脊髄損傷のあとの体重管理 消費が減った体で脂肪と筋肉、腹囲をどう測るか

脊髄損傷後の体重管理は、体重の増減だけでは判断しにくい。消費エネルギーの変化、脂肪と筋肉の割合、腹囲と体組成の測定を研究から確かめる。個別の栄養支援で変わった指標と変わらなかった指標、腕の運動の限界も整理し、主治医や栄養の専門職と管理の目標を考える。

脊髄損傷のあとには、脂肪が増える一方で筋肉などの量が減り、体の中身そのものが変わりうる。体重計の数字が同じでも、脂肪と筋肉の配分まで同じとは限らない。神経原性肥満と呼ばれるこの問題には、動く機会に加えて神経や代謝の変化も関わる。[6][12]

同じ体重であっても、以前と同じ体組成とは限らない。体組成とは、脂肪や脂肪以外の組織など、体を構成する中身のことだ。脊髄損傷後を扱うレビューは、筋肉や骨の減少と、脂肪組織や筋肉、骨髄、肝臓への脂質の蓄積を論じている。[12] 体重の数字だけに、管理の仕事を全部任せるのは難しい。

筋肉と脂肪を併せて見る一般的な話は、「サルコペニア肥満とは何か」の記事に譲る。ここでは脊髄損傷後に絞り、消費をどう見積もり、何の変化を成果として評価するかを考える。

ベルリンマラソンの競技中にハンドサイクルで走行する参加者たち 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

消費の変化を「動かなくなったから」で終えない

脊髄損傷後の消費エネルギーを扱ったレビューでは、除脂肪量の減少、交感神経の機能の変化、組織を作る働きの不足が挙げられている。除脂肪量は脂肪以外の組織を合わせた量であり、筋肉だけを意味しない。食事から入るエネルギーが、変化後の消費を上回ると脂肪が蓄積しやすいという整理である。[6]

この整理は、「以前と同じだけ食べている」という本人の感覚を否定しない。摂取量が同じでも、比較する相手である消費が変わっていれば、収支も変わりうる。受傷前に体重を維持できていた食事量を、そのまま現在の必要量と見なさない理由になる。[6] 食べ方の問題を考える出発点は、過去の自分との根性比べより、現在の体の条件にある。

消費の把握について、このレビューは間接熱量測定を重視している。体のガス交換から代謝を測る方法で、計算式による予測と実測の違いを検討し、診療での活用の重要性を論じたものだ。[6] 医療機関で必要量の話をするときには、示された数字が実測に基づくのか、予測によるものかを確かめる視点になる。

ただし、消費の低下から、全員に共通する食事の削減量を決めることはできない。栄養に関する包括的レビューは、一般の人向けの食事の推奨が、脊髄損傷後の体組成や代謝、栄養状態の変化を十分に扱っていないと指摘している。脊髄損傷に特化した、十分な根拠に基づく栄養の基準値も整備が課題であり、個人の必要量を正確に評価する方向を示している。[18]

家族が食事を用意する場合も、「量を減らす役」を引き受ける前に、何を基準に食事を調整しているかを共有したい。エネルギーだけを切り離すのでなく、必要な栄養素をどう確保するかも、同じ検討の中に置く。少ない消費に合わせることと、栄養の不足を避けることを両立させる難しさが、このレビューの中心にある。[18]

初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。

体験レッスンを予約体験専用 03-6665-0898LINE

BMIの区分より、測定の目的をはっきりさせる

脊髄損傷後の肥満の測り方を整理したレビューでは、体重と身長によるBMIが最も広く使われる一方、採用する区分や測定法にはばらつきがあった。脊髄損傷に特化したBMIの区切りとして22 kg/m2を用いる研究も紹介されているが、レビューは統一された肥満分類がないと述べている。[14] この値を読んで、直ちに個人の減量目標へ変換するのは避けたい。

後年の生理学のレビューも、脂肪が多く除脂肪量が少ない体組成を考慮する文脈で、この区切りを取り上げている。[12] 医師には、体格の分類をしたいのか、脂肪の蓄積を追いたいのか、代謝の問題を評価したいのかを聞き分けると、検査の意味がつながる。[12][14]

体組成測定の研究を整理したスコーピングレビュー、つまり研究の範囲と不足を見渡すレビューは、42本を対象にした。再び測ったときの安定性と、別の測定との整合性の両方について、許容できる裏づけがあったのは、全身のDXAだけだった。DXAはX線を用いて体組成などを評価する検査である。[11]

同レビューでは、費用と利用のしやすさが実務上の障壁に挙がった。研究者だけでなく当事者や実務家の意見も取り入れられており、信頼できるなら簡便な道具を使いたいという希望も報告されている。[11] 精密さと続けやすさは、同時に考える条件なのだ。

腹囲や皮下脂肪の厚さについては、実用的で費用の低い測定として、信頼性や妥当性の検証を優先すべきだとされている。[11] 腹囲には、簡便な測定としての検証を積み重ねる課題がある。何を代わりに測っているのかを踏まえて、使える道具を選ぶのが現実的である。[11][14]

測定の話を診療に持ち込むとき、最初から検査名だけを指定するより、確かめたい変化を伝えると整理しやすい。たとえば全身の脂肪量と腹部の変化では、知りたい対象が違う。体組成の評価を目的別に選ぶというレビューの考え方は、測定の名前を覚える以上に実用的だ。[11][14] 手元の結果を比べる場合も、測定法が違っていないかを確かめたい。機器を替えた場合はその違いも医療者と共有し、経過を読む。[11]

yogaのレッスン前の様子生徒の足もとにあるヨガマット 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

脂肪と筋肉の割合には、体重とは違う情報がある

慢性期の脊髄損傷がある男女70人を調べた横断研究では、脂肪量の割合、除脂肪の組織の割合、両者の比が、炎症の指標やメタボリックシンドロームと関連していた。中でも脂肪の割合と除脂肪の組織の割合の比が、最も強い関連を示した。[2] 横断研究で分かるのは同じ時点での関連であり、比を変える介入による病気の予防効果は別途検証が必要だ。

この研究が面白いのは、脂肪の多さだけに注目しなかった点だ。脂肪の割合の高さと、除脂肪の組織の割合の低さを合わせたほうが、対象者の炎症や代謝の問題を統計的によく説明していた。[2] 「何kg減ったか」に加えて「何が減り、何が残ったか」を問う根拠になる。

この70人の研究では、脂肪と除脂肪の組織の割合は、いずれも高感度CRPという炎症の指標と有意に関連した。両者の比は高感度CRPとの関連が最も強く、IL-6という別の炎症の指標にも、調べた体組成の指標のうち唯一有意な関連を示した。[2] 同じ「炎症」でも測定対象によって関連の現れ方が異なり、体重だけで代謝の状態を代表させにくい様子が見える。

測定法の研究には対象者の偏りもある。前述のスコーピングレビューに含まれたのは男性1,011人、女性143人であり、女性を対象にした測定法の研究も優先課題とされた。[11] 女性が自分の測定結果を見るときも、脊髄損傷の研究という共通点だけで、測り方の確かさが十分に検証済みだと考えすぎないことが大切だ。

受傷後の時間を、食事支援の設計に入れる

新たな脊髄損傷後にリハビリを終えた85人の診療録を振り返った予備的研究では、リハビリ入院時から最終追跡までのBMIは平均2.3 kg/m2増えていた。最終追跡は受傷後平均5年であった。[19] 過去の診療情報を調べた結果であり、体重増加が食事の何によって起きたかを特定する試験ではない。

正常の区分から過体重や肥満へ移った人では、急性期リハビリ後の最初の1年に増加が最も大きかった。[19] 退院を、体重管理の支援も終わる区切りにしないための情報だ。体格だけでなく、いつ受傷し、どの段階の変化を見ているかが、食事支援を組み立てる軸になる。

同じ研究では、神経学的な損傷の高さ、障害の区分、主な移動手段、入院時の年齢は、BMIの変化を有意に予測しなかった。[19] 「この移動方法だから必ず増える」と先回りするより、本人の推移を確認するほうに重心を置きたい。集団の平均的な経過と、個人の先行きの決めつけを分けておく。

この研究では、入院時のBMIと最終追跡時のBMIにも有意な相関があった。入院時の評価は受傷後平均45日であり、そこから生活の場が変わった後までの経過を追っている。[19] 退院前に受けた説明と、その後の体の変化を結び直す仕事には、現在の必要量を個別に評価するという栄養レビューの視点も重なる。[18]

数字で読む脊髄損傷後の評価

62人:受傷後の個別栄養支援を通常ケアと比べた無作為化比較試験の人数。[1]

−4.0 cm:個別栄養支援と通常ケアを比べた、1年後の腹囲の変化の調整済み群間差。[1]

42本:体組成の測定法について研究の範囲と不足を整理したレビューの論文数。[11]

+2.3 kg/m2:受傷後平均5年の追跡までに見られたBMIの平均増加。[19]

5人:受傷後早期の歩行訓練で筋肉と骨を追った症例集積の人数。[3]

初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。

体験レッスンを予約体験専用 03-6665-0898LINE

💬 ご質問がある場合はこちらからどうぞ

オンザショアのチャットで質問する(24時間受付)

レッスン内容・料金・体験のご予約など、気になることをお気軽にお尋ねください。

author avatar
宮川涼 Founder

1

2

関連記事

ご体験予約