ごまとダイエットの科学 体重と血中脂質で違う補給試験の答えを食卓に生かす

ごまで血中脂質が改善しても、体重まで減るとは限らない。セサミン、ごまの種子、ごま油の補給試験を分け、メタ分析と減量中の比較試験から結果の違いを確かめる。中性脂肪とコレステロール、油を足す場合と置き換える場合の違いを押さえ、日々の献立でごまに期待する役割を考える。

ごまの袋には、体重計を動かす役目まで頼みたくなる。香りを足すだけのつもりが、健康によさそうだと思うと、ひと振り増やしたくなるものだ。けれども、血液検査の数字がよくなることと、体重が減ることは分けて考えたい。

セサミンの無作為化比較試験をまとめた研究では、総コレステロールと一部の血圧に改善がみられた一方、体重への効果は認められなかった。ごまをめぐる話で見失いやすいのは、この結果の分かれ道である。[2]

種子を食べる試験、調理油を替える試験、成分を補給する試験。それぞれ何を比べたかを確かめると、ごまを食卓に置く理由も、期待を載せすぎない方法も見えてくる。[2][4][5]

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セサミンで脂質が変わっても、体重は別の答えだった

最初に全体像をつかもう。人を対象としたセサミン補給の無作為化比較試験を集めた2022年の系統的レビュー・メタ分析には、7試験、計212人が含まれた。無作為化比較試験とは、参加者を偶然の割り当てで群に分け、補給した場合と比較条件との差を調べる方法である。メタ分析は、複数の試験の結果を統合して平均的な差を推定する。[2]

統合した総コレステロールの差は約−10.9 mg/dl、95%信頼区間は約−19.7〜−2.0 mg/dlだった。LDLコレステロールでは約−8.4 mg/dl、95%信頼区間は約−16.1〜−0.8 mg/dlとなった。信頼区間は、推定にどれほど幅があるかを見る手掛かりとなる。この結果は血液中の脂質の指標について、ごま由来の成分に検討する価値があることを示している。[2]

ところが同じ分析で、体重への効果は認められなかった。HDLコレステロール、中性脂肪、拡張期血圧についても効果は認められていない。収縮期血圧は平均約−3.7 mmHgだったが、血圧の変化を減量の証拠として使うことはできない。測った項目ごとに結果が異なるのである。[2]

ここで、健康によさそうという感想をいったん分解したい。健診で脂質の数値を指摘された人が知りたいことと、服のウエストを緩めたい人が知りたいことは重なる部分もあるが、同じ質問ではない。上の分析から直接答えられるのは、セサミン補給で脂質の一部が改善しうることと、体重を減らす効果は確認できなかったことだ。[2]

また、研究では試験期間や試験の設計、参加者の健康状態によって、総コレステロールなどの結果が変わることも示された。補給期間が長ければ指標が一定の割合で改善する、という強い関係は見いだされていない。長く飲むほど痩せる、という話をこの分析から作ることはできない。[2]

台所のごまを増やせば、この平均差をそのまま受け取れるとも考えないほうがよい。ここで統合されたのはセサミン補給の試験である。種子を料理に使った結果まで一緒に答えた研究として受け取ると、食べ方と結果の対応がずれてしまう。[2][5]

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種子とごま油では、試験の食卓そのものが違う

種子を使った試験もある。脂質異常のある38人を無作為に群分けした研究では、60日間、薬物治療の条件をそろえながら、介入群に毎日40 gの白ごまを食べてもらった。その際、ごまに相当する240 kcalを食事から取り除いていた。普段の献立にごまだけを追加する設計とは違う。[5]

この試験では、総コレステロール、LDLコレステロール、総コレステロールとHDLコレステロールの比が有意に低下した。一方で、体重やBMIなどの身体指標には有意な変化がなかった。脂質の変化と体重の変化が分かれる結果は、セサミンの分析だけに現れたものではない。[5]

この白ごまの試験では、脂質と身体指標に加え、血液中の酸化ストレスに関わる指標も介入前後で測っていた。脂質の酸化の指標であるTBARSは低下し、抗酸化に関わる酵素であるグルタチオンペルオキシダーゼとスーパーオキシドジスムターゼの活性は上昇した。著者らが報告した抗酸化状態の改善は、こうした測定に基づく。同じ参加者で体重とBMIには有意な変化がなかったため、抗酸化の指標と身体指標の結果も分けて読める。[5]

40 gという量は研究で用いた条件であり、減量のために全員が毎日食べる目標量にはできない。この試験から暮らしに持ち帰りたいのは、量をまねることより、食事の中で何と入れ替えたかに目を向ける姿勢である。ごまを加える側の皿だけ見ていると、研究で調整した食事の側が見えなくなる。[5]

別の無作為化二重盲検比較試験では、非アルコール性脂肪肝の女性60人を、ごま油とひまわり油の群に分けた。二重盲検とは、参加者と試験を評価する側に、割り当ての情報を伏せる方法である。両群とも毎日30 gの割り当て油を12週間使い、全員が1日500 kcalを減らす低エネルギー食を受けた。試験を完了したのは53人だった。[4]

両群で身体指標と収縮期血圧が低下したが、身体指標に対するごま油の優位性は認められなかった。脂質の各項目にも両群で有意な変化はなく、調整後の群間比較では拡張期血圧と総コレステロール/HDLコレステロール比に差がみられた。ごま油を使った群で体の数値が下がった、という部分だけ切り取ると、ひまわり油の群も低下した事実が抜け落ちる。[4]

この試験で食卓に起きたことは、油の選択と食事全体の調整が同時に進んだことだ。ごま油を買った翌日から、ほかの条件をそのままにして同じ結果を期待するのは飛躍がある。体重の話では、使用前後の変化だけでなく、比較した相手との差まで確かめたい。[4]

さらに、対象は脂肪肝のある女性である。立川で暮らす大人なら誰でも同じ反応をする、と広げる根拠にはならない。一方、自分に脂肪肝がなければ無関係と捨てる必要もない。食事全体を調整した中で油の種類を比べても、身体指標の差がはっきりしなかったという、問いへの答えを受け取ればよい。[4]

メタ分析が食い違うときは、脂質の項目と対象を見る

血中脂質を調べた研究でも、ごまならすべての数値が下がるという一枚岩の結果にはなっていない。2016年のメタ分析は、ごまやその画分を用いた10件の比較試験を統合した。中性脂肪は平均−0.24 mmol/L、95%信頼区間は−0.32〜−0.15 mmol/Lで、有意な低下がみられた。[17]

一方、総コレステロールは平均−0.32 mmol/L、95%信頼区間は−0.75〜0.11 mmol/L、LDLコレステロールは平均−0.15 mmol/L、95%信頼区間は−0.50〜0.19 mmol/Lだった。どちらも有意な差は認められず、HDLコレステロールにも有意な変化はなかった。中性脂肪には低下が示されたが、コレステロールを下げる効果を支持する証拠は不十分、というのがこの分析の結論である。[17]

先ほどのセサミン補給の分析では総コレステロールとLDLコレステロールが下がり、中性脂肪には効果が認められなかった。こちらでは中性脂肪が下がり、コレステロールでは有意差がなかった。この違いを「ごまの研究はどれも信用できない」と片づけるのも、「都合のよいほうだけ選ぶ」のも惜しい。統合している補給の形が違うことを、まず確かめたい。[2][17]

2016年の分析では、試験間の結果のばらつきも大きかった。ばらつきの指標は総コレステロールとLDLコレステロールでそれぞれ96%、中性脂肪で84%だった。平均値だけを見て、個々の食べ方や参加者でも同じ差になると考えるには無理がある。平均の向こうに、違う条件の試験が並んでいる。[17]

脂肪肝の女性の試験で、この区別をもう少し具体的に考えよう。ごま油を使う前と使った後で体の指標を比べると、低下がみられた。しかし、同じように食事を調整してひまわり油を使った人にも低下がみられた。そこで、ごま油を選んだから余分にどれだけ変わったかを知るには、両群の差を調べることになる。この試験は、身体指標についてその優位性を示していない。[4]

食品の体験談では、変えた食品の名前が印象に残りやすい。試験を読む際には、同時に行った低エネルギー食と、比較した油の名前も並べて覚えるとよい。ごま油を使いながら体の指標が下がったことを否定せず、それだけでごま油固有の減量効果と判定しない。この読み分けが、買い替える油への期待を適切な大きさに整える。[4]

数字で読むごまの補給試験

7試験・212人:セサミンの統合分析で、体重への効果は認められなかった。[2]

約−10.9 mg/dl:同じ分析の総コレステロールの平均差。95%信頼区間は約−19.7〜−2.0 mg/dlだった。[2]

40 g・60日間:白ごまの試験条件。食事から240 kcalを差し引き、体重には有意な変化がなかった。[5]

30 g・12週間:脂肪肝の女性が油を比較した条件。身体指標への効果にごま油とひまわり油の差は認められなかった。[4]

−0.24 mmol/L:ごまの比較試験を統合した中性脂肪の差。95%信頼区間は−0.32〜−0.15 mmol/Lだった。[17]

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