筋トレとリバウンド予防の科学 基礎代謝を守れば体重は戻らないのかを読む

筋トレをすれば基礎代謝が上がり、リバウンドを防げるのか。減量中の除脂肪量を守る研究と、減量後の体重維持を調べた試験を分けて読む。効果が認められなかった結果も含め、体重の減り方、安静時の消費エネルギー、続ける頻度をどう考えるかを立川のスタジオから整理する。

目標の服が着られるようになった。食事を減らす生活にも、ようやく区切りがついた。そこで浮かぶのが「これから筋トレをすれば、もう戻らないだろうか」という問いである。減量の終点に、維持の予定表が置かれていない。そんな場面から、この話を始めたい。

過体重・肥満の成人では、食事による減量に筋トレを加えると、除脂肪量を失うのを抑える根拠がある。ただし、除脂肪量を守ること、安静時の消費エネルギーを守ること、その後の体重増加を防ぐことは、研究で確かめる項目が違う。食事に筋トレを加えた研究では、除脂肪量の保持が認められた。[2] 維持期の筋トレ試験では体重維持の改善がなく、短期減量では安静時消費の低下も報告された。[4][7]

有酸素運動と筋トレの体脂肪への比較は、「有酸素運動と筋トレ、痩せるのはどちらか 体脂肪と内臓脂肪で変わる答え」に譲る。ここで読むのは、減量の途中で何を残し、終わった後に何を続けるかである。「筋トレがリバウンドを防ぐ」という短い言葉を、減量期と維持期にほどいてみる。[2][11]

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減らす期間に、筋トレは何を守るのか

まず、体重が減る量だけを比べた研究から見よう。過体重・肥満の成人を対象にした2025年の系統的レビューとメタ分析は、食事による減量に筋トレを加えた群と、食事だけの群を比較した。系統的レビューは条件に合う研究を集める方法、メタ分析はその結果を統計的に統合する方法である。対象となったのは18〜65歳の人を含む25件の無作為化比較試験であった。[2]

無作為化比較試験とは、介入を受ける群などへの割り当てを無作為に行う試験である。この統合で、体重の群間差は−0.32kgだったが、統計的に有意ではなかった。ところが、除脂肪量の減少は抑えられ、脂肪量の減少は大きくなった。体重の減少幅が似ていても、脂肪量と除脂肪量の変化は異なったのである。[2]

除脂肪量は、ここでは体重のうち脂肪を除いた部分として読む。筋肉量と同じ意味に置き換えると、結果を取り違える。高齢女性の試験では、除脂肪量とともに体内の水分も測定されており、筋トレをしない群で両方が減っていた。一方、たんぱく質とミネラルからなる量には群ごとの変化がなかった。この試験では、脂肪以外の量を水分とたんぱく質・ミネラルにも分けて確認していた。[8]

2025年の統合では、除脂肪量を守る効果の標準化平均差は0.40、脂肪量を減らす効果は−0.36だった。標準化平均差は、異なる研究の結果を共通の尺度に換算した値であり、kgにそのまま読み替える数字ではない。著者らが評価した根拠の確実性は、除脂肪量について中程度、脂肪量について高いとされた。筋力の改善も認められたが、その確実性は低かった。[2]

つまり、同じ程度の減量でも「脂肪を減らしながら、脂肪以外をなるべく残す」という目的に筋トレを位置づけられる。これは減量中の比較から言えることである。統合された試験では、筋トレ併用群の減量幅は2.5〜20.9kg、食事だけの群では0.7〜20.4kgと幅があった。体組成という身体の中身を調べた結果と、体重維持を調べた結果を別々に読む必要がある。[2][4]

別の2022年のメタ分析は、過体重・肥満の人を対象とした114試験、4,184人を統合している。筋トレだけを行った場合、運動しない対照群に比べて除脂肪量は平均0.8kg増え、95%信頼区間は0.6〜1.0kgだった。食事制限と筋トレを組み合わせた場合には、除脂肪量は維持されたと報告されている。筋トレ単独でも、運動しない群より脂肪量は平均1.0kg、体脂肪率は1.6%低かった。[15]

この統合で、筋トレと食事制限を合わせた介入の脂肪量の差は、介入しない群に比べて−5.3kg、95%信頼区間は−7.2〜−3.5kgだった。食事制限も含む組み合わせを、介入しない群と比べた値である。先ほどの−0.32kgは食事だけの群との差だった。比較相手を隠すと、同じ筋トレの話から正反対の印象が生まれる。[2][15]

たとえば、食事を見直しながら運動を始め、体重の減り方が期待より遅く感じられた場面を考える。そこで「筋トレは無意味だった」と決める前に、筋トレに何を期待していたかを確認したい。体重の減少を最優先にした評価と、除脂肪量をなるべく残す評価は違う。減量中の筋トレの価値を、体重差だけで見落とさないための区別である。[2]

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基礎代謝の話を、実際に測った項目へ戻す

「基礎代謝を上げたい」という相談は多い。減量と筋トレの研究で測られているのは、安静時代謝率や安静時エネルギー消費量、すなわち安静にしているときの消費エネルギーである。ここではそれを安静時消費と呼ぶ。日常で使う基礎代謝という言葉に、研究の測定結果を際限なく広げないためである。[5][6]

2006年のレビューは、除脂肪量が安静時代謝の重要な決定要因であり、減量で除脂肪量が失われることを考慮すべきだと整理した。ただし、安静時代謝の変化は、エネルギーを使う組織の量の変化だけで部分的にしか説明できないとも述べている。除脂肪量は重要である。このレビューは、食事の栄養素の構成、運動の種類、たんぱく質摂取を含む条件を検討している。[6]

よい結果が得られた例はある。2008年の無作為化による減量介入では、過体重で閉経前の女性94人が、有酸素運動、筋トレ、運動なしのいずれかに割り当てられた。食事によって約12kgの減量を行い、エネルギーの摂取と消費が釣り合った状態で体組成と安静時消費を評価した。減量の途中の状態だけを測った研究ではない点も、結果を読むうえで大切である。[5]

筋トレ群の除脂肪量は平均46.9kgから47.2kgへと維持され、有酸素運動群は45.4kgから44.4kg、運動なし群は47.9kgから46.4kgへ減少した。安静時消費は有酸素運動群と運動なし群で低下したが、筋トレ群では低下しなかった。筋トレ群で除脂肪量、安静時消費、筋力が保たれたという結果である。[5]

ここでの動詞は「上がった」より「保たれた」である。減量しても以前の安静時消費が保たれることと、筋トレを始めれば誰でも消費が大きく増えることは違う。この試験では、身体の組成に加えて最大酸素摂取量と筋力も測定した。安静時消費の測定には、呼吸のガスから消費エネルギーを調べる間接熱量測定が使われた。[5]

高齢の女性にも、除脂肪量を守った小規模な試験がある。平均年齢68歳の閉経後の過体重女性16人が、16週間の食事管理の研究を完了した。筋トレを行う群の除脂肪量の変化は−0.3kg、座位中心の群は−1.6kgだった。体重と脂肪量の減少に筋トレの影響は認められなかったが、除脂肪量を残す違いは観察された。[8]

この試験は、たんぱく質摂取量を体重1kgあたり1日1.0gとして管理した条件で行われた。筋トレの有無とともに、体内の水分、たんぱく質代謝も調べられた。減量に伴って全身のたんぱく質代謝は変化したが、その変化に筋トレの影響は認められなかった。身体に残った量と、体内でたんぱく質が扱われる過程を、別々に評価した試験である。[8]

筋肉が残っても、代謝が下がる試験はある

筋トレによって安静時消費が増えた試験を見ても、その理由は単純ではない。2014年の無作為化比較試験では、座りがちな健康な男女74人を対象に、週3日の筋トレを6か月実施した。筋トレ群の安静時消費は平均1,671kcalから1,843kcalへ増えたが、体重、体脂肪率、除脂肪量の変化には対照群との有意な差がなかった。[14]

さらに、安静時消費の変化と除脂肪量の変化に関連は認められなかった。筋トレ後に安静時消費が増えたことは、この試験で観察された結果である。脚で重りを押す種目の最大挙上重量は平均16%増えた。安静時消費と筋力の両方が改善し、除脂肪量の群間差は小さいままだったという組み合わせである。[14]

反対方向の結果を示すのが、2026年の研究である。余暇にスポーツを行う男女36人を、別々の減量研究から集めて二次解析した。二次解析は、既に得られたデータを別の問いに沿って調べる方法である。対象者は筋トレを行い、十分なたんぱく質を摂取していたが、安静時消費は約140kcal/日低下した。除脂肪量が増えた人にも低下が認められた。[7]

しかも、研究の予測式で見込まれるより大きな安静時消費の低下があった。減量による身体の変化から予測した消費と、実際に測った消費のずれである。運動をしている対象者でも、除脂肪量を増やすことが消費低下を完全に防ぐとは限らなかった。対象は余暇にスポーツを行う人であり、短期減量のデータを解析した結果として読む。[7]

体重の変化と安静時消費を別に考えさせる試験もある。閉経前の女性40人を、筋トレだけ、食事介入だけ、両方、対照の群に分けた2017年の無作為化試験では、介入群で脂肪量が減り、減少は両方を組み合わせた群で最大だった。一方、安静時代謝の変化に群間の有意差はなかった。除脂肪量の有意な増加は筋トレだけの群に認められた。[18]

脂肪が減ったという成果を、「代謝が上がったから」と説明できない結果である。逆に、代謝の数値が上がっていないから脂肪の減少もなかった、と判断するのも誤る。家庭で読むべきなのは、代謝の評判よりも、研究が何を測り、どの項目に変化があったかである。体重計は代謝の検査票まで兼ねてはいない。[18]

数字で読む筋トレと減量後の身体

0.40:食事だけの場合に比べ、筋トレ併用で除脂肪量の減少が抑えられた標準化平均差。25件の無作為化試験の統合で、根拠の確実性は中程度だった。[2]

0.8kg:114試験の統合で、筋トレ単独の除脂肪量増加。運動しない群との差で、95%信頼区間は0.6〜1.0kgである。[15]

約140kcal/日:スポーツを行う36人の短期減量で認められた安静時消費の低下。筋トレを行った条件でも低下した。[7]

−2.81kg:減量後の運動を調べた11試験の統合による体重の戻りの群間差。95%信頼区間は−5.12〜−0.51kgである。[11]

64%:閉経後女性の維持期の筋トレ試験で報告された平均実施遵守率。体重維持の改善は認められなかった。[4]

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