乳がんの手術の後のむくみと体重 リンパ浮腫の危険とBMI、減量で変わること

乳がんの手術後、体重を減らせば腕のリンパ浮腫も防げるのか。BMIと発症を追った研究では関連がある一方、術後の減量でリスク低下を確認できなかった報告もある。肥満そのものによる脚の浮腫、治療後の経過、減量後に残る機能障害を分け、医師と体重管理を考えるための数字を読む。

体重が落ちたら、乳がんの手術を受けた側の腕のむくみも防げるのだろうか。診察で体重管理の話が出ると、減量の成果と腕の状態を同じ物差しで見たくなる。しかし、術後の女性を追った研究では、体重が減った人でリンパ浮腫の発症リスクが低くなったとは確認できなかった。[6]

一方、治療前のBMIが高い人ほど、その後のリンパ浮腫が多かったという報告はある。[17] BMIは身長と体重から体格を見る指数だ。同じ体重の話でも、治療前の体格と術後の変化では、論文が答えている問いが違う。浮腫が残ることを、食事の管理が足りなかった証拠にする読み方は避けたい。[6][17]

乳がん治療後の食事や筋力全般は、「乳がん治療後の体重管理」の記事に譲る。ここで焦点を合わせるのは、腕や脚のリンパ浮腫と体重が、いつ、どのような対象で結びついていたかである。

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リンパ浮腫には、脂肪だけで説明できない変化がある

リンパ浮腫は、リンパの働きが不十分になることで起きる。肥満による脚のリンパ浮腫を扱ったレビューでは、リンパ管が取り込めない液体の蓄積に加え、皮下の脂肪の沈着や、組織が硬くなる線維化も関わると説明されている。[2] 脚の見た目の太さに、液体と組織の変化が重なりうる。[2]

ここで扱う研究の中心は、乳がん治療に関連する腕のリンパ浮腫である。これとは別に、極度の肥満そのものが下肢のリンパ浮腫を引き起こすこともあり、レビューは両者を区別している。[2] 腕の術後研究と脚の浮腫では、まず原因と対象を分けて読む。気になる腫れの診断は医師に求め、体重の話だけで受診の判断を終わらせない。

研究での「発症」にも、測定の約束がある。術後の体重変化を調べた研究は、手術側の腕の相対的な体積変化が10%以上となることを基準にし、手術から少なくとも3か月後の変化を扱った。[6] 判定には医療機関で測った体積の変化が使われた。[6] 見た目、体重、医療機関での測定は、それぞれ別の情報である。

また、肥満による脚のリンパ浮腫をまとめたレビューは、体重増加とリンパの損傷が悪循環を作ると述べている。リンパの機能が落ちることで脂肪の沈着や線維化が進み、肥満の悪化にもつながるという関係だ。[2] 「太ったからむくむ」の一方向で話を閉じると、この病気で起こる組織の変化を取りこぼす。減量後のリンパ機能と浮腫の回復については、後半で検討する。[4]

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治療前のBMIと、その後の発症には関連がある

乳がん患者787人を対象に、手術の前後で腕の体積を前向きに測った研究がある。複数の条件を考慮した解析では、手術前のBMIが30以上の人は、25未満の人や25以上30未満の人と比べてリンパ浮腫のリスクが高かった。一方、25以上30未満の群と25未満の群の差は有意にならなかった。[17] この解析では、BMI30以上の群にリスクの上昇が見られた。[17]

この研究が観察したのは、もともとの体格が異なる患者の経過だ。BMIを下げる介入を無作為に割り当て、その効果を比べた試験とは異なる。発症しやすい人を見つける情報にはなるが、その数字から「今からこの値まで痩せれば予防できる」と逆算することはできない。[17] 術前の体格を知ることと、術後に達成すべき体重を決めることは、医療上も分けて考えたい。

日本の基準に合わせてBMI25以上を肥満とした、368人の前向き研究もある。患者を手術後1年、3年、5年に評価すると、BMIに加えて、脇の下のリンパ節を取り除く腋窩郭清と放射線治療も、全体の解析でリスク因子として残った。[10] 体格だけが発症を説明していたわけではなく、がん治療の内容も関わっていた。

同研究では、術後1年の新しい発症は高BMI群で多かった。腋窩郭清を受けた患者では39.1%対16.3%、より限られたリンパ節を調べるセンチネルリンパ節生検を受けた患者では15.6%対1.5%だった。[10] 同じBMIの区分でも、受けた処置によって発症割合が違う。数字を読むときは、「誰と比べた値か」に加え、「どの治療の後か」を外せない。

ただし、その群間差は術後3年、5年の新規発症では有意でなかった。[10] 早い時期に差があったことと、後の時期に差を確認できなかったことを、両方残して読む必要がある。術後の時期によって、新規発症の群間差は変わっていた。[10]

同じ前向き研究は、発症した後の回復にも違いを見ている。高BMI群では回復が遅く、術後5年でも浮腫が残った人が50.0%いた。一方、低BMI群では回復が速く、術後3年で残っていた人は26.7%だった。[10] 前者は5年、後者は3年の値であり、観察時点が異なる。示されているのは、体格によって発症後の時間のたどり方にも違いが見られたことだ。[10]

受診の場では、手術からどれくらいたつか、浮腫がいつ始まったか、どの処置を受けたかが、この研究を自分に引き寄せる情報になる。体格の区分だけ一致する人を探すより、経過と治療内容まで含めて医師と照らし合わせるほうが、数字の意味を保ちやすい。[10]

術後に痩せた人で、予防効果は確認できなかった

術後の減量に期待を置くときに欠かせないのが、女性1,161人のコホート研究である。コホート研究とは、対象者の経過を追って、条件の違いと結果の結びつきを調べる研究だ。片側の乳がん手術を受けた患者について、術前からの平均追跡期間は49.1か月で、92人、7.9%にリンパ浮腫が発症した。[6]

最終の観察時点で体重が減っていた人と、増えていた人を比べると、減量による保護的な関連は確認できなかった。発症の起こりやすさを時間も含めて比べるハザード比は1.38、95%信頼区間は0.89〜2.13だった。[6] 信頼区間は推定の不確かさを示す幅で、差がない値の1をまたいでいる。体重が減った群の数字が大きくても、この結果を「減量すると発症が増える」と読むこともできない。[6]

著者らの結論は、全身の健康のための個別の生活管理として減量を勧める場合があっても、減量だけで乳がん関連リンパ浮腫の発症リスクを下げられるとは限らない、というものだ。[6] 全身の健康と腕の浮腫予防を分けて、体重管理の目的を医療者と共有する手がかりになる。

ここでの減量は、術前と最終観察時点の差で分けている。[6] 一方、787人の研究では、術後の大きな体重変動と発症リスクの関連も調べられていた。[17] 後者は増減を絶対値で累積した指標を使い、術後の月当たり10ポンドの変動についてハザード比1.97と報告した。[17] 増加と減少を相殺する差し引きの値に対し、累積した変動は途中の上下も数える。

一方、すでに浮腫がある患者を扱う治療研究は、治療前後の体積や、その後の維持を評価する。[15] 発症を追った1,161人の研究では、光学的に腕の体積を測る装置を用い、術前・術後と、追跡中の6〜12か月ごとに測定した。[6] 研究の目的は発症の把握であり、既存の浮腫への治療効果を調べるものとは評価の出発点が違う。

術後の研究では、腕の測定を術前、術後、さらに追跡中にも行っている。[6] つまり、ある日の腕の大きさだけを比べるのでなく、その人の出発点からの変化を追っていた。体重も腕の状態も過去との比較があって初めて経過になる。患者が持っている診療時の測定結果は、単に大きいか小さいかを知るためだけでなく、どの時期から変わったかを医療者と共有する材料になる。[6]

数字で読むリンパ浮腫と体重

787人:術前BMIと術後の体重変動を、腕の測定とともに調べた対象者数。[17]

368人:BMIによる術後の経過の違いを、前向きに追った対象者数。[10]

1.38:術後に体重が減った群の発症ハザード比。信頼区間は差がない値をまたいだ。[6]

59人:肥満の有無によって複合的な浮腫治療の経過を比べた患者数。[15]

9人:減量手術前後の脚の体積を調べた症例報告の対象者数。[16]

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宮川涼 Founder

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