心外膜脂肪は運動で減るか 心臓を包む脂肪の厚さを測った男性の研究から

心臓を包む心外膜脂肪は、運動で減るのか。肥満の中年男性を対象にした画像測定の研究と、心血管疾患を追ったメタ分析から確かめる。厚さと体積の違い、脂肪が減ることと発症が減ることの距離、女性や持病のある人への当てはめ方を整理し、日々の運動を考える手掛かりを示す。

心外膜脂肪を心臓病の重要な手掛かりとみるレビューがある。その一方で、冠動脈の病気や一部の心不全との関連はまだ確かとは言い切れないとするレビューもある。同じ心臓の脂肪を扱っていても、結論の力点はそろわない。[1][4]

体重や腹囲に続いて「心臓の周りの脂肪」まで聞くと、管理する数字がまた増えたように感じるかもしれない。だが、この話の出発点は怖がることより、どの脂肪を、どんな方法で測ったかを見分けることにある。運動の研究では、肥満の中年男性の心外膜脂肪の厚さが減ったという結果がある。測ったのは心臓の超音波画像に映る局所の厚さだった。[20]

心外膜脂肪は、心臓の近くで働く組織である

心外膜脂肪とは、心筋と心膜の臓側の層との間にある脂肪組織である。心筋は心臓を動かす筋肉、心膜は心臓を包む膜だ。この脂肪は単に余ったエネルギーを置く倉庫というだけでなく、脂肪酸の代謝が活発で、心筋と微小な血液の循環を共有している。通常の生理的な状態では、心臓の働きを支えて保護する役割があるとレビューは説明している。[8]

ここで「心臓の周りに脂肪がある」と「心臓に悪い状態が起きている」を直結させないことが大切になる。脂肪という名前の印象だけで、存在そのものを異常と判断するのは早い。研究が注目しているのは、量が増えたことに加え、その組織が炎症を起こすような状態へ変わることである。正常な働きと病的な変化を分けると、減らせば減らすほどよいという単純な目標からも距離を取れる。[1][8]

心臓に近いという位置にも意味がある。レビューでは、機能が変わった心外膜脂肪が炎症や線維化に関わる物質を放出し、近くの冠動脈や心臓の構造・働きに影響しうると整理されている。冠動脈は心筋に血液を届ける血管で、線維化とは組織が硬い線維性の性質を強める変化を指す。体全体の体重だけでは表しきれない、臓器のそばの脂肪を調べる理由がここにある。[1]

脂肪の働きを見るときには、熱を生み出す性質にも目を向けたい。心外膜脂肪についてのレビューは、熱産生に関わる遺伝子の発現が高いという特徴も挙げている。厚さを測る画像が捉えるのは形の情報だが、組織の中では脂肪酸を扱う代謝や熱産生に関わる働きもある。画像上の量の話と、その脂肪が何をしているかという生物学の話を重ねて読むことが、心臓を支える組織として理解する助けになる。[8]

一方、「心外膜脂肪」と英語で心膜周囲脂肪を指す語を使った研究を、名前だけでひとまとめにするのも避けたい。糖尿病患者を追った研究は、心外膜脂肪、心膜周囲脂肪、心臓周囲の総脂肪を別々に評価している。記事や検査結果に「心臓の脂肪」とあったら、その先の正式な測定名まで読むと、違う場所の数字を比較する取り違えを減らせる。[11]

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肥満の男性が有酸素運動を続けた研究

運動による変化を直接調べたのが、Kimらの研究である。参加したのは肥満の中年男性24人で、平均年齢は49.4歳、平均の体格指数は30.7だった。体格指数は体重と身長から計算する体格の指標だ。参加者は監督下で有酸素運動を行い、運動の前後で心臓の超音波検査を受けた。対象の性別と肥満の程度を含めて読むことが、結果を生活へ移す際の出発点になる。[20]

診察用の台と聴診器とともに置かれた、心臓の超音波検査に用いる装置。
診察用の台と聴診器とともに置かれた、心臓の超音波検査に用いる装置。
写真: Dr D. Malleswara Rao / CC BY-SA 4.0 / Wikimedia Commons

運動期間は12週間、条件は最大心拍数の60〜70%の強さで、1日60分を週3日だった。研究者は心臓の右心室の自由壁に沿う脂肪の厚さを測り、腹部の内臓脂肪と皮下脂肪は断層画像で調べた。心臓の脂肪を体重の増減から推定したのではなく、実際に画像で評価した点がこの研究の特徴である。[20]

運動後には、心外膜脂肪の厚さが統計的に有意に減った。腹部の内臓脂肪の変化とも関連しており、変化同士の相関係数は0.525だった。この解析では、腹部の内臓脂肪の変化と心臓側の厚さの変化を対応させている。複数の場所の脂肪の変化が、参加者の集団内でどう結びついていたかを示す数字である。[20]

さらに研究者は、厚さの変化に関わる項目を複数まとめて検討した。腹部の内臓脂肪の変化、収縮期血圧の変化、インスリン感受性を評価する指標の変化が、それぞれ独立して厚さの変化と関連した。有酸素運動の前後には、脂肪の量と代謝の指標を組み合わせた評価が行われている。[20]

厚さ、体積、重さは同じ数字にならない

心外膜脂肪の画像測定では、どこかの断面で測る厚さと、全体を立体的に捉える量を分けたい。この違いを検討した磁気共鳴画像の研究では、うっ血性心不全の患者43人と健康な対照者28人を対象に、連続する画像から心外膜脂肪の全体量を求め、異なる断面の厚さの測定と比較した。[19]

全体量を評価したところ、心不全群の心外膜脂肪の重さは51g、対照群は65gで、心不全群のほうが少なかった。短軸方向の断面で調べた厚さも同じ方向の結果だったが、別の長軸方向の断面による厚さでは群間に有意差がなかった。同じ参加者でも、測る面が変わると差の見え方が変わったのである。[19]

さらに、全体量と断面の厚さの相関は中等度にとどまり、全体量を求める方法のほうが、測定者間のばらつきや再現性で優れていた。全体量は、連続した短軸の画像を積み重ねる方法で算出された。局所の断面と、心臓の周囲を立体的に捉えた測定では、得られる情報に違いがある。[19]

病気との関連を集めた解析は何を示すか

成人の心外膜脂肪を画像で測り、その後の心血管の転帰を追った研究を統合したメタ分析がある。29報、計19,709人が含まれ、厚さや体積が増えていることは、心臓死、心筋梗塞、冠動脈の血流を改善する治療、心房細動といった転帰との関連を示した。心房細動は心房の拍動が乱れる不整脈である。運動前後の画像だけを見る研究とは異なり、将来の出来事まで追っている点が重要だ。[16]

たとえば心筋梗塞との関連の統合オッズ比は2.63、95%信頼区間は1.39〜4.96だった。オッズ比は出来事の起こりやすさを表す比較指標で、信頼区間は推定の不確かさの幅を表す。心臓死との関連はオッズ比2.53で、95%信頼区間は1.17〜5.44だった。いずれも、初めに測った脂肪と、その後に起きた出来事を結びつけた解析である。[16]

別の系統的レビュー・メタ分析は、心膜周囲脂肪を扱う観察研究83報、73,934人をまとめ、冠動脈疾患などとの有意な関連を報告した。ここで使われている対象語は心膜周囲脂肪である。前述の心外膜脂肪を扱う解析とは、まとめた研究の範囲に違いがある。[6]

また、心膜周囲脂肪のメタ分析では、心房細動以外の不整脈や、心血管リスクを評価するスコアとの関係は、十分なデータがないとされている。心臓に関する言葉が並んでいても、すべての病気やすべての予測手段に同じ強さの裏づけがあるわけではない。「関連があった項目」と「判断する材料が足りない項目」を分けて読むと、結果の守備範囲が見えてくる。[6]

心外膜脂肪の解析では、主要な心血管の出来事が主な評価項目となった。心臓死、心筋梗塞、冠動脈の血流を改善する治療、心房細動は、それぞれ別の評価項目として検討されている。心臓の脂肪を予測の手掛かりとして調べる研究にも、何を予測するかによって複数の問いがある。[6][16]

測定方法別の解析もある。心外膜脂肪の連続的な測定値が1単位増えたとき、主要な心血管の出来事に対する調整済みハザード比は、断層画像の体積評価で1.74、95%信頼区間は1.42〜2.13だった。超音波の厚さ評価では1.20、信頼区間は1.09〜1.32である。体積と厚さでは1単位が表す量が異なるため、この比の大小で検査法の優劣を決めることはできない。[16]

数字で読む心外膜脂肪

24人:有酸素運動の研究に参加した肥満の中年男性。女性を含む一般集団の人数ではない。[20]

12週間:監督下で運動に取り組んだ研究期間。自分の効果判定の期限として固定する数字とは分けたい。[20]

29報:成人の心外膜脂肪と、その後の心血管の転帰を扱ったメタ分析の研究数。[16]

19,709人:そのメタ分析に含まれた参加者の合計。単独の運動試験の規模とは違う。[16]

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宮川涼 Founder

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