コーヒーや緑茶の「脂肪を燃やす」という言葉は、体重が減ることと同じなのか。カフェインとカテキンの短期試験、減量と体重維持のメタ分析、運動を組み合わせた試験を読み比べる。抽出物と普段の飲み物の違い、効果が見られなかった研究も確かめ、毎日の一杯への期待を整える。
緑茶成分で一日の脂肪酸化が12.2 g増えたという数字を見たら、その分だけ体脂肪も減ると思うだろうか。短期研究をまとめたこの値は、測定中に脂肪がエネルギー源として使われた量の差であり、体重計で確かめた減量ではない。一杯への期待は、まず数字の単位より測定項目から考えたい。[5]
緑茶に含まれるカテキンとカフェインの組み合わせは、短期試験をまとめた研究でエネルギー消費や脂肪酸化を増やしている。一方、減量中の女性を調べた試験では、抽出物を足しても体重や体組成の追加の改善は認められなかった。「脂肪が使われた」と「体脂肪が減った」は、研究では別々の成績欄に並ぶ言葉である。[5][3]
この違いを出発点に、一杯への期待を測り直そう。ここで扱うのはカフェイン、緑茶成分、両者を組み合わせた試験である。コーヒーという飲み物そのものに同じ減量効果があると証明した資料ではない。飲み物の名前より、試験の中身から読む必要がある。[5][8]
「燃える」は何を測った言葉なのか
脂肪酸化とは、脂肪をエネルギー源として利用することである。今回の短期研究では、呼吸を測定する部屋を使い、日全体のエネルギー消費と脂肪酸化を評価している。そこで得られるのは、測定中にどれだけエネルギーを使い、その中で脂肪がどう利用されたかという成績だ。体重の変化を長く追った研究の答えと、まず分けて読む。[5][8]
カテキンは緑茶に含まれる成分で、試験ではその一種を指定して使う場合がある。たとえばエピガロカテキンガレートという成分は、論文中で英字の略称でも表される。緑茶抽出物の試験でこの量が書かれていても、それを自宅で入れた緑茶の杯数に置き換える情報は要旨にない。湯のみには計量用カプセルほど細かい仕様書が付いていない。[8][9]
エネルギー消費、脂肪酸化、体重、腹部脂肪は、それぞれ問いが違う。緑茶の短期試験は消費や燃料の使い方を、減量試験は体重や体組成を、運動との併用試験は腹部脂肪まで調べている。見出しに「脂肪」とあっても、何を測った数字かを省くと、読者の頭の中ではすべて体重計の数字になってしまう。[5][3][17]
研究結果を見るときは、増えたか減ったかだけでなく、比較相手も確かめる。プラセボとは、比較のために用意する対照の処置である。緑茶成分を含む処置とプラセボを比べる研究もあれば、カフェインの量をそろえ、カテキンの有無を比べる研究もある。後者なら、両群の違いをカフェインだけに帰すことはできない。[8][17]
また、成分を取る前後の変化と、対照群との差は別の判断だ。食事や運動も同時に変わる試験では、成分を取った群で体重が減っていても、その減り方が対照群を上回ったかを確かめる必要がある。緑茶群と対照群がほぼ同じだけ減った試験もあるので、飲んだ後に痩せたという順番だけでは、飲み物の追加効果は決まらない。[3]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
短期の代謝試験には、確かに変化がある
よく引用されるのが、健康な男性10人を対象にした無作為化試験である。参加者は別々の機会に、緑茶抽出物、カフェイン、プラセボを取り、呼吸を測定する部屋で24時間のエネルギー消費などを評価された。無作為化とは、比較する処置の割り当てをランダムにする方法だ。同じ参加者が異なる処置を経験するため、個人の違いを抑えて比べる設計になっている。[8]

写真: Julius Schorzman / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons
緑茶抽出物は、摂取のたびにカフェイン50 mgとエピガロカテキンガレート90 mgを含み、朝食、昼食、夕食時に用いられた。この条件で、24時間のエネルギー消費はプラセボより4%増えた。同量のカフェインだけを使う処置では、消費に効果が認められなかった。緑茶抽出物の変化を、含まれるカフェインだけで説明しきれないという結果である。[8]
この試験では呼吸商も0.88から0.85へ低下した。呼吸商は、呼吸で測る気体の比から、体内で使われる燃料を評価する指標である。研究者はこの変化などをもとに、抽出物が脂肪酸化を促すと結論している。ただし要旨が示すのは測定日の代謝であり、男性10人がその後どれだけ痩せたかを示す試験ではない。[8]
単独の試験で終わらず、短期研究を統合したメタ分析も見る。メタ分析とは、複数の研究結果をまとめて効果を推定する方法である。この分析には6本の論文、18の異なる条件が含まれ、呼吸を測定する部屋で評価された日全体の消費と脂肪酸化が比較された。対象人数の合計や、その構成の詳細は今回の要旨には示されていない。[5]
カテキンとカフェインの混合では、24時間の消費が428.0 kJ、割合で4.7%増えた。カフェイン単独でも429.1 kJ、4.8%の増加であり、消費の増加は両方で統計的に有意だった。有意とは、統計的な検討で偶然のばらつきだけでは説明しにくいと判断されたことだ。日々の減量にとって十分大きいかどうかは、さらに別の問いになる。[5]
脂肪酸化は混合で12.2 g、16.0%増えたが、カフェイン単独の9.5 g、12.4%という増加は統計的に有意ではなかった。数字が増加方向に出ていることと、効果が確認されたことを同じにしない。この分析では、脂肪酸化の有意な増加は混合の側に限られたと読むのが正確である。[5]
男性を調べた先の試験ではカフェイン単独で消費が増えず、メタ分析では増えていた。片方が必ず誤りという話ではない。測定条件や処置の範囲が異なるため、単独試験の結果をすべてのカフェイン摂取に広げないことが大切だ。逆に統合結果を使って、どの人のどの一杯でも同じ変化が生じると決めることもできない。[8][5]
朝の飲み物を選ぶ場面に戻ると、ここでの答えは「特定の成分と条件で、短期の代謝に変化はある」だ。増えた消費や脂肪酸化を毎日分ずつ足し、将来の体重減少を計算するための長期データではない。研究室で測られた一日の数字を、そのまま翌月の体重計への予約票にしない。[5][3]
体重への効果は、平均と個々の試験を一緒に読む
では、体重を直接評価した研究全体には、どの程度の効果が示されているのか。減量と減量後の維持を対象にしたメタ分析では、候補49件から条件に合う11本の論文が採用され、処置群と対照群の体重変化の差が統合された。結果は平均で−1.31 kgであり、研究者の結論は小さな肯定的効果だった。要旨にはこの統合値の信頼区間は示されていない。[19]
この−1.31 kgは、成分を取った人全員がその分だけ痩せたという意味ではない。減量と維持の研究をまとめた、対照群との差の推定値である。期間や対象が異なる研究から得た値なので、飲み始めればいつまでに同じ量が減る、と個人に約束する数字にはできない。小さな平均効果という結論を、小さな約束に翻訳する必要もない。[19]
平均の背後には、追加効果が認められなかった試験もある。過体重の女性46人を対象に、低エネルギー食に緑茶抽出物かプラセボを組み合わせた研究では、試験の4日目から87日目まで処置が行われた。抽出物には一日当たり茶カテキン1125 mgとカフェイン225 mgが含まれ、カフェイン摂取は研究内で標準化されていた。[3]
体重減少はプラセボ群4.19 kg、緑茶群4.21 kgだった。体重だけでなく、体脂肪や脂肪以外の体の量を表す除脂肪量などにも、処置間の有意差はなかった。食事を変えた両群は減量している。しかし緑茶抽出物を追加した側が、体重や体組成でさらに利益を得たとは結論されていない。[3]
この研究には、安静時のエネルギー消費の読み方でも注意点がある。対照群では低下が有意で、緑茶群では有意でなかったため、一見すると緑茶が低下を防いだように見える。ところが要旨は、時間経過に伴う処置効果は有意でなく、強固な抑制は達成されなかったと述べる。群ごとの有意かどうかの違いを、そのまま群間の有意差と呼べない例である。[3]
さらに、成人60人を対象とした無作為化プラセボ対照試験では、緑茶抽出物を12週間用いても、安静時のエネルギー消費、呼吸商、体組成、便の脂肪やエネルギーに有意な効果は認められなかった。対象は18〜50歳の男女で、体格も一様ではない。脂肪吸収が減るという提案まで含めて検討し、測定した項目に差が出なかった研究である。[18]
肯定的なメタ分析と、効果が出なかった試験を並べると、どちらを信じればよいかと迷うかもしれない。ここでは、統合では小さな平均効果があり、個々の条件では追加効果が確認できない場合もある、と両方を残す。否定的な試験を消して大きな効果に見せる必要も、平均効果を消して全く無意味と言い切る必要もない。[19][3][18]
数字で読むカフェインと緑茶
24時間の消費+4.7%:カテキンとカフェインの混合を評価した短期研究のメタ分析で、体重の減少率ではない。[5]
24時間の脂肪酸化+12.2 g:同じ分析で混合を使った条件の値。体脂肪の減少量としては示されていない。[5]
体重差−1.31 kg:減量と維持の11本をまとめた平均効果。要旨に信頼区間の記載はない。[19]
4.19 kgと4.21 kg:低エネルギー食を用いた女性の試験の対照群と緑茶群の減量。有意な群間差はなかった。[3]
12週間、成人60人:抽出物で安静時の消費や体組成などへの有意な効果を認めなかった試験の期間と人数。[18]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2







