどうかは研究によって異なる。[17][4]
この区別が見えやすいのが、スペインの大規模試験である。PREDIMEDの体重と腹囲の再解析には、心血管疾患のリスクが高い男女7,447人が参加した。男性は55〜80歳、女性は60〜80歳で、大部分が過体重または肥満であった。オリーブ油を補う地中海食、ナッツを補う地中海食、脂肪を減らす助言を受ける対照食を比較し、エネルギー制限も身体活動の促進も勧めていない。[17]
追跡期間の中央値は4.8年で、各群とも体重はわずかに減り、腹囲は増えた。調整後の5年間の体重変化の群間差は、対照群に比べてオリーブ油群が−0.410 kg、ナッツ群が−0.016 kgである。95%信頼区間はそれぞれ−0.830〜0.010 kg、−0.453〜0.421 kgで、いずれも差がない可能性を含んでいた。体重について、明確な優位性が示されたとは読めない。[17]
信頼区間とは、推定値にどの程度の不確かさがあるかを示す範囲である。平均値だけ見るとオリーブ油群が少し有利に見えるが、範囲がゼロをまたいでいることも一緒に読む必要がある。体重差の推定値と、その不確かさを併せて示した結果である。[17]
腹囲では様子が違った。対照群との変化の差は、オリーブ油群が−0.466 cmで有意ではなく、ナッツ群が−0.923 cmで、95%信頼区間は−1.604〜−0.241 cmだった。ただし全群で腹囲は増えているため、ナッツ群の結果は「腹囲が縮んだ」ではなく、「増え方が対照群より小さかった」と読むのが正確である。[17]
この論文には研究上の注意点もある。割り付け手順からの逸脱が後に見つかり、866人、全体の11.6%が影響を受けたため、以前の報告を撤回して再解析したものだ。著者らは全員が無作為に割り付けられたという仮定だけに頼らない方法で推定し直している。大規模という言葉だけで質を決めず、この経緯も含めて受け取る必要がある。[17]
日常の食卓に戻すなら、油やナッツを取り入れることと、体重を落とす計画を立てることは分けて考えたい。この試験は植物由来の脂肪が多い地中海食で体重が対照食より有意に増える結果を示していない。著者らは、体重維持のために健康的な脂肪の摂取を制限しない助言を支持する結果と評価している。[17]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
体重が落ちた大規模試験には、食事以外の支えもあった
PREDIMED-Plusは、エネルギーを減らす地中海食に、身体活動の促進と行動支援を組み合わせた試験である。行動支援とは、食事や活動の変更を続けるための働きかけであり、食品の選択だけを試す設計とは違う。比較対象も地中海食の助言を受け、追加の減量支援を受ける群との違いを調べている。[2][4]
1年間の体重変化を報告した無作為化比較試験では、過体重または肥満でメタボリックシンドロームのある55〜75歳の626人を比較した。メタボリックシンドロームとは、代謝に関わる複数のリスクが重なる状態を指す。介入群の平均減量は3.2 kg、対照群は0.7 kgだった。群間差は−2.5 kgで、95%信頼区間は−3.1〜−1.9 kgである。[2]
「平均3.2 kg減った」と「対照群より2.5 kg多く減った」は、同じ結果の違う表現である。前者は介入群内の変化、後者は比較によって見えた追加の変化だ。減量の広告では前者だけが大きく書かれがちだが、研究から介入の価値を考えるときは、比較群でも何が起きたかが欠かせない。[2]
開始時の体重から5%以上減った人は介入群の33.7%、対照群の11.9%だった。減量の分布にも両群の違いが表れた。一定以上の減量に届いた割合を併せて見ると、生活全体を変える支援にも個人差があることがわかる。[2]
腹囲、空腹時血糖、中性脂肪などの指標にも、介入群でより大きな改善が報告された。この1年間の報告が評価したのは体重と心血管リスク指標で、将来の心血管イベントへの影響は長期の評価を要する。[2]
別の中間解析では、試験全体の6,874人のうち、1年の追跡を終えた6,583人について食事への遵守度を評価した。遵守度とは、勧められた食事にどれだけ沿っているかである。0〜17点の尺度で、介入群は平均8.5点から13.2点、対照群は8.6点から11.1点となった。変化の群間差は2.2点で、95%信頼区間は2.1〜2.4点だった。[4]
対照群も食事を変えている点が大切だ。比較で見えた差は、何もしない人との差ではなく、地中海食の助言がある条件に、エネルギー調整や活動、行動支援を加えたときの差である。また、この食事評価では両群にオリーブ油とナッツの提供があった。食品の提供も含む環境で食事の変更を支えていた。[4]
食事と活動の変更を支える仕組みも、介入の構成要素だった。研究から持ち帰るのは特定の食品だけでなく、食事を変える計画と、その計画を続ける支えを一緒に扱う視点である。これらの結果から、食事、運動、支援それぞれの効果を切り離して割り当てることはできない。[2][4]
内臓脂肪の変化は、体重計とは違う単位で読む
体重が減ったとき、体の何が減ったのか。PREDIMED-Plusの体組成の中間解析は、その問いを直接測定に近づけた報告である。体組成とは体を脂肪や除脂肪成分などに分けて見ることだ。55〜75歳、体格指数が27〜40でメタボリックシンドロームのある参加者のうち、測定機器を利用できる施設の1,521人を対象に、3年間の変化を調べた。[1]
測定には、異なるエネルギーのX線を使って体の成分を評価するDXAを用いている。内臓脂肪は腹部の臓器の周りにある脂肪で、ここではグラムで評価された。家庭の体重計とは異なり、脂肪の分布まで評価する測定である。[1]
エネルギーを減らす地中海食と身体活動を組み合わせた群は、制限しない地中海食の助言を受ける群より、総脂肪の体重に占める割合を大きく減らした。変化の群間差は1年で−0.94ポイント、3年で−0.38ポイントである。95%信頼区間は順に−1.19〜−0.69、−0.64〜−0.12だった。単位は体重に占める脂肪割合のポイント差である。[1]
内臓脂肪の変化の群間差は1年で−126 g、3年で−70.4 gだった。95%信頼区間はそれぞれ−179〜−73.3 g、−126〜−15.2 gである。3年の数字は、比較群に対して介入群の変化が平均してどれだけ有利だったかを表している。[1]
数字で読む地中海食と体の中身
1年間の平均減量3.2 kgと0.7 kg:生活全体の介入群と対照群の比較である。[2]
5%以上減量した割合33.7%と11.9%:平均値の裏に個人差がある。[2]
3年間の脂肪割合の群間差−0.38ポイント:体重に占める割合を比較した。[1]
3年間の内臓脂肪の群間差−70.4 g:直接評価した体の中身の変化である。[1]
制限しない地中海食の体重差−0.410 kg:オリーブ油群の推定値だが、有意差はなかった。[17]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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