便秘という言葉は、定義を変えるだけで割合が2倍ほど違う。食物繊維は便の回数を増やしたが硬さや下剤の使用に差は出ず、減らして楽になった報告もある。肥満のある人の便意の感じ方、減量中の回数の減り方、運動との関連まで論文で分けて読み、体重の話と切り離す。
3.4%と7.3%。米国の成人9,963人を調べた研究で、便秘の人の割合はこの二つの値になった。調べた相手は同じで、違うのは定義だけである。週に3回未満の人を便秘と呼ぶと3.4%、硬くころころした便の人を便秘と呼ぶと7.3%になる。[19]
便秘という言葉は、便利なぶんだけ大ざっぱだ。毎朝出ないことを指す人もいれば、出ても硬いこと、出しにくいこと、お腹が張ることを指す人もいる。「便秘だから痩せない」と口にするとき、その便秘がどれなのかは、たいてい確かめられていない。
腸の話と体重の話も、一緒にされやすい。ところが論文を並べると、食物繊維を足す試験で動いたのはまず便の回数で、極端な低カロリー食に食物繊維を足した試験でも、減った体重は変わらなかった[14][17]。同じお腹の話に見えて、答えは別の欄に書かれている。

便秘の定義で、数字はこれだけ違う
先の米国の調査が使った硬さの物差しは、ブリストル便形状スケールという尺度である。便の形を型に分け、1型か2型を硬い便と数える[19]。回数は週に何度もあるのに硬くて苦しい人は、回数の定義では便秘に入らない。硬さの定義なら入る。同じ国の同じ調査でも、物差しを替えると名簿が入れ替わる。出張の3日間だけ出ない人と、何年も週に2回の人が、日常の会話では同じ一語でくくられているのだから、言葉の側にも無理がある。
研究の世界では、症状の組み合わせで判定するローマ基準もよく使われる。ブラジルの重い肥満の成人の調査はこの基準に便の形の尺度を併せて判定し、肥満の子どもの調査もローマ基準を使った[5][6]。定義が違えば、割合を横に並べて「どちらが多い」とは言いにくい。この記事の数字を読むときも、誰を便秘と数えたのかが先に来る。
念のために書いておくと、ここは診断のための記事ではない。どの定義に近いかを知ることは、受診したときに自分の状態を伝える言葉にはなる。便秘かどうかや原因の判断は、医師に任せる。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
肥満のある人に便秘は多いのか
ブラジルで、BMI(身長と体重から求める体格の指標)が35以上の18〜64歳の成人150人を調べた研究では、便秘の割合は24.67%だった[6]。4人に1人に近い。著者らは高い割合だと評価している。ただし、これは臨床試験の開始時のデータで、太っていない人の組は含まれていない。先の米国の数字とは定義も対象も違うので、どちらが高いと直接は言えない。
同じ研究で便秘と結びついていた条件は、体型の外にあった。5種類以上の薬を同時に使っていること、18〜29歳の若い層であること、過去に喫煙していたことで、調整後の有病率比(比べる相手に対して便秘の人の割合が何倍かを示す値)はそれぞれ2.99、3.12、3.24である。食物繊維の多い食品を毎日食べるかどうかとの関連は統計的に確かめられず、全粒穀物を食べないことが境界線上の2.92(95%信頼区間1.00〜8.49)にとどまった。薬の数が挙がった点は、便秘の背景を食事だけに求めない材料になる。ただし、どの薬が関わるのかまではこの調査から分からず、便秘を理由に処方の薬を自分で減らす話にもならない。気になるなら医師か薬剤師に尋ねる[6]。
子どもの研究では、便秘と肥満の関連がもう少し直接に調べられている。9本の研究、7,444人をまとめたメタ分析は、機能性便秘(病気などの原因が見当たらない便秘)のある男の子でも女の子でも肥満のリスクが高く、過体重・肥満の子どもでは機能性便秘のリスクも高いと報告した。先進国で目立ち、発展途上国では確かめられなかった[10]。どちらが先かは、この形の研究では決まらない。太っているから便秘になるのか、便秘の背景にある暮らしが体重にもつながるのか、両方を結ぶ別の何かがあるのか。

肥満のある人の便秘は、便意の感じ方が違うのかもしれない
平均50.3歳、85.8%が女性という、この記事の読者に近い集団の研究がある。慢性便秘で専門の施設を訪れ、肛門と直腸の働きを測る検査を受けた成人383人の記録を振り返り、BMIが30を超える人とそうでない人を比べたものだ[4]。
直腸で風船を膨らませる検査では、便意を感じた容量は肥満のある人が113.9 mL、ない人が103.7 mL。我慢できた最大の容量は163.5 mLと147.6 mLで、どちらも肥満のある人のほうが大きかった。ほかの条件を調整した後も、最大の容量の差は残った。肛門を閉める力も、安静時(37.3 mmHgと48.5 mmHg)、最大に締めたとき(104.8 mmHgと120.0 mmHg)とも肥満のある人で低かった。一方、排便のときの力の入れ方がかみ合わない状態(順に肥満のある人、ない人で61%と53%)や、風船を押し出せなかった人の割合(18%と25%)には差が無かった[4]。
便意は、ある程度の量がたまって初めて届く知らせである。その知らせの届き方が、体格によって少し違うのかもしれない。振り返りの研究なので原因までは言えないが、著者らは、直腸の感覚の変化が肥満のある人の慢性便秘に関わる可能性を述べている。便秘は「腸が動かない」だけの話とは限らず、出口の手前の感覚の話でもありうる。
便の回数と、腸の動きは同じものではない
「腸の動きが悪い」は、便秘の説明として最もよく聞く言い方だろう。測ってみると、話はそこまで単純ではない。重い肥満の子ども91人(8〜18歳)を調べた研究で、機能性便秘と判定されたのは19人(21%)だった。腸の通過時間をX線に映る目印で測ると、全体の通過時間が62時間を超えていたのは便秘の子の10.5%だけで、便秘でない子でも8.3%に遅れがあった。食事の記録にも、便秘の子とそうでない子で食物繊維や脂質の摂取に差は無かった[5]。
4〜12歳の慢性便秘の子ども54人の二重盲検の試験も、同じ方向を指す。便を柔らかくする薬をやめたうえで、食物繊維の混合物か偽薬を4週間とった。1日の排便回数の増えた幅は順に0.53回と0.23回、硬くない便が出た子の割合は60.0%と16.7%で、どちらも食物繊維の組が上回った。ところが腸の通過時間は両組で同じくらいで、薬や浣腸が再び必要になった割合も34.6%と35.7%で差が無かった[7]。回数は動いたのに、通過時間は動いていない。
別の試験では中国の便秘の患者で通過時間が改善したので、子どもの結果をそのまま持ち込むわけにはいかない[9]。言えるのは、「便の回数が増えた」と「腸の動きが速くなった」を同じ意味で使えないということだ。回数の変化を見て腸の調子を語るのは、改札を出た人の数から電車の速さを当てるようなところがある。
食物繊維が動かしたのは、まず便の回数だった
便秘と聞けば食物繊維、という連想には根拠がある。ただし根拠の範囲は思ったより狭い。2012年のメタ分析は1,322件の候補を調べ、条件を満たした質の高い無作為化試験5本をまとめた。便秘の人では、食物繊維は偽薬より便の回数を増やした。一方、便の硬さ、治療の成功、下剤の使用、排便時の痛みには、はっきりした差が無かった。下剤の使用をまとめた2本では、オッズ比が1.07(95%信頼区間0.51〜2.25)である[14]。回数は増えるが、それ以外が楽になるとまでは言えない。常識の土台は、数のうえでは意外に小さい。
食品で試した例もある。中国の便秘の患者33人と健康な人20人が、キウイを1日2回、4週間食べた試験だ。便秘の組では、残便感のない自然な排便が週2.2回から4.4回に増え、週に1回以上増えた人は54.5%だった。下剤を使う日も減り、腸の通過時間と直腸の感覚の検査も改善した。健康な人には変化が無かった[9]。小さな試験で、比べる偽の食品も無く、開始前との比較である。それでも、もともと困っている人にだけ動いた点と、先の便意の感じ方の話につながる直腸の感覚まで動いた点は読みどころになる。
数字で読む便秘と体重
3.4%と7.3%:米国の成人9,963人で、順に「週に3回未満」「硬い便」の定義を使ったときの便秘の人の割合。[19]
24.67%:BMI35以上のブラジルの成人150人のうち、便秘と判定された人の割合。比べる組は無い。[6]
163.5 mLと147.6 mL:慢性便秘の成人383人の検査で、順に肥満のある人、ない人が我慢できた風船の最大の容量。[4]
5本:食物繊維と偽薬を比べたメタ分析に入った無作為化試験の数。比べた項目のうち差が出たのは便の回数だけだった。[14]
0.7回と1.0回:極端な低カロリー食の試験で、順に食物繊維なし、食物繊維ありのときの1日の便の回数。普段の食事では1.9回だった。[17]
0.87:国際的な運動の指針を満たす人の便秘のリスク比。指針を満たさない人と比べた値で、13本の追跡研究を集めたレビューが示した。[2]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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