「ハーブ」をうたう海外の痩身製品から、市場を外された肥満の薬シブトラミンなどが見つかってきた。香港で精神病の症状で入院した16人の記録、米国で15年間に見つかった1068製品、見た目や表示では見分けられない理由、買う側が取れる行動まで論文で確かめる。
香港に、臨床の毒物分析を受け持つ施設がある。毒物の分析が必要な患者が紹介されてくる高次の施設としては、この地域でただ一つだ。そこで働く医師たちは、ここ5年ほどの患者にある偏りがあることに気づいた。「ハーブの痩身製品」を飲んでいた患者に、精神病の症状がふだんより目立って多い。[14]
医師たちは、2004年1月から2009年10月までの記録を見直した。精神病の症状で入院し、シブトラミンか、その構造によく似た物質が混ぜられた痩身製品を飲んでいたと確かめられた人は16人。うち15人が女性で、年齢の中央値は19歳、いちばん若い人は15歳だった。[14] 患者が飲んでいた「ハーブ」の痩身製品20品を分析すると、16品からシブトラミンが出た。[14]
シブトラミンは、肥満の治療薬として使われていた薬である。[15] その薬が、箱のどこにも名前のないまま、ハーブの顔をして10代の女性の手にまで渡っていた。
香港の16人に起きていたこと
16人の記録に残っていた症状は、幻聴が10人(63%)、幻視が6人(38%)、誰かに狙われているという被害的な考えが6人(38%)、妄想が4人(25%)、死にたい気持ちが2人(13%)だった。[14] 痩せたくて飲んだ製品と、入院するほどの心の症状。この2つが、同じ記録の中に並んでいる。
製品の中身も細かく調べられている。シブトラミンそのものが出た16品のほかに、シブトラミンから化学構造の一部が外れた類似の物質が2品と1品から見つかった。[14] 混ぜられていた薬はそれだけではない。フェノールフタレインが9品から出たほか、フェンフルラミン、マジンドール、動物の甲状腺の組織、利尿薬のヒドロクロロチアジドとスピロノラクトンも見つかった。[14] 1つの「ハーブ」の製品に、何種類もの薬が重なっていたことになる。
入手先を明かした8人のうち、4人はインターネットで、1人は香港の店頭で買い、3人は香港の外で手に入れていた。[14] 地元の店頭で買ったのは、1人だけだった。
この研究の読み方には注意がいる。集められたのは、精神病の症状で入院した人だけである。同じ製品を飲んだ人のうち何割に症状が出たのかは、この設計では分からない。著者らも、製品の使用と精神病の症状とのあいだに関連を観察したと書くにとどめ、これがシブトラミンのまれな副作用なのかどうかは、さらに研究が要るとしている。[14] シブトラミンと精神病の症状を結びつけた報告は、2000年以降、単独の症例として数例が出ていただけだった。[14] それでも、分析した20品のうち16品にシブトラミンが混ぜられていたことは、推測ではなく分析の結果である。[14]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
米国の15年間の記録に載った1068の製品
香港の16人は、一つの地域の、一つの施設の記録だ。もっと大きな網もある。米国食品医薬品局(FDA)は2007年に、医薬品の有効成分が混ぜられた栄養補助食品を見つけ出すためのデータベースを作った。2022年の分析は、そこに2007年から2021年までに載った記録を調べ、有効成分の混入が見つかった製品が重複を除いて1068あったと報告した。[9]
いちばん多かったのは、性機能の増強をうたう製品と、減量をうたう製品である。[9] 減量の製品に最も多く入っていた成分はシブトラミンで、心臓と血管の有害事象を理由に市場から外された薬だった。シブトラミンに似た構造の物質、がんの危険を理由に米国の市場から外されたフェノールフタレイン、フルオキセチンも見つかっている。[9] 性機能の製品では、1つの製品に5種類もの有効成分が入っていた例があった。[9]
一方で、筋肉づくりをうたう製品は2016年より前には混入がよく見つかっていたが、2017年以降は新たに見つかっていない。[9] 混入の起きやすい分野は時期によって入れ替わるが、減量の製品は15年分の合計で上位に入っていた。
論文は、消費者にとっての危険を4つ挙げている。製品に含まれる有効成分が表示されていないこと、本来なら医師の管理のもとで使う処方薬の手順を飛び越えてしまうこと、FDAが禁じた成分が使われていること、そして誰も調べたことのない組み合わせで薬が混ぜられていることだ。[9] 1068という数は、見つかった製品の数であって、出回った製品の総数ではない。データベースは、見つけたものしか数えられない。
混ぜられてきた薬の顔ぶれ
痩身の製品と性機能の製品の混入をまとめた2017年のレビューは、痩身の製品で最も多い混ぜものをシブトラミンとした。セロトニンとノルアドレナリンという脳の伝達物質の再取り込みを妨げる、肥満の治療薬である。[15] 調べられた痩身の製品の多くからは、シブトラミンとその多数の類似の物質に加えて、甲状腺ホルモン、食欲を抑える薬、利尿薬、刺激薬、下剤も見つかっていた。[15]

写真: Tom Varco / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
米国の規制をまとめた2017年のレビューは、フェネチルアミンと呼ばれる一群の物質に注目した。植物にもともと含まれるもの(エフェドラ、シトラス・アウランチウム、アカシア)と、合成されたものがある。そして減量の製品からは、クレンブテロール、フェンフルラミン、シブトラミン、ロルカセリンといった、この一群に属する薬そのものが見つかっていた。[13] フェンフルラミンは、香港の患者の製品からも出ている。[14]
ここでの要点は、混ぜられているのが、名もない怪しい物質ばかりではないということだ。多くは、承認された医薬品や承認されていない薬、そして市場から外された薬である。[9][13][15] 量を決め、飲む人を選び、副作用を見ながら使うはずだった薬が、その手順をすべて省いた形で、ハーブの製品の中に入っている。
混入はどれくらいの割合なのか 数えきれていない現状
では、こうした製品は全体のどれくらいなのか。この問いには、まだはっきりした答えがない。
2002年の系統的レビューは、6つのデータベースを言語を問わず検索し、中国の生薬の製品に合成の医薬品が混ぜられていたという原著のデータを集めた。見つかったのは症例報告18本、症例集積2本、分析の研究4本である。[1] 混ぜられていた薬には、副腎皮質ステロイドのように重い副作用と結びつく薬が含まれ、患者が深刻な害を受けた例もいくつもあった。[1] 台湾からの1つの報告は、調べた検体の24%に、少なくとも1つの通常の医薬品の成分が含まれていたことを示唆している。[1]
同じ著者は同じ年に、アジアの生薬の製品に重金属や表示のない処方薬が含まれるという証拠を、別の論文でも点検した。とくにインドと中国の製品が問題とされたが、データの多くは個別の事例の報告で、どれくらいの割合で起きているかを示すには足りないと書いている。[8] 薬の混入は、定義からして詐欺にあたる。重金属のほうは、薬効を期待した意図的なものも、偶然のものもありうる。[8]
2013年には、生薬の製品の混入と汚染を扱った系統的レビュー26本を、さらに束ねて評価した研究が出た。混ざっていたのは、ほこり、花粉、虫、ネズミ、寄生虫、微生物、かび、毒素、農薬、有害な重金属、処方薬などで、最も重い害には無顆粒球症、多くの臓器が働かなくなる状態、肝不全や腎不全、昏睡、死亡までが並ぶ。[12] 混入はインドの伝統的な製品で、汚染は中国の伝統的な製品で、最も多く記録されていた。[12]
24%という数字は、1つの地域の1つの報告で、痩身の製品に限った数字でもない。[1] 一方で、割合を決めるにはデータが足りないとする指摘もある。[8] いま言えるのは、混入がまれな例外とは言いきれず、その頻度はまだ測りきれていない、というところまでである。
数字で読む表示にない薬
- 16人:香港で、シブトラミンなどが混ぜられた痩身製品を飲み、精神病の症状で入院した人。15人が女性、年齢の中央値は19歳。[14]
- 20品中16品:同じ研究で、患者が飲んでいた「ハーブ」の痩身製品からシブトラミンが出た数。[14]
- 1068:米国のデータベースで、2007年から2021年に医薬品の有効成分の混入が見つかった製品の数。[9]
- 24%:台湾の1つの報告で、少なくとも1つの医薬品の成分が含まれていた生薬の検体の割合。[1]
- 26本:生薬の製品の混入と汚染について、束ねて評価された系統的レビューの数。[12]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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