MCTオイルで体重はどれだけ減るか 13試験の平均差とココナッツ油との違い

MCTオイル(中鎖脂肪酸の油)を長い鎖の油と置き換えた試験を束ねた分析では、体重の差は平均0.51kgだった。純粋なMCTとまぜた油の違い、1日2gと18gの試験、ココナッツ油との満腹の差、血液の脂質への影響と使うべきでない場面まで、数字で確かめる。

油を替えただけで、体が燃やす量は変わるのか。研究者はその差を、1分ごとのkcalで測ってきた。中鎖脂肪酸を多く含む油の食事に切り替えて2日目の男性たちでは、消費エネルギーがオリーブオイルの食事より1分あたり0.04kcal多かった[16]。28日目には差が0.03kcalになり、統計的に有意ではなくなっていた[16]。「脂肪を燃やす油」という呼び名の出発点には、こうした細かな測定がある。

MCTオイルは、中鎖脂肪酸でできた油を指す。燃えやすい、たまりにくいという性質は、研究の世界でも減量に役立つ根拠として挙げられてきた[5]。問題は、その性質が体重計の目盛りにどれだけ届くかだ。複数の試験をまとめた分析は、長い鎖の油と置き換えたときの体重の差を平均0.51kgと見積もった[7]。

この数字を小さいと見るか、意味があると見るかは人による。ただ、この平均は「足した」結果ではなく、長い鎖の油と「置き換えた」結果から出ている[7]。この条件を外して数字だけを持ち出すと、話の中身が変わってしまう。量、期間、何と比べたか。その3つを手がかりに、MCTの試験を順に読んでいく。

朝のコーヒーにスプーン1杯の油を垂らす、という使い方がよく紹介される。けれども、そうした上乗せの形で体重を比べた試験は、ここで扱う分析の中心にはない[7]。研究の条件と台所の習慣のずれは、最初に確かめておいたほうがいい。

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「中鎖」は炭素の数の話

研究では、油をつくる脂肪酸の鎖の長さを、炭素の数で数える。中鎖脂肪酸の試験をまとめたメタ分析が対象にしたのは、炭素が8個と10個の脂肪酸だった[7]。比べる相手には、オリーブオイルやコーン油、菜種油など、もっと長い鎖の脂肪酸を多く含む油が使われてきた[11][9][4]。研究ではこれを長鎖脂肪酸の油と呼ぶ[7]。

中鎖の油は病院の栄養管理でエネルギー源として使われてきた油で、1996年の時点で、減量の手段としても30年にわたって勧められてきたとされる[5]。その説には、いくつかの根拠が挙げられてきた。エネルギーの密度がやや低いこと、満腹感にかかわること、肝臓へすばやく運ばれて燃やされること、脂肪組織に取り込まれにくいことである[5]。燃やされる速さが消費エネルギーを押し上げる、という筋書きはここから生まれた。

ただ、1996年のレビューは同じ論文の中で反対側の材料も並べている。インスリンの分泌を促すこと、体内で脂肪酸を新しく合成する働きを高めること、血液の中性脂肪を上げることがあり、これらは減量の方向を打ち消しうる[5]。どちらに傾くかは、全体のエネルギー量、食材、中鎖と長鎖の比、中鎖の種類の比、続けた期間で変わるとされた[5]。

同じレビューは、体重を減らすには摂取エネルギーのおよそ50%を中鎖の油でとる必要があるとし、人の食生活で長く続けるのは難しいと結論している[5]。食事の半分を一つの油でまかなう生活は、試験の外ではまず見かけない。研究の歴史は、期待と打ち消す材料の両方から始まっている。

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13試験749人の平均は−0.51kg

成人を対象に、中鎖の油と長鎖の油を3週間を超えて比べたランダム化比較試験をまとめたメタ分析がある[7]。ランダム化比較試験は、参加者を偶然で群に分け、条件の違いだけを比べる方法を指す。集まったのは13試験749人だった[7]。

中鎖の油は長鎖の油に比べて、体重を0.51kg減らした。95%信頼区間は−0.80〜−0.23kgである[7]。信頼区間は推定のぶれ幅を表し、この幅はすべて減る側に収まっている。腹囲は−1.46cm、腰回りは−0.79cmで、体脂肪の総量、皮下脂肪、内臓脂肪も標準化平均差でそれぞれ−0.39、−0.46、−0.55と中鎖の側に有利だった[7]。血液の脂質には差がなかった[7]。

同時に、この分析は自分の弱点も書いている。多くの試験は質を十分に評価できるだけの情報を欠き、商業的な偏りが検出された[7]。期間、量、食べる量の管理の仕方も試験ごとにばらばらだった[7]。結果のばらつきを表す指標は、体重で35%と大きくはなかった[7]。それでも、ばらつきが小さいことと設計がそろっていることは別の話になる。著者らの結論は、長鎖の油を中鎖の油に置き換えると体重と体組成がわずかに減る可能性がある、というところにとどまる。効果と必要な量を確かめるには、独立した研究グループによる大きくよく設計された試験が要ると付け加えている[7]。

ここでいう「置き換え」は大事な条件だ。集められた試験は中鎖の油を長鎖の油と比べたもので、著者らの結論も「置き換え」という言葉で書かれている[7]。いつもの食事にスプーン数杯を上乗せした効果を測ったわけではない。上乗せすれば、その分のエネルギーも増える。

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純粋なMCTと、中鎖と長鎖をまぜた油

2024年には、過体重と肥満の人に絞ったメタ分析が出た[3]。この分析は、中鎖だけでできた純粋なMCTと、中鎖と長鎖をまぜた油を分けて比べた点に特徴がある[3]。

長鎖の油を多く含む食事と比べ、中鎖の油を多く含む食事は体重を1.53%多く減らした。95%信頼区間は−2.44〜−0.63%である[3]。純粋なMCTに限ると−1.62%で、信頼区間は−2.78〜−0.46%だった[3]。一方、中鎖と長鎖をまぜた油を使った食事では、有意な体重の差は出なかった[3]。血液の中性脂肪と、インスリンの効きにくさを表す指標も、中鎖の油の側で下がっていた[3]。

先の分析は健康な成人を、こちらは過体重と肥満の人を対象にしている[7][3]。そしてもう一つ、先の分析がkgで、こちらが%で表している点には注意したい[3][7]。単位が違うので、2つを足したり比べたりはできない。共通して読み取れるのは、差の向きは減る側にそろい、大きさは控えめだということだ。

著者らは、脂質の異常や糖の代謝の乱れを伴う過体重と肥満の人に、純粋なMCTを食事に取り入れることを勧めている[3]。ただし、ここでいう食事は研究者が設計した置き換えの食事である[3]。「MCT入り」とうたう食品が純粋な中鎖の油か、まぜた油かで、試験の答えは変わっていた。

消費の差は、4週目に小さくなった

燃える速さを直接測った試験を見てみる。BMIが25〜31の健康な過体重の男性24人が、中鎖の油を多く含む食事とオリーブオイルの食事を28日ずつ、順番を入れ替えて食べた[16]。同じ人が両方の条件を経験するので、体質の違いが比較に混ざりにくい。

上半身の脂肪組織は、中鎖の油の期間に0.67kg減り、オリーブオイルの期間は0.02kgの減少だった[16]。全身の皮下脂肪の減り方も、中鎖の油のほうが大きい傾向を示した[16]。測定には磁気共鳴画像が使われている[16]。

消費エネルギーの差は、2日目に1分あたり0.04kcalで有意だったが、28日目には0.03kcalで有意ではなくなった[16]。脂肪が燃やされる割合も2日目には多い傾向があり、28日目には差が見られなかった[16]。期間が延びるにつれ、上乗せは目立たなくなっていった。

同じ研究グループは、平均44.5歳、BMIが平均27.8の過体重の男性19人でも4週間ずつの比較を行った[11]。消費エネルギーは、決まった食事の前30分と、食べた後の5.5時間にわたって測られている[11]。体重は中鎖の油の期間に1.03kg、オリーブオイルの期間に0.62kg減った[11]。2日目に脂肪の燃え方が大きく上がった人ほど、体重の減りも大きい傾向があったが、統計的に有意な水準には届いていない[11]。興味深いのは、28日目の消費エネルギーと脂肪の燃える量の上がり方が、開始時の体重が軽い男性ほど大きかったことだ[11]。著者らは、体重の重い男性ほど、すばやく燃える油への反応が小さいと見ている[11]。いちばん効いてほしい人ほど効き目が薄い、という結果である。

数字で読むMCTオイル

−0.51kg:13試験749人のメタ分析で、長鎖の油と比べた体重の差。商業的な偏りも検出された[7]。

−1.53%と−1.62%:過体重と肥満の人の分析で、中鎖の油全体と純粋なMCTでの体重の差。まぜた油では有意な差がなかった[3]。

1分あたり0.04kcal:切り替えて2日目の消費エネルギーの差。28日目は0.03kcalで有意でなかった[16]。

1日2g・2週間:BMIが25以上30未満の人の試験で、食後や軽い運動中に燃える脂肪の量を調べた条件[4][20]。

50%前後:1996年のレビューが、体重を減らすのに要るとした中鎖の油の割合[5]。

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