離婚と体重 別れた後に増えるとは限らない、10年の追跡とレビューが集めた7研究の向き

離婚の後、体重はどちらへ動くのか。韓国と米国の調査、10年の追跡、7研究をまとめた1本のレビューを読むと、増える筋書きとは違う向きが見えてくる。ただし男女で形は違い、増える人も減る人もいる。運動量、活動をやめた後の気分、喫煙までたどり、責めずに数字を読む。

別れた後、体重は増えるのか、減るのか。どちらだと思うだろうか。1本の系統的レビューが41,910件の題名を調べ、条件に合う研究として残したのは7研究だった[11]。

別れた後は気持ちが荒れて、夕食がコンビニの袋になり、夜に甘いものが増える。そんな筋書きなら、多くの人がすぐに思い描ける。友人の話として聞いたことがある人も、自分の体で覚えがある人もいるだろう。

レビューが示した向きは、その筋書きとは逆だった。結婚から離れた人では、死別でも離婚でも、男女とも体重、腹囲、BMI(身長と体重から求める体格の指標)が減る向きに動いていた。ただし対象は年齢を重ねた米国の人たちで、研究の質の評価は中程度、著者ら自身が証拠は限られると書いている[11]。減ったことが良いことかどうかも、この数字だけでは決まらない。

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一時点の数字では、結婚している人のほうが太っている

韓国の40〜69歳、137,608人を調べた研究がある。BMI25以上の人の割合を結婚している人と比べると、離婚・別居した人のオッズ比は男性で0.80(95%信頼区間0.69〜0.93)、女性で0.90(同0.83〜0.98)と、どちらも低かった[1]。オッズ比とは、起こりやすさを二つの集団で比べた比のことで、1より小さければ比べる相手より少ないことを示す。同じ研究で、未婚の人のBMI25以上も結婚している人より少なかったが、配偶者を亡くした女性では多く、結婚から離れた人がすべて同じ側に並ぶわけでもない[1]。これらの値が示すのは太っている人の割合が少し低いことだけで、離婚で痩せるという意味にはならない。低体重の人は未婚の人に多く、結婚している人に対するオッズ比は男性1.82、女性2.16だった[1]。太っている人が少ないことは、そのまま良い知らせとは限らない。

米国で20〜64歳の3,025人に電話で尋ねた調査では、結婚している男性は、結婚したことのない男性や以前結婚していた男性より太っており、肥満も多かった。他の条件をそろえてもこの差は残った。一方、女性では、他の条件をそろえると結婚の状態と太り方の関連は見られなかった[5]。韓国では女性にも差が見え、米国の調査では見えていない。国も年代も測り方も違うので、どちらかが誤りというより、男女で同じ話にはならないと受け取るのがよさそうだ。

この米国の論文は二つの見方を並べている。結婚という役割が人を太りやすくするという見方(因果)と、太っていると偏見で結婚に不利になり、結婚している人に太った人が少なくなるという見方(選択)である[5]。数字の向きだけでは、どちらの力がどれだけ働いているかは分からない。

この種の数字には、読み方の罠がある。ある時点で「離婚している人」を切り取ると、その中には別れて1年の人も20年の人もいる。別れる前から細身だった人も、別れた後に大きく体重が動いた人も、同じ欄に入る。「離婚・別居」と一つにまとめられることも多く、書類の上で離婚した人と、別々に暮らし始めたばかりの人は分けられていない[1][14]。数字が語るのは集団の今の姿であり、別れた後に一人の体に何が起きたかではない。

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「どの状態か」より「何が変わったか」

同じ人を追った研究に目を移すと、問いの立て方が変わる。全国規模の調査を4回にわたって行い、体重の変化の曲線を描いた研究は、結婚しているかどうかという状態より、結婚の状態が変わること(移行)のほうが体重の変化をよく説明すると結論した。さらに、結婚に入ることより、結婚が終わることのほうが体重への影響が大きいとしている。こうした影響は年齢、人種、性別によっても違うという[8]。

別れた後の体重を考えるとき、この見方は役に立つ。大事なのは戸籍の欄より、暮らしが動いた時期である。別れた年には、住む場所、仕事の時間、家計、台所を使う人数まで、いくつものことが同時に変わる。独身か既婚かの丸印だけで自分の体を説明しようとしても、説明できることは多くない。

結婚の終わりと一口に言っても、死別と離婚は別の出来事である。同じ研究の中で一緒に扱われていることもあるが、死別の後の体重は「配偶者との死別と体重 意図しない減少が目立つ一方、50〜60代の女性で肥満が多い調査も」の記事に譲り、ここでは離婚と別居を中心に置く。一緒に暮らす間の体重の話は「夫婦でダイエットすると体重はどう動くか 一緒に減らす研究と口出しの境界線」の記事に任せる。

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10年追うと、男性と女性で別の形になる

米国の全国調査で、成人を約10年の間隔で2回測った研究では、男性と女性で、結婚の変化と体重の関係が違っていた。男性では、離婚・別居のままだった人と、配偶者を亡くした人が、ずっと結婚していた男性より多く体重を減らしていた。女性で報告が大きく取り上げたのは結婚に入る側で、結婚した女性は、結婚を続けていた女性より体重が増えていた[2]。

別の米国の研究は、25〜44歳の男性1,552人を10年追い、BMIが4以上増えた場合を大きな増加、2以上減った場合を大きな減少として数えた。ずっと結婚していた男性と比べ、結婚が終わった男性の大きな減少のオッズ比は1.8(95%信頼区間1.0〜3.3)で、下限が1に触れる程度の関連である。増える側にも減る側にも多かったのは、結婚していないままの男性である。大きな増加のオッズ比が2.1(同1.1〜4.2)、大きな減少のオッズ比が2.5(同1.3〜4.7)だった。同じ研究で、大きな増加には家の収入の低さも独立して関連していた(オッズ比1.8、同1.0〜3.3)。結婚の変化だけが体重を動かしているのではない[16]。

平均の矢印だけを見ると「減る」と言いたくなる。しかし実際の人の動きは、もっと散らばっている。同じように一人でいる10年の中に、太っていく人も痩せていく人もいる。矢印は集団の傾きであって、誰かの行き先を決めるものではない。

10年という幅にも注意がいる。約10年の間隔で測る研究では、別れた直後の半年に何が起きたのかは見えない。大きく動いてから元に戻った人は、変化の小さい人として数えられる[2][16]。別れてからの時間ごとの体重の動きを、ここで挙げた研究は描いていない。

女性の読者には物足りないことを断っておく。離婚の後の女性の体重を単独で追った数字は、ここで集めた論文の中には少ない。年齢も偏っている。レビューの対象は年齢を重ねた人たちで、10年の男性の追跡は25〜44歳で始まり今の働き盛りの読者に近いが、調査の開始は1971〜75年である[11][16]。男性の数字、昔の数字を自分の体に写す前に、この偏りは覚えておきたい。

暮らしの中身は、まだほとんど測られていない

このレビューが最も率直なのは、結論の後半である。7研究のうち男女の両方を含むのは3研究で、調べられていたのは結婚の移行だけだった。結婚に入る人ではBMIが増えるという結果もここから出ているが、住まい方、社会参加、人付き合いの変化が体重に与える影響については証拠が無かった[11]。別れてひとり暮らしになったこと、友人との距離が変わったこと、仕事の量を増やしたこと。当事者にとって大きな変化ほど、数字になっていない。

食事も同じだ。離婚の後の食事を追った研究は、今回集めた論文の中には見当たらなかった。「ひとりの夕食で太る」も「食欲が落ちて痩せる」も、ここでは確かめられていない。減る向きの理由をストレスや食欲の言葉で埋めたくなるが、論文が示しているのは向きまでで、理由までは届いていない。

数字で読む離婚と体重

7研究:1本の系統的レビューが41,910件の題名から残した、人間関係の変化と体重を追った研究の数。どれも米国の研究で、調べていたのは結婚の移行だけだった[11]。

0.80と0.90:BMI25以上のオッズ比。韓国の40〜69歳で、結婚している人に対する離婚・別居した人の値を、順に男性、女性で示した[1]。

1.8:10年の追跡で、ずっと結婚していた米国の男性に対する、結婚が終わった男性のBMIの大きな減少のオッズ比[16]。

2.1と2.5:同じ追跡で、ずっと結婚していた男性に対する、結婚していないままの男性の、順に大きな増加、大きな減少のオッズ比[16]。

3研究:7研究のうち、男女の両方を含んでいた研究の数[11]。

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宮川涼 Founder

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