飲むカロリーは次の食事で差し引かれるのか 炭酸飲料とゼリービーンズの4週間

飲み物でとったカロリーは、次の食事で自然に差し引かれるのか。同じ量の糖質を炭酸飲料と菓子で比べた試験、置き換え食の飲料とバー、液体と半固形の乳製品を繰り返した実験を並べ、差し引きが不完全になる条件と、研究の結論が割れる理由、飲み物を足すか替えるかの違いを確かめる。

118%と−17%。同じ1880 kJの糖質を、固形の菓子で4週間とった時期と、炭酸飲料で4週間とった時期を比べた試験の数字である[7]。どちらも、足した分をほかの食事でどれだけ差し引いたかを示す「補償」の値で、固形の118%を著者らは「正確」と評した。液体の値はマイナスだった。液体の時期には、1日の総摂取エネルギーが飲んだ分とほぼ同じだけ増えていた[7]。

飲み物のカロリーは満腹に数えられにくい。ダイエットの話題でよく聞く説明だが、研究を並べると、その一文には収まらない結果も多い。液体のほうが満腹感の弱かった実験がある一方で、固形のほうが弱かった実験もあり、2003年のレビューは証拠が決着していないと書いた[5]。

ここで追うのは、甘い飲み物の糖や甘味料の是非とは少し違う問いだ。同じエネルギーを「飲む」か「食べる」かで、その後の食欲と食事の量がどう変わるか。その差はどんな条件で大きくなり、どんな条件で消えるのか。差し引きの仕組みが見えると、飲み物を我慢する以外の打ち手も見えてくる。

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差し引きが働かなかった4週間

冒頭の数字は、DiMeglioらが男性7人と女性8人を対象に行った交差試験から出ている[7]。交差試験とは、同じ参加者が時期を変えて両方の条件を経験し、自分自身と比べる方法だ。参加者は1日1880 kJの炭水化物を、炭酸飲料として飲む4週間と、ゼリービーンズとして食べる4週間を、4週間の休止期間をはさんで過ごした[7]。

いつ、どう分けてとるかは本人に任された。食事の記録は無作為に選んだ日に集め、体組成は毎週測った。身体活動は各期間の前後に、空腹感は休止期間と各期間の中ほどで評価している[7]。

固形の時期には、自由にとる食事のエネルギーが、その時期に入る前より有意に減った。補償は118%で、菓子の分を上回るほど、ほかの食事が減ったことになる。液体の時期には、自由にとる食事の摂取が減らなかった。体重とBMI(体重を身長の2乗で割った体格の指標)が有意に増えたのは、液体の時期だけである[7]。

身体活動と空腹感は、どちらの時期も変わらなかった[7]。飲んだ時期の参加者が、特別にお腹をすかせていたわけでも、体を動かさなくなったわけでもない。お腹の感じ方は同じなのに、食べる量の帳尻だけが合わなかった。この試験でいちばん気味が悪いのは、本人が何も異変を感じないまま差が積み上がった点だろう。

もっとも、参加者は15人で、甘い炭酸飲料と菓子という特定の組み合わせを比べた試験だ。牛乳やスープや果物のスムージーに、そのまま当てはめられるとは限らない。それでも、飲んだ分が本人の気づかないところで上乗せされうることを、体重の変化まで測って示した。この試験の重みはそこにある[7]。

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飲む朝食と食べる朝食で、空腹の戻り方が違う

年齢を上げると、同じ問いはどう見えるか。Stullらは50〜80歳の健康な男女24人(男性12人、女性12人、BMIは22〜30)を対象に、置き換え食を飲料かバーでとってもらった[10]。量は各人の1日の必要エネルギーの見積もりの25%で、栄養素の組成はそろえてある。一晩絶食したあとの朝に試験を行い、1週間あけて条件を入れ替えた[10]。

120分後にオートミールを「心地よい満腹」まで食べてもらうと、飲料のあとはバーのあとより平均13.4%多く食べた。食後15分から120分までの空腹感の合計も、飲料のほうが高かった。一方、食べたい気持ち、食べ物のことが頭から離れない度合い、満腹感の3つには有意な差が出ていない[10]。

女性だけで比べた試験もある。Willisらは、BMIが平均21.2の女性14人に、液体の朝食(果汁と脱脂乳)と固形の朝食(オートミール、ブルーベリー、りんご)を別の日にとってもらった[18]。どちらも410 kcalで、食物繊維はどちらも10 gにそろえている。胃の中身が出ていくまでの時間、つまり胃排出時間は、飲み込むカプセル型の測定器で測った[18]。

食物繊維の量は同じでも、胃排出時間はオートミールの朝食のほうが約1時間長かった。空腹感もオートミールのあとのほうが低く、満足感と満腹感はわずかに高かった。ただし、昼食でとった食べ物と飲み物の量に差は出ていない[18]。

通勤前に果汁と牛乳で朝食を済ませる日と、オートミールに果物を添える日を思い浮かべてほしい。410 kcalという数字は同じでも、昼前に空腹を覚える時刻はずれるかもしれない。ただ、この試験で測られたのは空腹の感じ方と昼食の量までで、その日の総量や体重までは追っていない[18]。

胃にとどまる時間と満腹感の関係は、もっと前から調べられている。Carbonnelらは9人のボランティアに、エネルギーの8割を固形でとる2500 kJの食事を、水分の多い薄めた形と、量の少ない濃縮した形で食べてもらった[8]。満腹感の強さと持続時間は、固形分の胃排出時間と有意に相関した。相関係数は0.60と0.67である。一方、食事のエネルギー密度は満腹感にも6時間後の食事量にも影響しなかった[8]。

二つの朝食の試験は、空腹感では固形に軍配を上げながら、次の食事の量では答えが分かれた。片方は飲料のあとに13.4%多く食べ、片方は差がなかった[10][18]。対象の年齢も、次の食事までの間隔も、食べる量の決め方も違う。いま言えるのは、液体の朝食は空腹が戻りやすい傾向があるが、それが次の皿の量にまで表れるかは条件しだいだ、というところまでだ。

口に入る前に「どれだけ満たされるか」は見積もられている

液体が満腹に数えられにくい理由として、胃の中の動きとは別の説明もある。食べる前の見込みだ。Hogenkampらは、平均21歳、BMI平均21.8の53人に、エネルギーをそろえた乳製品を液体か半固形で、5日間続けて朝食にとってもらった[11]。1日目と5日目は好きなだけ、2〜4日目は決まった量を食べる設計で、条件を入れ替えて両方を経験させている[11]。

食べる前に尋ねた「これでどのくらい満たされそうか」という見込みは、すべての日で半固形のほうが高かった。好きなだけとった量は、1日目が液体391 g、半固形277 g、5日目が液体477 g、半固形375 gで、どちらの日も液体が多い[11]。

興味深いのは、決まった量をとった日の変化だ。2日目は、半固形のあとのほうが空腹感が低く満腹感が高かった。4日目にはその差がなくなった。同じ量を食べ続けるうちに、体の感じ方としては「同じくらい満たされる」に近づいたことになる[11]。

それでも見込みは低いまま動かず、好きなだけとる量も液体のほうが多いままだった。著者らは、見た目や口当たりなどの感覚の手がかりから生まれる見込みは簡単には変わらないと結論している[11]。体が分かっても、目と口の見積もりはなかなか書き換わらない。

別の実験では、口当たりよりエネルギー密度のほうが効いた。27人(平均21歳、BMI平均22.2)が、なじみのない試験食品を、100 gあたり30 kcalの低エネルギー型か130 kcalの高エネルギー型で、それぞれ液体か半固形の4条件で食べた[13]。決まった量を3日間、朝昼晩の9回、食事の一部として口にし、その後のビュッフェは好きなだけ食べてよいことにした[13]。

低エネルギー型の条件では、1日のビュッフェの摂取が1日目の1745 kcalから3日目の1979 kcalへ増えた。高エネルギー型では1523 kcalから1589 kcalで、変化がなかった。液体か半固形かは、摂取に影響しなかった[13]。何度か食べるうちに「この食品は軽い」と学ぶと、人はほかの皿で埋め合わせる。その学習は口当たりにかかわらず起きた。液体であることそのものより、その食品のエネルギーを体が覚えられるかが効いた場面である[13]。

数字で読む液体と固形の比較

118%と−17%:同じ糖質を固形と液体で4週間ずつとった試験の補償。体重とBMIが増えたのは液体の時期だけだった[7]。

13.4%:50〜80歳の24人が、飲料の置き換え食のあとに、バーのあとより多く食べたオートミールの量[10]。

約1時間:410 kcal・食物繊維10 gにそろえた朝食で、オートミールのほうが長かった胃排出時間。昼食の量は変わらなかった[18]。

391 gと277 g:液体と半固形の乳製品を、初日に好きなだけとった量。5日目も液体が多かった[11]。

1745 kcalから1979 kcal:軽い試験食品を3日食べ続けた条件で、ビュッフェの1日摂取が増えた幅[13]。

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