収入・学歴と体重の結びつき ブラジルの男女で逆を向いた生涯の社会経済状況

ブラジルの出生コホートでは、生涯の社会経済状況と体重の関連が男女で逆を向いた。国際的なレビューやアジアの大規模調査から、所得と学歴で異なる肥満との結びつきを確かめる。子ども時代からの暮らしや減量手術後の経過も手がかりに、体重を個人の責任だけで語れない理由を考える。

ブラジルのペロタスで生まれた子どもたちを、研究者が成人するまで追った。生まれたときだけの家計を比べるのでなく、成長の途中も含めた社会経済状況の積み重なりと、若い大人になったときの体格を照らし合わせた研究である。[20]

解析対象は3,292人で、評価したのは22歳時のBMI、身長に対する体重を表す指標である。暮らしの社会経済状況を累積して評価すると、その値が低い男性ほどBMIは低く、女性では逆に高かった。同じ町の出生コホート、つまり生まれた時期をそろえて追う集団の中で、関連の向きが男女で反対になった。[20]

収入や学歴と体重の関係には、こうした折り返しがある。国際的なレビューでも、国の社会経済的な発展の程度と、収入・教育・職業のどれを測るかによって、肥満との結びつき方が変わっていた。体格から暮らしぶりを決めつけるより、何をどこで測った結果かをほどくほうが、研究に近い読み方となる。[18]

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収入と学歴を一つの物差しにしない

社会経済状況という言葉を、この記事では研究で測られた収入、教育水準、職業などの条件をまとめる呼び名として使う。それぞれを交換可能な物差しにすると、大事な違いが消える。333件の研究を集めたMcLarenのレビューでは、発展の程度が高い国の女性で、社会経済状況が低いほど体格が大きいという関連は、教育と職業を指標にしたときによく見られた。一方、発展の程度が中程度や低い国の女性では、収入や物的な所有を使うと、社会経済状況が高いほど体格も大きい関連がよく見られた。[18]

このレビューが扱ったのは、1988〜2004年の公表研究である。古い研究も含む広い地図であり、現在の日本の個人へそのまま当てはめるものではない。それでも、収入も学歴も「生活の余裕」の一語に置き換えてしまうと、実際に観察された方向の違いを説明できなくなることは分かる。家庭の所得を尋ねた調査と、本人の最終学歴を尋ねた調査は、同じ質問への答えを集めているわけではない。[18]

シンガポールの21〜75歳、29,819人を対象とした横断研究は、その違いを同じ解析の中で比べた。ある時点の状況を調べる設計で、教育水準が高いほど肥満が少ない関連は、収入や居住地域の社会経済状況との関連より強かった。本人の学歴、所得、周辺地域の条件をひとまとめにせず、別々に見る価値がある。[11]

民族集団と肥満との関連は、本人と地域の社会経済指標では十分に説明されなかった。中国系を基準にした調整後の肥満のオッズ比は、女性ではマレー系5.01、インド系4.81、男性ではそれぞれ2.61と2.07だった。年齢、婚姻状況、教育、収入、居住地域の社会経済状況などを含むモデルでも、民族集団との関連が残った。肥満の判定にはアジアの基準が使われている。個人の所得に加えて社会文化的な条件を調べる必要性が、ここにも示されている。[11]

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国が変わると「高いほど」の向きも変わる

国際レビューでは、社会経済的な発展の程度が高い国から中程度・低い国へ移るにつれて、社会経済状況が高いほど肥満が多いという関連の割合が増え、逆向きの関連の割合が減った。この傾向は男女ともに見られた。指標による違いも含めた全体の分布として示されている。[18]

ここで大切なのは、「国が豊かになると、この人は痩せる」と読み替えないことだ。国をまたいだ研究の傾向と、ある個人の変化は、観察している単位が違う。レビューに含まれた関連の多くは横断研究によるもので、暮らしの条件と体格が同時に測られていた。収入を増やす介入の減量効果を集めたレビューとして読むと、設計を取り違える。[18]

中国の農村部で37,922人を調べた研究にも、一方向に整理できない結果がある。教育水準が低い女性は、高い女性よりBMIで判定した肥満のオッズが高かった。男性の同じ比較では明確な関連が確認されなかった。一方、1人当たりの月収と肥満の関連は、男性では高い側でオッズが高く、女性では明確でなかった。[12]

女性の低い教育水準との関連と、男性の所得との関連は、同じ研究の中で並存している。どちらかだけを切り取ると、研究が示した男女差と指標の違いの両方を落としてしまう。[12]

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男女差は生まれた世代によっても姿を変える

米国の成人56,820人を含む研究は、複数年の横断調査をまとめ、年齢と調査時期の影響を考慮しながら、生まれた世代ごとの所得と肥満の関連を推定した。白人女性では、所得が高い人ほど肥満の可能性が低い傾向が一貫して見られた。一方、黒人男性では、多くの世代で所得が高い人ほど肥満のリスクが高かった。[8]

所得による開きの強さも、世代間で一定ではなかった。研究は、第一次・第二次世界大戦後に生まれた一部の世代では開きが弱く、別の世代では強いと報告している。同じ国の平均値でさえ、その内部に性別や人種・民族集団、世代による異なる模様を含んでいた。[8]

これは、ある集団の性質を決めつけるための数字ではない。研究が示しているのは、所得という同じ指標と肥満との結びつきが、歴史的な条件を共有する集団によって変わることである。現在の年収だけを切り出す見方と、生まれてからの経験も含める見方では、拾える情報が異なると研究者は指摘している。[8]

ペロタスの追跡研究では、社会経済状況の累積が低い側で男性のBMIは低く、女性のBMIは高いという、段階的な関連が見られた。解析では、条件が積み重なるモデルに加え、特定の時期を重視するモデルと、社会的な立場の移動を扱うモデルも比較した。選んだモデルについて、調整前と調整後の関連を線形回帰で調べている。[20]

数字で読む、同じ比較でも違う確かさ

1.853:教育水準が高い女性を基準にした、低い女性のBMIによる肥満のオッズ比。95%信頼区間は1.625〜2.114だった。[12]

1.064:男性の同じ比較のオッズ比。95%信頼区間は0.924〜1.225で、違いがないことを示す1をまたいだ。[12]

1.192:男性の1人当たり月収とBMIによる肥満のオッズ比。95%信頼区間は1.055〜1.347であった。[12]

1.038:女性の月収とBMIによる肥満のオッズ比。95%信頼区間は0.951〜1.133で、こちらも関連は明確でなかった。[12]

オッズは、肥満に当てはまる確率と当てはまらない確率の比を指す。信頼区間は推定の不確かさを表す範囲であり、男女とも推定値が1を超えたことだけで結論をそろえると、教育でも所得でも違いが消えてしまう。中国の農村研究では、教育と所得を同じ物差しにした説明より、性別ごとに分けた結果のほうが具体的である。[12]

今の家計だけでは見えない暮らしの積み重なり

生涯の社会経済状況と肥満を扱った2025年のスコーピングレビューは、52件の関連研究を整理した。スコーピングレビューとは、研究の広がりや方法を見渡すための整理である。ここでは、影響を受けやすい時期、社会的な立場の移動、不利な条件の累積という異なる調べ方が使われていた。体重の背景を、現在の一点だけでなく時間の流れとして扱っている。[17]

低い社会経済状況が子ども時代、成人期、高齢期のいずれにあるか、不利な経過が続いたかといった条件が、肥満リスクの高さと結びついていた。また、研究の56%で、その結びつきは女性でより強かった。これは「女性の56%が影響を受ける」という人数の割合ではなく、整理した研究のうちの割合である。[17]

現在の収入が同じ人同士でも、それまでの経過が同じとは限らない。このレビューの見方を日常へ引き寄せるなら、体重の支援を考えるときに、今の支出だけで話を終わらせないということになる。研究は、社会経済指標だけでなく、建物や道路など生活環境に関する指標と体重の関係も対象に含めていた。[17]

幼い子どもの研究は、この時間の問題をもう少し細かく見せる。2〜4歳の子ども534人を追った研究では、世帯収入、毛髪中のコルチゾール、体格の推移を調べた。コルチゾールはストレス反応に関わるホルモンで、この研究では毛髪に蓄積した量を測っている。非常に低い所得が続いた家庭では、その蓄積量が比較対象より高かった。[6]

ところが、コルチゾールは体格指標の推移とは関連していなかった。所得が上がった家庭の子どもでは、ホルモン量に比較対象との明確な差がなくても、体格指標の年間の増加は比較対象より大きかった。家計、ストレス反応、体格を一直線につなぎ、ホルモンがすべてを仲介すると説明することには、この追跡研究は慎重な材料を与える。[6]

この研究の体格指標は、子どものBMIを基準の95パーセンタイル値に対する割合で表したもので、成人のBMIそのものや体脂肪率とは異なる。[6]

収入の区分も具体的だった。参加時の世帯年収は65,000ドル未満で、そのうち25,000ドル未満を非常に低い所得として扱った。比較の基準は25,000〜65,000ドルの家庭である。開始時点に加え、12、24、36か月後にも所得、毛髪中のコルチゾール、BMIを測った。単に「低所得の子ども」と一括りにせず、その中の所得差と、その後に所得が上がったかを分けた設計だった。[6]

開始時に非常に低所得だった家庭の子どもでは、BMIを基準の95パーセンタイル値に対する割合で表した指標の年間変化は0.40ポイントで、比較群は−0.62ポイントだった。所得が非常に低いままの群では年間0.34ポイント、所得が上がった群では0.51ポイント増え、比較群は−0.61ポイント。いずれも比較群との差は統計的に有意だった。所得の経過と体格の経過を、それぞれ繰り返して測った結果である。[6]

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宮川涼 Founder

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