グレープフルーツを毎食前に半分食べた12週間の試験では、体重が1.6kg減り、比較の群を上回った。一方、3つの試験を束ねた分析では、体重の差は有意でなかった。腹囲や血圧、血液の脂質の変化、柑橘の抽出物の試験との違い、薬との飲み合わせまで、論文の数字で確かめる。
減量に効くと言われる食べ物を並べると、グレープフルーツはたいてい上位にいる。食事と栄養の誤りや迷信を論じた2013年の論文は、パイナップル、りんご、きゅうり、全粒粉のパン、空腹時に飲む水と並べて、グレープフルーツを「人気は高いが科学的な根拠に乏しい」例に挙げた。[8]
一方で、毎食の前に生のグレープフルーツを半分ずつ食べた12週間の試験では、比較の群より体重が多く減っている。[1] 迷信と片づけるには試験がある。効くと言い切るには、ほかの試験の結果がそろわない。[2][10] 民間の言い伝えと論文の数字が、ちょうど半分ずつ重なっているような果物である。
生の果物を食べた試験、果汁やカプセルの試験、柑橘から取り出した成分の試験。三つを分けて並べると、体重、腹囲、血圧、血液の値の動き方がそれぞれ違って見えてくる。果物全般と体重の関係は「野菜と果物のダイエット 足すだけでは動かない体重と、食卓の置き換えの科学」に譲り、ここでは一つの果物に絞る。

毎食前に半分、12週間で何が起きたか
まず、2006年に発表された肥満の人91人の試験から見ていく。[1] 参加者は4つの群に無作為に分けられ、1日3回、毎食の前に決められたものを口にした。[1]
一つ目の群は、成分を含まないカプセルと、りんごジュース7オンス(207mL)。二つ目は、グレープフルーツのカプセルとりんごジュース。三つ目は、グレープフルーツジュース8オンス(237mL)と成分を含まないカプセル。四つ目は、生のグレープフルーツ半分と成分を含まないカプセルである。[1] 比較の相手は「何も食べない群」ではなく、りんごジュースを飲む群だった。この設計は、結果を読むときに効いてくる。
12週間後の体重の減り方は、生のグレープフルーツの群で1.6kg、果汁の群で1.5kg、カプセルの群で1.1kg、比較の群で0.3kgだった。[1] このうち比較の群より有意に多く減ったと報告されたのは、生のグレープフルーツの群である(P<.05)。[1] 1.6kgから比較の群の0.3kgを引くと、約1.3kgになる。論文が報告した群の差ではなく、ここで引き算しただけの値である。
ここで、比較の群が毎食前にりんごジュースを飲んでいたことを思い出したい。比較の相手は、何も口にしない人ではなく、食前に甘い飲み物を1杯とる人だった。[1] 生の果物の群が上回ったのは、その相手に対してである。半分のグレープフルーツをゆっくり食べる時間と、ジュースを1杯飲む時間とでは、食卓での過ごし方も違う。どの違いが体重に効いたのかは、この試験の設計からは切り分けられない。
参加者のうち、メタボリックシンドロームのある人だけを取り出した追加の分析では、生の果物、カプセル、果汁のいずれの群も、比較の群より有意に多く減っていた(P<.02)。[1] 糖を飲んだ2時間後のインスリンの値も、生の果物の群で比較の群より有意に下がり、インスリンの効きにくさが改善していた。[1] インスリンの効きにくさとは、血糖を下げるホルモンが効きにくくなった状態をいう。
著者らは、なぜ体重が減ったのか、その仕組みは分からないと明記している。[1] そのうえで、減量の食事にグレープフルーツを入れることは理にかなっていそうだ、と控えめに結んだ。[1] 仕組みが分からないまま、体重計の数字だけが少し動いた試験。効く側の根拠を探すと、まずこの姿に行き当たる。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
6週間の試験では、群の差が出なかった
この結果を確かめようとした試験もある。過体重の成人74人を対象にした2012年の無作為化比較試験は、まず3週間、生理活性のある成分の多い果物や野菜を控える食事で体の状態をそろえた。[2] その後、比較の食事を続ける32人と、毎食に生のグレープフルーツを半分ずつ加える42人に分け、6週間続けた。[2] 1日に3回半分ずつなので、1日1個半になる。6週間で数えれば60個を超える。皮をむいて房を取り出す手間だけでも、相当な量の仕事である。
結果は、体重、血圧、血液の脂質のどれについても、群の間に差が無かった。[2] グレープフルーツの群の体重の変化はマイナス0.61kg(±2.23kg)で、開始時と比べても有意ではなかった(P=.097)。[2] 著者らは、6週間毎日食べても、比較の条件に比べて体重、脂質、血圧を有意に下げないと結論している。[2]
ところが、同じ論文には目を引く数字も並ぶ。グレープフルーツの群では、開始時と比べて腹囲が2.45cm減り(P=.0002)、上の血圧が3.21mmHg下がった(P=.03)。[2] 総コレステロールは11.7mg/dL、LDLコレステロールは18.7mg/dL下がった。[2] これらはすべて、比較の群と比べた差ではなく、同じ群の始めと終わりを比べた差である。[2]
この違いは大きい。比較の群も同じ6週間を過ごし、同じように測られている。同じ期間に比較の群でも似た変化が起きていれば、始めと終わりの差は果物の効果とは言えない。群の間の差が出なかった以上、腹囲の2.45cmをグレープフルーツの手柄として数えることはできない。著者らも、血圧と脂質の改善は、肥満と心臓・血管の病気の予防の観点からさらに調べる価値があると述べるにとどめている。[2]
同じ研究グループは、炎症と酸化ストレスの指標も調べた。過体重や肥満の69人を、1日1.5個のグレープフルーツを6週間食べる群(37人)と、柑橘を除いた食事の群(32人)に分けている。[6] 介入の後、酸化ストレスの尿中の指標は両群で差が無く(12.4対15.9ng/mg クレアチニン、P=0.16)、炎症の血液の指標は低い傾向にとどまった(2.1対2.8mg/L、P=0.09)。[6] メタボリックシンドロームのある人や、開始時の酸化ストレスの値が高かった人では好ましい変化の兆しがあったが、著者らは、炎症と酸化ストレスを有意には下げないと結論した。[6]
3つの試験を束ねると、体重の差は消えた
一つの試験の結果は、偶然に左右されやすい。そこで、複数の試験を統合するメタ分析の出番になる。2017年に発表された系統的レビューとメタ分析は、医学文献の複数のデータベースを検索し、手作業でも文献をたどった。[10] 154件の候補から条件に合ったのは、過体重と肥満の人を対象にした3件の無作為化比較試験、合わせて250人だった。[10]
試験の質は中程度と評価された。[10] 体重の変化を統合すると、グレープフルーツの群と比較の群の平均差はマイナス0.45kgで、95%信頼区間はマイナス1.06kgからプラス0.16kgまでだった。[10] 区間がゼロをまたいでいるため、差は有意ではない。試験ごとの結果のばらつきを示すI²は53%で、結果がかなり割れていたことも分かる。[10]
一方、上の血圧は平均2.43mmHg下がり、95%信頼区間はマイナス4.77からマイナス0.09mmHgで、こちらは有意だった。[10] 血圧の結果のばらつきは0%で、試験の間でよくそろっていた。[10] 体重より先に、血圧の数字のほうが一貫して動いていたことになる。
著者らは、試験の数が少ないこと、介入の期間が短いこと、効果が出る最小の量が定まっていないことが、結論の範囲を狭めていると書いた。[10]
ここは物差しをそろえて読みたい。冒頭の試験の1.6kgは、生の果物の群が12週間で減らした量で、同じ群の始めと終わりの差である。[1] 統合の0.45kgは、比較の群との差の側の数字だ。[10] 別々の数字として並べると、単独の試験の引き算の差がおよそ1.3kg、3試験を束ねた平均差が0.45kgで、後者は有意でもなかった。1.6kgと0.45kgを直接比べると、物差しの違いで大きさを見誤る。グレープフルーツの皮をむく手間に比べて、体重の答えはかなり控えめである。
数字で読むグレープフルーツの試験
- 1.6kgと0.3kg:毎食前に生の果物を半分食べた群と、りんごジュースの比較の群の12週間の減量。[1]
- 0.61kg:6週間の試験でグレープフルーツの群の体重が減った量。開始時と比べても有意ではなかった。[2]
- 2.45cm:同じ群で開始時より腹囲が減った量。比較の群との差ではない。[2]
- 0.45kg:3試験250人を束ねた、比較の群との体重の平均差。同じ群の減量とは物差しが違う。信頼区間はゼロをまたいだ。[10]
- 2.43mmHg:同じ統合で上の血圧が下がった平均。こちらは有意だった。[10]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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